※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第475話

 

 

 

 

 小一時間後。軽く半日分はアヘり続けた六穂をヤリ部屋の布団に寝かせ、桜花は執務室の椅子に座った状態で眠らせている。

 放置しておく訳にもいかないので、書類にあれこれ目を通していると、桜花が身じろぎして目を覚ました。

 

 

「……ぅ…」

 

 

 おう、起きたか。

 

 

「……ここは…そして私は…………あ…あぁ!? す、すまない、本当に申し訳ない! 気が動転していたんだ!」

 

 

 ああ、分かってる分かってる、問題にもするつもりはないから安心しろ。

 あの辺は、鬼を惑わす為の幻覚作用がある植物も育ってるから、それに当てられたんだろう。こっちとしても管理をしくじっている訳だし、文句も言えないよ。

 

 …植物を管理している静流には悪いが、『そういう事にしておけ』という意図を言外に匂わせる。

 理解しているのかいないのか、まだ申し訳なさそうだったが、桜花はとりあえず矛を収めた。その矛は自分向きだったけども。

 

 

 しかし、幻覚に当てられたとは言え、ああまで取り乱すんだ。自分でも思う所と言うか、鬱憤が溜まっていたんじゃないか?

 

 

「いや、そんな事は……。橘花を守るのに鬱憤など、溜まる筈もない」

 

 

 使命感と鬱憤は別物だろ。そうやって押し殺してるから、橘花もそれを感じ取って自分も抑え込んで、その結果今回みたいに連鎖爆発だ。

 俺が嘴を突っ込むような事じゃないかもしれないが、もう少し本音で話をする機会を作った方がいいんじゃないか?

 

 

「そうかもしれない…。しかし、橘花に会うのも拒絶されていて………うぅ、思い出したら気が沈んできた…」

 

 

 情緒不安定になっとる…。妹と喧嘩したのが、思った以上にダメージになっているようだ。

 まぁ、この時点の桜花にとっては、橘花を守る事が文字通り全てに近いからな。今の桜花は、モチベーションの源を丸ごと断たれたようなものだ。橘花が、桜花に守られる事を拒絶したんだから。

 

 …俺でよければ、とりなしと言うか間を取りなすけど。

 

 

「…君だって面会を断られるのは違いないだろう。…はっ、まさかもう橘花を毒牙に!?」

 

 

 違うっつーの。…くそ、六穂に鎮静作用のある毒でも作ってもらっておけばよかった。いや、さっきそれで眠ったんだし、これ以上の接種は危険か。

 ともかく、橘花は今、文を書いてるんだろ。それは別の神垣の巫女への手紙で、俺を通じて送る事になってる。

 少なくとも、その時に一回接触するから、その時に様子だけでも見ておくよ。

 

 

「そうか…。ぜひとも頼む…。しかし、繰り返すが橘花にこれ以上余計な事をするなよ。間を取り持ってもらってこんな事を言うのはなんだがな」

 

 

 まぁ、今回の喧嘩の切っ掛けは俺とも言えるから、頭ごなしに否定は出来んな。必要なぶつかり合いだとは思うけども。

 しかし、俺も随分な言われようだなぁ…。

 

 

「……ぅへ、ぅえへへへ………若ぁ、もっとぉ………もう一回しようよぉ…」

 

 

 …隣のヤリ部屋から、寝言が聞こえた。

 桜花が半眼になって俺を睨み付ける。

 

 

「…そういう所だぞ」

 

 

 せやな。

 帰り際、桜花はチラッとヤリ部屋に目をやっていた。角度からして、六穂がオーガズムを迎えた格好のままで眠っているのが見えただろう。前から後ろからとにかく愛でまくったんで、まだ目を覚ましていない。

 そう言えば、桜花も結構な尻狂いだったからな…。夜はオカズにされそうだ。

 

 

 

 

 さて、橘花に会いに行くべきか? …いや、もう少し時間を置いた方がいいだろう。

 橘花だって、桜花と仲違いして平然としている訳でもない。頭を冷やす時間は必要だ。雪華への手紙を書く時間もね。

 明日か明後日辺りに面会(或いは忍び込む)を求めるとして…討鬼伝のストーリーはどうなってるのかな。

 これは、話が進んだとみていいんだろうか?

 

 

 いや待てよ、そもそもストーリーと考える事自体が間違いなのか。

 鬼があれこれ仕掛けてきて、それを乗り越える事で絆が深まる…と言うのが、俺が言う討鬼伝ストーリー。

 しかし、今回のループは色んな意味で状況が違ってしまっている。具体的には滅鬼隊。これだけの人員が増援として配置され、また鬼の侵入を防ぐ場所に陣取っているのだ。鬼だって、やり口を変えてくるだろう。

 

 何かしらの策を仕掛けられるのは確定だ。それをどうにかして乗り越えなければならないが、それはあくまで鬼との闘いの一環でしかない。内容や仕掛けが変わる事はあるだろう。

 本当に重要なのは……そう、オオマガトキだ。 

 オオマガトキを起こす為の、異形の塔。あれだけは変わる事はないだろう。鬼達が何のためにオオマガトキを起こそうとしているのかは定かじゃないが、やつらの最終目的である事に疑いはない。

 

 

 ふぅむ…つまるところ、あの塔が完成するまでに見つけ出し、ぶち壊すのは決定事項。

 それまでは、とにかく滅鬼隊やウタカタの人達と交流を深め、鬼が仕掛けてくるあれやこれやを乗り越える。うん、要するにストーリーってこういう事だな。

 余計な事を考えすぎていたようだ。

 

 

 じゃあ、あの塔の場所はどうだ? あれも、毎回微妙に場所が違うんだよなぁ…。異界が流動しているからだろうけど。

 そもそも、現段階でどれだけ出来上がっているのか。

 塔を守る結界を張る鬼だって、配置されているか怪しい。

 

 …あまり早い内にぶち壊してもいかんな。別の場所で、次の塔が作られかねない。

 鬼達がそれなりに労力を注ぎ込み、塔を守る為に集まった所を見計らって、潰す。……なんか性格悪い奴みたいなやり口だな。敵の嫌がる事をやろうとしているんだから、当たり前っちゃ当たり前だが。

 

 

 うん、まずは塔の捜索から始めるか。

 方針を決めた時、執務室の扉が叩かれた。

 

 

 

「若、居ますか?」

 

 

 ん? ああ、鹿之助か。診療所の手伝いは終わったのか。

 

 

「ええ、また手伝いに行きますけど…。それはそれとして、大和のお頭が呼んでましたよ。何か、重要な話があるって」

 

 

 お頭が? 重要な話っつーと…ああ、里と隊の交流として考えていた、親善試合の事かな。

 

 

「厳しい顔してましたから、違うんじゃないかなぁ…。とりあえず、伝えましたからね。俺はちょっと用事があるんで、失礼します」

 

 

 あいよ、お疲れ様。

 じゃあ何かやらかしたっけか? …桜花と橘花の仲違いの原因になった事か?

 桜花が戻った直後だし、その辺報告されたのかね。

 

 まぁ、里のお頭がお呼びとあれば、拒否はできない。

 行ってみるとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 大和のお頭に会いに行くと、いつもの集会所ではなく、お頭の私室に通された。

 人に聞かれたくない話をするらしい。

 

 

「急にすまんな。…ああ、楽にしてくれ。別に何かの叱責の為に呼んだのではない。確かめたい事があったのだ」

 

 

 確かめたい事…うちの子達の事で、何か?

 調子に乗って、ウタカタのモノノフ達を蔑ろにしているとか。

 

 

「いや、そういう話は聞いてない。むしろ助力のおかげで、危ない場面を何度も切り抜けたと聞いている。ありがたい事だ。…聞きたい事と言うのは、お前がシノノメの里でやった事だ」

 

 

 シノノメの…? …女関係?

 里では色々やってきたけど、問題になりそうなのはそれくらいだよな…。

 

 

「そこについては何も言わん。…異界浄化について、だ」

 

 

 

 …あー、確かにそれは重要な確認事項だな。俺も細かいとこまで話してなかったし。

 

 

「正直な話、最初に聞いた時には信じられなかった。交流の途絶えたシノノメの里からやってきたのも、少人数で異界を突破したのだと思っていたしな。だが九葉からの手紙もあったし、俺の情報網でも同じ報告があった。更には、霊山近辺にあった小さない異界も一つ消失させている」

 

 

 滅鬼隊が保管されてた、あの異界ね。

 で、要するにこの辺でも出来るかって事?

 

 

「この近辺に限らず、だな。異界の消滅は、モノノフの悲願。人の世を取り戻すのに、最も重要で、解決策が全く見つかっていない問題だった。それを実現した者が現れたとなると…どれ程大騒ぎになる事か。霊山も今は混乱しているが、遠からずお前を取り込もうと手を伸ばしてくるだろう。…それで、どうなんだ。ウタカタの異界は、浄化できるか?」

 

 

 原理的に言えば、出来る…と思う。

 だが、あの術を発動させるには幾つか条件を満たす必要がある。

 何より、迂闊に異界を浄化すると、厄介な問題も発生するんだ。

 

 まず、住処を奪われた鬼達の行動。大慌てして暴れる事もあるし、住処を求めて近場の異界に移り住もうとする。

 流動し続けていた異界が固定される事で生じる、地理的の変化。シノノメの里じゃ気付かなかったが、巡り合わせが悪いと土砂崩れなんかが生じかねない。

 

 

「ふむ…確かに問題だが、鬼達の進行を大幅に遅れさせる事ができるのであれば、些細な問題だな」

 

 

 そうだね。

 肝心の異界浄化の術を発動させる条件だけど…まず、瘴気を生み出す元となっている物を見つけなければならない。

 

 

「瘴気を生み出す元…鬼の体、と言う事か」

 

 

 いや、それに限った事じゃない。確かに瘴気は、基本的に鬼の体から生み出されるものだけど、それ以上に大量の瘴気を放出している物があるんだ。

 シノノメの里だと、鬼の術がかけられて汚された結界石の彫像。

 霊山近くの異界でも、似たような物があった。

 

 

「ふむ…長年の戦いの間に、瘴気を吐き出す穴を見かけた、という話を何度か聞いた事があったが、そのようなものか。しかし、ここらでは見た事が無いな」

 

 

 異界の中で戦っていると言っても、基本的に人間が動きやすい場所や道しか使わないからな。そう言ったところから外れた所にあると、まず発見できない。

 瘴気を生み出しているだけあって、迂闊に侵入できない程濃い瘴気に満たされてる事が多いしな。

 そういう所は強力な鬼の巣窟になってる事も多いし、あまり気軽に探索できる所じゃない。

 

 

「…だが、お前達はそれを成した。瘴気溜まりに踏み込んで探索し、異界を生み出す元となる物を見つけ出し、それを駆除する…単なる幸運や根気で成し遂げられる作業ではない。…恐らくは…信じがたい事だが、瘴気を無効化するような『何か』がある…違うか?」

 

 

 …御明察。遠からず気付くだろうとは思ってたけど、話を初めて即座にとは思わなかった。

 完全に無効化できる訳じゃないが、それでも普通の異界でなれ活動限界が大幅に伸びる。

 やり方は簡単。とある装飾品を付けるだけだ。

 

 

「貴重な物のようだな。増やす事はできないか?」

 

 

 現状じゃどうやっても無理だな。材料も無ければ、作り方も分からん。

 多分、たたらさんに見せても分からんだろう。あれは装具と言うより錬金術に近い…と思う。

 

 言うまでもないが、譲与も買い取りにも応じられない。存在が知れ渡れば、それだけで厄介事の元になるぞ。

 

 

「ふむ、ならば貸与なら応じると? 主力部隊の中だけなら、確実に情報統制できる。一人、持たせておきたい奴が居てな」

 

 

 …貸与なら、まぁ…考えない事もない。しかし、さっきも言ったが結構な揉め事の種になるぞ。

 強力なモノノフは特に、単騎特攻の精神が無駄に強く根付いているからな。

 

 

「…否定できんな。桜花や富獄辺りが特に」

 

 

 正にその二人である。

 

 

「…一人だけ、と言うのはどうだ。手練の忍び…いや、潜入任務が得意なモノノフなのだが、その性質上異界に長く潜る事が多い。鬼との戦闘も、活動限界時間に追われて隠れていられなくなった、という状況が多いのだ」

 

 

 忍び…って事は、天狐好きのアイツか。あいつも充分特攻野郎なんだけどなぁ…。

 しかし、速鳥に毒無効装備を渡すと言うのは…確かに有りだな。あいつの主な任務は異界の偵察、探索だ。オオマガトキの為の塔を探すのに、これ程の適任は居ない。

 

 

 …って、ちょっと待て、話がずれてないか? 異界浄化の話をしていた筈だが。

 

 

「む、そう言えばそうだった。しかし、色々と問題はあるだろうが、どの道浄化しないという選択肢はない。条件さえ整えば、すぐにでも浄化を行ってほしい。我々は、それ程に追い詰められている」

 

 

 まぁ、確かにじり貧だものな。シノノメの里もそうだったけど、結局のところ異界をどうにかしないと根本的な解決にはならない。

 

 

「その条件を満たす為、探索を主任務とするモノノフに瘴気を無効化する道具を使わせたいと思っている。筋は通っていると思うが?」

 

 

 確かに。……そうだな、今まで使っていた明日奈達も、今は子供達の面倒を見るのに手いっぱいで、異界に潜る暇がないからな。お蔵入りにさせておくより、使ってもらった方がいいだろう。

 一つとは言わない、3つある全てを貸与しよう。

 

 

「おお」

 

 

 ただし、条件付きで。

 

 

「当然だな。言ってみろ」

 

 

 レンタル料…もとい貸与の対価はまた別で詰めるとして、徹底した管理をしてほしい。

 誰に何時使用させたのか、どのような場所に向かったのか、そいつがいつ戻って来たのか、受け取ったのは誰なのか。

 鍵付きの場所に保管し、出し入れする時には必ず第三者の確認を求める。

 また、必ず一つは予備として保管しておく事。

 

 

「盗難防止、と言う事か?」

 

 

 それがあってもおかしくない代物ではあるけどな。むしろ怖いのは、使っている奴が何処に向かったか分からなくなる事だ。

 何せ、普段は瘴気が濃すぎて踏み入れない場所まで入って行けるようになるんだ。例えば雅の領域に向かったとして、鬼に襲われて普段踏み込まない場所まで逃げてしまったって事もあるだろう。

 そうなったら、痕跡を探すだけでも一苦労だ。

 瘴気無効の装備全てを使った状態で、そんな事になってみろ。

 

 

「助けに行く事も儘ならんな。一つは緊急要請、ないし行方不明になった場合の探索の為に使用するのか」

 

 

 そういう事。……それと、これは第三者確認にも繋がる事だが…装備して出撃する場合、必ず二人以上で行う事。

 これは単騎特攻を防ぐ為だ。

 例えば長年追いかけている鬼を見つけたり、自分の失敗を挽回しようとして一人で出撃するような場合には、絶対に渡すな。

 無理に持って行こうとしてもできないように、そうだな、鍵は大和のお頭自身が持っていてほしい。

 

 

「…随分と具体的な状況を挙げるな?」

 

 

 昔似たような状況で単騎で出た奴が何人もいたんだよ思い出させんな恥ずかしい。

 と言うか、うちの子達も要注意なんだよな…。一人で突っ込んだり、何も考えず暴れるだけ暴れてドヤ顔したり、敵を甘く見て捕縛されたりしかねない。

 

 

「…中々苦労しているようだな。似たような事をやりそうな奴も、何人か心当たりがある。了解した。鍵は俺が管理しよう。日頃から受付所に居るし、適役だな」

 

 

 うむ。んじゃ、装具は基本的には異界探索担当に使わせるとして、対価のお話に入りますか。

 

 

「お手柔らかにな」

 

 

 余裕だ、このお頭。

 

 

 

 

 

 

 

 追記

 

 大和のお頭、すっげぇ交渉上手だった。

 安く買いたたかれた訳じゃないけど、代わりに手札をズルズルと引きずり出されてしまったよ…。その分、対価は上乗せしてもらえたけどさ…。

 やっぱ俺じゃ、まだまだ頭領として未熟なんだなぁ。

 

 

 

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