※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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現在、以前から要望があった登場人物紹介を作成中です。
1話からやっていくといつ出来上がるか分からないので、とりあえず討鬼伝最終話から作っていきます。
ある程度出来上がったら、まとめとして別途投稿する事になると思います。

しかしここでちょっと悩みが。
例えば明日奈や神夜ですが、登場したのはシノノメの里。
そこからなんやかやあって霊山を経由し、ウタカタまでやってきている訳ですが、どう紹介したものか。
会った時の事だけ書いておくべきか、備忘録も兼ねてその後どういう関係になったのかも書いておくべきか…。


第493話

 

堕陽月参拾肆日目

 

 

 ミズチメ発見の報せが来た。橘花に術を掛けていると思われる奴だ。

 発見された場所は、例の洞窟の一番奥。恐らくそこに居るだろう、という予想は当たった訳だが……一つ気になるのは、見張っていたモノノフも気付かない内に出現していた事。…逆に見張りが奇襲を喰らわなかったのは幸運だな。

 水脈から飛び出してきた訳でもなく、術で転移してきた訳でもなく、いつの間にかそこに居たらしい。

 

 …気になるなぁ。俺が調べた時も、どうやってあの洞窟から移動したのか分からなかったし…。まだ何か秘密がありそうな感じ。

 

 

 とは言え、どっちにしろこのミズチメは速攻で叩き斬らなきゃならん。

 橘花を起こして結界を張らないと、頻発する鬼の攻撃に徐々に押し込まれてしまう。

 

 

 何よりも、桜花が今にも殴り込みをかけそうだ。一人で行ったら橘花を嫁に行けない体にする宣言のおかげで歯止めが掛かっているものの、出撃許可を今か今かと待っている。

 そして、そんな桜花と一緒にミズチメ討伐に向かうのは、富獄の兄貴、権佐、俺。

 人選の理由は…富獄の兄貴は、単純に強いし、里の防衛戦よりも標的を倒しに行く方が実力を発揮できるから。

 

 そして俺が行くのは、桜花からの強い要請である。…言うまでもないだろうけど、自分が居ない間に橘花にちょっかいを出すのではないかと疑っているようだ。

 そこまで疑うか…と言いたい所だが、疑っているから単騎特攻してないんだよなぁ。

 

 そして権佐は俺の護衛役。…鬼に対してではなく、桜花がガチギレした場合に備えているのは言うまでもない。

 つくづく人間とは、状況を選ばず同族を相手に争う種族であるな。

 誰が来るのかでちょっと揉めたが、洞窟の中で戦うと言う事で土中を進む事ができる土遁使いである事と、標的(桜花含む)を目の前にしても先走らない冷静さ(ただし戦が始まるとヒャッハーする)を買われて権佐と言う事になった。

 

 

 

 

 で。

 洞窟までやってきて、見張り番だったモノノフ達を撤退させて。

 

 

「おお、居る居る。でっかいミズチメですな」

 

「確かに、そこらのミズチメより一回りでけぇな…。それだけ強力って事か? へっ、面白ぇ」

 

「…………」

 

 

 桜花、殺気を抑えろ。気付かれたら逃げられる可能性があがる。奇襲の好機を待つんだ。このまま一眠りしてくれると最高なんだが。

 …にしても…妙だな。

 

 

「何がだ」

 

 

 あのミズチメ、満腹っぽいぞ。見ろよ、あの「飯も食ったし一眠りするかぁ」って緩んだ顔。

 体がでかけりゃ、それだけ喰わなきゃならん餌だって多くなる筈なんだが…。

 橘花…はまだ衰弱死するまで余裕があるし…。桜花、最近里で百日夢にかかったり、行方不明者が出たりって事はあったか?

 

 

「いや、それらしい報せは全くない。…鬼同志で共食いでもしたのではないか?」

 

「それにしちゃ、奴の体に傷跡がねえな。図体のでかさからして、抵抗する力のない小鬼だけを喰って満腹になった訳じゃねえだろう。ミタマか、それに近いものを喰っているのは間違いない」

 

「……確かに疑問は残るが、それは今考える事ではないだろう。目の前に橘花に呪いをかけた鬼が居て、我々はモノノフだ。奴を斬ればそれでいい。倒しさえすれば、奴に喰われた魂も解放されるだろう」

 

「乱暴な意見だが、確かに。奴に喰われて消化されてしまった魂は…もうどうにもなりませんな。仇を討ってやるのがせめてもの手向けでしょう。……若、丁度御誂え向きに、奴さんが眠るようです」

 

 

 みたいだな。

 さて、眠ったところで爆弾目覚まし…はここだとまずいな。あんまり頑丈な洞窟じゃないし。

 …鬼千切打てる奴、誰か居る?

 

 

「俺は行けるぜ」

 

「私もだ」

 

「同じく」

 

 

 俺も。鬼の手も準備できてる。

 じゃあ、一気に潰すんじゃなくて、順番に使って何もさせずに一気に倒しますか。

 順番は…。

 

 

「俺、お前の鬼千切、権佐、お前の鬼の手、桜花の順がいいだろうな。潰すのは右足、左足、殻、どっちでもいいから腕、止めに桜花が首を狙え」

 

「…富獄、感謝する」

 

「気に入らねえ奴を直接潰したいってのは、わからねえでもないからな。やり返すんなら派手にやれ」

 

「異存はありませんな。順当なやり方でしょう」

 

 

 ニィ、と好戦的な笑みを浮かべながらも、闘気や気配はまるで漏れない。この辺は流石の富獄の兄貴、と言った塩梅だ。正直、武術という分野では俺の数段先を行っていると思う。

 …気に入らない奴を、と言うとダイマエンの事か。…そっちも単騎特攻しないように、何らかの策を講じておく必要があるな。

 権佐も権佐で、好戦的な笑みを向けるのが富獄の兄貴なのはどうしたもんか…。強い相手との闘いに飢えてるなぁ。

 

 まぁ、そんな先の事は置いといて…。

 

 

 

 

 みっずちーめさん! あっそびーましょっ! お前使い捨てオモチャな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 …リンチにもならなかった。桜花が一撃見舞うまでミズチメの生命力が保ったのが、奇跡とさえ思えるくらいに。

 

 

 

 

 

 

 図体はでかかったが、普通のミズチメを少々割り増しした程度の印象しか残ってない。何もさせなかったからでもあるんだろうけど、そろそろいつもの妙な進化を遂げた鬼が出てくる頃だろうと思っていた。肩透かしもいいところだ。

 桜花も「まだまだ切り刻み足りぬ」とばかりの憤慨した表情を隠そうともしない。

 

 まー単騎特攻しようとしたのを無理矢理押しとどめて、我慢に我慢を重ねさせた挙句に、このあっけない結末だもの。カタルシスも何もないのは同意する。

 が、謝りはしない。単騎特攻しようとする方が阿保なんだから。そんなんじゃうちの子達を差し置いて、頭滅鬼隊の称号が冠されてしまうぞ。

 

 さて、ミズチメ討伐については話はここまでだ。桜花としては、一刻も早く里に戻り、橘花が目を覚ましたかどうかを確認したかったようだが、その前にもう一つ問題が発見された。

 予想通りミズチメは何人もの人間の魂を取り込んでいたらしく、倒すと同時にそれが解放された。ゲーム的に言えば、富獄の兄貴のエピソードで、ダイマエンから解放された魂が昇って行くような、あんな感じだ。

 それを眺めて権佐なんかは「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。迷わず成仏しろよ」なんて拝んでいたのだが、すぐに異変は明らかになった。

 

 飛び回る魂達は、天に向かって昇っていくような事は無く、何故か一斉に洞窟の奥の壁に向かっていったのだ。

 物理法則なんて関係ありませんとばかりに、抵抗もなく壁に吸い込まれていく魂達。これは一体どうした事か。

 

 

「…あの壁に何かあるのか? 解放された魂を更に吸い寄せてくうような鬼が、向こうに居るとか」

 

 

 いや、ここに来た時にミズチメの痕跡があの辺にあったから調べてたんだけど、何もない壁だった。

 しかし、今のを見るとそれもちょっと自信がなくなってくるな…。

 

 

「…まだ鬼が居るとしたら、さっきのミズチメと絡んで呪いをかけるような鬼なのかもしれん。橘花は気になるが、まずはこちらを調べた方がいいだろう」

 

 

 そうだな。幸い周辺の安全は確保できているし、活動限界までまだ余裕はある。調べていくだけの価値はあるか。

 

 

 

 

 …なんて事を考えていたら、鬼より厄介な物を発見してしまった。いや俺が厄介なんて言っちゃいけないんだけどさ! うちの子達は厄介だけどみんな可愛い(色んな意味で)子ばっかりなんだけどさ!

 不満と言うか叫びたい事はただ一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ増えるのかよ!?

 

 

 

 

 …失礼した、日記でも取り乱してしまったようだ。

 問題の壁を調べ始めて約30秒。すぐに違和感を感じた。叩いた時の音が違う。触った時の感触が違う。壁から何か突き出てる。あと瘴気が壁から滲み出てくる。そもそもからして、なんか掘り返して埋めた感がある。

 …なぁ権佐、土遁使いとして見た所、この壁は。

 

 

「どうもこうも、確実に何か埋まってますな。それはもう素人目にも」

 

「だなぁ。ここまであからさまだと、お前の目が節穴で見落としたって事はまず無くなるな」

 

 

 言い方はともかく、壁を叩いただけでぼろぼろ崩れ落ちるくらいだもんな。

 明らかに、俺が調べた時とは土の質が違う。

 

 

「どうこう言っていても仕方ないだろう。中身を見てみない事には何も分かるまい。さっさと掘り返すぞ」

 

 

 はいよ、桜花。…刀の鞘を鈍器に使い、ガンガン壁を叩く桜花。それだけで壁が…と言うか積まれていた土が崩れ落ちてくる。

 程なくして、土の下から隠れていたものが掘り出された。

 

 扉だ。壁から突き出ていた物は、どうやら扉の取っ手だったらしい。とは言え、無事な物ではない。かなり派手に壊されている。さっきのミズチメが壊したのか。

 扉の向こうには、明かに物理法則を無視して………なんかこう、建物があった。

 

 と言うか、見覚えのある建物だ。具体的には、シノノメの里で何度か目にした。

 

 

 

 これは…塔だ。

 

 

「塔? …確かに、大きな建造物ではあるようだが…何故塔だと?」

 

「若、知ってるんで?」

 

 

 ああ。…そうか、ミズチメが発見できなかった理由はこれか。

 しかも、さっき解放されたミタマがこの中に入って行ったとなると…。

 

 

「一人で納得してねぇで、さっさと説明しろ。さもなきゃすぐに進むかだ」

 

 

 いや進むのはまずい。少なくとも報告の為、一人はここに残す必要がある。一度入ったら、暫く出られない可能性があるんだ。

 

 …この塔は…いやこれは塔じゃないのかもしれないけど、とにかくこの建造物は…由来は不明だが、現れては消える謎の塔だ。

 シノノメの里で見た時は、主に異界の奥に出現し、人知れず消える。何かする訳じゃなかったが、消える時には中に入った人間ごと消える…多分、鬼も同じように消える。そして次に出現するまでの間、そいつらの時間は止まるんだ。

 …単純に、時間を超えて移動していると考えた方が分かりやすいかな。

 現にこの建物に入って行った人は、10年近い時を経てようやく帰還してきた。その人が言うには、塔に入って一週間程度しか経っていないと思っていたんだそうな。

 

 

「とんだ竜宮城だな…鬼の罠……にしては、この塔は人間用の大きさだな。ここから見える限りでは、置かれている物も人間が使う道具に見える…。だが、こうして漏れ出てくる瘴気の量は尋常ではない。これがずっとここにあったとするなら、近い内に異界に侵食……ああ、そうか。ずっとあったのではなく、『時々あった』のか…おかしな言い方だ」

 

「それで、こいつはどれくらいの間、どれくらいの頻度で出現しているんだ?」

 

 

 わからん。俺が見た時は、数瞬で消える事もあったし、暫くそのままだった事もある。

 

 

「じゃあ、中に何があるか分からないんですかね。若の言い方だと、その塔に入って出てきた人がいるんでしょう?

 

 

 ああ、それは………あー…あぁ………うん、そこにあったのと同じ施設だとすると…率直に言って厄ネタだな…。

 つーか、さっきの魂がここで、ここがアレ関連の施設だとすると…。

 

 

「……って、よくよく考えたら悠長にしてる場合じゃねえだろうが! さっきの魂が入って行ったって事は、中に人がいるって事だぞ!?」

 

「…確かに! くっ、こうなれば、私だけでも進んで消える前に戻れば」

 

 

 単騎特攻やめい橘花に手ぇ出すぞ!

 行くなら俺が行く。

 

 

「いやいやいや若こそ待ってくださいよ。若が消えたら俺達はどうするんですか、これだけ世話になった恩すら全く返せてないのに。そういう危険な事に行くなら、俺が行きますよ。護衛なんですから」

 

「……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛面倒くせぇ! 考えてる暇があったら俺は行くぜ! ついてくるなら来い!」

 

 

 今度はあんたが特攻かい! 確かに次に現れるのがいつになるか分からないから、中の人を助ける為なら正解だけど!

 でも多分意味ないんだよなぁ…。

 

 ああくそ、こうなっちまったのなら仕方ない。権佐、俺達も行くぞ。ただし桜花、お前は残れ。

 万一この中に入ったまま消えてしまったら、報告する必要がある。橘花を守るんだろ、戻って橘花が目を覚ましたかも確認しろ。

 

 行くぞ!

 

 

「おい待て私は」

 

「お先!」

 

 

 桜花が何か言っているが、聞いている暇はない。

 富獄の兄貴の足跡を追い、塔の中に入ると尋常ではない瘴気が出迎えた。…この瘴気の濃さ…ひょっとして、瘴気を生み出す元凶がこの塔の中にあるのか?

 …どっちにしろ、後からもう一度調べる必要があるか。異界浄化に必要な物があるのかもしれないんだから。

 

 しかしそれはそれとして、この瘴気濃度は常人にはきつい。俺もあまり長居したいとは思わないし、富獄の兄貴や権佐だって長くは保たないだろう。

 余計な事は考えず、魂の元を探して、パパっと戻るぞ。

 

 権佐、戦闘が発生したら速攻で終わらせるぞ。

 

 

「承った、若」

 

 

 さて、どうなるか…。

 

 

 

 

 

 

 富獄の兄貴は真っ直ぐ進んでいったようだ。扉が開きっぱなしになっているから簡単に分かる。

 階段を二つ昇り、扉を5つ。最後の二つは大きな扉だった

 大きな一つ目の扉を抜けるとそこは大広間で、鬼の残骸らしきものが転がっている。

 

 富獄の兄貴がやった…んじゃないな、多分。この傷跡はミズチメの術によるものだ。それに、富獄の兄貴が突入して、俺達が後を追ってここに来るまで5分も経ってない。流石にそれだけの時間で瞬殺するのは難しい。

 恐らく縄張り争いで敗れたんだろう。

 その隣には、瘴気を吐き出す黒い穴。…やっぱりここに瘴気の元があったのか。

 

 考察は置いといて、その先の大きな二つ目の扉を開いたところで、富獄の兄貴は呆然としていた。

 まぁそうだろうな。俺だって最初は目を疑……いや、明日奈と神夜に目を塞がれてそれどころじゃなかったっけ。

 

 

 

 

 大広間の扉の先にあったのは、もう一つの大広間。

 

 

 ただしそこには広々とした空間など無く、いくつもの円筒が立ち並んでいる。その中には、何人もの男女が意識のないまま浮いていた。

 すごく見覚えのある光景だ。あの時と違い、服を着ているようだが。

 

 

「…若、これは…」

 

 

 呆然としている富獄の兄貴を揺すって我に返らせながら、嫌悪感を滲ませる声で権佐は問いかける。記憶や意識が無くても、自分達がこれに封印されていた事を覚えているんだろうか。

 お察しの通り、滅鬼隊だな。…俺の知らない子達ばかり…いや、よく似ている子は何人かいるな。

 

 シノノメの里でも、塔の中にあったのは滅鬼隊に関する資料だったらしい。もう少し奥に行けば、ここと同様に封印されていた子達が居たのかもしれない。

 ともかく。

 

 

 富獄の兄貴、一旦ここから離れよう。自覚は無いが塔が消えて、もう2~3日経過しているかもしれない。

 今ここで、この子達にしてやれる事は何も無い。

 心配しなくてもこの円筒の中なら、これだけの瘴気の中でも影響は受けない。むしろ無理に連れ出す方が危険だ。

 魂が体に戻ったって事は、この子達はまだ生きている。塔が消えている間は時間も流れないから、制限時間の心配も少ない。

 

 

「…そうか。無駄足になっちまったか。すまねえな、巻き込んだ」

 

 

 いや、いい収穫はあったよ。まぁ余計な物見つけちゃったって考えも無いではないけど、放っておく訳にもいかん。

 これについては今後対策を取るとしよう。

 …さ、早い所戻ろうぜ。

 

 

 

 来た道を早足に駆け戻る。

 …こうして見ると、普通の建築物でないのは丸わかりだった。木や石で作り上げられた日本家屋・城の類とは違い、素材がいまいちよく分からないが、金属製の廊下。

 これは…マホロバの里で見た、あの舟と同じ素材じゃないか? 博士やホロウに初めて会った、あの場所だ。

 …あれがここにもあって、滅鬼隊が保管されていて、瘴気に満ちていて………やれやれ、詰め込みすぎだぜ全く…。

 

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