超待ち遠しいッ!
が、それはそれとしてベータ版の超上級者向けをクリアできなかったのは心残り。
時間が足りない…。
攻撃型の装備、食事スキル発動、粉塵によるパーティバフ、痺れナイフ、毒ナイフ、落石、ここまでやったのに足引き摺らせるのが限界だったよ…。
狩猟笛の使い方が分かってれば、自分からバフ役に回ったんだけどなぁ。
堕陽月弐拾目
大和のお頭から報せが来た。囮作戦、決行決定。ゲームストーリー通り、神垣の巫女としての力も使ってだ。
桜花が相当ゴネたらしい。まだ仲直りもできてないもんなぁ…。桜花の反感を買うのを承知で、大和のお頭は作戦を決定したそうだ。
主力部隊中心人物の反感を買いながら、何故強行するのか? 橘花の意思を組んだ、のではない。大和のお頭は、何かしら確信を持っているようだった。
ここで何らかの手を打っておかないと、ウタカタは追い詰められて破滅する、と。
その根拠までは聞かされていないが、近い内に大きく情勢が動くのは俺も同感だ。
ただでさえ、まだ解消されてない火種…物語的に言えば伏線が、いくつ放置されているのか分からないのだ。
異常な変化を遂げる鬼達、滅多に現れない奇妙な鬼ナナキキ、姿を現してない虚海と陰陽寮、先日の藍那とまり達が調査に向かった洞窟など…。異界の浄化が上手く行けば一発逆転も狙えそうだが、それには条件が少々厳しすぎる。
地道ながらも敵の戦力を削る、指揮官役を狙うのは戦略的にも大事な事だ。
「…それで、我々にも参加要請ですか。ウタカタ近辺も含め、警備に穴が開かぬよう手配する必要がありますね」
そういう事だ、天音。
…参加者の選別は任せるが、抑え役として明日奈と神夜を入れておいてくれ。
隊員達の性格を考えると、囮作戦は不向きと言わざるを得ない。寡兵での戦いに慣れている二人を中心として動くように。
「明日奈殿と神夜殿を? …懸念がございます。お二人が出撃した場合、ここに居る隊員達の抑えはどうされますか?」
一から拾まで全部やってやる時期も過ぎたろう。2、3日程度なら、多少の問題が生じても乗り切れる。
何か諍いでも起きるようであれば、俺が対処するさ。
何より、いい加減あの二人も欲求不満だろうしな。特に神夜は戦狂いだし。
閨での欲求は充分以上に満足させてるつもりだけど、そればっかりじゃな。人はパンのみに生きるに非ず、性のみが悦びに非ず。
「…性云々はさておいて……その、戦狂いの神夜殿を抑え役に入れてよいので?」
いいよ。その辺は明日奈が調整してくれる。戦狂いと言っても、引き際が分からん訳じゃないしな。
さて、この囮作戦の目的だが、鬼の指揮官ないし、重要な秘密を探り出す事にある。その為に、橘花…神垣の巫女の千里眼の術を使う事になっている。それに必要なのは、鬼の体の一部。
できるだけ強力な鬼で、討伐してから時間が経っていないものがいい。
「…鬼に指揮官となる個体が居るのは分かります。…その指揮官が、どれ程頭を使っているのかが難点ですね。万が一、こちらの行動が読まれていたら…」
いい勘してるな、天音。俺もそれを考えてる。奴らは案外頭がよく、そして人間を観察している。
ちょっと前の別の地方じゃ、鬼が人間に化けてモノノフを誘い込むなんて事もあったくらいだ。この辺じゃ、そういう話はあまりなかったようだが…指揮官が他所から渡って来た個体だとすると、これからは鬼達の行動も変化してくるかもしれん。
そうなれば、戦闘員の指揮は益々重要になってくるだろう。苦労をかけるが、しっかり頼むぞ、天音。
「任せください! 執事として! 勤めを果たしてごらんに入れます!」
ああ。だが全力でやるのと、一人でやろうとするのは違うからな。そこだけは履き違えるな。
囮作戦に関するあれこれを天音に任せ、少しばかり散策する。
あれやこれやと忙しい日々で、この所施設の増設もやっていなかった。さて、何か必要な物とか見つかるかねぇ。
相変わらず隊員達は、それぞれ思い思いに時間を過ごしている。数人集まって遊戯に興じている者、自室に引っ込んで昼寝している者、ウタカタの里に遊びに行く者、稽古している者。
…大分、生活環境は整ったよな。衣食住は取り敢えず満たされているし、娯楽もそれなりにある。
結界の端に近いから襲撃の危険はあるが、それも何とかしようとはしている。対鬼用の罠も、それなりに形になってきた。睦みあった後の六穂が超張り切って、強力な鬼除けの毒を作り出したんだよな…。ご褒美は下の口にたっぷりご馳走しました。
となると、次に必要になってくるのは………生産性、か。
今は食料も武器加工もミタマの為のあれこれも、里に頼っているからな。別に袂を分かつ事を考えてる訳じゃないが、何かあった時の為に独立できるだけの足掛かりは作っておきたい。
しかし、武器加工は流石に…。俺もそこまで専門的な事はできないし、簡単に身に着けられるもんじゃないだろう。いつもの妙な夢で、そっち系の技術を覚えられるとも限らない。
と言う事は、やはり食料の自給からだ。
畑を作って、日々の手入れを行って…………GE世界でやったように、MH世界の植物を育てるべきか。アイルー農園、隊員でやっちゃうか? 静流みたいに植物を操れる隊員も居るから、色々と管理もやりやすそうだ。
そうすると…………ん?
あ、足りない施設がまだあったわ。蔵だ蔵。倉庫。食糧庫。収穫した物を補完しておける場所。
食べ物だけじゃない。物を置く場所だって必要だ。俺には ふくろ という謎の格納場所があるが、他の皆まで使える訳じゃない。
今はまだ私物も少ない状態だから、それぞれの部屋に置いておけばよかったが、装備類が増えて行けば入りきらなくなるに決まってる。特に鎧の類は、折りたたんで小さくするって事ができないからな。
よし、決まり。次に作るのは倉庫、それから農園だ。
…必要だとは思うけど、面白味がないなぁ。そりゃそうか、必要に応じて、で考えたんだもの。面白いも何もない。
ふむ、逆に自分が…隊員達ではなく、俺が何を欲しがっているかで考えてみよう。
俺が欲しいもの……欲しいもの、か。
クサレイヅチの手掛かり…いやそーいうシリアスなのは置いといて。
俺が欲しいもの、ねぇ。色欲は満たされている。食欲も問題ない。住居も特に不便は感じていない。…ああ、神夜にまたベッド作ってもらおうかな。敷布団しか使ってないし。
後は……ああ、そうだな。やっぱり気楽な身の上に戻りたいとも思う。隊員達の前ではこんな事は言えないが、やっぱり書類仕事は面倒くさいし、異界に潜って鬼を狩る方が性に合っている。でも流石にこれはどうしようもない。秘書執事チームがもっと育てば色々丸投げする事もできそうだけど。
それに………。あ、あったわ、欲しいもの。夜の遊びをもっと楽しくする、コスプレ衣装が欲しいです! 現状じゃ、コスプレするにしてもくノ一くらいしか出来ないんだ。それも、エロくノ一じゃなくて黒づくめ衣装でしかないし。
張り型とかの道具は ふくろ に入ってるんだけどねー。衣装は一人一人のサイズに合わせないといけないから、持ってきてないのよ。
下着の数も足りてない…そういや、詩乃が欲しいってぼやいてたな。一度、明日奈が使っているのを貸してもらって、動きやすさに驚いたとか。
うん、戦力アップにも繋がり、エロさも倍増する、いい案だ。
…でも誰が作るって話だよ。里で作れるのって言ったら、タタラさんだろうけど……サンプル、渡さなきゃいかんよな。現存する物は、全部使用済みの奴だし。洗濯したとしても、彼女の下着を貸し出すと言うのは躊躇われる…。
…シノノメの里から、練に頼んで送ってもらおう。それをタタラさんに見せて量産してもらう。
でも、そうするとデザインがな…。タタラさんにその手の洒落っ気を期待するのも酷だ。…まぁいいか。取り敢えず、最初は普及から目指していこう。
橘花がシノノメの里に文を出す時に、俺も送るか。
うん、いいアイデアも出たし、散策終了。
お、任務に行っていたモノノフ達の帰還だ。
あれは…藍那とまり、それに富獄の兄貴と………速鳥?
ふむ…うちの子達は少々疲れているようだが、特に大きな怪我はないようだ。不安定になっている気配もない。洞窟探索は、上手く行った…か、危険を感じて早めに切り上げたかのどっちかだろう。
保護者役をやってくれたと思われる、富獄の兄貴と速鳥は……ちょっと疲れているようだ。兄貴はいつも以上に仏頂面してるし。
おーい、おかえりー。
「あ、若様! ただいま戻りました」
「おう、帰ったぜ、若。色々土産話が…って、うおっ!?」
「わ、わわわ若様こんな所で!」
「ちょっ、待てって、俺達今汚れて汗臭いから!」
よーしよしよし、よく無事に帰って来たな。真面目に心配してたんだぞ。
異界の上に洞窟なんぞ、何が潜んでるか分からないからな。
…お二人とも、苦労をかけたと思われます。本当にありがとう。
「本当にな…餓鬼のお守なんぞ、やるもんじゃねえよ」
「…拙者は役目を果たしたまで。……少々疲れたが」
速鳥がこんな愚痴を零すとは。…やっぱり、最初はイケイケドンドン状態だったようだ。
俺の拘束から(ちょっと名残惜しそうに)逃れた二人は、そそくさと禊場に向かって行った。ふむ、報告は…後でいいか。
「申し遅れた。速鳥と申す。貴殿らの話は聞いている。…お頭から、霊山での事も含めて」
ふむ、うちの子達の裏事情も知ってる訳だ。
俺もあんたの事は、ちょっとだけ聞いてるよ。異界探索に長けたモノノフだって。うちの連中は、正面からの殴り合いなら火力で押し切れるけど、そういう探索系が苦手な奴が多いから、力になってくれるとありがたい。
「……………」
「……なんか言え」
嫌そうな顔してんな…。覆面越しだから分かりにくいけど。そんなにあの子達はあかんかったか。
「いや、単に拙者が単独行動を得意としているだけだ。思う所はないではないが、新兵にそれを期待するのは酷。…向き不向きもある」
…アカンって言われてるよーなもんだな…。
真面目にどうにかせねば。
「…ところで、そちらの娘は何か?」
ん? …速鳥に指さされて振り返ってみると、赤毛の隊員が一人立ち尽くしている。しかも、速鳥にすっごいキラキラした視線を向けて。
おお、世良じゃないか。どうしたよ、こんな所で突っ立って。
「忍者…」
「……」
は?
「忍者、忍者だ! 本物だ! 初めて見た! なぁなぁ、手裏剣とか持ってるか!? 苦無は!? 鍵縄は!? 握手していいか!?」
…NINJAを目にした外人のような反応だ。
この子は世良。世良須照須。……多分、英名のセラステスの当て字だと思う。
鬼と融合させられているのか、蛇のように体を変化させる事が出来る…らしいのだが、本人に自覚は無い。出来そうな気はするのだけど、どうやればいいのか分からないのだそうな。
強いて言うなら、舌が妙に長いのが蛇っぽい。この子を抱く事になったら、口淫特化にしようと思っています。
この子、忍者好きだったのか。
「…拙者は忍びではござらん。モノノフでござる」
「いやいやその恰好でそれは通じないって! あ、そうか、忍者なのは秘密にしないといけないよな! 悪い悪い!」
「…………」
すっげぇ渋面。
世良の話を聞かない言動も問題だが、速鳥にとって忍び扱いは地雷だからな…。決別し、袂を分かった過去だもの。
「こいつは確かにモノノフだが………しかし……」
まぁ、そうだよなぁ、富獄の兄貴。
速鳥、モノノフなのはともかくとして、忍者じゃないって言うならその恰好どうにかした方がいいと思うぞ…。
「む…」
多少の自覚はあったのか、口籠る速鳥。自分の任務と技術に一番合っている衣装なんだろうが、全身で忍者を主張している。
いや本当の忍者がここまであからさまな恰好をして日中から活動するとは考えにくいけど、一言で忍者と言われて想像する姿と寸分違わないんだから。
あー、世良、事情はどうあれ忍者じゃないと言ってるんだから、そういう事にしといてやれ。
後で手裏剣とか忍び装束とかあげるから。あっち行ってな。まだ仕事中なんだよ、この二人は。
「本当か!? …え? 若も持ってるのか?」
手裏剣も苦無も持ってるぞ。やろうと思えば使えるし。ちなみに手裏剣は「投げる」じゃなくて「打つ」と言います。
ああ、俺は忍者じゃないからな。体得している技術から言うと、どっちかと言うとアサシン…暗殺者寄りだ。
「…………」
警戒すんなよ…と言っても無理か。あんたらと争うつもりはないよ。
ウタカタのおかげで、俺達は生活できてるようなもんだ。恩を仇で返す趣味は無い。
そうさな、お近づきの印って訳じゃないが…いい物やるよ。これを使ってれば、そうそう忍者と思われる事はないんじゃないかな。
ほれ、天狐とお揃いのになるよう形作られた……着ぐるみ。……GE世界産なんだよなぁ、これ。ふと気が付くと ふくろ に入っていた。
GE世界で着ぐるみっつったらアイツだもんな…。結局会わなかったんだよなぁ…。着ぐるみなんて作った覚えもないし。しかもGE世界には存在しない筈の天狐の形だったし。謎が深まる。………でもキグルミだったら何の不思議もない気が……いやいやいや…。
「……こ、これは…!」
「お、おう…お前が…これ着るのかよ…くくくっ…」
口元を抑えて笑いを堪える富獄の兄貴。しかし当の速鳥は、目を凄まじく鋭くして俺が出した着ぐるみを睨みつけている。
…ように見えて、天狐とお揃いという事に衝撃を受けているだけだな。
ちなみに、天狐と会話する事もできるぞ。
「この神器にそのような効力が!?」
あ、違う違う。悪いけど着ぐるみ自体にそんな効果はない。
ただ、俺が天狐と意思疎通する言葉…と言うか鳴き声を知ってるだけだ。
そうそう信じられないだろうから、今度会話してる所見せようか。
「…過分なる心遣いに感謝いたす。この恩は任務で返そう」
お構いなく。これからもうちの子達が面倒をかけるだろうし…。
それはともかく、洞窟の探索はどうだったんだ? 大和のお頭より先に聞くのもなんだけど…話せるところまででいい。どっちかと言うと、うちの子達の失敗や成功を聞きたい。
「…血気に逸る。これに尽きる」
「だな。お前にいい所を見せるんだ、と息巻いていたぞ。おかげで道中で見かけた鬼を、意味も無く何度か襲撃した」
「場所が里に近い場所故、脅威を排除しておくのは悪手ではないが、さりとて積極的に仕掛ける必要があったかと問われれば首を横に振る」
「突出する初陣首だ。早死にするぞ。何度か戦って落ち着いたようだが、俺らが鬼を放置するのを見て意外そうな顔をしていたな」
うーむ、懸念が的中してしまったか。
理由はどうあれ、敵を放置する事に抵抗があるのは分からないではないが。
「洞窟については……」
「おい速鳥、いいのか」
「どの道、彼女達が報告するであろう。分かっている事もそう多くない」
「…ふん、俺にはどうでもいい事か。結界を見つけた」
…何? 鬼が張った結界? …オオマガトキの塔を守る結界か。もうそんな時期なのか? 何も鬼から仕掛けられていないのに。
「いや、恐らく人間が張った結界だ。かなり弱体化していて、破ろうと思えば破れなくはない。だが疑問が幾つかある」
人間が張った…? それなら、普通は感知できる筈。
…いや、最近発見された洞窟の奥にあって、しかも異界な訳だし…見つからなくても不思議はないか。
「うむ、異界の流動に乗って流れて来たのであろう。しかし、最もおかしな点は、この結界に隠蔽性があり、同時に内向きの結界である事だ」
…何かを隠し、そして封じ込めていると?
「うむ…。異界の流動は時代を超える事すらある故、何処の誰がいつ、何の為に配置した物なのかは分からぬ。少なくとも、オオマガトキ前の地図を見るに、該当する洞窟は勿論地形すらなかった。何処かから流れて来たのは確かであろう。何らかの鬼を封じておるなら…恐らく相当に強力な鬼であろうが、まだよい。だが、異界の中に隠蔽された人造物となると…」
…うちの連中の事を連想するよなぁ。
しかし、気になりはするけど、暫くそっちを調べる余裕はないと思う。
「だろうな。暫くは囮作戦に専念するだろうよ。ったく、面倒事がどんどん押し寄せて来やがるな」
正直疫病神扱いされても仕方ないかなって。どこに行っても何か起こるからネ!
まー仮にうちの連中と同類が居たとしても、すぐには解放できんだろ。人が暮らす箱も、それを支える生産も追いついてないんだ。
準備が出来てから解放しないと、ウタカタの里も巻き込んで飢えて果てるなんて事になりかねん。
まぁ、何だ、とりあえず今日はお疲れ様。
うちの連中が世話になったし、今度礼に一杯奢るよ。
「おう、いい摘みも期待してるぜ」
「拙者は不要。役目を果たしたまで」
ん、天狐との会話術は要らんのか?
「……きゅ、きゅー…」
その鳴き声だと、天狐的には「別にいいや」だな。