※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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予告もせずに何ですが、年末年始の連続投稿を開催します!
12/31から1/5まで、毎日17時に投稿。既に予約済みです。
その分、一話の文章量が少ない事もありますが、ご了承ください。


第508話

堕陽月肆拾溌日目

 

 

 アサギは暫く、里の診療所で世話になる事になった。ちょっとでもきららさんと離しておこう、という事だ。

 そのきららさんはと言うと、今のところ大人しく那木に世話をされている。

 元が活発な女性らしく、さっさと体を動かしたいようだが、長く封印されていた為かまだ上手く動けないようだ。

 また、男性の話が出ると、途端に期限が悪くなるらしい。

 男嫌いなのは別に構わんが、自分で理由も分かってないのにえらくアカラサマだなぁ。これも植え付けられた感情の類なんだろうか。

 

 何にせよ、全ては彼女が充分回復し、実際に対話を試みてからだ。それまでは全て、参考意見程度に留める。

 

 

 

 

 さて話は変わるが、やはり富獄の兄貴が異界捜索任務に頻繁に出るようになった。

 朝昼晩と、行動限界の少し前まで異界を歩き回り、里の結界内で休んで瘴気が体内から抜けたらまた捜索に向かう。

 文字通り限界ギリギリまで粘る訳でもないし、単騎で出歩く訳でもない。その辺の冷静さを失ってないのが救いだ。

 

 様子がおかしい事には、里の皆も気付いているらしく、声をかけたり、一緒に哨戒に向かったりしていた。それでも、詳細な理由を聞いた者は居ない。

 …と言う事は、やっぱり自分一人でケリをつける気満々だなぁ。

 あの人の事だから、「里の連中を死なせたのは、俺が弱かったせい」くらいは考えるだろう。

 全てを守る英雄を気取っているのでなく、自分の力でこの世を生き抜く武人としての考えだ。誰が来ようと何が起きようと、自分の責任で対処するのが当たり前。不条理であろうと理不尽であろうと不運であろうと、対応できないのは自分の力不足の為。願いに反する事を阻止できないのは、自分の手が届かなかった為。

 

 まぁ、何にせよ他人から見れば、面倒な意地を張っているだけなのであるが。

 俺だって他人の事は言えないけどな。デスワープしてなかった事になったループの仇討ちに拘ってたりもしたし。

 

 どうしたものかね…。今までの経験から言えば、何だかんだ言ってもゲームストーリーと同じ事は起こる。

 修正力とかそういう話じゃなくて、それが発生する条件が既に整ってしまっているんだ。今は起こらなかったとしても、時期が少々ずれるだけだ。

 どの道発生するイベントだし、上手くやれば強い信頼や結びつきを得られる。失敗すれば…最悪の事態が発生する可能性もあるし、充分な信頼を得られずに那木に射られたループの時のような展開に…。

 

 まず有効な手段としては、ダイマエンを先に見つけてしまう事か。それが出来れば、またしても単騎特攻を仕掛けたとしても、すぐに追いつく事ができるだろう。

 しかしどうやって探すかな……………

 

 

 

 

    あっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? 鬼の手の能力を使って、特定の鬼を探す?」

 

 

 ああ。俺も似たような事をやった事あるし、多分初穂も出来ると思うんだ。

 対象になる鬼を明確に想像して、鬼の手を通してその痕跡を見る感じで。

 

 

「うーん、出来る出来ないで言えば、多分できると思うけど…瘴気の穴を塞ぐのと違って、想像しやすいし。でも、文献でしか知らない鬼だと追いかけられる気がしないわね。その、ダイマエンって鬼は実際に見た事ないわ」

 

 

 仮にこの近辺に居たとしても、つい先日まで半人前扱いだったモノノフに相手させる鬼じゃないしな。

 その名に違わない、厄介な鬼だよ。……ゲームじゃミズチメと並んでクソ扱いだったっけなぁ。

 

 

「で、そのダイマエンがどうしたの、突然。そんな強力な鬼が近くにいるなら、私だけじゃなくて皆に伝えるべきでしょ」

 

 

 目の前に出てきてくれりゃ、半刻と経たずに四肢と首を切り落としてやれるんだけどな…。

 富獄の兄貴が、そいつを追っているようなんだ。

 

 

「…異界浄化の後から、様子がおかしいような気がしてたけど…それ、確か? どうしてその鬼を追ってるって分かるの?」

 

 

 ホオズキの里って知ってるか?

 うちの連中が組手の相手をしてもらってる時に、幾つか技を教えてもらったんだ。その時に、その里に伝わっていたって技が幾つかあった。

 俺もこの前、組み手をして気付いたが、あの人の使う武術にはホオズキの里の技が色濃く残ってる。元はもっと別の武術だから、立ち寄った時に学んだんだろうな。一月二月程度じゃない、もっと長く留まって交流した筈だ。

 

 

「ホオズキの里…って言うと、確か何年か前に鬼に滅ぼされた…」

 

 

 ああ。俺も詳しい事は知らないが、空を飛ぶ鬼一匹にやられたらしい。空を飛ぶと言えばヒノマガトリやアメノカガトリ、この前見つけたアマツミツツカや亜種のナルハヤテも思い浮かぶ。

 だが里の痕には炎や雷の類は殆ど見当たらず、砕けた岩やら羽やらが散らばっていたそうだ。

 

 

「それでダイマエン…富獄がその里と懇意にしていたとしたら、仇討ちを考える可能性は確かにあるわね」

 

 

 (ちなみに、里の痕云々は出任せだ。でもダイマエンがやったのは事実だし、あいつが暴れたらそういう痕になるのは確かだ)

 別に仇討ち云々はいいんだよ。どっちにしろ鬼は斬らなきゃならん。

 最近じゃ、昔の夢…多分その里の夢を度々見るらしいし、案外そいつに喰われた里の人達からの救援信号の類なのかもしれん。

 とは言え異界は広いし、探し回ったところで見つけられる可能性は如何ばかりか。

 

 が、それなら見つけられそうな奴に頼めばいいだけの話だろ?

 

 

「それで、瘴気の元を見つけ出せる鬼の手の使い手。…つまり私やあなたに声をかけるかも、って事ね」

 

 

 そういう事。或いは博士に頼んでもう一つ鬼の手を準備してもらう…と言うのも考えたが、博士は現在、茅場と一緒に人形弄りに熱中してる。多分話も聞きやしないぞ。

 鹿之助だと標的の一部でも持ってなければ探知はできないし、そうなると一番可能性が高いのは俺と初穂だ。

 

 協力して探すのは別に構わん。だがモノノフの悪しき伝統・単騎特攻は絶対に止めたい。

 もしも協力を頼まれたら、その時は討伐に俺達も連れて行く事を条件としてほしい。約束を反故にして突っ走る事も視野に入れ、鬼の居場所が大体わかったら情報共有しよう。

 うちの子達にも見張らせて、突っ走らないように予防線を張る。

 

 

「そこまでする…。まぁダイマエンは資料で見るだけでも相当強力な鬼みたいだし、里一つを壊滅させるような鬼が弱い訳ないし、一人で行ったら流石の富獄も危険よね。思い詰めてると戦力差なんかお構いなしに行動しそうだし、予防線は張っておくべきよね」

 

 

 そう言う事。それじゃ、頼んだぞ。

 富獄の兄貴への予防に鬼の手の訓練、普段の任務と色々やる事は多いと思うが、頑張ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初穂は鍛錬に戻り、俺は自室に戻る。何かやるにしても、今日の仕事を終えてからだ。

 部屋では、勝手に入った(許可もしてるし、合鍵も渡しているが)神夜が、四つん這いになって何やら唸っていた。むっちりヒップが突き出されて、思わず襲い掛かりそうになった。襲っても悦ばれるだけだが、仕事が先だ。

 どうした、神夜。何か探し物か?

 

 

「え? いえいえ、ここ最近、仕事をしていなかったなと思いまして。ここに何を置こうか考えていたのです」

 

 

 仕事? いつもしてるだろ。鬼の討伐もそうだし、うちの子達の面倒を見るのも。

 

 

「そちらではなく、シノノメの里に居た頃の生来のお仕事ですよ。寝具作りです。ここにも『べっど』を置けないかと思いまして」

 

 

 ああ、そういや作ってたな、ベッド。俺に抱かれる為に自作して、招いてくれたっけ。その後乱入者も含めて実時間で一週間、体感時間で半年近く延々と睦みあったっけな。

 なんだ、アレを思い出して、もう一回やりたくなったか?

 

 

「あ、あははは……実は…その…大体合ってるけど、ちょっと違うと言いますか…。今の、皆でくんずほぐれつするのもとてもとても気持ちよいのですが、初めての夜の直後にあんな事になったじゃないですか。一晩くらいは、独占してみたいなって…」

 

 

 …そういう事は早く言…いや、もっと早く察するべきだったな。…他の子達にも、同じ事を思っている子が居るよなぁ。最初からそれが当然だった子とか、観客が居た方が燃える子もいるから、全員が全員とは言えないが。

 っと、この状況で他の女の事を持ち出すべきじゃなかったな。

 

 

「いえいえ、まだ寝具作りも手を付け始めたばかりです。二人きりなら、やっぱり自作した『べっど』の上で抱かれたいので、その時まで楽しみにしています。…でも、大きさをどうするかが問題なんですよ。この部屋に作るのであれば、当然沢山の人が同時に使うじゃないですか。シノノメの里で作った時も、想定していたのは私、あなた、明日奈さんの3人分くらいです。雪華さんが追加されましたけど、密着すれば何とか乗れるくらいの大きさでした。ですが、ここで皆も使うとなると…」

 

 

 ああ…特大でもまだ足りないかもな。と言うか、二人きりで使いたいのに、他の子達も使う事を前提にするのもおかしな話だなぁ。

 

 

「そこはそれ、どっちにしろ皆さんも興味を示すのは目に見えてますし。畳に敷いた布団の上で睦みあうのもよいですが、『べっど』の上も違った趣があります。具体的にには、腰が跳ねる時の動きと反発が………ま、二人きりで使うものは、私の自室に据え付ければいいです。さて、こっちの部屋にはどうしたものでしょう。小さければ使える人数が少なくなり、大きければその分空間を圧迫する。不評にはならないと思うのですが、それでも一度設置するとそうそう動かせなくなりますし、何より『べっど』の下が掃除しにくくなりますし…」

 

 

 いっそ、新しい部屋でも作るかな。いやでも素材を勝手に使うのはなぁ…。立て直しの時に、頭領特権って事でもうちょっと作っておけばよかったか。

 しかし、そういう睦言の為の部屋を作っても怒られる気はしないな。何だかんだで、殆どの子が使う事になりそうだし。

 

 

「少なくとも、私や明日奈さんは全く問題にしませんね。あまりにも度が過ぎるようでしたら止めますが、今回のは部屋一つくらいの話です。あなたの不思議な建築方法なら、資材もそう使わないでしょう」

 

 

 ……本当に作っちゃおうかな…。神夜が割と本気で期待した目で見てくるし。

 かなり本気でそう思い始めた時、扉がノックされる。

 はいどうぞ。

 

 

「若様、少しいいかしら…あら、神夜さん。お邪魔でしたか?」

 

「残念ながら、いいえです。ちょっとお仕事の相談をしてました。別に重要と言う程の事ではないので、そちらが先にお話しても大丈夫ですよ」

 

「…なら、お言葉に甘えて…」

 

 

 何だ、凛花か。訓練は順調か?

 と言うか、一人とは珍しいな。

 

 

「いつも凛子と一緒に居る訳じゃないわ。それと訓練は…ふふ、努力が実ったわ! 朝の試験で、ようやく合格よ!」

 

 

 ほぉ、そりゃ目出度い。浅黄が認めてるんなら、俺としても否は無い。

 正直、お前達の戦力を遊ばせておくのは勿体なかったからな。合格に安心せず、苦手な方面も努力を続けてくれよ。

 いつも凛子と一緒ではないとは言え、大抵一緒に切磋琢磨してたろ。凛子はどうなんだ?

 

 

「あー、実はまだ合格してないと言うか…体調の問題で、今日は試験を受けられなかったというか…」

 

「ああ、重いんですね…」

 

 

 …ああ、そういう。ま、その辺の体調管理も実力の内。無理して試験に臨まないだけの理性があって何よりだ。

 それで、任務に向かうのは何時だ? 行き先は?

 

 

「もう決まっているわ。…流石に、最初から大型鬼の相手をさせてくれるとは思ってなかったけど…これはどうなのかしら。最初に受ける任務は、若様達が見つけてきた『塔』とやらの探索よ」

 

 

 あそこを? …気分のいいもんじゃないぞ。お前達同様に封じられている人達が居る。そして、それを助け出す事は、まだやってはいけない事だ。

 

 

「分かってるわよ。助けてはいけないんじゃなくて、『まだ』助けてはいけないんでしょ。あの浅黄にそっくりなアサギさんとか、今日目が覚めたばかりの…きらら、だったかしら? あの子がどういう子なのか確かめてから。理由は分かるし、助けていい時期は決して遠くなさそうだもの。焦りはしない。助け出してきたとして、面倒を見る為の負担は若様に行くのが分かりきってる。勝手に連れ出して、いい事した気分になって、後は任せたなんて言わないわ」

 

 

 そっか。うん、ちゃんと前後や自分の行動の影響を考えてるな。

 しかし、あの塔をねぇ。確かにウタカタの人達からしてみれば、得体の知れない施設がすぐ傍にある訳だしな。

 異界への転移機能を停止したから、現れては消える現象も無くなった。つまり、調べに入ってそのまま戻ってこれなくなる事も無い。

 

 

「そう言えば…シノノメの里で、お頭が入り込んでいた塔も、ここの塔と同じなのでしょうか? 異世界からの、鬼を討伐する為の舟…」

 

 

 どうだろうな。前に博士が、複数の舟で多くの戦力を送り出したと思われる…って言ってたけど、それがほいほい見つかるか…。同じ場所を目指して同行していたなら、近場で複数見つかる事も納得できるが。

 何にせよ、あの塔にはまだ何かありそうだ。未知の技術、住み着いた鬼、隠された事実…。

 

 興味を示しそうなのは、やっぱ博士かな。それに…そうだ、案外秋水も興味を持っているかもしれん。時空を超える技術…あいつからすれば、喉から手どころか上半身が生えるくらいに欲しいものだろう。

 

 

「博士の依頼…いや、任務には違いないわね。しっかりやらないと。それに、未知の技術とやらを発見できれば大手柄になりそう」

 

「だからと言って、あれこれ弄り回してはいけませんよ。それこそ何が起きるか分かりませんし」

 

「分かってるわ。それに、ついでに調べるくらいならともかく、手柄に逸ったら…」

 

 

 

 待っているのは絶縁。

 

 想像するだけでも恐ろしいのか、凛花は口を噤んだ。

 ま、そもそも未知の技術を探そうにも、どこがどう未知で、何が重要なのかも分からんからなぁ。俺もちょっと観察してみたが、ありゃ理解できそうなのは博士とか茅場くらいだ。

 適当な物持って帰ってあれこれ主張するより、真面目に探索こなした方が給料は多いぞ。

 

 で、実際のところ要件は? 試験合格と、初任務に行くって報告か?

 

 

「それもあるけど、事前準備の重要さは散々説かれたもの。例の塔についての報告書は読んだけど、やっぱり当人から聞くのが一番いいじゃない」

 

「確かに。…でも、それなら権佐さんや富獄さんのところじゃなく、真っ先にここに来た理由はなんでしょう?」

 

「…それは…その……」

 

 

 神夜の目が笑っている。多分俺の目も笑っている。しかもオヤジ臭く。

 何で俺の所に来たか?

 単純である。任務に向かう前の子達には、精神的な安定性・霊力的な戦力を底上げする為に、オカルト版真言立川流を使っている。…嫌がる子にするつもりはないんだけど、今のところ嫌がられた事は無い。

 つまり、彼女がここに来たのは、その『お誘い』の為でもあった。

 

 

「あ、あの、まずは塔の話を…」

 

「まぁまぁ、そういう事でしたらまずは席についてくださいな。立ち話するような事でもないでしょう。お茶を出しますよ」(訳:逃がしません) 

 

 

 そうそう、ゆっっっくりと話をしようかね。大事な任務の事だからね。(訳:自分から言い出すまで粘るぞ)

 ああ、そうそう神夜、『上物』の茶があっちの部屋の棚にあるから使ってくれ。普通の茶と違って、薄目で頼む。

 

 

「はいはい、あれですね。大丈夫です、何度か呑んで分量も分かってますから。私もいただきます」

 

 

 いそいそと『上物』のお茶を淹れに行く神夜。ちなみにその茶葉の缶には、『六穂特製』と書かれている。

 あの子はヤバイ毒から母乳が出る毒まで、何でも作れるのだ。安全性は、夜に何度も試して実証済み。あとは分かるな!

 

 さぁ、媚や…もとい、お茶による利尿作用やら感度倍増やらにいつまで耐えられるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 満ち足りた表情で力尽きた凛花は、何か言うまでもなく、神夜が凛子の部屋に連れて行った。世話を任せるつもりなんだろうが…一足先に試験に合格しただけでなく、色々経験した相棒を見て、凛子はどんな顔をするのだろうか。

 更に、今夜は凛花と仲のいい子達を集めて猥談大会を開催するようだ。コトの感想を聞くだけでなく、根掘り葉掘り自分から喋らせるつもりらしい。神夜曰く、『一足先に女になった事ですし、先輩風を吹かさせてあげようという親心ですよ』だそうな。

 神夜も中々悪趣味になってきた。(褒め言葉)

 俺もその語りを、凛花を顔を見ながら聞いてみたいものだが、それは悪趣味とかいう以前にムラムラが我慢できなくなってその場にいる子を纏めて食い散らす未来しか見えない。

 ここは、雪風と不知火でも摘み食いしながら盗聴する程度に抑えよう。

 

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