※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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引越直前になって誤算が…。
酒屋に行って、割引券とポイントカードがあるのを思い出して、残高を聞いたらまさかの5,000円近く。
引越し先には同じ系統の酒屋が無いので、使わなければ無駄になる。
ツマミじゃ使い切れないので、仕方なくアサヒドライを1ケース購入。
現在、我が家の冷蔵庫にはビールがずらりと並んでいます。
冗談抜きで、それしか入ってない。

…引越当日までに飲み切れるかな…。
義務で呑んでも美味しくないけど、残すのも勿体ない。
…ポイントカード、誰かにあげればよかったかなぁ…。


第523話

 

堕陽月伍拾禄日目

 

 

 紅に新たな背徳の悦びを教え込んだ翌日。

 

 本日の罰として博士にこき使われているきららを肴に、里の甘味屋で一番高い品を食っている舞華。

 鹿之助は里の人達から探し物を頼まれ、骸佐はたたらさんと武器の事で何やら話し込み、権佐は何故か畑仕事を手伝っている。

 道場では神夜が思う存分稽古に明け暮れているし(相手してる里のモノノフさんに同情する)、本日の食事当番の明日奈は買い物中。詩乃は最近の趣味、バードウォッチング(兼狩り)で肉を確保しようとしている。

 子供達と遊んでいるのか遊ばれているのか、雪風が子供を追いかけて走っていくのが見えた。それをあらあらと微笑みながら見送る不知火…その乳やうなじに男達の視線が集まっているのに、気付いているのかいないのか。

 散歩していた橘花は俺と会うやいなや雌の顔になるし、秋水は何やら難しい顔で術の研究中。

 

 …何気ない一日って奴かねー。平和平和。…道場で地獄見てる奴も居るようだが。

 そんな中、大和のお頭から召集がかかった。

 俺だけじゃなく、里の主力陣全員にだ。……って事は、お説教じゃないよな、きっと。ここで「今からお前達には殺し合ってもらう」とか言い出したら……キャラじゃねーな、思い浮かばんわ。

 

 

 

 

「塔の場所が判明した」

 

 

 塔の。……って、オオマガトキを開く為の塔?

 

 

「ああ、その塔だ。里から最も距離が離れた異界、乱の領域の奥深く。そこに多くの鬼が集まり、塔を築き上げようとしている」

 

 

 乱だったか…。惜しいな、隣の戦の領域を先に浄化しようと思ってたんだが。

 いやそれはいいんだが、またゲームストーリーからズレが出たな。今更だけど。

 ストーリー展開の順番で言えば、まず鬼の指揮官であるゴウエンマの居場所が判明し、その討伐後に塔を発見、その塔を隠す為の結界を張る鬼が現れて、そこから速鳥イベントに突入…と言う流れだった。

 指揮官討伐がすっ飛ばされてるんだな。

 

 …正直、気がかりと言えば気がかりだ。オオマガトキの塔の周囲には、多くの鬼が集まっていた。しかしその鬼は一体一体は強力だったとしても烏合の衆だった。

 そこに、指揮官役のゴウエンマが加わったとしたら? …塔を守る鬼達が、組織立った抵抗を見せるようになるかもしれない。

 

 

「乱の異界か…。俺もまだ行った事はねえな。到着するまでに活動限界が来ちまう。おい速鳥、お前、そんな所まで一人で行ってたのかよ」

 

「…任務ゆえ」

 

「…? どうした、速鳥。何か気になる事でもあるのか」

 

「…………例の謎の鬼の痕跡が、全く無いのが気にかかる。古の領域を消し飛ばした鬼神、拙者が見た何よりも危険な鬼。探索中に奴の痕跡が無いか注意していたが…戦いの痕跡はおろか、足跡一つ見つからぬ。…貴殿、何か心当たりはないだろうか?」

 

 

 うぇ、お、俺? 何で俺に聞く?

 

 

「…何でも何も、お前の知人だったんだろう」

 

 

 あー…いや、知人だった可能性が高いってだけで、具体的な事は何も覚えてないんで…。(という設定だったよな)

 こ、痕跡を探すって言っても、相手は人と大差ない大きさの鬼だぞ。異界の中でその足跡を探すのは、流石に厳しいんじゃないか? 初穂みたいに、鬼の手を使った霊視術みたいなのがあっても。

 

 

「? 貴殿にしてはおかしな事を…。鬼に限らず生物が活動すれば、痕跡は必ず残るもの。忍びの術を持ってすれば、その痕跡の一欠片を探し当てる事も不可能ではない」

 

 

 不可能ではないってだけで、確実じゃないだろうに…。それに、そういう探索術は、それまでに積み重ねた伊呂波があってこそだろう。お前が気にしているのは、完全に未知の鬼だぞ。俺だって、奴が普段どういう生活をしているのか、全く検討がつかない。

 …ただ、周囲の異界に一切痕跡が無いってのは、確かに不自然だな。

 異界を喰らう性質上、他所の場所に行くとは思えないし、他の鬼の縄張りに入り込んだらその周辺ごと即斬殺するだろうし…。

 

 …どこにも痕跡が無いって事は、まだ移動してないんじゃないか? 消し飛んだ古の領域の何処かに潜伏しているとか…。

 

 

「…あれ以来、古の領域を訪れていないが、隠れられるような場所は無かったでござる。地面に潜って姿を隠したとしても、その痕跡なら見つけられる」

 

「その鬼に関しては確かに気になるが、痕跡すらないのであればどうしようもない。…案外、ずっと遠くの異界に去ってしまったのかもしれんぞ」

 

「…うむ…」

 

 

 楽観は禁物だが、腹も減ってないのに暴れ出す事は無い…と思う。少なくとも人間相手に興味は示さないよ。その分、暴れ出したら周囲に何が居ようがお構いなしだけど。

 

 

「まーなんだ、もし現れて暴れ出したら、その場を任せてさっさと逃げるのもありじゃないか? 領域そのものを消し飛ばすような大暴れをしたら、塔だって無事ではいられないだろ」

 

「…それも一つの手ではあるが、不安が大きいな。せめて、その鬼を誘導する方法でもあれば…」

 

「そう言えば秋水、あんたそういう術を研究してなかった?」

 

「…ええ、今もしています。未完成ですが、それなりの成果は出ていますよ。尤も、その鬼が人から変じた未知の鬼である以上、通用するかは分かりませんが」

 

「いや、その鬼に効果が無くても、周囲の鬼をその鬼に向かわせられれば…」

 

 

 

 喧々囂々。……心臓がバックンバックン跳ねてますが、何とか気付かれていません。

 どうしよう…いやもうこの際、鬼に変わる事がバレるのは別にいいんだ。俺個人はどうとでもなる。里から追放されたとしても、どっか別の場所に移り住んで独立できるくらいには、うちの子達も生活+戦いに慣れてきている。

 …でもぜってー怒られるよなぁ…。気にするのそこじゃねーだろって話だけど、ぜってーこっぴどく怒られるよなぁ…。

 バレたらマジで追放も有り得る。鬼に対する恐怖じゃなくて、散々やらかした上に、異界を消し飛ばすなんてとんでもない事やってしらばっくれてた罪で。

 

 …うん、何も言うまい。ここまで来たら、今言っても後で言っても怒られる度合いが違うだけで罰の内容に変化はあるまい。結果が同じなら、隠し通せる可能性に賭ける…! きっと殺人を犯した人間が逃げ隠れするのはこんな心理からだ……。まぁ俺とっくに殺人犯になってんだけど。だが凌辱用の汚ッサンを殺った事に後悔は一切ない。証拠も残してないし。

 

 

 それはそれとして、速鳥の様子がなんかおかしいな。謎の鬼の事をきにかけているのは確かだろうが、他に懸念を持っている…よーな気がする。

 こーいうのを放っておくと、必ず面倒な事になるんです。経験上分かります。

 しかし、誤魔化したという事は正面切って聞いても正直に答える訳もなし。

 

 …あとでこっそり尾行してみるか。とりあえずこの場は例の鬼が出現した場合の対策について話し合い、翌朝に討伐に向かう事になった。

 

 

 

 

 

 

 さて、速鳥を早速尾行している訳ですが………なんであんたまで居るの、息吹=サン。

 

 

「何でも何も、速鳥の様子がおかしいのに気付いているのはお前だけじゃないってだけだ。あいつ、忍びみたいな恰好してるのに、隠し事とか苦手なんだよな」

 

 

 覆面で殆ど表情見えないけど、態度に出るもんなぁ。他に気付いてるのは?

 

 

「全員。皆で様子見に来るとすぐ気付かれるから、一人一人交代で見張る事になった」

 

 

 …いつ相談したの? 俺、そんな話聞いてない…。仲間外れにされたみたいで、地味に凹む。

 

 

「俺らが相談する前から、さっさと尾行に向かっていったからな。相談しなかったのは、お前の方だよ」

 

 

 ……凹む。そして、やむ…。

 で、実際の所、速鳥に何があったんだろうな? こうしてこっそり様子を伺ってても、気付いてないっぽいのがまた…。普段であれば何かしら勘付くだろうし、そこからの対応も色々想定してたんだけど。

 

 

「分からん。塔の情報を持ち帰って来た時から、あの状態だ。と言う事は、異界で何かあったんじゃないかと思うんだが…」

 

 

 異界かぁ…。異界で速鳥が悩むような事、何かあるかな…。人は居なくて、あるのは鬼と…廃屋くらいだろうに。

 廃屋の中で、何か気になる物でも見つけたんだろうか。

 

 こうして見ていると、速鳥は何かと空を見上げている。…いや、空…じゃないな。屋根の上、木の上だ。空を飛んでいる鳥にも目が行っているようだ。

 空を見上げてない時は、家屋の隙間や物陰など。

 

 

「…確かに、そいう所を見てるな。……犬猫や鳥を探してる、って事か? 天狐もそうだが」

 

 

 目をやるところを元に考えれば、その可能性は高そうだな。天狐は一度目が合うと、硬直するんだよなぁ速鳥は…。

 しかし、異界の中で動物に関わる何かを見つけた? うーん、正直考えにくいぞ。

 

 

「異界で生きていける動物なんて、天狐くらいだからな…。それに、言っちゃ何だがたかが犬猫、だ。いや命の重さを比べる訳じゃないが、重要な戦いについての会議中にまで、それを引き摺るとは思えん。…天狐の事ならともかく」

 

 

 天狐の事ならともかくな。それに関しちゃ、実物が居たら会議の時でも目が釘付けになりかねんからな…。

 …しかし、こうやって尾行してても手掛かりは掴める気がしないな。

 

 

「そこは同感。こりゃ、さっきの話の時に無理にでも詰め寄った方がよかったかもな。多分口を割らなかっただろうけど。せめて、何か物証でもあれば…」

 

 

 物証ねぇ…………。

 

 

 …鷹の目!

 

 

 

 

 

 ……ほほぅ。速鳥、その物証とやらを隠し持ってるみたいだぞ。

 

 

「…どういう事だ?」

 

 

 思い返して気付いたんだが、左の懐に何度も意識をやっている。動きには出してないけども。

 そこに何か潜ませてるな。……形状からして…袋…か? あまり大きな物、重い物じゃない。それこそ、雀が銜えて飛べるくらいの物だ。中身は多分、紙だな。…文か、絵か…。

 

 

「動きに出してないなら、どうしてそこまで分かるんだよ」

 

 

 武術やってりゃ、大なり小なり経験した事あるだろ。あ、こいつここを狙ってるな、ここを防御しようとしてるな、って感覚。速鳥が本気で隠してるならともかく、平時なら意識も追いやすいよ。

 形状に関してはほぼ推測。速鳥の服に大きな膨らみは無かったし、服が乱れる様子も無い。と言う事は平べったく畳む事ができて、重さも無い。

 それに入れられる物で、速鳥が気にしそうな物となれば、何らかの情報を齎す物か、異界特有の物理法則に縛られない『何か』の素材だろう。

 …まぁ、物理法則に捕らわれないから、いざ取り出してみたらとんでもなく大きな岩だった、なんて落ちもあるかもしれないが。

 

 

「よくもまぁそこまで頭が回るもんだ。…そいつを奪う気か? 速鳥に気付かれずに奪うのは、至難の技だぞ。気配探知は、俺達の中でも随一だ。気付かれずに近付く事さえ…」

 

 

 ? 何でわざわざ、気付かれずに奪い取る必要があんの?

 

 

「え」

 

 

 真正面から堂々と強奪します。どっちにしろ、それを元にして速鳥が何を隠していたか問い詰めるんだから、隠れるだけ無駄。

 ついでに言えば、明日の出発までにこの件を解決しておきたい。

 多少強引でも、話が早そうな方法を取るよ。こういう事を放置しておくと、鉄火場のど真ん中で大爆発する。

 仲間に秘密を作るのはいけません、あった事全部話なさいとまで言う気はないが、明らかな危険の種を放置する気もない。

 伊吹なら、この危険性は分かるだろ。

 

 

「まぁ、な。今まで救助に向かった先で、全滅寸前にまで追い詰められた部隊が、過去の確執が噴き出して状況にも関わらず仲違い中、って言うのも何度か見た事があるし。こんな時にそんな事で争ってる場合かって叫んだけど、今思うとこんな時だからこそ、そういうのが噴き出すんだな…」

 

 

 そうね、例え大型鬼との決戦中だろうと、浮気を知ったら即断して刺しにくる女も居るからね。

 さて、そんじゃ悪いが他の皆とも連携して、速鳥の誘導を頼めないか? これまでの推測が間違ってなければ、どこそこに『様子のおかしい動物が居た』とでも言えば、様子を見に来るんじゃないかな。

 場所は……道場でいいか。自然と手合わせに持ち込めそうだし。

 

 

「…いや別にいいけどよ、よくもそうすぐに仲間を嵌める為の段取りが出てくるな…。普段何考えて行動してんだ」

 

 

 こんなもの普通世普通。癖のある連中を纏めたり誘導したりするなら、これくらいはできないと。

 味方じゃなくて敵を誘導する事を考えて、それを味方の場合に当て嵌めてもいいしね。

 

 

「…人の上に立つって大変だな…。それはともかく、次の尾行は桜花の担当だから、そっちに伝えておくわ」

 

 

 頼んだ。俺は道場で、神夜の相手でもしてるから。

 息吹に手配を任せて、言葉通りに道場へ足を向けた。

 

 さて、何事だろうな。速鳥が気にする事で、他人に話したがらない…。いの一番に思い浮かぶのは、速鳥の過去関連だろう。

 忍びだった頃の仲間…と言っていいモノか…とにかく同僚から連絡でもあったのだろうか。

 

 …よくよく考えてみれば、速鳥の過去の事はあまり知らないな。いや他の連中の事も、さわりだけしか知らないようなもんだけど。

 幼子を斬る事を受け入れられず、仲間を斬って足抜けしたと聞くが…そもそもどうして幼子なんぞ斬る必要があったのか。裏切って不意を突いたとは言え、速鳥一人に全滅させられるような連中なら、元々腕が立つとは言えないだろう。

 そんな奴らを、一体どういう風に任務につけたのか。下手をすると、忍びとは名ばかりの野盗崩れ同然の集団だった可能性すらある。

 そもそも、ちゃんとした訓練を受けた忍びなんぞ、そうそう転がっているものではない。そして、速鳥は間違いなくちゃんとした訓練を受けた忍び。…にしては、甘さを捨てきれなかったようだし…。

 …どうにも状況がチグハグな気がする。速鳥にとって、単純にどうしても捨てられない一線がそこだった、という可能性もあるが…。

 …いや、これ以上考えても仕方ないか。速鳥の問題が、本当にかつての同僚によるものだったと決まった訳ではない。

 

 

 とにもかくにも、やってきた速鳥に怪しまれては意味が無い。

 とりあえず道すがら天狐を探して確保。これで速鳥の注意を惹き付ける事ができるだろう。

 

 久しぶりの、鳴き真似による意思疎通をしながら道場へ向かう。…懐に抱き抱えた天狐に、キュイキュイ鳴きかけているのを見られて生温い視線を向けられたが、まぁいいや。途中ですれ違った舞華の羨ましそうな視線には気付かなかった事にする。可愛い物好きだからね、隠してるつもりみたいだけど。

 ドタンバタンと結構な音が響く道場に到着。

 中を覗いてみると、予想通りに神夜が笑顔で大暴れしていた。昏倒させられ、道場の脇に寄せられているモノノフ数名。死屍累々である。

 

 おーい、神夜、その辺にしとけ。

 加減無しでぶっ飛ばしてると、その内相手にされなくなるぞ。

 

 

「その時は、あなたがお相手してくださいね♪ それに、ちゃんと加減はしています。皆さま、負けて堪るかと奮起される事極まりないです♪」

 

 

 …いやそれ、女に負けたくないって以上に、見えそうで見えない我儘な体に触れられないかって助兵衛心が丸出しになってるだけだと思うが。

 そう言って、まだ意識を保っている数名に目をやると、サッと逸らされた。助兵衛心のみではないが、図星らしい。

 だが気持ちはよく分かるし、そもそも神夜の服装はその為のものだ。見事に術中に嵌っている。…今夜もこいつらが羨ましがるドスケベボディを可愛がってやろう。

 

 が、今はそういう意味じゃない可愛がりの時間だ。

 構えろ、神夜。久しぶりに、真正面から相手してやる。

 

 

「………あはっ♪ 燃え上がる事、極まりないです…!」

 

 

 おおう、完全に本気だ。本来の得物、斬冠刀ではないとは言え、気炎は間違いなく実戦のもの。

 最近、相手は雑魚鬼(と言っても激戦区の大型だが)ばかりで、俺が直接遊んでやるのは閨ばかりだったからな。その鬱憤が溜っていたらしい。

 こっちに来てから、今まで知らなかった色々な物を見て回った為か、随分腕を上げているようだし…楽しみだ。

 

 …どうしよう、速鳥が来るのを忘れて遊んでしまいそうだ。

 

 

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