堕陽月弐拾壱日目
天音が暫く俺の傍を離れる。本人は断腸の思いのようだが、実際俺の傍にくっついてると、囮作戦の準備が進められないからね。
これも俺から与えられた重要な役割なので、誰かに押し付ける事も出来ない。
「暫くこちらの作業に専念いたします」と告げてきた天音の目は、売られていく子牛のような目であった。
戻ってきたら労ってやるべきか…。しかしあいつの事だから、下手な事しても恐縮しそうだなぁ。
あいつが喜びそうな事……妙にライバル視している時子より優秀だと褒める? …喜びそうではあるが、最初に失敗させて意識改革させたのが無駄になりそうだ。
…好きな飯でも準備してやるか。もし要望があれば、それを可能な限り叶える方向で。
作戦準備にとりかかるのは、天音だけではない。選別された参加者に加え、明日奈と神夜もだ。
と言っても、明日奈・神夜は「鈍った勘を取り戻しておく」と、延々試合をしてるだけだがな。真面目に武器を振るうのも久しぶりだろう。ここのところ、子供達の面倒を見て稽古の時間も削られてたからな。
二人の試合を見守る隊員も、結構居る。
特に、腕っぷしは強いのに浅黄の試験に落ちている、凜子・凜花、他数人。かなりショックを受けているようだな。
格が違うからねー。
あの子達も強い事は強いんだけど、あの二人は軽くそれを凌ぐ。何より経験値が違い過ぎる。
『力量は充分な筈なのに、どうして不合格にされるんだ?』と考えていた彼女達も、暫くは納得すると思う。合格不合格なんて、所詮は最低基準の話でしかないのだと。
神夜が笑顔で「鬼と戦えると言うなら、これくらいは出来るようになりましょうねー」なんて斬冠刀を振り回しながら言ってたもんだ。
実際、他所ならともかくウタカタの鬼は強力なのが多いからな。主力級を基準にすると、あいつらまだまだ足りてないんだよなぁ…。
かと言って、哨戒役だとその強さを持て余す。
帯に短し、ゾーキンに流し。
話は変わるが、ストーリーイベントは殆ど進んでないのに、追儺の日である。簡単に言えば節分な。
ゲームで言えば、和穂の「鬼は討ち」の話だ。神隠しにあって時代を超えた和穂が、言葉の違いによってジェネレーションギャップを突き付けられる、後の伏線となる話だな。
前のループでは、同じように「鬼は討ち」が基本だと思っている千歳との絆のおかげで、「元の世界になんて戻ってる場合じゃねえ!」状態だったんだけど。
あれは千歳が尊すぎるから出来た事だ。完全に里のアイドル状態だったもんなー、あいつ…。…そのアイドルをあのクサレイヅチは、事もあろうに取り込んだ上に人質に……………クールダウン、クールダウン…。
ともかく、色々な意味で後の伏線となるお話だ。
神隠しから戻って来た和穂は、それまで追儺の日を経験してなかったのか? 戻ってきて一年未満って話だったっけ? という疑問はあるが、それは置いといて。
今回、俺は和穂と全然絡めてないから、今回も同じような話になるんだろうな…と思っていたのだが。
「え、鬼は討ち、ですよね?」
「モノノフだから、討ち、だろう? 鬼やモノノフの事を知らない一般人なら『鬼は外』だが」
「過去の記憶はないけど、鬼は討ち、が基本だと思いますが…」
「私は前に起きていた時の記憶もあるけど…討ち、でしょう」
「浅黄様と同じく、討ち、です。ああ、どこから広まったのか、一般の人達が『鬼は内』と唱えていたのを見た事がありますけど」
「そうよね! 鬼は討ち、が普通よね!」
「「「ええ……」」」
……和穂の同類がめっちゃ居ました。
同意を得られて嬉しそうな和穂を、一緒に任務に出向いていた桜花、息吹、那木が見つめている。任務帰りの雑談中に話が出て、それをうちの駐屯地を通りかかった時に誰かが聞きつけて口出ししたらしい。
そういやそうだよなー、うちの子達に刷り込まれてる知識って、かなり前の物だから…。
和穂が飛び越えた時間は、ショタだったお頭が眼帯おじさんになるくらいの月日。少なく見積もって3~40年くらい。
隊員達は、それよりも前に封印されていた。当然、当時のモノノフにとって主流であった知識しかない訳だ。
…これって、和穂的にはどうなんだろうなぁ。
郷愁を煽られ、帰郷(ここが故郷だけど)の念を募らせるって話だった筈だが…仲間が沢山居て、寂しくなくなったか?
でも実際には何の救いにもなってないよな。何せこの子達も、何年も前の知識でしか言ってない。時間が過ぎた、世代が代わったって事には何の代わりも無いし、むしろ超高齢の老人にしか同意を得られてないよーなもんだ。
それにしたって自分と同じ人がいる、というのはある種の救いを得た気分にはなるか。
桜花達は、うちの子達の事情をあまり深くは知らないからな。未だに古い習慣が変わってない、とんでもない田舎者にでも見えたかもしれない。
ま、だからと言って和穂の心境が変わったとは限らない。元の時代に戻りたい、両親に会いたい、大和がおっさんなんて嫌だという思いも消えはしないだろう。
それをミズチメに付け込まれる可能性は充分にある。今のうちに、ミズチメの拠点となる地下水脈近辺の調査も進めておきたいな。いや、それより先に例の洞窟か…。
なんて考えていたら、カーンカーンと鐘の音が響き渡る。里からではなく、俺達の駐屯地からだ。
結界の端に近い分、鬼が近づかないかの見張りは必須。それが警鐘を鳴らす、しかも乱打すると言う事は。
「伝令、伝令ー! 鬼の群れが接近中! いつもの小規模な襲撃ではない、蜘蛛、鳥、虎、他に見た事もない鬼、小型の鬼の群れが接近中!」
チッ、こんな時にか。囮作戦の準備の為に、戦闘を専門にしてる子達は里に居るんだよ。まさか狙ったのか?
いや、それ以前に囮作戦に対する先制攻撃みたいなタイミングみたいになってるな。
人間が鬼を観察するように、鬼が人間を観察していてもおかしくはないが…。
でもそれだと主力級の桜花達がここに居る時に襲い掛かってくる理由は無い。
いや、そんな事考えてる時じゃなかったな。
全員武器を取れ!
里に近付けさせず、結界を張る巫女にも負担をかけさせず、奴らを叩き返すぞ!
俺も援護に加わる! 多分戦闘中にでかい音と衝撃が来ると思うが、気を取られるな!
怯える気配もなく、応と一斉に声が返る。
「当然我々も戦うぞ。橘花に負担をかけさせるような事はせん。例え気まずい空気になっていようと、それだけは許さん」
「お嬢さん達が戦うのに、ウタカタ一の伊達男が黙ってられる筈もないよな」
「及ばずながら、私もお手伝いいたします」
「当然やるわよ! 私はみんなのお姉ちゃんなんだからね!」
無論、嫌だと言っても当てにさせてもらうよ。
里から援軍が出る前に片付けよう。囮作戦の準備に専念してもらいたいしな。
「ああ。編成はどうする?」
すまんが、まだこいつらを大型相手に乱戦させる気はない。
うちの子達は足止めと雑魚潰しに徹して、大型は桜花達で集中して一匹一匹狩っていく。
「うむ…大軍を相手に数で挑んだところで、圧力に負けるのが落ちだからな。妥当な判断か。君はどうする」
俺は全体の指揮を執りながら、前から試してみたかった事をやってみる。
上手く行けば、戦いが相当楽になるぞ。期待しててくれ。
「期待せずに待っていよう。よし、出るぞ!」
鬼の大群が、結界に迫ってくるのが見える。いつもの小規模な襲撃と違う数。
そして、大型鬼に付き従う小鬼達。明らかに統率が取れている。
それに対し、うちの子達は半分が姿を現して待ち構え、半分は奇襲の為に伏せている。
奇襲の為のカモフラージュは、予め準備していた簡易式の隠れ蓑。これで意外と、鬼相手でも効果がある。
桜花達主力級は、うちの子達より少し後方。敵の足止めに成功したら、その隙間を縫って大型鬼を狙っていく布陣だ。
そして俺はと言うと、近くの丘の上に陣取っている。全体を見渡せる高所であればどこでも良かったのだが、ここだとちょっと高さが足りないかな…。
まぁ、多少は調整でどうにかなるか。
手元には簡易式の矢と、銃形態の神機。
……そして大砲。
うん、大砲だ。大砲なんだ、すまない。
一基だけだが、取扱がとにかく簡単で頑丈なのが特徴だ。爆薬を仕込む・弾を込める・点火だけで使えるからな。
伏線も無く、どっからこんな物取り出したかって? …夢の中から持ってきました。いやマジで。
マイクラ能力を得た時のあの夢で、実験も兼ねて色々作ってたんだ。その幾つかが、 ふくろ の中にしまってあったんだ。…この ふくろ 、まさか夢の中の物まで持ってこれるとは…いや、思い返してみると他にも色々持ってきてたな。大神っぽい夢から、花びらとか。
ま、それは置いといて、とにかく大砲なんだ。モノノフ的には、あまり馴染みのない武器である。
何故って、鬼にはあんまり効果が無いから。それ以前に使いにくいから。
鬼に対して、単なる物理攻撃は効果が薄い。神仏英霊の力を借りて、霊力をや祝福を籠めた武器でなければ、水を刀で斬りつけるような効果しか得られない。
それに、モノノフは基本的に影の組織だった。人知れず鬼と戦い、人の歴史を守る秘密の集団。
そんな集団が、大々的に痕跡が残る上、設置から運用まで多大な人手・出費を必要とする武器なぞ使える筈もない。
そもそも、鬼はいつ何処に現れるか分からないので、小回りの利かない武器は照準を合わせる事すら難しいのだ。
が、今はそれらの条件が全てクリアされている。
オオマガトキで人の世は滅びかけ、モノノフは影から出てきて表立った集団として戦っている。
鬼は里に向かって押し寄せてくるので、そっちに照準を向ければよい。
そして、鬼に物理攻撃は効果が薄い、という点だが……薄いだけで、効果はあるのだ。ただの鉄の塊を猛スピードでぶつけるだけでも、鬼に対してダメージは通る。
更に言えば、祝詞を唱えながらブッ放せば、更なる効果向上が期待できる。
刀や槍、銃だって神仏英霊の力を籠めて鬼に攻撃する事ができるのだ。大砲だけできない理由はない。
まぁ、何はともあれ、だ。
向かってくる鬼の群れのド真ん中に向けてシューッ!
ドォォォン!
超! エキサイティンッ!
おお、イイ感じにヒノマガトリに当たったな。周囲の雑魚鬼も、一緒に吹っ飛んでいた。
流石にこれだけで倒せるほどの威力は無かったが、翼は折れ、倒れてもがいている。
うちの子達は突然の轟音に驚いたようだが、すぐに目の前の敵に向き直った。事前の通達がちゃんと頭に入ってるね。それとも単に、細かい事はいいから目の前の敵を殴り倒せの精神か。
取り敢えず、もう一発撃っておこう。
…お、ヒノマガトリがもう一匹。
既に空へ飛び上がっている。こうなると、流石に大砲じゃ狙えないな…。
こういう時の為の神機である。狙撃! …よし、落下した。丁度、他の大型の上に堕ちたし…纏めて大砲でドーン!
…む、ちょっと外れたか。余波だけでも効果はあったし、良しとしよう。
おっ、右翼に敵が集まって来たな。ここは無理に押し返さずに…。
手元の弓を構え、鏑矢を放つ。
甲高い音を立てて飛ぶ矢に合わせ、右翼の子達が後退する。
ここぞとばかりに押し寄せる鬼の群れに対し、大砲ドーン。
集まったからこそ、範囲攻撃は効果が大きい。
ふっとんだ小鬼達に、ここぞとばかりにトドメを刺して、すぐに大型に向き直る。
…が、主力部隊が大型鬼に一気に攻撃をかけており、既に倒れる寸前だった。
うちの子達による鬼の足止め、浸透してくる小型鬼潰し。
その隙を縫って前線に切り込む主力部隊。
後方から、鬼の後詰めを狙い打つ俺。
思った以上に上手く回る。
主力部隊が、いい仕事してくれてるね。厄介な奴、倒れて隙が出来た奴、すぐに倒せそうな奴を優先して倒し、効率的に鬼の戦力を削っている。
これなら、里から応援が来る前にサクサク終わらせる事ができそうだ。
実際、できたんだけどね。
俺は険しい顔をした大和のお頭と対面しております。
…俺が一体何をした!?
「危険物の不法所持だ。大砲と火薬。何処から持ち込んだ」
…あ”。
「何度も轟音が響いたので、さては鬼の仕業かと動ける者を総動員して援軍に向かわせたのだが……まさか鬼ではなくお前達の仕業とは…」
大砲の音がそこまで響いてたのか…。そりゃ何事かと思うわな。
そんで大挙して援軍に駆け付けたら、バカスカ大砲打ちまくってる俺が居たと。
「当然の事ながら、火薬は戦略物資だ。銃使いにとって必須であり、扱いを間違えれば甚大な被害を産む事は言うまでもない。その為、どの里でも厳重に管理されている。個人で所有が許されるものではない」
…そういやそうだった…。前にも辺り一帯爆裂させて、ガチで怒られた上に没収されたの忘れてた…。
「大砲も見逃せん。たった一基とは言え、その破壊力は無視できん。むしろ、何故そんな物を持っている。長距離を持ち歩けるような物ではない。ウタカタの里に到着してから作ったものだな? 何のために、どうやって作った。お前達に悪意があるとは思いたくない。だが、隠れて所持していた以上、そこに何らかの意図があると考えざるを得ん。つまり…矛先を、ウタカタの里に向けるつもりだった疑いを」
それはない! …無いけど、言葉だけで信じていい内容じゃないわな…。
…参ったな、大失策だった…。
「…俺個人の考えで言えば、今回の件は非常に興味深い。お前の疑いさえ晴れれば、里公認で運営してもいいくらいだ。桜花達から、後方からの支援砲撃がどれ程有効だったか、報告が上がっている。敵の行動を阻害し、それなり以上の傷を与え、連携を乱す。これを使わない手はない」
問題は、俺の疑い…か。
はぁ、大した考えがあった訳じゃないんだけどな…。
「猶更問題だ」
御尤も。
じゃあ一つ一つ説明していくけど、まず火薬について。
そもそも、あの大砲に火薬は使ってない。使ったのはコレだ。
「…この草と茸は?」
火薬草とニトロダケ。読んで字のごとく、こいつを磨り潰して混ぜて火にかけると、火薬同様に爆発する。
だから、火薬じゃなくて『火薬のような物』だな。
「その言い分が通るとでも?」
いや、これは単なる説明。
次に大砲についてだが、これは実は前から持っていた。
俺も色々と特殊なタマフリを使えるんでね。この ふくろ に、生物以外なら何でも入れられるんだ。
滅鬼隊とは別の切っ掛けで体得したんだが……大砲はそれによって出した。
ここに来る前から持ってたんだよ、あの大砲。ずっと忘れてたけど…。
「何でも入れられる、か…。試しにこれを入れてみろ」
刀? はいよ。ほら入った。
もっとでかい物でもいいぞ。この箪笥とか。…ほれ。
「…異様な光景だな…。しかも重さも無くなっているのか…」
正直な話、中に何が入ってるのか、自分でももう把握しきれてないんだよ…。
とりあえず戻して、と…。
さて、大和のお頭。正直な話、俺は疑いを晴らせるだけの根拠を提示できない。
だが、代わりの取引を持ち掛ける事はできる。
「取引とは互いに信頼があってこそだ」
他に取引先が無いのなら、嫌でも取引せざるを得ないだろう?
この火薬草とニトロダケ、増やしてみたくないか?
こいつは普通の植物とはちょっと違って、とにかく育つのが早い。上手くやれば、鬼を相手に爆破祭りが出来るぞ。
「その危険物を量産して、貯めこんだ所に大砲を打ち込む気か?」
冗談にしちゃ性質が悪いね。大体、ウタカタの里に損害を与えたら、首が閉まるのはこっちも同じじゃないか。
それくらい大和のお頭は百も承知だと思うが。
「知ってはいても、それで納得できるかは話は別だ。特にお前は、隠し玉が多いようだしな。何をしでかすか分からんし、何が出てきてもおかしくない」
…実際、大砲と爆薬を出した訳だし、反論できんな。隠し玉だって、そう多い訳じゃないんだが…。
つーか大和のお頭、難癖をつけるのが下手だな。九葉のおっさんなら、もっとねちっこく揚げ足を取ってくるぞ。
「ふっ、奴のようにはいかんな。お前がやった事が見過ごせなかった事も事実だ。火薬の管理はそれ程に重要だ。お前が訳あり部隊の頭領という立場でなければ、見逃す訳にはいかなかった」
…俺が隊を率いてるから見逃す?
「事情が事情だ。自衛の手段は必要だろう。俺が今のお前を完全には信用してないように、お前達が会った事の無かった俺達を無条件に信用できるとも思わん。霊山から逃げのびてきたお前達が、ウタカタが良からぬ事を考えるかも、と思うのも当然の事だ」
…器がデカイと言うか、アカンやろコレって言われるくらいに寛容と言うか…。
そこで歩み寄れるってのは本気で凄いと思いますけどね。
組織の長としてそれでええんか…。
と思いはしても口にしない。だって都合のいい展開だからな。
「何より、俺も火薬は欲しい。お前が証明したその防衛力は、多少の危険を呑み込んででも手を伸ばす価値があると見た」
大砲は一基だけしかないけどね…。
「乱の領域に、壊れた大砲ならいくらでも転がっている。使える部品を継ぎ接ぎしていけば、たたらなら何とか使い物にできるだろう。…とは言え、流石にお咎め無しという訳にはいかん。暫く監視させてもらうぞ」
仕方ありませんな。流石にやらかしちまった自覚はあるし…。
そういう訳で、うちの駐屯地に、那木が常駐する事になりました。
…いや別に文句はないんだけどさ、いいの那木さん? 医者の仕事は?
「那木、で結構ですよ。幸い、今のところ怪我人らしい怪我人は里には居りません。医者が必要とされるのは、むしろ鬼に襲われる可能性が高い貴方達では。……医師として、出来る事は少ないのですけど…」
一理はあるけど。
「私が監視として選ばれたのは、女所帯に入るのを男性の方々が嫌がったのと、あとは知識の問題でございます。自分で言うのも何ですが、ウタカタで一二を争えるくらいに博学だと自負しています。何かおかしな物、気になる物があれば報告するよう命じられているのです」
ああ…説明魔だもんな、那木って…。説明の為に知識を貯めこんでるって訳じゃないんだろうけど、確かに知識は多い。
でも、一番心配しているのはそこではない。妙な物も色々あるけど、見られて特に問題と言う事は………いや、俺が問題になるのを忘れてるだけって可能性はあるかな…。
まぁ、それはともかく。
口には出さないけど………俺が心配しているのは、那木が目にする人間関係だ。……と言うか色ボケさせてしまった子達の惚気とかだ。
…那木って、モノノフ的には結婚適齢期逃しちゃってるんだよなぁ…。しかも許嫁は居たものの、出会う事すらなく死に別れ、それ以来男性とは全く縁がない状態。
日頃からニコニコしているけど、「いける!」と思ったら積極的にアプローチしてくる程度には、諦めていない。と言うか憧れがある。
そんな那木が、俺を中心に形成されているハーレムの中に入ってくる。その一員になれば開き直る事もできるだろーけど、真昼間からそこかしこで下ネタ惚気を垂れ流す色ボケ集団と一緒に生活する。
………やさぐれなければいいんだけど。最悪、襲ってでも…いやいや、那木もMっ子ちゃんの素質は大いにあるけど、無理矢理はいかん。マジで襲うのは、プレイの範疇に含まれない。
大体、那木が欲しているのは男との肉体関係ではなく、寄り添える夫婦や恋人のような関係なんだから、まず心の繋がりありきだ。最初に口説き落とさなければならぬ。
…色ボケに囲まれて、心が荒んできた時が狙い目だな。荒む最大の原因に口説かれても嬉しくないかもしれないが。