※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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1人暮らしなのに、ガス料金が9,000円近い…何故?
風呂の温度維持機能を使ってるから?
それとも追い炊きするから?
風呂の水量が多すぎるんだろうか?
割とマジで不正を疑っている今日この頃です。

うーん、P5Sが待ち遠しい…。
仁王2も待ち遠しい…。


第516話

 

 …ちょっと意外なものを目にした。と言うか耳にした。

 頭領名利に尽きる、っていうかね…。

 

 アサギとの話の後、屋上から周囲を見回して、近くの森に居る舞華を発見。基本的に一匹狼…とまでは言わないが、群れるのを嫌う気質だが、例外は居る。どうやら若い浅黄こと浅木と一緒に居るようだった。

 ともかく場所は分かったので、アサギには集合場所と時刻を伝えて移動。

 

 特に隠れる気は無かったのだが。

 

 

「あら、若」

 

 

 おや、浅木。…こうしてみると、やっぱりややこしいな。浅黄と浅木とアサギって…。

 

 

「同感だけど、改名しろなんてお断りよ。どうしてもって言うなら、懇ろなお二人に言うのね」

 

 

 別にどうしてもとは言わないけどな。…浅木の態度は、他の2人と比べると少々棘がある。俺が嫌い云々よりも、単純に上から命令されるのが嫌いらしい。そりゃ誰だって好きじゃないが、とにかくこの子も一匹狼と言うか、組織人となる事を良しとしない気質だった。

 だからだろうか? 俺との接触も、暗示を発動させない為の最低限に抑え、後は気ままにぶらぶら歩き回っているのをよく目にする。

 仕事は…任務にはついてないし、サボっていると言われないギリギリのラインしかしてない。仕事してるだけマシだね。

 

 …要するに、ちょいとヤンキー入った、不良ぶりたい時期な訳だ。肉体年齢も丁度そのくらいだし。

 自分の未来の姿とも言える、浅黄とアサギが俺と懇ろになってるから、それへの反発もあるんじゃないかと思う。

 

 

「何か用かしら? 私は散策で忙しいのだけど」

 

 

 思いっきり暇じゃねーか。

 いや、用があったのは舞華に対してなんだよ。…条件を考えれば、浅木でもいい気がしてきたが…。

 

 

「どっちでもいいなら、私はお断り。あなたの事が大好きな、愛妾さん達に言いなさいな。…ところで、舞華に用と言う事は、この先に行くつもり?」

 

 

 ああ、そこに居たのは、屋上から確認できたから。

 …何かあるのか?

 

 

「いいえ。…でも、そうね…気配を消してから進みなさいな。私にはどうでもいい事だけど、下手に突いて騒ぎがこっちに来ても迷惑だもの」

 

 

 それだけ言って、浅木は番傘をくるりと回して去って行った。…いつも持ってるな、あの笠。

 気配を消して進め…。どういう事だろうか。どうでもよさそうな顔をしていたが、忠告自体は本心っぽい。心配3割、悪戯心3割、残りは素直に教えてやらない反抗心ってところか。

 少なくとも、致命的な事になるような企みではなさそうだが…。

 

 折角忠告されたんだし、無視するのもなんだ。コソコソ行くとしますかね。

 

 

 

 

 …と思っていたが、あっという間に浅木の忠告の意味は理解できた。

 森の奥、舞華が居る筈の場所から、2人の声が聞こえてきたからだ。

 1人は言うまでもなく舞華。もう一人は……きららさん。

 

 …うわー、なんか面倒くさい場面かな…?

 バレたら更に面倒くさい事に発展するなと思いつつ、気配を消したまま近寄っていく。

 

 

 二人は適当な岩に腰かけ、何やら愚痴っているようだ。ちなみに舞華は煙草を吸っている。多分、GE世界でリンドウさんが吸ってた奴だ。これも、いつの間にか ふくろ の中に入ってた。俺は吸わないので、よく木の枝を加えている舞華に渡してみたんだが…大当たりだった。他にも欲しがっている子は居るので、近い内に研究資料として茅場に渡して複製してもらう予定。

 愚痴の内容は……定番と言うかなんというか、色んな事に対する不満。あれが面倒だコレが鬱陶しい、退屈だ、周りがいい子ちゃんばっかりで息苦しい、男の好き勝手にさせてるなんて信じられない、絶対その内ろくでもない事をする。

 

 

 …その内ろくでもない事をするというか、とっくにしまくってんですがね。それで何度大和のお頭に怒られた事か。

 散々好き勝手に言われてるが…まぁ、こんなもん…だよな? 環境や上司に対する不満なんて、幾らでも沸いて来るし、むしろ無い方が異常だし、きららさんはともかく舞華は本気で俺を鬱陶しく思ってる訳じゃないよな?

 思えば里にやって来て、風呂沸かし当番に任命してから、話す事すら少なくなっていたような…。…やっぱり、もうちょっと平等に目をかけた方がいいかな…。舞華もあんまり任務とかに積極的な方じゃないから、よく働いてくれる子達を重点的にコミュニケーションをとるのは仕方ないと思うんだが…。

 

 

 しかし…大丈夫かな、コレ。俺の事じゃなくてきららさんが。

 俺への罵詈雑言に頷いてくれる相手が見つかった為か、彼女は饒舌に俺に対する不満点をあれこれ述べている。

 舞華も、それにそこそこ同意しながら不満を零しているのだが……気付いているだろうか? 加えている煙草を、さっきから小刻みに上下させている。目元に力も入っている。…あれは、不機嫌になってきている顔だ。

 今更ながらに首を突っ込むべきか、隠形を辞めて、今来たばかりを装って話をするべきか。

 

 迷っている間に、きららさんは舞華の決定的な一線を越えてしまったようだ。

 

 

 途中から不満を零す事もやめて黙っていた舞華は、喋り続けるきららさんを睨みつけながら、煙草を咥えて大きく息を吸い込んだ。あっという間に灰になっていく煙草。どこぞの地上最強の生物が、葉巻で似たような事やってたな。

 フゥーーーッと灰の中の空気を全て押し出すように、きららさんの顔に向かって吹き付ける。

 

 

「だからあんな奴ケホッケホッ、ちょっと、何すんのよ!」

 

「おい、いい加減口を閉じろ。…気付いてないようだから、今のうちに言っておいてやる」

 

 

 簡易灰皿(たたらさん作)に火を押し付けて揉み消しながら、舞華は立ち上がった。微妙に熱気が漏れ出している。自然界最高級の炎とやらが、舞華の感情に連動して猛っているのだろう。

 

 

「ここで一時でも暮らすなら、若に舐めた口を効かないこった」

 

「好きでここで暮らしてるんじゃないわよ。出ていかれると困るって、あいつが言ったんだから。何よ、悪口言ったらご飯抜きにでもされるの? 本当に狭量な頭領ね」

 

「不満を零したところで、よっぽど的外れな事言ってない限り、どうこうするような人じゃねえよ。むしろ、上に対する不平を遠慮なく言えるのは風通しがいい証拠だって言って笑ってる」

 

 

 ……まぁ…言う、かな。いい気分はしなくても、それを理由に即処断はしない。

 ただでさえ、周囲が全肯定ハム太郎ヘケケ並みに肯定してくる環境に居るのだ。実のところ、この環境に慣れて自分と異なる意見を受け付けなくなった独裁者になってないかと、自問自答する日々である。

 

 

「でもな、そいつは若本人だけの話だ。若の周りにゃ、同じ暗示やら何やらをかけられてるらしい俺達でも引くくらいの狂信者じみた連中が揃ってる。妙な事をしないように、神夜さん達も手綱を握っちゃいるが、そもそもあの人達も基本的に若第一主義だ。そいつらだけじゃねえ。若は間違いなく、俺達の中心だ」

 

 

 睨みつけて威圧しながら……と言うか、完全にガン付けしながら舞華は続けた。

 最初は言い聞かせるように、或いは自分の激情を抑えるようにゆっくりと発していた言葉が、徐々に強く、早くなっていく。

 

 

「口五月蠅いだけの気に入らねえ、借りがあるから従ってるだけの頭領ならまだしも、飯くれて、大っぴらに暴れても顔を顰められるどころか褒められる場所をくれて、ケツ持ちまでして俺らの為にあれこれ走り回ってくれてんだ。そんな人を嫌いになんてなれるかよ。俺らが腹いっぱい美味い飯食えるのも、暖かい寝床で手前がぐっすり眠れるのも、そもそも封印から目を覚まさせてくれたのも、全部あの人が…あの人達がやってくれてんだ。あたしだって、こいつ(煙草)をくれた恩がある。それを多少の不平不満が出るくらいならともかく、『頼んでない』だの『気に入らない』だので唾吐きかけるような真似すりゃあ、俺らは仁義忘れた忘八者以下だろうが。手前はそういう風に見られてんだよ。少なくとも、俺らの頭領に世話になっときながら、牙を剥き出しにする恩知らずってな。さっきもお前が来た途端、浅木がさっさと離れてっただろう。絡んでもろくな事にならないって思われてんだよ。他の連中にどう思われてもいいから、突っ張り続けるってんなら好きにしろよ。お前が何を考えようが、俺の知ったこっちゃねえ。だが、目に余るようなら報いを受けてもらうぜ。俺だって黙っちゃいねえからな!」

 

 

 ドン、と炎が吹き上がる。

 元々気が長いとは言えない舞華だ。延々と愚痴に付き合わされて、導火線が短くなっていたのもあるだろう。

 

 …正直、話の内容と言うか理屈よりも、舞華がここまで言ってくれる事に目頭が熱くなる。ヤンキー入った普段の言動からも分かる通り、舞華はどちらかと言うと群れに反発する一匹狼タイプだ。

 不良漫画の、ヤバいけど実は身内に優しい主人公を見たような気分だ。

 親の心子知らずと言うが、本当に伝わってないのかは分からないもんだねぇ…。鬱陶しがられているけど、親心を理解していてくれた……親として名利に尽きる。

 

 その一方で気になるのは、きららさんの表情だ。男嫌いと言うのを差し引いても、彼女は極度の強気で負けず嫌いだと聞いている。舞華の迫力に一瞬だけ戸惑うのは分かるが、その直後に見せた表情が分からない。

 

 

 

 やっと友達が出来たと思ったら、即座に裏切られたような表情。

 

 

 その表情を浮かべていたのはほんの一瞬で、すぐに冷気を撒き散らしながら「やるっての?」とばかりに舞華を睨み付ける。

 …これは…やっぱり、さっきアサギと話した、あの想像は大体当たってたって事だろうか。封じられる前の更に前、発見されたばかりの頃のきららさんは極度の人間不信だったと言う。この地に辿り着くまでの、鬼との闘いの旅で、手ひどい扱いを受けて来たんだろう。記憶を失った今でも、そのトラウマが残っているのかもしれない。

 

 基本的に俺至上主義か、俺に対して好意を隠そうともしないからなぁ、うちの殆どの子達。

 男が居ない環境はきららさんにとって快適ではあっただろうけど、周囲は揃って俺の事を…自分の周りの中で、唯一気に入らない男の事を中心として生活している。…とんでもなく鬱陶しかったろうなぁ。周囲の環境が快適なだけに、一つだけ残る不快感が猶更目につく。

 そんな中で見つけたアウトローな二人。浅木と舞華。こいつらは基本的に反骨精神旺盛と言うか、大勢に迎合する事を嫌う節がある。まぁ、要するに逸れ者…に見える訳だな。

 きららさんから見たら、自分と同じように俺を嫌っている、少なくとも行動原理の中心としているようには見えない二人は、同類のように見えたのかもしれない。

 ものの見事に、そのシンパシーは打ち砕かれた訳ですけども。

 

 

「はん、訳が分からないわね。あんな奴の何処がいいのよ。大体、男なんてみんな同じよ。いやらしい事しか頭にない、性欲塗れの猿同然じゃない。偉そうにしてるだけで何の力もない、私達みたいな特別なタマフリだって使えない。要するに、恩を盾に皆をいいように利用してるだけじゃないの」

 

「恩を返すのは当たり前だろうが。偉そうにしてるだけで何の力もない? こんだけの環境を作り上げる事ができる奴を、どこをどう見れば何の力もないだなんて言えるんだ」

 

「無いじゃない! あたしみたいに氷を操る事もできない、あんたみたいに炎を出す事もできない! 基本的なタマフリしか使えない、ただのモノノフでしょ」

 

「………ああ、それで『力が無い』ってか。……呆れたもんだ。アサギはお前らを率いていた為に、過労死寸前になってたって聞いたが……納得だ。馬鹿な事言ってる阿呆に、分かりやすく言ってやる。物の試しだ。そこの岩、壊してみろよ」

 

 

 舞華が示したのは、腰かけるのに丁度良さそうな岩。

 言われるままにきららさんは岩に向かい、片手を突き出した。冷気が集まり、迸る。

 

 

「……ふんっ! せいっ! …これがどうしたのよ」

 

 

 氷に包まれ、次の瞬間には突きが叩き込まれる。粉々になる岩。…使っている所を見たのは初めてだが、確かに強力な能力だ。相手が無機物の岩だったから冷気の効果は半減したが、生物であればまともに動けなくなった所に、全力の一撃が叩き込まれるのだろう。

 きららさん自身の身体能力も高く、それを扱う為の体術も俄仕込みではない。ちゃんとした役目を与えて適切な所に設置すれば、いい戦力になるだろう。…暴走しなければ、だけど。

 

 それはともかく、きららさんが岩を砕いたのを見た舞華は、やれやれと首を振った。馬鹿にされたと思ったのか、ヒートアップする(漏れ出るのは冷気だが)きららさんをよそに、今度は舞華が動く。

 炎を出す…ような事はせず、近くにあった石を拾い、別の岩…きららさんが壊した岩と同じくらい大きな岩に向かい、思い切り叩きつけた。

 

 ガン、ガン、と硬質な音が何度か響く。ひび割れていく石と岩。何度目かの激突で、石が割れてしまった。

 

 

「…それで? 何が言いたい訳? 岩を割ろうとしたみたいだけど、結局失敗してるじゃない」

 

 

 せせら笑うきららさんを全く意に介さず、舞華はもう一度別の石を取り、岩を殴りつける。

 三つ目の石が砕けたと同時に、岩はひび割れ砕け散った。

 

 

「…勘違いをしているようだがな、俺は一撃で壊せとも、タマフリを使って壊せとも、粉微塵にしろとも言ってない。俺は『岩を壊せ』と言っただけだ」

 

「それが何よ」

 

「お前はタマフリを使って岩を壊した。あたしは道具を使って岩を壊した。そこにどんな違いがあるってんだ?」

 

「はぁ? 違うでしょ! 私は一発で壊したし、時間だってかかってないし、あんたがやったのと違って粉々でしょ!」」

 

「同じだ。今回は石ころしか手元になかったらちょっと時間がかかったが、準備しとけばもっと短時間で同じ事ができただろうよ。条件は『壊す』だけなんだからな。…わかんねーか? お前が根拠として考えている『力』、あたし達が使えるような『特別なタマフリ』なんぞ、手間と道具を省略する事しかできねえんだよ。日頃から準備してりゃ、そこらの弱小モノノフだって同じ事ができるんだ。本当にこれが特別な力だってんなら、人の手ではどうやっても再現できない事をやって…例えば時間を巻き戻すくらいの奇跡を起こしてから言えってんだ」

 

 

 おお…教育の成果が出ている。目を覚ました頃は、特殊能力を振り回す事しか頭になかったのに。…やはりアレか、自分達を作り上げた連中の馬鹿さ加減を教えたのが効いているんだろうか。

 ちなみに、舞華のこの言いようは、任務に出る為の教育で口を酸っぱくして言い聞かせた事そのものだ。ちゃんと聞いてたんだな。

 

 

「そもそも、若はタマフリかどうかは知らんが、妙な能力を幾つも持ってるぞ。今のところ、異界の浄化を実現した唯一の人間だしな。単純な強い弱いで言っても、あたしを含めた50人以上を真正面から押し返して打倒すくらいの化け物だ。そんな人をどうやったら弱いだの、特別な力を持ってないだの言えるんだよ」

 

「はぁ? 法螺にしたって盛りすぎでしょ。大体あいつ、元はあなた達ちも違うただの一般人だったそうじゃない。そんな奴が特別な力なんて持ってる訳ないわ。見栄を張る為に出鱈目言ってるんじゃないの」

 

「一般人だろうが何だろうが強い奴は強いだろうが。異界浄化だって皆知ってるし、すぐそこで起きた事なのに何で知らねえんだよ。ああ、男と会いたくないからって閉じこもってりゃ、色んな事に置いていかれるのも当たり前だわな。大体、強い弱いを言ったらてめえこそどれ程のもんなんだよ」

 

「…なんですって?」

 

「昔の事を覚えてないんだろ。実際に鬼と戦った記憶もないし、聞いた話じゃアサギに物凄い苦労を掛けてたみたいじゃないか。それでよく自分は強いなんて言い張れるもんだな。それこそ、法螺拭いてるようにしか見えないってもんだ」

 

 

 今度はきららさんの声色が変わった。どうやら舞華は、的確に地雷を踏み抜いたらしい。

 あー、どうやらきららさんって、頭に生えてる角の通りに、鬼としての性質を持ってるみたいだからなぁ。今この世界で猛威を振るっている鬼じゃなくて、昔話の鬼っぽいというか。

 力を重視して、直情的で、嘘が嫌い。

 他人に対する評価は勿論、自分に対してもそれは当て嵌まる。そんな鬼…と言うか人を相手に、「お前は実は弱くて、イキッてるだけじゃないのか?」なんて言えば、そりゃ即座にキレるわな。

 きららさんが本格的に臨戦態勢に入ろうとしているのを野生(或いは不良の)勘で感じ取ったのか、舞華の体から熱気が漏れ始める。同時にきららさんからも冷気が漏れて、二人の温度差がものすごい事になり始めた。ヒートアップ具合では同じくらいなのにね。

 

 

 っと、いかんいかん、呑気に分析してるところじゃないわ。さっきの話は、舞華のイメージ的に聞かれたくないだろうから、ついさっき来たばかりと言う事にして…。

 ほい、音爆弾。

 

 

 キィィィィンと甲高い音と同時に飛び出す。二人は反射的に耳を抑えてうずくまっていた。…思いっきりバインドボイスを受けた時のリアクションだな。むぅ、音爆弾でこのリアクションか…。慣れない音だって事を差し引いても、咄嗟に動くくらいの事はしてほしかった。

 …いや、見た目的にはオイシイんだけどね。ガタイがよくておっぱいも大きい二人が、耳を抑えて勢いよく蹲る。そりゃ成大に揺れるってもんさ。

 さて、戯言はこの辺にして。

 

 

 はいはいそこまで。物騒な気配撒き散らしてんじゃねーよ。

 

 

「あんた…!」

 

「若!? ちょっ、いつから!?」

 

 

 いつからって、お前らがタマフリについての話してる辺りからだが?(と言う事にしておこう)

 

 

「お、おう、ならいいんだ…いやあんまりよくないけどいいんだ…」

 

 

 さっきまでの熱気はどこへやら、冷や汗を拭う舞華。俺への態度について激昂してたのを知られたくなかったんだろう。不良キャラ的に、イメージに合わないからだろうか。…タマフリについての話も、真面目に授業を聞いてた事を示すから知られたくはないだろうが、最初の話題に比べればマシってところか。

 安心したのも束の間、俺に向けて殺気を放ち始めるきららさんと、それに気付いて再び熱気を漏らし始める舞華。

 

 

 ったく…一切喧嘩するなとまでは言わないが、やるならタマフリだの真剣だの使うんじゃないよ。武器で殴りつけていいのは、鬼と敵だけだ。

 自分のタマフリに自信を持ってるなら、猶更人間相手に使うもんじゃないって自覚してくれ。

 

 

「うっさいわね。あんた何でこんな所に居るのよ。顔を見なくていいのが唯一の美点だったのに。しかも盗み聞きだなんて、品性の欠片もないわね」

 

「てめぇ…」

 

 

 舞華やめろ。俺もきららさんに用事があったんじゃなくて、舞華に用事があって探してただけだ。

 そしたら品性どころか理性もない殺気が漂ってきたんで、急いで来ただけだ。(と言う事にしておこう)

 気付かなかったのはあんたらの不注意だ。目の前以外にも敵がいるのを忘れてるからだ…。

 

 ま、いい。この場であんたとどうこうする気はない。舞華、これから任務に行くぞ。付き合え。

 

 

「…あ? あたしが、か? 面倒くさい…っつうか、あたし浅黄の試験受かってねえぞ。それこそ面倒だから、受けてもいないし」

 

 

 特例を今まで出してなかった訳じゃない。諸事情あって、舞華が向いてて、その実力もあると判断した。とは言え、今回限りだから、今後も鬼を焼きたいと思ったらやっぱり浅黄の試験に受かる必要はあるが。

 ああ、今回の任務で充分な実力があると判断されれば、試験の免除も考慮しよう。

 

 行く気はあるか?

 

 

「そういう事なら、受けるぜその話。…あと、書類での報告も免除にならねえ?」

 

 

 今回限りだぞ。

 …ところで、二人での話はもういいのか? 殺気振り撒く話だったら、張り倒してでも止めにゃならんのだが。

 

 

「いや、話はもう終わりだ。気にする事でもねえよ」

 

「ちょっと、全然終わってないわよ。あたしは」

 

「終わりだ。あたしが言う事はもう言った。お前の意見は聞いてねえ。これ以上、お前に付き合うつもりも理由もねえんだよ。後は勝手にしろや。どうなろうと、俺の知ったっこっちゃねえからよ。若、任務の内容は」

 

 

 異界浄化の護衛だ。鬼との戦闘は少ないだろうが、油断するなよ。

 重要度で言えば、そこらの鬼討伐よりも余程高いんだから。

 

 

「へっ、確かに暴れられないんじゃ面白くねえが、異界浄化にゃ興味あったからな。瘴気が一遍に消し飛ぶ光景は、一度でいいから見てみたかった。んじゃ、準備してくる」

 

 

 上機嫌になった舞華は、きららさんを他所に自室に戻ろうと歩き出す。背後から睨みつけられている事に、気付いているのかいないのか。

 全く相手にされていないのが分かったのだろう。きららさんは血が滴りそうな程に拳を握りしめ、舞華の背中を睨み付ける。

 

 …やっぱりただ説教されたり言いたい放題言われただけじゃないな。この反応は、何かしら心の傷を抉った時の反応だ。自覚はないんだろうけども…。

 下手をすると、それこそタマフリまで使って殴り掛かりそうだ。

 

 こりゃ放っておくといかんと思って、視線に割り込む。

 単純な彼女は、あっさりとターゲットをこっちに移した。元々男嫌いな事も手伝って、容易く殺気の行き先が俺に変わる。

 

 激情のままに力を振るおうとしたようだが、悪いがそれをさせる訳にはいかん。やらせたら、それこそ彼女を許しておく事ができなくなる。一線を超えさせる訳にはいかない。

 殺気…は彼女の性格上、起爆スイッチにしかなりそうにないので……。

 

 

 あっ、オニビが居る。

 

 

「なんですって!?」

 

 

 きららさんが振り返った瞬間に撤退。あっ、ごめーん見間違いだったわ。見間違いだから嘘じゃないよ嘘じゃ。

 背後からの咆哮を聞き流しながら、こんな手に引っ掛かる単純さを割と真面目に心配した。

 

 …とりあずこの場の激発は免れたが、ありゃ放っておくわけにはいかんな…。男嫌いが思っていたより根深かったのもあるが、周囲との確執が致命的なものになりつつある。

 ようやく見つけた同志でさえ、実は敵側で手酷く拒絶される始末。

 ストレスや怒り悲しみが、彼女の暴発の元になるのは目に見えている。どっかでストレス解消させるなり、味方を作らせるなりしなきゃいかん。

 

 …だが、うちの子達じゃ駄目だな。俺に関する事で相容れそうにない。

 里の人達は…彼女の性格を鑑みるに、問題を起こす可能性が高い。

 となれば…まだ封印されている奴らの中で、女の子を連れてくるか…。でもきららさんと同じような性格だったら、それこそ不和の元だし。

 

 さて、どうしたものか。…早めの対処が必要だが、今は初穂・舞華・アサギで領域浄化が先だ。あまり待たせると初穂がキレそうだし、さっさと行くとしますかね。

 それにしても、舞華があんな風に言ってくれるとは…。……ご褒美あげたくなっちゃうよ。

 

 

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