※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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人物紹介は投稿規約に引っ掛かってしまった為、異伝に移動させました。
ご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。


あと、P5の短編を何となく書いて投稿しました。
あまりに雑すぎて怒られないか、ちょっと不安です。
執筆時間3時間。
狩りゲーの展開がちょっと詰まってたんで、いい気分転換になりました。

これも外伝扱いにしようかと思い、そっちのルートも考えていたのですが、どうにも異物感と言うか余計な物を付け足している感が否めず、路線変更して短編の形に仕上がりました。


第497話

 

 

 ごめんなさいナマ言いました。

 大根役者だなんてとんでもない。千両役者もいいところだ。

 女は皆女優だって言うけど、あれが基準だったら俺でもちょっと女性不信になってしまいそうなレベル。

 

 別に、橘花が急に饒舌になった訳じゃない。むしろ、今まで通りの世間知らずで純粋、蝶よ華よと育てられたように見えて神垣の巫女の重圧に折れかけていた、しかし自ら歩む道を見つけた事で強さを身に付けつつある少女……長ったらしいから一言で表すと、昏睡に陥る前の橘花そのものだった。

 だからこそ、大和のお頭達は疑わない。橘花の中身が、全てを俺の為の贄とさえ考える魔性菩薩モドキになっているなど夢にも思わない。

 橘花がたどたどしく説明する内容も、俺の許可を得ないと話せない…と思うに充分だった。

 

 

 

「まず、ご存知の通り私は千里眼を使いました。ですがすぐ傍に強力な縁の塊があり、それに術が引き寄せられてしまったのです」

 

「…拙者が持ち帰ってしまった、あの鬼の部位…でござるな…」

 

「…そう、とも言えます。違うとも言えます」

 

「む?」

 

 

「問題だったのは、その鬼ではないのです。まず…速鳥様が見た鬼は、元は人間だったようなのです」

 

「なんだと!? どういう事だ!?」

 

「千里眼で見えたものは、途切れ途切れの上にひどく前後し、更に複数人の視点が入り混じっていたようなので、私が強引に繋ぎ合わせた部分も多いのですが…恐らくは、まだオオマガトキが起きていなかった頃の事と思われます。

 とある村が、一匹の鬼に襲われました。モノノフどころか戦う術を持つ、所謂武士すら居らず、あっという間に滅ぼされてしまいます。

 …この鬼には、恐ろしい能力があるようなのです。それは時空を超え、因果を奪う能力…らしいです。いえ、私がそう結論付けたのではなく、この方が。因果を奪うと言われても、正直私にもわかりかねますし…。

 

 ともあれ、襲われた村が幾つもあるのですが、その中の数人が生き残りました。ですが彼らは因果を全て奪われており……その、忘失したような状態だったようなのです。

 何もかもを忘れ去り、それでも新しい人生を歩む方々でしたが…またしても同じ鬼に襲われ、全てを奪い去られます。

 

 それが何度も続くうちに、人である事すら奪い去られ、それでも生き続けた方が何らかの呪いの類を受け…変質していく。僅かに残されているのは、その鬼が奪い切れなかった憎悪のみ。

 今でもその方は、己を鬼へと貶める原因となった鬼を探して異界を彷徨っているのです」

 

 

「…胡散臭いとか辛気臭いとか、御伽噺じゃねえんだぞ、って感想は置いといて…その話をするのに、何だってこいつの許可を取るってんだ。こいつがその鬼だって訳じゃあるまい」

 

 

 

 (…勘のいい兄貴は嫌いだよ…嘘です嫌いじゃないけどヒヤヒヤものです)

 

 

「変質した鬼の元となったと思われる人は…この方の、親しい方だったと思われます」

 

「思われる? …本人は何といっているのだ」

 

「分からない、と。何分、この方も因果を奪われた被害者ですので」

 

「…む?」

 

「イヅチカナタ、と…誰が呼んだかも分かりませんが、そう名付けられたその鬼は、幾つもの時代を回遊し、多くの人々とミタマを喰らいます。…その一人がこの方です。何の因果か因縁か、全てを奪い去られる事を免れて、仇を討つ為に追っているのです」

 

「待ちなさい、橘花。それっておかしくない?」

 

「何がでしょう、初穂様?」

 

「その、危険な鬼が最初は人間で、こいつと友人とかだったとして…それって何年前の事なの? 何度もそのイヅなんとかに襲われて、鬼になるほど変わってしまったなら…どれくらいの時間が…」

 

 

 (…初穂の顔色が悪い。まだ半信半疑ながら、もしも本当だったら…と思っているんだろう。つまり…俺も初穂と同様に、時を超えた迷い子なんじゃないか、と)

 

 

「これもまた、当時の記憶が殆ど無いそうなので、よく分からないのですが…どうも時空を回遊する時の何かに巻き込まれたのだと思われます。この方が未来…つまり今に飛んできたのか、その鬼になった方が過去へやってきたのかは分かりませんが。いえ、或いはその両方かもしれません。どう見ても、何といいますか……今の日ノ本とは明らかに違う文化も見えましたので。それも、一度や二度ではありません」

 

「…つまり、こやつもイヅチカナタに因果を幾度も奪われ、それでも追い続けていると?」

 

「はい。奪われるから追うのか、追いかけるから追いつく度に奪われているのかは判然としませんが、その鬼を追ってこの里までやってきたのです」

 

「…つまり、この里近辺にその鬼が居ると? …口出しを許す。見解はどうか」

 

 

 ……あ、俺ね。はいはい。

 大筋は間違ってない。…少なくとも、俺が把握できている範囲では。あのクサレイヅチの生態なんぞ、調べようにも調べられんし…。

 古文書とかにも少しばかり記述が残ってるだけだしな。歴史の変わり目と称されるような場所についての書物に、ちらほら残っている。俺以外にもそいつを追って戦っている、翠瞳の乙女なんてのも一緒に書かれていた…ような気がする。

 

 奴がこの近くに居るのは、多分間違いない。俺も奴とやり合ってる間に、この辺に狙いをつけたらしいって言うのを………なんだっけか、誰かに教わったんだったか? 鬼がべらべら喋る筈もないし…すまん、多分この辺の因果を奪われて記憶が曖昧になってるんだ。(スットボケ)

 ただ、速鳥が見たあいつが近所に居るなら、十中八九間違いない。(マガオ)

 

 

「…かの鬼との関係を黙っていた理由は? 知っていたなら、その危険性は拙者以上に熟知していたであろう」

 

 

 言ったところで何も変わらんし、何より俺もよく分かってないから。

 因果を奪われて忘れ去ったんだか、元々関係なかったけどクサレイヅチを追いかける内に顔見知りになっただけなのか、何がどうなってああなったのかよー分からんのだ。(実際、何故変身制御できるようになったのか今でも不明)

 

 あと危険性については……まぁ、なんだ、色々と余波はあるけど、こっちからちょっかい出さない限り、人間相手に暴れる事はない…基本。

 

 

「最後の一言が非常に不安なのだが……しかもその余波が大きすぎる。…異界を一つ丸ごと消滅させるような余波を、余波とは呼ばぬ」

 

「異界を…? 速鳥、それはどういう意味だ」

 

「待て、桜花。それについては後から俺が話す。話が脱線しているぞ。お前も暫く黙れ」

 

 

 黙れと言ったり喋れと言ったり面倒な人だねもう…。はいはい分かりましたって。

 

 

「問題のその鬼が、近くに居る…。近い内に里が襲われかねない。こいつはそれを追って来た。俺達に話すよりも先にこいつを呼んだのは、それを確かめる為だったのだな」

 

「はい。そして、内容が内容なだけに、無断で吹聴するような事でもありません。話すにしても、事前の許可が必要だと考えました」

 

「…橘花は、何というか本当に変わったな…。今までであれば、自分で判断する事すらできなかったのに…」

 

「姉さま、誰だって人は変わるし、成長だってするものです。必要に迫られれば、どんな優柔不断な人だって、勢いに任せただけだったとしても選択します。夕餉を魚にするか野菜にするかだって選択です。私は自分が選んでいた事に気付いて、慣れてきただけですよ」

 

 

 ………(これ、本性隠してるんだよなぁ…。しかも隠れて発情しているという状況に興奮する。無限ループか)

 桜花は妹の変わりように思う所があったのか、改めて物思いに耽る。自分も何か変わらないといけない、とか考えているんだろうか。

 まぁ、冷静になったようで何よりだ。

 

 

「ふむ……他に見えたものはあるか?」

 

「ええっと……この方とイヅチカナタの印象が強くて、霞がちだったのですが……やはり鬼には頭領…と言うより、指揮官が居るようです。そしてその指揮官が目論んでいるのは…………ええっと…何か塔が見えたのですけど…」

 

「塔? ……おい、この前ミズチメをぶちのめした時、お前が見つけた建造物、確か『塔』って呼んでたよな」

 

「その『塔』とは、どのような? …金属質で、中に人が閉じ込められている? では恐らく別物です。私が術で見た塔は、人が技術で作った整えられた物ではなく、鬼が集めてきた瓦礫や石を奇妙な力によって固定し、乱雑に積み上げていった異形の塔です」

 

「その塔とやで何を企んでいるかは?」

 

「分かりませんが…ただ、イヅチカナタがその近くに居るようなのです。これは、どういう事だと思われますか? 例えば、イヅチカナタが他の鬼達を…指揮官級の鬼さえ従わせる黒幕だとか…」

 

「…意見を許す」

 

 

 はいはい。

 クサレイヅチは、俺が知る限り他の鬼と絡む事はあんまりないな。何せ時間と空間を回遊する鬼だ。鬼達も多少はその手の能力を持ってるのが居るようだが、あいつのは次元が違う。

 しかし……前にも同じような事があったな。大量の鬼が集まって、何かをしようとしていた時にその場に現れた。いや、鬼だけじゃない。大量の人間が集まって争う場所なんかが、あいつにとっては最高の餌場なんだろう。良くも悪くも因果で溢れかえるだろうからな。

 

 

「ケッ、鬼も俺らもそいつの餌になる為に生きてんじゃねえよ。だがしかし、確かに鬼からも村八分にされそうな鬼だな」

 

 

 …橘花、見えた塔はどれくらい完成していた?

 

 

「異形の塔なので、正直なんとも…。ですがまだあまり大きくはありませんでした。大型鬼の半分にも満ちません」

 

 

 そうか、んじゃ奴らの企み成就まではまだ時間があるとして…。その時点でクサレイヅチが待機してるとなると、相当でかい企てだな。人間側もそれを潰す為に必死に攻め込むから、更に因果が増えるだろう。

 悪い想像をしていけば、その内正解に当たりそうだな。検証ができないから意味ないけど…。

 

 

「悪い想像か…。異界の拡充?」

 

「鬼の拠点作りとか」

 

「単純に、里に大挙して攻め込んでくる?」

 

「それだと塔を作る必要もないし、里の近くで待機するんじゃないか? …鬼の強化?」

 

「わざわざ塔を作る…なんかこう、お祭りとか儀式的な?」

 

「鬼にその手の文化があるのか疑わしいが…でも獣が集まって何かの集会を開く、みたいなのは結構聞くな。蛇の交尾とか」

 

「鬼の乱交とかやめろよ気色悪い。それよりも、なんかこう…鬼の大物を呼び出すとかじゃねえか?」

 

 

 …呼び出すって、どこから?

 

 

「どこって、そりゃあ…………」

 

 

 

 富獄の兄貴の口が止まり、顔色が変わる。言葉の先を察した皆も、一人一人気付いて行ったらしく、顔が歪んだ。

 

 鬼の大物を呼び出す。これが正解であるなら…今考えられる尤も最悪な展開。塔の力によってか、儀式によってか、『向こう側』への道を開いて、自分達の大将を人の世に呼び出す事。

 『向こう側』への扉が開く…つまり、過去の大災害の再来。

 

 

 二度目のオオマガトキ。

 

 

 これが正解でなかったとしても、例えば鬼達は『向こう側』への通路を開いて、帰ろうとしているのかもしれない。

 ひょっとしたら、オオマガトキなんか欠片も関係なく、ただ何となく岩を積み上げていくだけなのかもしれない。

 

 だが一度想像してしまった以上、その可能性を無視するのは危険すぎた。的外れであったとしても、もしかしたらという疑念は消えない。

 万が一、億が一、実現してしまったら…人は滅ぶ。今度こそ、どうやっても、例え最後の一人まで死兵となって抗い続けたとしても、溢れかえる瘴気と鬼の軍勢の前に、住める場所を完全に失ってしまうだろう。そして瘴気の中を彷徨って、いつしか息絶える。

 

 

 

「…真偽は分からん。分からんが、これは見逃せん…!」

 

「大和のお頭、これは…」

 

「うむ。だがまずは捜索から始めるしかあるまい。鬼が何かを企んでいるなら、何であろうと見逃す事はできん。ただ内容と標的が分かりやすくなっただけだ。動じる事はない」

 

 

 流石に落ち着いていらっしゃる。まぁ、色々言っても結局はそこに落ち着くよね。

 これからの対応は順次決めるとして、俺は暫くうちの子達の生活環境を整える方に集中してもいいだろうか? 勿論、必要とあらばすぐに参戦する。

 橘花が起きたおかげで結界も復活して、警備で働き詰めだった子達を労いたいし、家だってまだ完全に直った訳じゃない。(それでも普通の住居より快適な部分はあるし、プールだの体育館だのもある)

 新しく発見された子達を迎え入れる準備もしなけりゃならん。

 

 

「構わんが…全員受け入れる気か?」

 

 

 段階を踏んで、最終的には…ああ、勿論本人の希望が最優先だが。

 全員まとめて一度に、じゃない。流石に最初は試験的に、一人二人起こして様子を見るつもりだよ。

 

 

「……まぁ、いいだろう。希望があれば、ウタカタの里でも受け入れよう。…お互いに、人数の限度を見誤らないようにな。だが、お前が最も優先すべき役割は…分かっているな?」

 

 

 はいよ。そっちの準備も出来たら始めよう。その時は声をかけてくれ。

 

 この後は、細々とした打ち合わせ、確認事項が続き、一度解散となった。

 目覚めたばかりの橘花は、体力が落ちていたり、何か気付かない不調があるかもしれない(その割には起きてすぐ摘まみ食いしたり、俺とズコバコしていたが)と言う事で医者にかかる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………冗談じゃねーぞ…何よあの変貌っぷり。今までの橘花の中でも格別どころの話じゃない。

 どこからどこまで狙って話を運んだのか分からないが、クサレイヅチの存在を信じさせ、俺とクサレイヅチ、そしてアラガミ化した俺の関係をでっちあげて納得させ、あまつさえ過去のループで得た情報(つまりゲームストーリーの塔、オオマガトキ第二段の目論見)まで話に混ぜ込んだ。

 そして一切疑いを持たれていない。俺から見ても、不自然なところは……まぁ、最初に色ボケて勘違いした返答をしたところ以外は無かった。

 

 …万一、橘花が離反するなり、ガチで全てを悦楽の糧にしようとして内側から引っ掻き回し始めたら、冗談抜きで防げる気がしない…。ここの連中はお人好しで、滅鬼隊にもその手の謀りに強い奴が居ないから猶更…。

 これはしっかり手綱を握っておかないと。

 

 医者に行く去り際に、チラリと流し目で秋波を送られたが、誰にも気付かせていなかった。

 いやすげぇよ本当に…。自分自身を演じるとは言え…いや、だからこそ猶更難しいのか…アカデミー賞も狙えそうな演技だった。

 一体、どこであんな演技なんぞ覚えて来たのやら、元の橘花は…前ループの中でも、演技どころか鯱張った喋り方すら苦手な子だった筈なのになぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 追記

 

 

 夜這いをかけた時に聞いてみたところ、忘れ去ったループ内で俺がコスプレックスやイメージプレイの為に演技を仕込んでいたようだった。…怪物作っちまってるやん、俺…。

 

 

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