…した当日は社長が来るってんで朝っぱらから面談があるし、出たくも無い懇親会に出なけりゃならないしで、一日何もできませんでした。
畜生、これだからお偉いさんってのは!
まぁ次の日から連休だし、遊びつくすんですけどね。
しかしそれ以上に問題だったのは、エアコンが無い事による寒さ。
気力ががりがり削られます。
そりゃハンターだってあっという間にお腹がペコちゃんになるよ。
ゲームする気にもならないし、執筆だって指が動かず頭も回らず進まない。
全く、エアコンは世界の至宝ですな。
…と思っていたら、到着当日に妙に暖かくなるし、電気契約変えてアンペア上げたのに使ったら即ブレーカーが落ちる。
挙句、プレステ4の再インストールが必要になった為にセーブデータが吹っ飛びました。
最初のジェイルを攻略して、さぁこれから面白くなる!ってところだったのに…。
暮せば暮すだけ、外れ物件への恨みが募っていきそうです。
堕陽月伍拾溌日目
…朝だぁ。流石に疲れた様子の速鳥・桜花と一緒に、里に戻る。
なんか色々と出迎えられて、もみくちゃにされました。こっそりちんちん触られたけど、あの感触はアイツだな。後でセクハラしてやろっと。悦ぶだけだろうけど。
えー。何があったかと言いますと…昨日の塔を破壊して戻る途中に、一悶着あったのです。
いや、よくよく考えてみれば充分に察せられる事だったのに…。間抜けだなぁ俺も。
その後の事は……いやあれはちょっと予想できんわ
とにかく、戦いを終えて全員居るのを(速鳥を除いて)確認し、隊列を組んで帰還。
戦っていた時間は長いという程ではなかったが、活動限界は思っていたより近付いていた。俺は耐性があるから何ともなかったんだけど、塔の周囲は何気に瘴気が濃かったらしく、瘴気の侵蝕が激しかったようなのだ。
元々、瘴気って鬼達の遺体から出る特殊な粉塵だからな…。一か所で倒した鬼が多ければ、多少は瘴気が濃くなるのも、まぁ納得できなくはない。
…あのゴウエンマは、それを狙っていたんだろうか? 時間を稼いで活動限界を迎えたモノノフを叩き潰そうと?
それにしたって、効率が悪すぎるよなぁ…。
なんて考えていた、正にその時。
突然速鳥が現れた。深手は負ってないが細かい傷が多い。そして何よりも体力を消耗しているようだった。
「速鳥、無事だったか! こっちも問題なく「囮でござる!」…何?」
「貴殿らが破壊した塔は、囮であった! 奴らの本命の塔は他にある!」
…! そういう事か…!
さっきの塔は捨て駒、或いは予備。鬼がそこまでやる筈がないって先入観にやられた…!
「塔がもう一つ…いや、下手をするとまだ予備があるかもしれない…!? 速鳥、その場所は!?」
「一つ目の塔があった場所の、更に奥。瘴気が非常に濃く、鬼達と結界に守られている」
「塔の様子は!? オオマガトキは起こるのか!?」
「分からぬ。だが、貴殿らが破壊した塔の2倍以上の規模であった。上空にも奇妙な雲が渦巻き、いつ何が起きてもおかしくない」
「今から急いで向かえば!」
「いや、異界に入ってすぐに向かうのならまだしも、今からではどう考えても到着前に活動限界を超える」
…あの塔の鬼達は、囮と時間稼ぎの両方を担っていた訳か…。
どれだけ戦力を揃えても、活動限界時間が迫れば撤退せざるを得ない。
参ったな、見事にひっかかっちまった。
…今から全員里に戻したとして、瘴気が抜けて再突入できるまで、どう考えても半日以上…か。
ま、仕方ないね。行動に変更なし。
全員、里まで戻れ。
「おい、本気か!? …いや、このまま突っ込んでもどうにもならんかもしれないが…」
そこで突貫するって言わない事に本気で安堵してるよ。
このまま引き返して戦えば、塔に辿り着く前に活動限界で死ぬ。塔は破壊できず、オオマガトキは阻止できない。
里に戻って休んでから再度出撃すれば、消耗した体力は回復し、充分な時間の余裕を持って突入できる。それまでにオオマガトキが起こるかどうかは賭けだがな。
「……その件について、お主に協力を要請する。瘴気無効の装具を身に付けている者は、まだ戦えるであろう。全員戻す必要はない」
…うん?
不満そうな皆を説得して、とにかく一度異界から抜けさせるつもりだったのだが、速鳥から予想外の言葉。
協力? 考えがあるなら乗るが…どうする気だ?
「拙者が見たところ、でしかないが…本命の塔は、決して頑丈な訳ではない。鬼達の力で強引に積み重ねられているだけで、強度は脆弱と見た」
突貫工事の急拵えって事か…。奴らも焦っているようだな。
それで?
「不安定な塔を維持する役目の鬼が、何体か居る。奴らを仕留める…とまでは言わぬまでも、動揺させれば塔に何らかの影響を与える事はできよう。攪乱し、オオマガトキの発動を遅らせる」
なるほど、攪乱と陽動に徹する気か。端的に言えば嫌がらせ。
いいぜ、このまま帰ってオオマガトキが起こらない事を祈るよりは建設的だ。
体質状、俺に瘴気無効装具は必要ない。残った装具で連れて行けるのは…。
目を輝かせている神夜と、カラクリボディのモノアイを輝かせている木綿季は却下。木綿季に至ってはそもそも瘴気無効装具すら必要ないが、この二人は絶対に暴走して陽動ではなくガチ戦闘になる。
明日奈はその辺の分別はついてるが、前線に出ずっぱりだったので消耗が激しい。タマフリも、もう使えて一回二回程度だろう。
詩乃……狙撃が得意で援護・攪乱向き。だが俺が離脱した後の統率役を任せられるのは詩乃くらい。
ウタカタの里で動けるのは…充分な余力を残しているのは桜花だけか。装具はまだ数があるが、余力が無いんじゃ意味が無い。
俺・速鳥・桜花で攪乱に向かう。残りはウタカタに戻って回復に努め、明日の昼になっても戻らないようであれば全戦力を塔の破壊に回せ。
いいな?
「…いいだろう。このままのこのこと帰るのも癪だ」
「それは俺達に帰れって言ってるのと同じだぞ、桜花。…とは言え、確かに消耗しちまった。…調子に乗って、大技を連発し過ぎたか…」
不覚、と言いたげに息吹は足元を蹴り飛ばした。速鳥以外、全員鬼の策略に引っ掛かっちまったからな…。
話してる時間も惜しいな。
詩乃、うちの子達の統率は任せる。…頼むから、「楽しそう」とか言って突っ込んでくる連中を出さないようにしてくれよ。
「一番面倒な事を割り振られた件。一応言っとくけど、何でもかんでも従うと思わないようにね。…皆、不満を隠そうともしてない。心配されてるのよ。連れていかれない事を不満にも思ってる」
仕方ないだろ、実際体力と時間の両方が足りてないんだから。
俺一人で向かうって言ってるんじゃない。折悪しく、うちの子達の中からは出せる人員が居なかっただけだ。
ま、深追いせずに適当な所で切り上げるよ。…桜花、速鳥、よろしくな。
キリが無かったので、強引に話を切り上げて、速鳥の案内の元に異界の奥へ進む。
…道中、口にすべきかどうか迷っていた疑問を、桜花が代わりに口にした。
「速鳥、我々が破壊しようとしていた塔が囮だというのは、何故わかった? あの塔についても…お前が持ってきた情報だろう」
「…………元より、己で得た情報であっても全てを信じてはおらん。塔に積み上げられる岩は、全て同じ方向から鬼達によって運ばれてきていた。ただの岩なら、その辺りにある瓦礫を使えばいい。 似たような大きさの石なら、幾つもあった」
言外に『例の情報提供者から接触があったのか?』と問う桜花と、否定も肯定もせずに根拠を話す速鳥。
…実際、虚海からの情報なのかは微妙なところだ。もしも囮の方を、それと知っていながら報せたのだとしたら…虚海は鬼に加担している事になるのか? 囮の塔をオオマガトキを呼ぶ塔だと偽り、破壊させて本命の塔を作らせる。
…いや、あいつはオオマガトキ自体には大して興味を持っていなかった。それにポンコツだから、囮の塔を本物と思い込んでも無理はない。
「あの塔に使われていた岩は、何処か決められた場所から採って来た物でなければならない。ならば、そちらを破壊する事が出来れば、第二の塔を建造される恐れもなくなるのではないか。そう推測して鬼達の来た道を逆走して行ったら、より大きな塔を見つけたのだ」
「…成程。裏の裏を読む、か。自分で言うのもなんだが、その手の事は苦手中の苦手だからな…。大手柄だ、速鳥」
「手柄に興味は無い。ただ任を果たすのみ」
そーいう言い分と考え方が、忍びっぽいって言われるんだけど自覚してっか?
「…………む…」
まぁ、実際の忍びでもそこまで自分を殺せる奴なんか、そうそう居ないだろうけども。
で、岩はその塔の付近から採ってきてるのか?
「うむ…見た所、天高く積み上げられた塔の破片や、周囲に散らばる岩のようだった。何らかの理由で使えなかった岩や、出来上がった塔から零れ落ちた力が宿った岩を再利用したのであろう」
「何らかの理由、か…。使うには貯めこまれた力が弱すぎたとしたら…。だが、破壊した塔に貯め込まれた力は、決して少なくなかった。…想像以上に、時間が無いのかもしれん」
最悪、この3人で突入する事も考えはしよう、考えは。
しかし攪乱で済むならそれに越した事はないが………速鳥、具体的な方策はあるか?
「小鬼が大型鬼に引き連れられて岩を囲み、叫び声を挙げているのを見た。塔に積み上げる為の岩を作るに際して、奴らは何かの儀式を行っているようだ。大型鬼はしぶとく、肝が据わっている者も多い。蹴散らすなら、儀式を補佐する小型鬼だ」
「周囲に護衛らしき鬼は?」
「居る。ゴウエンマも居た。今まで何度か見た事がある鬼だが、一際強大な鬼だった」
本命の指揮官って事か…。できればそいつを潰したいところだが、周囲に他の鬼も居るとなると危険だな。手古摺って、集団で襲い掛かられるのが目に見えてる。
確かに、攪乱するなら一撃離脱で仕留められる雑魚鬼の方だな。
後は……雑魚一匹一匹やったとしても、間違いなく気付かれる。やるなら、囮を立てて注意を惹き付ける必要があるな。これは俺がやろう。
自慢しているようで何だが、戦闘力・生存能力共に随一だと自負する。
……? 速鳥? どうかしたのか?
「…お主が全力で戦っても、指揮官を討ち取るのは厳しいか?」
何を考えての発言か今一分からんが、護衛を蹴散らしながら討伐して、塔の破壊を並行作業で進めるのは、二人の協力があっても流石に厳しい。
そもそも、この瘴気濃度じゃ瘴気無効の装具も完全には向こうかしきれないだろう。
速鳥は最初から装具をつけてたからまだまだ余裕があるだろうが、最初は着けずに戦ってた桜花が活動限界を超えちまう。
「オオマガトキの再来を防げるなら、私の命など…」
姉を失った橘花を誰が慰めるのかなぁ?(ニチャア
「私の命など軽いものだが、この場限りの対応の為に命を賭けても意味が無いな。奴らを上手く攪乱すれば、それだけでオオマガトキを遠退けられるのだしな! だから橘花に妙な事をするなよ!? やったら祟るからな! 菅原道真公も驚きの、ものすっごい祟りを起こすからな!!!!」
分かってるよぉ(今回ループで手を出してきたのは橘花だったけどね! まぁ誘惑されただけで、押し倒したのは俺だけど)
ま、とにかく方針は決まったな。
俺が正面から乗り込んで敵を惹きつける。二人はその間に儀式の妨害。無茶を言うようだが、決して深追いせず、とにかく徹底的に邪魔に努める事。
桜花の活動限界が近いのを忘れるな。いつでも退路を意識するんだ。
「言うだけなら簡単だが…」
「あの大群を相手に囮を務めるのと、どちらが簡単なのやら。まぁいい、どの道やるしかない。…空を見ろ、どうやら塔は本格的に完成が近いようだ」
速鳥に言われるままに空を見上げると、確かに今までのループで何度か見た怪しい空模様。…あそこから、トコヨノオウとかが出てくるんだが…考えてみりゃ、トコヨノオウとオオマガトキは関係あるんだろうか?
確かにオオマガトキの際にラスボスとして立ち塞がるし、顕現したらオオガマトキの訪れを告げるとは書かれていたけど、どういう関連性があるとかは…いやこんな事考えてる場合じゃないか。
…ん?
………あれ?
なんか……立ち上る力の色に、見覚えがあるような気が…いやオオマガトキの為の塔は今までにも見たから当たり前と言えば当たり前なんだが、それに別の力が混じっているような気が。
なぁ速鳥、儀式を行っている鬼って、見覚えのない鬼だった?
「む? …いや……うむ? …中心になっていると思われる鬼は何体かいたが、それ自体は見慣れた、或いは資料で見た事がある鬼だった。しかし、よく思い返すと妙な模様が体表にあった気が…。資料にもそのような特徴は載っていなかったし、見た事のある鬼にもそのような特徴は今までなかった筈」
「…亜種、或いは何かしらの特異な状態になっている鬼かもしれん、と言うことか」
「可能性はある」
……すまん、突入する前に、その鬼を見てみたい。何処か偵察できる場所は無いか?
「ならばこちらへ。高台の上から覗く」
速鳥に案内され、近場の高所に移動。幸い、まだ気付かれていないようだ。
囮の塔を破壊して、満足して帰ったと思われているのかもしれない。
それはそれとして、塔の周りで謎の儀式を行っている鬼達を遠眼鏡で覗き見る。
「…そんな物持ってきてたのか」
かさばらないし、いつも持ち歩いてるぞ。遠い所の情報を得られるのは、それだけで大きな利点だからな。(覗きには使ってない。窓際で橘花に自慰をさせ、それを見ていた事ならあるが)
と言うか、速鳥は道具も使わずこの距離から視認したんだろうか?
さて、問題の鬼達は、と…。
…大型鬼を見れば、体から赤い光が立ち上っている。…マガツヒ状態…とは別物だな。いや、平時に比べて弱っているのは確かか。
じゃああの赤い光は……いや、それ以前に速鳥が言うように体の表面にある模様…。
あれ、黒蜘病の特徴やん。形は蜘蛛じゃない……どちらかと言うと…龍? ギザギザのついた線が、鬼の体を曲がりくねりながら這い回っている。…文字通り、現在進行形で這い回っている。これが黒蛛病と同じ症状だとしたら、超絶的なスピードで病状が進行している事になるが…。
そして立ち上る赤い光…性質的には、恐らく血の力。モノノフが使う霊力とは、似ているようで異なる力だ。
また別世界の要素が出てきた訳だが…まぁ、それは今更だから別にいいや。それよりも、この現象がどういう影響を与えているか、だ。
黒蛛病は、単なる病気ではない。特異点を探そうとする地球の意思、地球自身の血の力が人の身に注がれ、許容量を超えて溢れ出した結果。
地球が力を注いでいる訳じゃなさそうだが……その力の供給元は、大型鬼じゃない? 塔から溢れ出る力…でもない。あの塔にあるのはオオマガトキを開く為の貯蔵分だし、零れた力を使ってそれ以上の力を籠められるってそれどんな永久機関だ。
と、言う事は…?
まさかと思って小型鬼を見てみると、これまた龍のような模様と立ち上る力。…こーれーはー…。
…見つけた。一匹の土竜に、他には無い特徴が見える。突き出た鼻、全身から溢れ出る血の力…感応波、体表にはジャガーのような斑点。
どう見てもガバラ・ガバラ型土竜です本当にありがとうございました。
「…どうした?」
儀式の大本が分かった。ほれ、貸してやるから見てみろ。あの、一匹だけ鼻が出ている土竜だ。
あいつの使う力には覚えがある。詳細は省くが、周囲の鬼の力を強制的に引き出す術だ。
「土竜か…。本当だとすれば厄介だ。一度潜られると追跡が厳しい」
「強制的に、か…。代償は大きそうだな」
ああ。あの刺青のような模様は、その結果だろう。引き出された力が強すぎて、体に負担がかかってるんだ。
承知でやってるのか、湧き出す力の全能感に酔って気付いてないのかは知らんがな。
「そういう事なら、周囲の鬼の体力は低いとみてよいであろう。命を削って力を発揮しているのだからな」
代わりに悪い情報がもう一つ。やつらの体は、全身が毒みたいなものだと思え。
力の元や術の性質がかなり違うようだが、俺が知ってる奴だと接触感染の可能性があった。人から人へな。鬼から人に感染してもおかしくない。
軽い症状であれば俺が対処できるが、過信はしないでくれ。知ってるのと同じ症状になるとは限らん。
「そういう事だと、お前こそ大丈夫なのか? 奴らを一身に惹きつける事になるんだぞ」
俺は体質上、ほぼ無効化できるから問題ない。前居たところで、色々あったんだよ。
それ以前に、傷を負うつもりもないからな。
「傷を負うつもりで負う奴は…居なくても、傷を受けるのを覚悟で戦うのは当たり前だな。助言は受け取っておこう。…そろそろ行こう」
よっしゃ、一丁暴れてやるとしますかね。
神機よ、久々に出番だぞ。
…ってな訳で、MH世界スキルの挑発と、GE世界スキルの騒音と、タマフリの長髪…もとい挑発だ、のっぺらミタマに髪は無い…を使って敵を引き付けて大暴れした。
登場時には貴重な大樽爆弾Gを使って、ヒーローの登場シーンよろしく見栄を切って鬼を相手に名乗りをあげ、久々に鳴き声挑発使って敵を引き寄せる。
挑発…煽られて怒った鬼を相手にスキル挑戦者とか色々発動させ、力の限りに殴り合いとなった。
…割と真面目に苦戦したわ…。
血の力で強化されてるのは予測の範疇だったけど、その強化度合いがイカれてる。一言で言えば、疑似狂竜病。
集まって来た鬼達の体に、赤い電流みたいなのが走り始めたのを見た時に、嫌な予感がしたんだ…。
本気で斬り付けて、ようやく普通の鬼に普通に斬り付けた程度のダメージが入る。いや本当に硬い硬い。狙ってやったのかは分からないが、鬼と狂竜病とは厄介極まりない組み合わせだ。
鬼は、普通のモンスター(と言うのもなんかおかしいが)と違って体を殴りつけただけでは生命力を削れない。ガワを破壊して、生命力で作った部位を攻撃しないと、どれだけ攻撃しても倒れない。
そのガワが阿保みたいに硬くなって、部位破壊も一苦労ときたもんだ。おまけに再生力も桁違い。
鬱陶しさが普段の3倍くらいになってしまった。
狂竜病のデメリットである、明後日の方向を向いての攻撃とかは一切ない。理性は保たれているままのようだった。これはまぁ、隙が無い代わりに行動を予測しやすかったから、悪いと一概には言い切れないけども。
攻撃を何発か喰らって恐竜症らしき症状を発症するも、克服もできない。いくら反撃を当てても、頭の中が引っ掻き回されるような感覚を捻じ伏せても、狂撃状態にもならない。
生命力を削って疑似マガツヒ状態になっている為か、生命力が多くない事だけが救いだった。
俺が手古摺り、じりじりと追い込まれていくのを見て、鬼達はどんどん集まって来た。
一人で乗り込んできた間抜けを食うのは俺だとばかりに、大型鬼達が押し寄せてくる。
このままだと割と真面目に危険。包囲され、巨体に逃げ道・避けるスペースの一切を奪われ、今度は俺が袋叩きにされてしまう。
見ている二人にバレるのを覚悟で、アラガミ化を使うか?と覚悟を決めた時だった。
突然鬼達が苦しみだした。
異変が起こっているのは明らかだった。何せ、やつらの体で今なお侵蝕を続けていた龍のような刺青が、暴れ回っていたのだから。
這い回る、ではない。明らかに宿主を食い散らかそうとしていた。事実、竜の刺青が通った跡には、鬼達の体に裂傷が出来ていた。ガワだけではない、生命力で作られた体にもだ。
「無事か!? …いや残念だなんて思ってないぞ」
「無事のようだが…おかしな事が起きているようでござるな」
おう、桜花、速鳥! 儀式の元になってた奴を倒してくれたか。
確かに、土竜相手にしてはちょっと時間がかかったかな。
「あれは普通の土竜ではない。妙な力を持っている時点でそれは分かっていたが…正直、予想以上だったのは確かだ。潜る・硬い・しぶといの三拍子だよ」
「我々に気付いた鬼が、阻止せんと襲い掛かって…いや、今はそんな事を言っている時ではない」
そうだな。儀式の元になっている鬼は潰したんだし、塔に爆弾でも投げつけてさっさと撤退……っておいおい…。
なんじゃこりゃ…。
周囲の鬼達の殆どが死んでいく。俺達が斬るまでもなく、狂竜病の刺青に生命力を食い尽されて死んでいく。
そして刺青が死んだ鬼の体から這い出て、塔に向かって飛んでいく。
辺りの鬼の中には生き残った者も居るようだが、そいつらも生命力が激減し、体に損傷を与えながら刺青が飛び出していった。…とりあえずトドメ刺しといた。
え、いや本当にナニコレ?
理屈は分かるよ? 血の力にせよ、狂竜病にせよ、奴らは外から力を注がれる事で強化されていた。その術者…あの鼻付土竜だな…が消えた事で、注がれた力が暴走を始めたんだろう。
そしてその力を呑み込むだけの力が無かった宿主を食い破った、と。
分からないのは、それらが何故かオオマガトキの塔に向かっている事だ。
…でもこの現象って、ひょっとしてアレか? GE2のクライマックスシーン、黒蛛病が患者の体から剥がれて吸収されていくシーンと同じアレか?
と言う事はつまり、あの塔に黒蛛病なり狂竜病なり、その宿主の霊力なりが飛んで行って……って、やばいやばいやばい!
「呆然としている場合か! あの龍のようなものを打ち落とせ! 塔に回収される力を少しでも減らせ! あの塔が完成してしまう!」
「くっ!」
速鳥が懐から取り出した手裏剣や苦無を乱舞する。
俺も神機を銃形態に変え、もう一方の手でライトボウガンを構え、二丁拳銃(ただしメッチャごつい)で片っ端から打ち落とす。
それでも、打ち落とす事ができたのはほんの僅か。この場所に居る鬼達の殆どから、四方八方から飛んでくる力。数が多いし、遠いし、何より角度的に打ち落とせない物も多い。
多くの黒い刺青が塔に吸収され、岩の表面を這い回る刺青が合流して、徐々に太く大きくなっていく。
その形は、正に塔に巻き付く巨大な邪龍。塔の表面を赤い電流が走り回り、邪龍の模様が頂点に達し、空に向かって大きく吠えたてて。
塔に足が生えた。拗ね毛の生えた、某腰ミノ踊りオヤジのような足だ。
すっくと立ち上がった塔は。
すたこらさっさと、妙に軽快に走り去っていった。
ん?
んんん?