※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第500話

 

堕陽月肆拾日目

 

 

 はい、そういう訳でやってきました、異界浄化です。

 結構な大人数で来てしまったが、色々な意味で無駄にはならなかったな。

 

 ええまぁ、予想通りにトラブルがありましたよ。問題なのは、その半分くらいを引き起こしたのが茅場と博士って事だ。

 いやもううちの阿呆どもが迷惑かけて、本当に申し訳ない。

 ただ、それに見合う利益はしっかり叩き出すだろうから、今は多めに見てやってください。

 

 

「お前が起こす騒動に比べれば、この程度なら軽いものだ。…まぁ、貸しにしておくがな」

 

 

 とは、ガタが来始めている(と本人は主張している)体に鞭打って、クッソ重たい人形のようなものを持ち運ぶ大和のお頭。

 一人では持つのも難しいその人形を、大和のお頭と秋水と、護衛としてついてきた紫でようやく抱えている。

 …秋水は基本的に非力だからあんまり役に立ってないが。しかし紫でさえ一人で持つのは難しいとは、どんな重量してるのやら。

 

 

「いや、重さよりもとにかく持ちにくいんだ、この人形。重心の位置がころころ変わると言うか…」

 

「おい博士とやら、この人形は本当に必要なのか。せめて帰りに回収すればいいだろうに」

 

「当然必要だ。つべこべ言わずにさっさと運べ」

 

 

 何に使うつもりなのやら…。

 何かあったらすぐに動けるように、護衛班は持ち運びに参加してない。これから大仕事が待っている俺もだ。

 …お偉いさんに率先してさせる仕事じゃないんだがなぁ…。

 

 

「気にするな。俺も偶には体を動かさなければならんと思っていたところだ…と言う事にしておこう」

 

 

 へい。

 

 

 

 

 …この人形を拾うまででも色々あった。

 従来の予定だと、まず最優先で異界浄化を行い、安全を確保した後にこの『舟』の機能を停止、それから封印されている子を一人二人運び出す…という予定だったが、急遽変更となった。

 

 以前はこの舟…塔の中はかなりの瘴気で満ちていたが、再度やってきてみれば、瘴気密度は激減。充分な活動時間を確保できそうだった。

 しかし、それを見て舌打ちしたのが博士である。

 曰く、異世界への移動機能が活発になっている可能性が高い。つまり、このままだと早い内に塔は消失し、俺達を抱えたまま暫く現世に戻らなくなるかもしれない、と言うのだ。

 

 証拠はあるのか、と問われたものの、それにまともに取り合わないのがこの女。実際、聞いて理解したところでそれが事実かを確かめる術はない。

 信じるべきか迷う皆を他所に、博士と茅場はさっさと奥に進もうとしていた。

 博士的には「凡人どもに説明している暇が惜しい」、茅場的には「異世界の技術が見られる。もし止められなくて異世界に移動してしまっても、それはそれで良し」だそうな。本当にブレねぇな…。

 

 結局二人についていく事になり、その間に根拠を聞いたのだが、少なくとも説得力はあった。

 塔に満ちていた瘴気が薄まっているのは、備わった浄化機能が働いているから。つまり、その為の動力源が活性化…少なくともその設備を稼働させられる程度には補充されており、それらは他の設備の動力も担っている可能性が高い。

 となると、次に起動しそうな装置は何か。…言うまでもない。何度も稼働しては推力不足で不発となっている、異世界への移動機能だ。

 さっさと停止させないと、何が起こるか分かったものではない。単に異世界に移動してしまうだけならまだ良し、移動先すら定められてない状態だろうから、妙な場所…土の中や海の中、そもそも生物が生息できないような場所に放り出される可能性すらある。

 

 半ば半信半疑な部分もあったが、結果的には大正解。迷いなく進む博士が見つけ出したのは、明かにヤバげな点滅やスパークを散らすよく分からん設備。これが異世界移動の為の設備なのか。

 茅場が早速飛びついて行ったが、放置しておくと瘴気で死ぬまで調べ続けそうだったので、引っ張り戻した。

 

 そして設備の真ん中にある…なんだ、蓋っぽいのをブチ壊して開けると、これまたあからさまに臨界点な光とか霊力とかなんかよく分からん力を撒き散らすカラクリ石。

 博士に目配せされて、鬼の手を出してカラクリ石を引っ張りだしたが……こりゃ素手で触るようなもんじゃないな。

 鬼の手で握りしめ、干渉して何とか暴走させる事なく落ち着かせた。

 

 …設備の事がなくても、あのまま放置していたら洒落にならん爆発とか起きていたのは目に見えている。とりあえず、博士の言葉に従ってよかった。少なくともこの舟に関して一定の知識があると信用を得たようだし、これで傍若無人なだけの女という評価は…多少は払拭されるだろう。

 

 

 で、そのカラクリ石は博士が研究材料として確保。かなり大きな奴なんで、思わぬ拾い物だったとホクホク顔でした。

 そして近くに転がっていた、幾つもの人形。破損し、故障し、明かに動かなくなっている物の中で、一つを選んで持って帰ろうとしている。

 もう爆発しそうなカラクリ石も無いのだし、後から確保でいいと思うんだけどなぁ…。

 

 

「そう思うのなら、壊れた人形を幾つか見てみたまえ。関節を初めとし、明かに不自然な破壊が見て取れる。その上、動力源…小型カラクリ石と思われる部分を奪われている。破壊の仕方からして、少なくとも人ではあるまい。…人形を狙う何かが居ると思った方がいい」

 

 

 成程。機械相手の狩りはあんまりやってないから、あんまり観察してなかったわ。

 しかし、それだと無事な人形を狙って俺達の方にやってくるのでは…?

 そういう疑問はありつつも、一応専門家の言葉なので、人形を確保した。外を見ても、異世界移動は発動していなかったらしく、塔は消えていなかったそうだ。

 よしよしセーフセーフ、では肝心の異界浄化へ向かおうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして始まる予定外のトラブル第二段。

 まぁこっちは大丈夫と言うか、想定内だったよ。鬼が出たってだけだしね。

 

 …多分、鬼だ。瘴気を生み出す穴の中から出てきたし。しかし、瘴気の穴の先が全て同じ世界とは限らないんだよな…。

 まぁ、同じ瘴気の中から出てきたんだし、鬼って事でいいだろ。なんかこう、メカメカしかったけどな。ガララアジャラみたいな蛇……と言うより、形状的にはデビルガンダムの触手みたいなイメージだった。

 …モンスター、じゃないな。アラガミ…? うーん……アラガミとは違うと思うんだよなぁ。こう、殴った感触とかね。また妙なのが出てきたな。

 ああ、人形を襲って食ってた鬼みたいだし、体が段々それに近付いて行っただけかもしれないな。

 

 

 ともあれ、こっちのトラブルは単純だ。襲ってくるなら叩き潰せばいい。

 天井の隙間とかに入り込んでゲリラ戦を仕掛けてきたが、狙いが人形と分かった時点でどうとでもなる。囮に使ったら、茅場が庇おうとしたり博士がガチギレしたりしたが。

 

 誘導したら占めたもの。普段以上に多い人数も、相手の図体がでかかったから連携の邪魔にはならない。妙な能力を持っていたようだが、それも機械人形の中のカラクリ石を捕食するのに特化したもの。

 外敵がほぼ居ない状況で育ってきた為か、率直に言って弱かった。俺が出るまでもない。……ヒマだ。

 いや最近マジで戦ってないし。最後にやったのがフロンティアだっけか? 体が鈍る。

 

 

 

 

 さて、そういう訳でようやく俺の出番。異界浄化の瞬間がやってきた。

 …ここでしくじったら気まずいなぁとか、中途半端に成功させると今度こそ地脈変動からのオオマガトキ第二段が起きるかもなー、なんて雑念がよぎったが、それはそれ。各種機材と期待・疑心の籠った視線の前で、バッチリ決めてやりましたとも。

 

 異界が消える瞬間が、傍からどのように見えていたのかは分からないが、とにかくこの場に満ちていた瘴気は一瞬で消失。キレイサッパリ、クリーニングにかけたみたいに清浄になった。うーん、屋内なのにチベットの山頂で深呼吸してるみたいに空気が美味しい。

 部屋の外を見てみれば、そっちの瘴気も見事に無い。シノノメの里でやった時と同じように、連鎖反応を起こして近辺の瘴気は丸ごと消滅した。

 

 うーん、何度やっても気分がいいぜ。屋外で、一変した景色を見れると猶更気分がいいんだが。

 ついでに言えば、この塔がある場所自体、里の近くで異界じゃないんだよな。近場の異界まで、ある程度余波は飛んでいると思うけど。

 

 それでも、塔に満ちていた瘴気が一斉に消え去ったのは、モノノフ達にとって結構な衝撃だったらしい。

 博士でさえ、興奮気味に機材の記録を見直している。

 

 

「…一瞬の出来事だったが…本当に瘴気を全て浄化したのか…。信じられん…」

 

「同感…です…」

 

 

 意識しているのか居ないのか、大和のお頭からこぼれた呟きに、呆然としている真鶴が反応する。

 他の反応も、似たり寄ったりか、驚いている暇があったら解析するかのどっちかだ。

 

 もっと大騒ぎになるかと思ったが…まぁいいか。とりあえず、外の様子がどうなっているかは後で確認しよう。

 封印されている子達を一人か二人、運び出したい。そっちに行っても構わんよな?

 

 

「ああ。…だが、この人形を運ぶ人員は先に戻してくれ。いつまでもこいつを抱えているのは、流石に厳しい。主に腰に」

 

 

 大和のお頭でも、腰には逆らえんか…。いざ戦闘となれば、現役以上に斬った張ったしそうなものだが。

 まぁ、誰だって重い荷物をいつまでも好き好んで抱えたりはしないだろう。

 

 戻るのはいいんだけど、ちゃんと護衛も連れて行ってくれよ。異界を浄化したって事は、鬼達の住処を纏めて吹っ飛ばしたって事だ。それだけならいいんだが、居場所がなくなった鬼達はどうすると思う?

 

 

「…我々も、オオマガトキの後で覚えがあるな。住処を失えば、新たな住処を求めて彷徨う。まだ残っている異界に向かえば、鬼と鬼の間での縄張りの奪い合いだ。負けて逃げて来た鬼達は、傷ついた体でも食える餌を探す…つまり人里に向かうだろう」

 

「残っている異界に向かわないなら、そのまま人里を襲いに来ると思った方がいいな。どっちにしろ、ウタカタの里が襲われる訳だ。つまり今までと変わらない」

 

 

 そうだな。鬼の移動頻度が上がるだろうから、ばったり鉢合わせする危険が増えるだけだ。

 

 

 

 

 

 さて、そういう訳で封印されている子達の元にやってきた。

 残っているのは、博士、真鶴、那木、初穂、浅黄。

 皆、円筒に閉じ込められ眠っている滅鬼隊員達を見て、眉を顰めている。……色んな意味で。

 

 

「ウタカタの近くで、こんな事が起きていたなんて…」

 

「…皆さまも、この方々と同じように封じられていた、と聞き及びましたが…なんという非道を…。……あ、あと貴方もなるべく見ないようにしてあげてください」

 

 

 へい。

 

 痛ましそうな那木と初穂。

 気付けなかった、とか考えない方がいいぞ。気付きようがない事だし、むしろ気付いたところでどうしようもなかった事なんだから。

 

 

「そうは言っても、気になるのも仕方ないだろう。…なんだ、この………なんだ。……浅黄殿、あなたは彼女達の関係者だと聞いているのだが…」

 

「何も言わないで」

 

 

 

 …平然としている…いや、珍しく興味深そうに封印されている子達を覗き込んでいる博士はともかくとして、他の面々は心を痛めると同時に、目のやり場に困っていた。

 だって皆、服は着ているけど明らかにおかしい服なんだもの。

 

 体にピッチリ貼り付いて、ライン丸出しのボディスーツ。

 肌がやたらと露出しており、角度によってはお嫁に行けなくなってしまうようなデザイン。

 意味も無く…ひょっとしたらあるのかもしれないが…カラフルで煽情的、色使いもセックスアピールを強調しているかのよう。

 ちなみに男も女も似たようなものだ。

 浅黄や雪風達は素っ裸で封印されていたが、これとどっちがマシだろうな。

 

 ことに、この世界の人達にとっては、色々な意味で意味不明な衣装だろう。彼らの服飾文化は、どれだけ進んでいるとしても大正程度。…いや日本人のエロ根性なら、そのくらいの時期にはこの手のエロ衣装を作ってたかもしれないけども。

 動きやすそうだとかみっともないだとか以前に、ただただ異質さの印象が先に来る。

 

 …要するに、変質者とか痴女にしか見えてない。実際、俺からしてもソッチ系の趣味を疑わざるを得ない恰好だ。

 以前の滅鬼隊は、この格好で活動していたんだろうか? …もしそうだとしたら、是非ともこの格好でお相手してもらいたいものだ。興奮度合いで1割くらいデカくなりそう。

 

 

「…おい、この中から何人か連れ帰るのだったな。だったら、こいつとこいつにしておけ」

 

 

 円筒をカンカンと叩く博士。そこに入っている二人の女には、他の子達には見られない特徴があった。

 一人は…まぁ服装とか体格は他の子達も同じだから置いといて…よく見れば、頭から角が生えている。ツインテールとリボンで見えにくくなっているが…隠しているつもりだろうか?

 もう一人は……なんか、すっごい見覚えがあるんだけど。

 

 目を横に向ければ、遠くを見ている浅黄の姿。そりゃそうだろうなぁ。

 自分のそっくりさんが、痴女そのものの衣装で円筒の中に浮かんでるんだ。現実逃避もしたくなる。

 

 …もう暫く逃避させといてやるか。

 博士、この2人にするという根拠は? こっちのそっくりさんなら、まぁ分かるんだが。

 

 

「戯け。私が見ていたのは、その中身ではなくこいつらを保存しているカラクリだ。私も最初は、『舟』を後から利用して、こいつらの保管庫にしたのだと思っていたが…殆どの円筒は違う。設備の形と接続形式からして、この舟に元々据え付けられていたものだ」

 

 

 …つまり?

 

 

「お前は、異世界から送り出された鬼の討伐隊を一人、知っているんだろう。こいつらの内の何人かは、それと同じだ。しかもこの舟は、結構な人数が載っていたと見える」

 

 

 鬼の討伐隊…ホロウの事か。…この子達が、ホロウと同類…?

 でも、ホロウはこんな恰好してなかったぞ。

 

 

「送り出された時期か国が違うんだろうさ。聞けば、お前の知人は単体で時空間の移動を可能とするそうではないか。舟の機能で、集団で移動するのとは運用方法が全く違う。何らかの技術革新によって運用方法が見直されたか、それとも余力がなくなった為に最後の一人を送り出す事しかできなかったのか…どちらであってもおかしくはないな」

 

 

 成程ね。しかし、この子達がホロウの同類だとして、どうしてこんなところで封印される事になっているんだか…。

 

 

「そんな事を私が知るか。…だが、異世界や別時間への転移は非常に難しい技術だ。世界の壁を超える時、どんな障害が起きるか分からん。もし最初は上手く行っていたとしても、酷使を繰り返せば部品は摩耗し、徐々に朽ちていく。何度目かの転移で、致命的な事が起こったんだろう。そこを、何者かに発見された…といったところか」

 

 

 ふむ…確かに、前から疑問ではあったんだよな…。

 滅鬼隊の始まりは、記憶を失って彷徨っていた一人のモノノフであると聞いている。そのモノノフの体に使われていた技術を解き明かし、それによって強化・改造されて出来上がったのが滅鬼隊だと。

 しかし、たった一人の体を…胸糞悪い話だが、例えば徹底的に解剖して調査したとして…それ程の技術を、それだけで解明できるものだろうか? サンプルをとって解析するにしても、幾つもの解析対象が必要になる筈。

 全国を探して、何人かは同じように記憶を失った討伐隊を見つけて、拉致してきた可能性はあるが…。

 

 成程。一から技術を解き明かそうとしたんじゃなくて、ある程度以上形になった設備があったから、それを解析したって事か…。

 

 

「だろうな。つまり、ここに居る者達は滅鬼隊の源流である可能性が高い。何処まで記憶を保っているかは分からんがな…。この円筒、洗脳や記憶の削除に使う事もできるようだ。元々は精神的な傷を受けた際、それを忘れさせる為に使う装置のようだが…。今の滅鬼隊にかけられている、えらく都合のいい暗示も、元はこいつを真似たものだろう」

 

 

 ふーん…たった一目で、よくそこまで分かるな。

 

 

「各装置に、簡単な説明書や走り書きがついているからな。私の読める言語だ」

 

 

 そりゃ親切な事で。で、話を戻すが、この二人にしようって理由は?

 

 

「滅鬼隊の資料には一通り目を通した。だがこいつのように、角…つまり異形の姿を持つ者は居ない。この衣装も、この国では一般的なものではない……どの国でもこんな露出度の高い恰好は、一般的ではないと思うが…。つまり、こいつはこの世界で作られた滅鬼隊員ではなく、異世界からの鬼討伐隊の一人だ」

 

 

 成程な。了解した。

 どっちにしろ、誰を連れて帰るって明確な指針は無かったんだ。この子と、浅黄のそっくりさんを連れて帰るとしよう。 

 …この子達、起こすのに一発ヤらなきゃいかんかな…。

 

 

「必要ないだろう。浅黄っぽい奴は微妙だが、こいつには、例の暗示もかけられてないんだ」

 

 

 それもそうか…。ま、良かったって事にしておこう。残念なんて思ってない。

 

 

 

 

 

 

 外に出て景色を眺めてみると、瘴気で埋め尽くされていた雅の領域の半分くらいが正常になっていた。

 と言っても、異界の影響で狂った植物や地形、建物なんかに変化はない。ただ瘴気が消えただけだ。

 

 …中途半端にしか効果が無かったみたいで、なんかこう、スッキリしないなぁ…。

 

 

 

 

 

 

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