しかし正直この物件はハズレだった…。
安い物件には、安い理由があるもんですね。
広さは申し分ない。
職場まで5キロだけど、これはまぁいい。
4階まで上がるのは面倒だけど、これも割り切る。
洗濯機は屋外に付けなきゃいけなかったけど、それもカバーを買ったからもういい。
カバー到着までに雨と雪が来たけど。
風が強くて洗濯物が吹き飛ばされそうだったから、屋内用の洗濯物干しを買った。
エアコンは全部屋に行きわたりそうになかったから、持ち運べる冷暖のファンヒーターで対応。
届くまで、指がかじかんで執筆が滞りました。ていうか風邪ひきそう。
駐車場に屋根が無く、バイクカバーを一々持って上がるのが面倒なので、組み立て式のガレージを買った。アマゾンの住所変更してなかったんで、前住所に送られて転送代5,000円くらいかかった。
これだけ買って、計算上では予算から5万オーバー。
新生活の為の準備としては、ちょっと割高だけど許容範囲内だと思う。
ただただ、風呂が追い炊き専門とは…。
冷たい水で湯張りして、そこから改めて温める。
湯が混ざってないから上だけ熱いし、温度調整機能も無い。
湯が温まる速度も安定しない。
お風呂目当てに選んだのに…もうちょっと詳しく聞くべきでした。
一晩置いてもそこそこの温度は保っていたようなんで、出勤前に温め、帰ってきたら水で調節、かな…。
そもそも、風呂の準備が自動でできるけど通勤に30分以上かかるんじゃ、割に合わなくて当然だわぁ…アホやった…。
バイク通勤、はやくできるようにならんものか…。
堕陽月伍拾漆日目
ゲームシステムの話になるが、MH・GE・討鬼伝共に、基本的には4人で標的に挑む。ラヴィエンテみたいな集団戦もあるが、それは例外。
この4人と言うのは、ゲームバランスを保つ為の制限なんだろう。
人が少なすぎれば苦戦するし、多すぎれば楽過ぎて手応えが無くなる。巻き込み事故も増える。
が、これが現実になればどうだろうか。
命が掛かった戦いである以上、ゲームバランスもクソもない。楽に勝てるなら、確実にそれをやるべきだ。巻き込み事故については問題だが、それも攻撃方法を限定する、一度に襲い掛かる人数を抑えるなど、手段は色々ある。
だというのに、どの世界も基本は4人編成。数に任せて袋叩きにするという、人類が持つ最強の戦術を使う事は少ない。
理由は単純、戦力となり得る人間の数が少ないからだ。
ハンター、ゴッドイーター、モノノフ、何れも超常的と言って差し支えない力を持つ者達。それに反比例して、その人数は非常に少ない。強力なモノを相手にできる、優秀な人材なら猶更。
ある程度以上強力な相手をターゲットにすると、言ってはなんだが有象無象が数を揃えても戦力にならない。数ばかり揃えても、鎧袖一触とばかりに蹴散らされて終わりだ。
だからと言って、強力な戦力…この里で言えば、主に主力陣…を一点に集中させてしまえば、入れ違いで攻め込んでくる鬼に対処できなくなる。
少数精鋭で敵を倒すと言えば聞こえはいいが、数と質が両立できない為の苦肉の策と言った方が正しいのだ。
今でこそ4人で戦う為の効率的な戦術が開発され、下手に人数を増やすよりも効果的な戦いができるようになっているが、それでも限界はある。
例えば、今回の戦いのような、多くの鬼が待ち受けている異界に攻め込む時。
ウタカタの主力陣を、全て投入しての総力戦になる…が、もしもそこで反対に鬼が攻め込んできたら?
鬼の指揮官は、まだ討伐できていない。オオマガトキを起こす塔の完成が奴らの目的なら、それを囮として里を滅ぼしに来る事はないと思うが…やれなくはない。
例え杞憂であるにせよ、里を無防備にする訳にはいかない。
まぁ、主力陣が居なくても、うちの子達が居るんだけどね。
今回のループでの、一番の違いはソコだよな。うちの子達と言う、戦力はそれなり、人数は大、オツムはちょっと不安な戦力が揃っているのだ。
そのおかげで、ウタカタの里のモノノフ一人一人にかかる負担が減り、負傷者の数が減り、逆に鍛錬に使える時間が増えて、戦力が増強されている。
要するに、里のモノノフとうちの子達を総動員すれば、防衛部隊を作り、一部を休息に回しても、尚人数が余るくらいなのだ。
「斬冠刀・月架美刃!」「隼の術!」「旋風斧刃!」「逸刀流! 胡蝶乱舞!」
「マザーズ・ロザリオ!」「“四刀流・蛸殴り!」「体術-地の型!」「雷の鉄槌!」
「本家・まざーずろざりお!」「旋風陣!」「凍奔征走!」「電遁の術 」
「鬼千切ぃ!」「忍法・風神・空陣!」「風遁・気流乱舞!」「土遁・裂閃牙!」
「……うーん、数の暴力…」
「これが人間が持つ最強の戦術だな」
と言う訳で、残った子達は全員異界攻めの真っ最中です。
桜花達を初めとした主力陣は勿論の事、うちの子達にも班を組ませて、近寄ってくる大型鬼を片っ端から叩き潰している。
更に交代要員の子も居るし、雑魚的を優先的に狩る係も居るし、正直過剰戦力かなって思わなくもない。
どーでもいいが、明日奈に異国語を教えていたら、マザーズ・ロザリオの発音が良くなっていた件。その隣では、元々の開発者である木綿季がカラクリの小さな体で同じ技を繰り出している。…よくあの体でやれるもんだ。
鬼達も結構な数を揃えて待ち構えていたようなのだが、分断・足止め・タコ殴りを繰り返すだけで、大型鬼があっと今に溶けていく。
うちの子達、オツムには少々不安があるけど、火力がやたらと高いからなぁ。速攻戦術が一番有効なのは間違いない。
鬼達は、やはり指揮官に指示こそされているようだが、集団行動は苦手らしく、何より目の前の標的に釣られやすい。容易く孤立させる事ができた。
そこへここぞとばかりに襲い掛かり、最大火力を連続ブッパしていくうちの子達。後詰めも居るからって、後先考えずにバカスカ撃ちまくる。
何と言うか、凌辱的光景だな…。そこかしこで獲物を輪姦して潰していってるよーな…いや鬼を相手にそんな感想持つはずないだろって言われるとそれまでなんだけど。
おっと鹿之助と凛子、消耗し過ぎだ。骸佐と凜華に変われ。
紫、突出しそうになってるぞ。浅黄の隣を守るのを忘れなるな。
「ようやく出番か。見てるだけで退屈だったぜ。手応えのある戦いにはなりそうにないが」
「そうね。出番がないまま戦いが終わるかと思ったわ」
退屈だと言いながらも、警戒と準備を怠ってなかった事に成長を感じる…。
素直に交代した二人は、備蓄として用意していた携帯食料と水に齧りついた。
ふーむ、凛子は元々討伐系の任務を好んで受けていたから心配してなかったが、鹿之助も結構動けるようになってるじゃないか。最初は敵の感知役として連れてきて、集団の中心でレーダーだけやらせておこうと思ってたんだが…。
敵の進入路が限定されて、索敵の必要性が一時的に低下する場所があったので、戦闘に参加させてみた。いつも通りにビビるかと思ったが、頼りになる仲間が沢山居るからか、それとも一大決戦という場に連れてこられて何もしないんじゃ惨めになりそうだからか、意外にも進んで戦い始めた。
…あの雷遁の術っての、新開発した必殺技みたいだな。あれを試してみたかったのもあるかもしれない。
「今更なんだが、人数が多いというのはそれだけで心強いな。隙が増えるのも確かだが…。ここまで楽に異界を進めるのは初めてだぞ」
桜花が呻くように声を漏らした。
ま、人数が多い上に、一人一人がそれなり以上に戦えるという事実上の精鋭部隊だからな。実際、ウタカタでなければ主力扱いされるくらいの実力がある子ばっかりだし。
…油断と慢心はいただけないけど。あと報告書の適当さ。
「それらも随分改善されていると言うではないか。…実のところ、君達が使っている報告書の一部は、我々も真似させてもらっていてな…」
報告形式は統一するに越した事はないな。同じ内容で2枚書くないし目を通すなんて時間の無駄だし。
うちの子達でも出来るように、を念頭に作ったからある程度は直感的に報告できるようになってると思う…。
…そう言えば、うちの子達に対する授業に、里のモノノフもちょくちょく顔を出し始めたって聞いたが…。
「お察しの通りだ。我々も充分は教育を施せているとはとても言えない。前線で戦うモノノフは、どうしても生き残る為の武力を偏重するからな。書類仕事を学ぶくらいなら、腕に磨きをかけると言う者ばかりなのだ。君に所の授業で、色々覚えてくれればと思ってな」
…どこも同じだねぇ。鉄火場に出る以上、自分の命が最優先になるのは仕方のない事だが。
にしても、こうして直接戦っているところを見るのは初めてだが……里のモノノフ、随分腕を挙げてるな。
「里の中でも、特に期待されている若手がどんどん腕を挙げていてな。班の中核を担ってくれるようになったのだ。他にもそれぞれの役割を持った人員が充実してきた。よい循環が出来上がって来た…」
と、油断してると何が起こるか分からないのが世の常なんだよな…。
差し当たり、この戦いを無事で終わらせんと。
「やめろ。そういう事を改めて言うと、必ず何か起こるんだ。君達が言う所の…ふらぐ、だろう。明日奈が外来語だと言っていたが。……そろそろか。息吹、初穂と交代して富獄の援護に回れ。初穂は休憩だ」
「あいよ。ったく、美女と一緒に戦いたいもんだぜ」
「まだ行けるけど…本番はこれからだしね」
外来語とはまたちょっと違う気がするが…。まぁいいか。
いかにもな会話はこれくらいにして、鬼の意図を考えてみる。フラグを立てるまでもなく、鬼が何か罠を張っているのは間違いないのだから。
指揮官がこの先に居るのは間違いない。鬼達は明らかに目的意識と連携を持って襲ってきている。
しかし、それにしてはやっている事は戦力の逐次投入でしかない。何を考えているのか…。
虚海からの接触も無い。既に速鳥の事がバレているのか、今はその必要が無いと思っているのか。
………。…………?
おい桜花…速鳥はどこに行った?
「分からん、いつの間にか消えていた。ただ、出立前に途中で離脱するとは聞いている。問題は無い」
無い…のか? 事前に言ってたんだし、まぁいい…か? 今までなら誰にも言わずに行動してただろうし、進歩していると言えばしているか。
こっちも無理に探し出さず、今度は黙って信じておかないと、それこそどうにもならないくらいに拗れてしまいそうだし…。
事前に宣言して姿を消した以上、予定外の事でもないし、不必要な事でもない筈。…ここは静観するとしよう。
「それにしても…問題児と聞いていたが、彼女の力は頭一つ分飛び出しているようだな。さっきから大威力の攻撃ばかりしているのに、消耗した様子が殆ど無い」
うん? ああ、きららの事か。今まで色々と悪印象や悪評を積み重ねてきたから、ちょっとでも汚名返上させておこうと思って。
正直、予想以上の暴れっぷりだわ。他の皆は交代させて回復時間を設けてるのに、きららはその必要さえ生じない。むしろ、戦いの場で水を得た魚のように溌剌としている。
うちの子達の源流だけあると言うべきか、これだけの力の為にハブられる原因になったとみるべきか。
ま、あの子の事はまた後で考えよう。最近じゃ、毎日の罰のおかげでちょっとずつ受け入れられてきたしな。
悪感情が薄れたというよりは、体を張った芸人扱いされているような気がしなくもないが。
さて、そんな事を考えている内に、オオマガトキの為の塔が見えてきた。
完成率は……4割から5割、ってところか? 今までのループだと、見つけられるのは出来上がる直前だったんだが…随分と早く来てしまったようだ。
里に到着してからの期間で言えば、今までよりも長いと思うんだけどな…。ゲームストーリーで言う速鳥イベントが省略されたから、その差だろうか? 或いは、異界の浄化・消滅で鬼達の労働力が減少したためか。
「む……いたぞ、ゴウエンマだ。恐らく奴がこの場の指揮官だな」
桜花の目が向く先には、塔の前で何やらやっているゴウエンマが見える。………なんか…石を積んでるように見えるんだが?
「…指揮官自ら、塔の作成に加わっているようだな。面倒な作業を部下任せにしないとは、敵ながら天晴な奴だ」
「言ってる場合か。…鬼ってのは、石の塔を崩す側の筈だけどな」
「それこそ言ってる場合でもないだろうに。我々とて鬼を狩る鬼だから、何もおかしくは無い」
余裕の軽口だね。
…あれ、でもちょっとおかしくないか?
「うん?」
あの塔を作り上げるのは奴らにとって最重要事項だから、指揮官が現地に居る。分かる。
あの場所を守る為、大勢の鬼を待機させて防衛戦力にする。ここも分かる。
塔を作り上げる為、指揮官も作業に加わる。まぁ分かる。
…目の前まで敵が迫ってるのに、半分も完成してない塔の建造に力を入れる。……これが分からない。
「む…確かに、後少しで完成するという状況ならまだしも…」
「作業を続けるくらいなら、外敵の駆除だよな…。鬼の気質的に考えても」
「ちょっと待って、半分も完成してないってどうしてわかるの?」
鬼の手と目を通して見てみろ。貯めこんでる力の総量はあまり多くないし、塔を作る為に周囲を破壊した跡がある。その範囲を考えると、完成した塔は少なくとも今の倍以上になる筈だ。
「…いや、今はそれを考えるべきではない。目の前に鬼が居る。ならば斬るだけだ。どの道、あの塔をこれ以上高くされても面倒だろう。壊すのに手間がかかる」
まぁ、確かに。壊した途端に大爆発して周囲を巻き込む、なんて罠の類でもないようだし。
この場で急に方針転換するのもややこしい。取り敢えずあれをぶっ壊すのには賛成だ。
まだ敵の数は多いが、こっちの戦力も充分温存されている。このまま戦闘続行だ。
詩乃、こっちも戦闘に入るから、指揮を頼む。狙撃や援護は、俺達にはいい。指揮官を守ろうとして強行突破してくる奴の足止めを優先してくれ。
「わかったわ。言うまでも無い事だけど、何が起こるか分からない。気を付けていきなさい」
はいよ。…さて、ぶっ壊してきますか!
既に先陣を切っている桜花の後を追って走り出した。
ゴウエンマは割と簡単に倒す事ができた。初手の鬼葬で片足をぶっ潰したからな。動きが物凄く制限された。
何より、塔に被害を出すまいと必死だったようで、塔に向かって爆弾とか投げたらそれを自分から庇いに行くのだ。つまり身を犠牲にして、塔を守ろうとしている。
その心意気、敵ながら素晴らしい。多くの鬼達の努力と希望の結晶である塔に傷一つ付けさせまいと、己の身も顧みない自己犠牲の精神。
だが無意味だ。
ネタで言ってるんじゃなくてマジで無意味だ。今この時だけ塔に被害が出るのを防いだって、その被害の元凶である俺達を排除しない限り、結果は変わらない。
…さっき感じた疑問そのままだが、本当にこいつ指揮官なのか? 行動の順位が滅茶苦茶すぎる。
結局、戦力を逐次投入するだけで伏兵や策らしい策も無かった。ここまで指揮能力が無いと、そもそもここの鬼達を集結させる事ができたのかすら疑問に思えてくる。
…いや、しかし実際に集結してる訳だしなぁ…。
ともかく、ゴウエンマは至極あっさりと討伐された。途中から、皆して塔の方に狙いを定めたからな。待機していたうちの子達にも参加させ、塔に向かってバカスカバカスカ撃ちまくった。
そしてそれを庇って、もろに攻撃を受けたゴウエンマ。片足が無いのに仁王立ちみたいな事ができたのは大したものだが、何もできずに討伐されてしまった。
「…これで終わり…か? あっけないを通り越して不自然すぎるな」
「同感だぜ。いくらこっちに充分な戦力があったとは言え、鬼どもの行動が間抜けすぎる」
まだ残っている大型鬼達を掃討しながら、口々に不審を募らせる主力モノノフ達。
それに対して、うちの子達は勝った勝ったとばかりに勝鬨を挙げている。まだ敵が残ってんですけどね。いやまぁ大きな声を出して勝利宣言をし、相手の心を折る効果だってありますが。実際、慄いたらしき鬼達は散り散りに去って行こうしてるし。
……逃げる鬼達も、組織立った動きじゃない。思い思いに、とにかくここから離れようとしているようだ。
破損した塔に執着する者も居ない。
…恐らくだが、入れ違いで里を襲撃された訳でもない。そういうヤバい気配は感じない。
「……なんだ、景気の悪い顔してるな」
伊吹だって同じだろ。得心が行かない、って顔してるぜ。
……しかし、いつまでもここに留まってても意味は無いか。活動限界時間も、そう遠くは無い。
何かするにせよ、一時撤退が必要か。
「そうだな。…速鳥は、まだ戻らないのか。撤退の狼煙を上げておこう」
…それしかないか。何処にいるかも分からないし、探しに行けば二次遭難者が出るだけだ。
人付き合いに難はあるが、腕は確かな奴だ。無事に戻ってくるだろう。
さて、とにもかくにも撤収するぞ。
いつまでも浮かれてんじゃない! 里に戻って後始末するまでが戦いだ!