とりあえず、ゲームのクライマックスは休日にやるもんですな。
MHWのラスト、まさか2連戦とは…。
初見の古龍相手なら40分程度で終わるからと出勤の1時間くらい前に初めて、初戦は思ったより早く終わったけど、ラスボス戦の途中で撤退する羽目になりました。
うう、あれならまず間違いなく勝ってたのに…。
攻略サイトを極力見ずに進めてた弊害が…。
…って、あれ? ああ、まだ続きあるのね。
堕陽月弐拾肆日目
……やってくれた喃。
やってくれやがった喃。
やらかしちまった喃。
だが俺は悪くない。
異界の領域を一つ、まとめて焦土にしてしまいました。マジヤッベえ…。
俺の仕業だとバレてないからまだいいものの…。
うん、ちょっと頭を冷やそう。
まず、今回の件に関係の無い事を書いて、心を落ち着けます。
橘花から手紙をもらいました。いや俺充てじゃなくて、シノノメの里の雪華充てね。
俺に手紙を渡した時の橘花を見るに、結構な愚痴を詰め込んだっぽい。初対面の相手にネガティブな内容満載の手紙を送るのはどうかと思うが、その辺は単純に経験不足、やった事の無い試みだから書いていい内容とそうでない事の区別がつかなかったんだろう。その結果、聞いてほしい事、同意してほしい事を詰め込んでしまったと。
…ま、雪華は相変わらず千里眼で俺をよく見ているようなので、その辺の事も理解してくれてるようだが。
ちなみに渡されたのは、囮作戦に向かうモノノフ達を見送る帰り。こっそりと渡されました。
複雑な顔しとったなぁ…。桜花との喧嘩が、まだ糸を引いているようだ。
しかし、文を任されたとは言え、すぐにそれを送る事はできない。この里からシノノメまで文を送ろうと思うと、滅鬼隊の件で大混乱している霊山を経由して北上しなければならないのだ。
誰を送るかという問題もある。ウタカタ⇔霊山の交流はあっても、ウタカタ⇔シノノメも、霊山⇔シノノメも確立されてはいないんだよなぁ。
橘花が俺を覗き見しているなら、文を広げて近くでサカってりゃ千里眼で……いややっぱアカンわ。文より情事に目が向くに決まっている。
うーん……いっそ、俺が直接届けに行くか? 俺が居ない状態で暮らしを回す事も覚えさせなきゃいかんし、久々にシノノメの皆にも会いたい。
雪華や練の姉御、風華達も抱きたいし、泥高丸の鬼纏がどう進化してるかも気になる。寒雷の旦那は霊山との関係構築で大忙しだろうし、両さんに至っては何か面白い儲け話を画策している気がしてならない。
霊山に一緒に来てくれた、忍者の皆さんは元気だろうか。伝子さんはいい加減にすね毛を剃ってください。あと山本先生に女装を教わりましょう。
何より、仮にも弟子とした兼一君がどうしているか気になる。自力でシノノメからの道を踏破するとか、滅鬼隊関係の事に霊山で首を突っ込むとか色々言ってたけど……どっかで鬼に負けて野垂れ死にしてねーよな…。
…ふう、少しは落ち着いたぜ。
では本題。異界の領域を焦土にしちゃった件について。
要するに、囮作戦が読まれていたって事なんだろう。具体的に何をしようとしていたか、鬼が理解していたかは怪しいが…何か大きな行動を起こそうとしているようだから、先手を打って、或いは交差法的なタイミングで攻め込んできたのか。
…いかんな。相手の知能知性を低く見積もるのは危険だ。経緯はどうあれ、囮作戦でどういう行動に出るかについては、鬼達は推察していたとみるべきか。
その辺の事はともかくとして、とにかく囮作戦の為に多くのモノノフが出撃した。囮役を担うのは息吹一人だったけど、その露払い、誘い込む場所の準備、上手く釣れた時の為に、準主力級以上はあらかた出払った。例外は、警備といざと言う時の医者要員である那木くらいのもんだ。
俺もうちの子達が心配ではあったけど、作戦自体はそう無理のある物じゃなかったし、きっと無事成功させて戻ってくるだろうと思っていた。
作戦前の交合だっていいカンジだったからね! 天音のレズ輪姦計画も含めて。 ふくろ に入ってた梁型全部使わせたわ…。
勿論俺も参加したぞ。色々遠慮や鬱憤を壊すと言う目的が追加されたとは言え、精神的に安定させるのが一番重要だったからな。
身内に輪姦されて精神が安定する筈がない? 大丈夫、その辺も含めて俺の命令に従う事で、至福を感じる子だから。
その後、ご褒美としてしっかり抱いたし、囮作戦に臨む天音はスーパーハイテンション状態だった。
…統括役がそれってヤバくね? という疑問は置いといて、とにかく天音を含む参加者達が出発していった訳だ。
そうなると、今の俺に出来る事は何もなくなってしまう。勝利を祈って水垢離という考えも浮かんだが、生憎水を被った程度で冷えるような体でも季節でもない。
何かトラブルがあった時の為の後詰めや、医者の準備もウタカタで済まされている。
仕方ないので普段通りの仕事に戻り、時子をサポート役としてあれやこれやの書類仕事を進めること数時間。
今、あの子達は何をしているか……とぼんやり考えながら、時子が作った昼飯を食っている時だった。
ふと違和感を感じた。いやな予感。狩りの中、何度も感じた慣れ親しんだ感覚。
『何かが来る』。
昼飯を放り出し、突然の事に目を白黒させ、「い、今から伽ですか!?」と混乱する時子を小脇に抱えて、屋外へ飛び出した。
目に入ったのは、今正に執務室に向かってすっ飛んでくる大きな岩と。
内側から大穴が開けられた、隊員達の住居。
とりあえず迫ってくる岩は弾き飛ばして、状況を理解して臨戦態勢になった時子を放す。
住居からは阿鼻叫喚の叫び声が響いている。無理もない。
神機を片手に現場に突っ込もうとしたが、事の元凶は長居する気はないようだった。一際大きな衝突音が響いたかと思うと、地面に盛り上がった線が走っていく。何があったのか考えるまでもない。何度も見慣れたアレは、大型の鬼やモンスターが地面を潜って移動していく時の痕跡だ。
俺達に気付かれずに接近し、多大な損害を与え、迎撃の為の戦力が出てきたと思いきや躊躇いなく退く。 どうやら今回の襲撃者は、えらくクレバーかつスマートなようだ。
いっそ感心すらしかけたが、そんな事を言ってる場合じゃない。
「襲撃ですか!? 被害は…」
家が破損、皆はこれから確かめる、俺は無事。この時間帯だと、家の中で飯食ってた奴も多い筈だ。
ウタカタの医者達に応援を要請しろ! 俺はあの中に居る連中の救護に行ってくる!
「いえ、救助は私が向かいます。若様が里へお知らせください!」
む? …確かに、移動速度で言えば俺の方が早いか。わかった、こっちは任せる。
無事な奴が居たら、救助の手伝いだけじゃなくて、さっきの鬼が戻ってこないか見張りを立たせておけ。
んじゃ、こっちは頼むぞ!
と言う訳で、ウタカタの医療班を急遽引っ張ってきました。
引っ張って来たはいいんだが………那木だったのは失敗だったかなぁ。トラウマ克服できてないから、治療らしい治療が出来なかったんだ。だったら何で医療班に組み込まれていたって話だが…大和のお頭も、トラウマ克服を期待していたんだろうか。
治療ができなくても診察はできる。怪我人達の状態を見せ、危険度・緊急度別に分類してもらった。後から駆けつけてきた他の医療班に、治療自体はお任せした。本人は忸怩たるものがあったようだが…慰める事もできんしな…。
まぁ、手術が出来ないから代わりにタマフリを使った治療を教えたら、えらいびっくりしてたけど。前のループでもそうだったっけ。タマフリは戦いのときに使うものって認識で、日常では基本的に使わないのがモノノフの考え方だ。…うちの子達は、土木建築から風呂沸かしまで、便利に使いまくってるけど。
とにもかくにも、うちの子達には怪我人多数。軽症の者も居れば、重症者も居る。幸いにして命に別状こそなかったものの、暫く安静にしておかなければならないのが何人か。
囮作戦に対するカウンターとして奇襲をかけてきたとか、色々気になる事はあるが…。
俺のミスだ…なんて愚か者。気が付いてみれば、今でなくてもこうなる事は自明の理。
結界の端に近く、いつ鬼が襲撃してくるか分からない場所。自分達でも防御を固めたつもりだったが、地下に対する防備を忘れていたとは! 地面に潜って移動、奇襲はモンスターの中ではオーソドックスな攻撃方法。それを忘れるとはどうかしている。
鬼達との闘いの経験を積ませる為に、あえて結界近くに陣取る。
纏まって住める場所がなかったから、半ば口実としてそんな事を言っていたが…口実でもそんな事言うなら、これくらいの事は予見しろってんだ…。
自己嫌悪と情けなさで一杯になった頭で何とか救助活動を終え、被害状況を確認する。
軽症者14名、重傷者7名。重傷者のうち4名は、襲ってきた鬼に直接攻撃された者。残り3名は流れ弾に当たったり、鬼が襲ってきた衝撃で屋根から転げ落ちたりした子達だ。
幸いにして死人は出なかったが、それも普通の人よりも頑丈に調整された滅鬼隊だからの話。咄嗟に危機に反応し、致命傷を何とか避けられた。強化された内臓や骨のおかげで、急所に当たっても深い傷にならなかった。
負傷者…元凶の姿を見た者達の証言を纏めると、どうやら鬼は地中深くに姿を隠して近付いてきて、滅鬼隊住居の真下から奇襲をかましたらしい。
一番広い床の間に集まってみなであれこれやっていたら、地面が不自然に震えだし、なんだなんだ地震か、念のために家の外に出てようか、部屋で寝てる奴らにも声をかけようと、それぞれ動き出した。
そして、突如床をブチ破って巨体が出現。思わず動きが止まったところに、岩の投擲、体当たり、咆哮、よく分からないブレスっぽい何かで大暴れ。
現場に居た子達を吹っ飛ばし手動けなくしたら、家屋倒壊を狙ったのか、柱を狙って壊していく始末。
そして、俺が飛び出した時には家屋の反対側に穴をブチ開け、地面に急速潜行して離脱。
……特徴を聞くに、ツチカヅキだと思うが……微妙に一致せんな? あいつ、ブレスなんぞ吐いたっけ…。地面に潜って移動するにしても、あんな風に痕跡が線状に残るような事はなく、穴を掘って進むんじゃなくて地面を泳ぐ感じだったと思うが…。
また妙な進化変化した鬼っぽいな…。ツチカヅキにガララアジャラでもくっついたか?
疑問は尽きないが、それは後回しだ。負傷者は勿論、動ける子達を避難させる。家が大きくぶっ壊れているんだから、直すまで他所に…里にお世話にならなければ。尤も、家を直したとしても、同じように襲われる危険がある場所に戻ってくるかは怪しいが…。
ちなみにかなり派手に壊された家ですが、倒壊する事はありませんでした。不思議パゥワーで空中に固定されたままです。土台となっている柱や壁を8割方穴だらけにされたのに、小揺るぎもしていません。これには鬼も困惑。
うぅむ……家を直すなら、同じ轍を踏まないように地下に対する防衛力も必要と考えていたが……いっそ空中要塞やってしまうか? いつぞやの夢でも作ったし…。
とりあえず、家が直り、負傷者が動けるようになるまでは、皆をウタカタの里で引き受けてもらえる事になった。
今回の襲撃、もし俺達が襲われていなかったら、里の近くまで入り込まれたかもしれない。そう考えると、滅鬼隊は囮の役を引き受けた事になる。ならそれを支援するのもウタカタの役目…という大和のお頭の論法だ。
まぁ、それが無くてもお人好し揃いのウタカタだ。永住させるなら考えもしようが、一時的な支援とあれば拒む者も居なかった。
さて。怪我人は診療所、それ以外の者は各々世話になる家に向かって。
囮作戦が終わってみなが戻ってきた時の為、伝言として立て札を残し。
家の建て直し、補強は明日以降に行うとして。
うちの子達を傷付けた上に、俺が自ずから作った家を半壊させといて、まさか無事逃げられると思ってはおるまいな!?
地面に深く潜って逃げた? だから何?
どうやって追いかけるか? 鬼の目鷹の目を使えば小さな痕跡でも追っていけるわ! その先に居たのが首謀者じゃなくても、鬼ならヌッコロして構わんしな!
鬼が逆に囮作戦やって、俺を釣り出そうとしているのかもしれない? いいいじゃないか、向かった先には八つ当たり相手が一杯居るぞ!
下手人見つけたら嬲り殺しだ! 下手人じゃなくても道中に居たら塵だ! これより我は塵魔と化す。片角のマ王バリの怒りを見るがよいわぁ!
…正直、覚えてるのはこの辺までなんだけどね。ふと我に返った時にはメッチャスッキリした…新品のパンツすら履かずに億ションの屋上で我様笑いしながら初日の出を見ているよーな気分だったから、相当暴れたんだろう。
それこそ、異界が一つ丸ごと荒野になってしまうくらいに。
うちの子達の今後の生活が、とりあえずでも確保されるまでは…と思って怒りを抑え込んでたけど、その反動もあったんだろう。
誰にも見つからずに異界に出て、痕跡を辿って古の領域まで追跡。その辺で感情を抑えるのも辞めてアラガミ化。そこから先は暴れに暴れた…らしい。
薄っすらと、ちょっとだけ残っている記憶によると、襲撃犯らしきツチカヅキ…の亜種、か?…を端っこからちょっとずつ切り刻んで神機に食わせ、襲い掛かって来たのか待ち伏せていたのか分からないが大挙してきた鬼を緑色の爆発で吹き飛ばし、首謀者と思われる鬼の四肢を切り落として芋虫状態のまま引きずり回し…。
気が付けば、動く者は一つとして居なくなり、砂まで無くなった…蒸発したっぽい…古の領域で、俺は一人で突っ立っていた。目の前には、最後に残った鬼が消滅していっている。…痕跡から見て、鬼葬を使って再生できないよう全身を念入りに潰していったようだ。
完全に更地となり、マイクラ的に言えば整地神が通った後みたいな状況。丁度、太陽が昇るところが見えたので方角は分かったが、あれがなければどっちに行けばいいかすら分からなかったろう。
ぶっ飛ばすだけぶっ飛ばしてスッキリしたはいいが、流石にこりゃヤバいと気付いて、こそこそ里に戻ってきた。
勝手に異界に殴り込みをかけていた事実がバレないように、いかにも壊れた家を修理してましたよ…という感じで朝まで過ごしていました。
はー、しかしこりゃ囮作戦に行った皆が帰ってきたら阿鼻叫喚だなぁ。明日奈の城と化していた台所も、もう粉々…。帰ってきたら発狂するんじゃないか?
作戦が成功するにせよ失敗するにせよ、無事に戻ってきたら家が無くなっていた…なんてのはかなりのショックだろう。今のうちに、体裁だけでも整えておきたい。
…これから騒がしくなるだろうしな…。勢いに任せて異界の消滅。これ絶対俺が疑われるよなぁ…。他の人達ならともかく、大和のお頭には俺が異界浄化の術を持ってるって知られてる。想定外の方法で…力技で異界を消滅させる。無茶な話だ。同じ事をもう一回やれと言われても、出来る気がしない。
…細かいことは後回しでいいや。今はこの家の補強を続けよう。
やや現実逃避気味に家の修理をしていると、午前8時くらいかな?
日が昇り、「そろそろ出勤時間だ…」って憂鬱になる時間帯。俺は出勤しなかったけど、大和のお頭と、護衛の那木がやってきた。
ああ、おはようさん。
「おはようございます……ご無事で何よりです。肝心の時に立ち会う事ができず、申し訳ございません」
いやいや、那木が謝る筋じゃないでしょ? 鬼はいつ襲ってくるか分からないから、居合わせるかどうかは完全に運次第で、那木がここを離れていたのは囮作戦準備の為だし。
そもそも怪我をしたうちの子達を診察してくれたじゃないの。
「うむ、そうだな。何でも自分のせいだと思うときりがないぞ。…ところでお前、一つ聞きたいのだが」
? 何よ、大和のお頭。ここの再建なら、当面俺一人でやれるよ。
「そうではない。昨晩はどこに行っていた?」
…ど、どこって…(汗)ここでずっと片付けと、鬼が戻ってこないか見張りしてましたが。
「そうか。他の皆は里の家で預かったが、お前一人がどこに行ったのか分からなかったのでな。また妙な事でもやっているんじゃないかと思った」
はははははははは
いやその、確かに連絡もなしにここで作業しっぱなしなのは悪かったと思いますが。
「…お前が居ない事に気付いて、ここの様子を見に行かせたのだがな」
野糞してて入違ったんじゃないすかね。難産だったし。
「かもしれんな。ここの片付け具合を見る限り、徹夜で作業していたのは本当のようだが」
でしょー?
…うん、徹夜で片づけしてたね、鬼と異界をね。
散らかった家の欠片や瓦礫は、とりあえず ふくろ に放り込んでいます。偽装工作として掃除しといてよかった…。
それでも疑いの目を向ける辺り、大和のお頭も、俺というナマモノを分かっていらっしゃる。
「ふむ…お前はこれからどうするつもりだ? これからも、ここに住まう気か」
…俺個人はそれでいい。でも、他の子達をどうするか…。
今回の襲撃を許してしまったのは、俺の失敗だ。鬼を甘く見て、防備を固めているから抜かれる事はないと思い込んで、地中からの攻撃の可能性を見落とした。
実戦経験を積ませるのに丁度いいと嘯いておいてこの様だ。
同じ轍を踏まないよう策は練る。だが、鬼達の行動は未知数だ。これまでの統計によって予測する事はできても、未知の能力で出し抜かれる時は必ず来る。
その危険に、あの子達を付き合わせるのか?
「恐らく、お前が何といおうと、彼女達はお前と行動を共にするぞ。経緯はどうあれ、彼女達の主は間違いなくお前だ。お前一人を危険な場所に留まらせるくらいなら、意味が無いとしても寄り添おうとするだろう」
厄介な事に、それが彼女達にとって精神的に一番安定する結論なんだよな…。本人が希望する場合のみ、この場所に住むって結論は、従来通り全員ここに居るって結論するのに等しい。
逆に、全員離れて里で暮らせと言うのは…。
「…むしろ、お前も里で暮らすという選択肢は無いのか。建築技術もこれだけあるのだから、里の近くの土地を切り開いて住居を作る事くらいできるだろう」
大和のお頭、あんた俺を里に入れて、平穏な暮らしが維持できると思う? 適度な距離って必要よ?
火薬、大砲、特殊なタマフリ、晒してないけど手札はまだ山ほどあるぞ。
「…那木」
「ええと、その……短い期間ですが、ここの方々と暮らしを共にしたのですが………わ、悪い方々ではないのですよ。ですけど、その、悪気無く常識外れな行動をする事が多く…。このお方はその筆頭で…。火薬や毒など、危険物の類は見つけられませんでした」
「悪気が無いのか怪しいものだな。見つかったら没収されそうな物を率先して隠している辺りが特に」
悪気が無いから厄介なんじゃないか! 自分で言う程に!
と言う訳で、良くも悪くも俺は里から少し離れた場所に居た方がいい。いつ何をやらかすか分からん。そもそも組織に向いてないんだよ俺…。なんだかんだ規律や指針があっても、結局自分の衝動を優先するから。
(あと、24時間ズコバコする性活に慣れ切ってて、普通の暮らしに馴染めそうにない。下手するとウタカタ内の風紀が酷い事になる)
「ふむ…結局のところ、今まで通りと言う事か、こちらとしても助かる部分はあるが…。 危険物と距離を置けるのは重要だ」
「あ、あの…お頭、もう少し何といいますか柔らかく……良い方なのは間違いありませんので」
「お前にかかれば、大抵の人間は善人になってしまうだろう。こやつが言う通り、適度な距離は重要だ。…しかし状況が状況だ。支援は行うし、こちらで預かっている隊員達には、一時的にウタカタの指揮下に入ってもらう」
俺の直属じゃなくて、そっちに部下として出向しているって状態ね。出稼ぎみたいなもんか。まぁ、援助するにしてもそれなりの対価・返礼は必要だわな。
あの子達にとっても、いい経験になるだろう。身内ばかりの場所で暮らしてちゃ、社交性も育たない。
了解、俺は暫くこっちの建て直しに専念させてもらうよ。
「人手を出そうか?」
気持ちは有難いが、仮にも作戦中なんだから、後回しにするべきだろう。
偶然なのかもしれないが、鬼達は囮作戦の直前と最中に奇襲をかけてきた。二度ある事は三度ある、だ。
ここで人を集めて土木作業やってたら、またここぞとばかりに襲ってくる気がする。
「むぅ…。確かにその流れは否定できんな。やるなら罠でも仕掛けながら作業するべきか。すぐにそれを出来るだけの資材は用意できん。……やれやれ、問題ばかりが増えていくものだ。以前に計画した練武戦すら、全く見通しが立ってないと言うのに」
問題ってのは一つ一つ片付ける事しかできないのに、どんどん友達を呼び込んで子供を産んで分裂増殖するからなぁ。しかも最悪のタイミングで、複数同時に噴き出すのが当たり前。
そして解決する為の策を用意したら、そこからも新しい問題が産まれ出る。あーやだやだ。脳みそ空っぽにして(腰振って)生きていきたいわ。
何だって俺がこんなしち面倒くさい事ばかりの立場やってんだろうか…。
その後、大和のお頭と那木は、暫く打ち合わせをして戻っていった。
あれれー? 消し飛んだ異界の事について、何もお話が無かったぞ?
ひょっとして…これ、俺セーフ? 許された? 幸せになってもいいの?
んなわきゃーない。俺知ってるよ、やらかしは絶対に隠蔽できない。どれだけ隠して、忘れ去ろうとしたとしても、重石の下からミミズのように這い出してくる。
やらかしじゃなくても、やった事についての言及は必ずある。褒めるにせよ叱責されるにせよ、リアクションがないのはおかしい。
これは一体…? 何となく周囲を見回し、山を見た時、答えはあっさりと出た。
そうか、まだ異界消失の事を誰も知らないんだ。消し飛ばした異界は、あの山の向こうの山の向こうの更に向こうにある。特に地名ないので、裏裏裏山と呼ぼう。茸共同組合とかありそうだな。
あの辺の異界は、俺は平然と抜けていけるけど、瘴気無効装備でもなければ現状では近付く事さえできない場所にある。安全な、比較的瘴気の薄いルートを見つけ出さなければ、調査に入る事すらできないのだ。
そんな所にある異界が突然消えたって、そりゃ感知できる筈もない。
つまり、俺許された。セーフ! 幸福は義務です!
暫くは進軍できるルートだって確立されないだろうし、判明するのは当分先! それだけ時間があれば、もう一回こっそり出発して、証拠になる物を隠滅するのは難しくない。状況証拠だって、時間が経てば経つ程揃えづらくなる。つまり、俺がやったと言う事は発覚しない。異界に呑まれていた場所が、何故か荒野になって瘴気も無くなっていたという謎現象だけが残る。
やらかしは隠蔽できない? ミミズのように這い出して来る? 敢えて言おう、知りませんな!と!
よし、そうと決まれば今夜にでももう一回でかけて……いや、連日は流石にまずいか。暫く猶予はある筈だし、ほとぼりが醒めた辺りで行こう。どっちにしろ、今のあそこには瓦礫すら残ってない。行ったところで、俺がやったという証拠に繋がる物があるか怪しいものだ。急いで対処する必要はない(慢心)
いやぁ、先延ばしにしただけとは言え、取り敢えずの問題に目途が立つと一気に気が楽になったわー。大和のお頭もこんだけ短時間で連続でやらかしたら流石に容赦してくれそうにないし。あの人にまた叱られるのが、一番精神的に堪える…子供みたいな言い分だけど、実際叱責はキツい。
さて、そうと決まれば、はやいところこの状況をどうにかしてしまいますか。どう立て直すにせよ、片付けだけでも終わらせておかないと。