※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第527話

 

 

堕陽月伍拾玖日目

 

 

 

「……………」(こめかみを揉む)

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

 ……………。

 

「……………」(腕組みして上を向く)

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

 ……………。

 

「……………」(眉に唾を付ける)

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

 ……………。

 

「……………」(こめかみを揉む)

 

「……………」(それぞれの反応)

 

「………盛ってないよな?」

 

 

 土産の脛毛を見ろよオラァン!

 

 目の前に、抜け落ちたと思しき脛毛を採取してきたのを放り出す。率直に言って触りたくなかったが、重要な手掛かりになりそうな物を放置してくる訳にもいかない。

 ちなみに、籤引きで負けた俺が持ち帰る羽目になった。

 

 

「…すね毛、と言われてもこれだけではな…。秋水、分析を頼む」

 

「さっきから見ていますが…確かに、今まで知られている鬼の部位には当て嵌まりませんね」

 

 

 大きさが大きさな上に、無駄にストレートでキューティクルが利いてる毛なんだよな…。

 ゴウエンマを初め、殆どの鬼の体毛はちぢれ毛で、ミズチメの髪にしては太くて長い。弾力なども、明かに別物だった。

 

 

「…正直色々な意味で信じられんが…お前達3人が揃って嘘を吐くとも思えんし、幻術の類に騙されているのも考え辛い。証拠もここにあるし…。では、その後…その、走り去った塔はどうなった」

 

「…面目ない。流石に速度と言うか足幅が違い過ぎ、追う事ができませなんだ」

 

「山も川も谷も、文字通り一飛びだったからな…。速度もそうだが、走破性が驚異的だ」

 

 

 足跡はあるのに、足音が殆どしないとかおかしいよな。少なくとも、あの異形の塔の重さが圧し掛かってるはずなんだが…鬼の体が物理法則を逸脱するのは往々にしてあることだが。

 まぁ、空を飛んで行かないだけまだいい方か。

 

 

「なんつぅか、絵面を想像するだけでも一苦労なんだが…それで、肝心のオオマガトキはどうなんだ? オオマガトキがいつ起こるか分からないから、攪乱だけでも…って話だったが」

 

 

 あくまで私見だが、またすぐに起こるって事は無いと思う。塔には強い力が宿っちゃいたが……足を生やす事に、結構な力を費やしたようだ。

 オオマガトキ発生に必要な力がどれくらいかは分からないが、最初に見た時の6~7割くらいにまで目減りしていたように感じた。

 走り去った塔がどういう行動原理を持っているのか分からないが…あれでは起こそうにも起こせないだろう。

 

 

「一先ずの危機は去った…いや、先送りにできた、と言った方が正しいか。しかし、依然として塔そのものは健在。巨大な鬼が産まれたと考えると、あまり安心してもいられん」

 

「確かに。あの塔がそのまま人里に突っ込んでくるような事があれば、それだけで大惨事となるでしょう。また、あの塔がオオマガトキを引き起こそうとしているのんであれば、居場所を変えて再度力を貯め込む事も考えられます。

 

「塔そのものがオオマガトキを目論んでなくとも、他の鬼が塔を利用して…と言う事も考えられる。どの道、放置は愚策だな」

 

 

 しかし、どうやって奴を追いかける? そもそも、居場所すら分からん。仮に追いつく事が出来たとしても、足を止めなきゃ破壊しきる事は難しいぞ。異様に身軽だったもの。

 耐久力については……鬼達の力で強引に積み上げられた塔だから、力を削り取ればそれだけ脆くなる筈だが…。

 

 

「異能の力も持っていると考えておいた方がよかろう。仔細はお主の方が詳しかろうが、あの塔は奇妙な力を持った鬼達から力を吸い上げておった。それが蓄積されていると考えると、尋常ではない術を使う可能性は高い。…あの足がそれだと言われると、反論もできんが」

 

 

 そっか…。アレの力を使えるとすると…周囲の鬼を活性化させたり、狂竜病状態にする事も考えらえるんだよな。

 本来の塔よりも、貯えている力は少なくなっているが、防御力が爆上がりしてる事も考えられるのか。実際、何発か叩き込んだ遠距離狙撃も殆ど効いてなかったように思える。

 近辺に居た連中も、思いっきり斬り付けないと傷も入らんかったし…あれと同じくらいの硬度だと考えると厄介だな。まぁ皆大好き大樽爆弾なら固定ダメだけど、それが適応されるかも怪しいなぁ…。

 

 

「居場所を探るだけなら、千里眼の術がある。幸い、今の橘花は充分余力を残しているし、シノノメの里の巫女との遣り取りで、よい力の増幅方法を教わったそうだ。体に負担がかかる事は無い」

 

「橘花に脛毛を触れと言うのですか!? …い、いえ、言っている場合ではないのは承知しています…。つい…」

 

「…脛毛は…お嬢さん方には、ちょっときつい…か?」

 

 

 微妙なところですよね、息吹=サン。

 そこまで気にする事でもない、とも感じなくもない。…シモの毛なら駄目だろうけど、脛の毛だしな。…下半身の毛である事に変わりはないが。

 ……まぁ、好き好んで触りたい毛じゃないわな。惚れた相手の体ならともかく。それだとしても、脛毛なんてどう反応しろと言うのか。………脛毛だろうが白髪だろうがケツの毛だろうが、嬉々として舐めたがる者も居る事は黙っておこう。

 

 

「ともかく、橘花の術で塔の場所をもう一度探ろう。上手く行けば、何を目的として動いているのか推察できるかもしれん。嫌な顔をされたら……何とか埋め合わせをするという事で」

 

 

 

 

 

 橘花は快く…とは言えない表情だったが、強い拒絶をする訳でもなく受け入れた。毛が大きすぎて、脛毛とは考えにくかったのも一因だろう。

…埋め合わせとして、『お守り』でも渡そうと思ってたんだが、不要になったかな。

 

 

「おまもり…ですか? 里のお店では売ってなかったと思いますが、どのような?」

 

 

 …陰毛とか入れてる奴。男の毛で意味があるかは疑問だけど。

 

 

「ください(食い気味)」

 

 

 また今度ね。ちゃんと洗ってからでないと。と言うか、提案しといて何だけど、何に使うんだ。

 

 

「色々ですよ。それはもう、文字通りのお守りにする、舐める、しゃぶる、自慰に使う、術…というよりおまじないに使う。使い道は多彩です」

 

 

 …まぁ、俺も口淫の時にそのまま呑み込む事はあるけどさ…。

 

 

 

 

 肝心の千里眼の術の結果だが…塔は確かに見つかったようだ。集中する橘花が、目を閉じたまま話している。

 

 

 

「……塔は、今も走り回っているようです。凄い速度…。あっ、周囲の景色が変わりました。これは…乱の領域と、安の領域を飛び越えたようですね」

 

「今も走り回っていて、しかも場所に縛られていないのか。これはまた、一層厄介な…」

 

「乱、から安…。最初に逃げ去った方向とは、全く違うな。何を目的としているのか分からん」

 

「塔だけなのか? 周囲に鬼が居たりしないか?」

 

「見る限りでは…ですが、取り巻きは居ないようです。と言うより、居たとしてもついてこれないのではないでしょうか。…あ、また領域が変わったようです。…跳躍しました」

 

「進路順路の問題もあるであろうが、領域を一つ瞬く間に駆け抜ける…。背後から追っても、追いつける気がせん。待ち構えねばなるまいが…そうしたところで、目当ての場所で止まるかは別の話か」

 

「そのまま駆け抜けるか、下手をすると飛び越えられちゃうんじゃない?」

 

「ずっと走り通しなのか? 流石に鬼でも、それは疲れるだろうに」

 

「いやそれよりも、オオマガトキの予兆はあるか?」

 

「いえ…見える限りでは、それらしい物はありません。ただ只管に走っているだけです。周囲に力が渦巻く気配もありませんし…」

 

「橘花、体の負担は…」

 

「大丈夫です。充分余裕はあります。…鬼、と言うか塔の側から術への抵抗もありませんので、負担が増す事もありませんし」

 

「それもまた妙だな。人でも鬼でも、千里眼の術には無意識に反抗するものだが…」

 

 

 皆、それぞれに疑問を上げ、橘花は出来る限りそれに応えていく。

 ちなみに、体に負担が無いのは本当だ。事前にオカルト版真言立川流で、しっかりブーストさせたからね。

 

 しかし有効な情報は得られない。ただただ凄まじい速度と踏破性で、目的にも分からず走り回るだけ。

 オオマガトキを起こそうとしているのか、このまま放っておけば起こるのか、すら分からない。

 

 どうしたものかと考えていると。

 

 

「あっ!? …術が解けました」

 

「どうした、橘花!? 反撃されたのか!?」

 

「い、いえ、驚いて集中が解けてしまっただけです」

 

「驚く? …走る塔以上に驚きの事が?」

 

「………こ、こける塔と言うのは、驚きだと思うのですが」

 

 

 

 

 

 

 

 こける?

 

 

 

「はい…段差に蹴躓いて成大に、塔を地面に打ち付けながら、どっしーん、と…。誇張抜きで、周囲が振動していました」

 

「いや……こける、って何でだよ…」

 

「その後、周りを壊しながらのたうっていて……起き上がろうともがいているように見えましたが」

 

 

 ………思い返してみれば、あの塔にあるのって足だけだったよな…。

 

 

「うむ…目も無ければ耳もなく、鼻も無い。当然口もない。蚯蚓でさえも、一見では分からぬが目はあると言うのに。…どうやって周囲の状況を把握しているのであろう…」

 

「触覚だけでも風の流れである程度把握は出来るが……実は、把握してなかった…とか?」

 

「では谷やら河やらを飛び越えたのは」

 

「……………勘…? 或いは水の冷たさや谷から吹き上げる風を感知したとか」

 

「起き上がろうと悶えると言うのは」

 

「……手、ないからなぁ。人間で言う体に値する部分が塔だから、曲げる事もできないし。重さで言えばどう考えても足ではなく塔に重心がある。立ち上がるのも一苦労だろう」

 

 

 さもあらん。人間だって、上半身を一切不動、錘付で足の力のみ使って立ち上がれと言われれば、そうそうできる事ではない。

 

 

 

 

 …暫く、何とも言えない沈黙が下りる。

 ……割と何とかなるんじゃね、これ。

 

 

「う、うむ…。何処かに罠を張り、一度転倒させる事ができれば、後はどうとでも…」

 

「いや待て、倒れた後も起き上がる為とは言え、あの巨体がのた打ち回るんだ。それなり以上の脅威…の筈だ」

 

「他の鬼に追いつかれて利用される可能性も忘れちゃいけないな。対処が早いに越したことはない」

 

「しかしどっちにしろ、進路を予測しなきゃ罠も張れねぇぜ。移動の速度と踏破性は相変わらずの脅威なんだからよ。しかも俺らと違って、濃い異界の中でも時間制限が無い」

 

「進路を的確に予測した上で、勘で逃れられぬよう十重二十重の罠を張り巡らさなければなりませんね。しかし、どうしたものか…」

 

 

 異界の中で罠を張るなら、うちの子達の出番だな。人数に任せて露払い、仕掛け、観測に誘導まで人海戦術で行ける。罠だって、あいつらの特殊なタマフリを活用すれば、普通のよりももっと凶悪な物が出来るだろうぜ。

 俺も、マイクラ能力使って地形作りから誘導の為の壁まで何でも作れる。

 

 

「準一級の戦力が多数って、こういう時には本当に有難いな。舞蔵とやらはよく分からんが、お前さんが家やら水場やら作るのに使ってた能力か」

 

「あの力ならば、かなり大掛かりな罠が張れるな。問題は、それに引っ掛かるかと言う事だが…走る、逆走する、跳躍する…これらをされるだけでも罠への誘導は難しくなる」

 

「……あのさ…」

 

 

 どうした、初穂。

 意見なり疑問なりあるなら、積極的に口に出すべきだぞ。特にこういった会議の場では、黙るのはむしろ悪徳だ。

 

 

 

 

「……みんな、色々意見出してるけど………その塔の抜け作さ加減を誤魔化そうとしてるだけよね」

 

 

 

 

 ……訂正、黙っていた方がいい事もある。

 

 

 

 

 

 

 

 初穂の空気をぶった切る発現はともかくとして、足止めするのに一工夫必要なのは事実である。

 幾つか案を出し合った。幸い、あの塔が再度オオマガトキを起こすとして…それが自らの意思なのか、周囲の鬼が利用する形でなのかは分からないが…、塔に残っている力は半分と少し程度。作り上げられた足を、分解して再度吸収したとしても、十全な力が満ちるには足りないだろう。

 鬼による儀式や、或いは地脈から力を吸収するなどの方法で、削れた力、足りない力を補填するのには暫しの時間がかかる筈だ。

 

 

 まず行わなければならないのは、塔が進む進路の予測。これは俺・那木・秋水の合同作業となった。

 俺が異界を周って痕跡を辿り、その情報を那木と秋水が分析して行動原理や傾向を予測する。

 

 その間に、速鳥の指示の元、うちの子達や富嶽、初穂と言った細かいことを考えるのが苦手な連中が、人海戦術で罠に必要な素材を作る。

 速鳥が指揮を執っているのは、元忍びとしての知識…罠や誘導についての詳細な知識があるからだ。

 桜花はその総括、息吹は補佐。

 まぁ、イイ感じに回ってるんじゃないかな。

 

 パトロン権限で、博士や茅場にも協力を要請したところ、「こんな事もあろうかと」などと言いつつ、怪しい道具と、労働力としてグウェン・真鶴を提供してくれた。

 真鶴がかなり疲れ切っていたのが気になる。こき使われているんだろうか。

 

 …そう言えば、真鶴は元々、異界浄化の方法を確かめにこの里に来たんだったが……そっちの成果はどうなんだ?

 

 

「ん? ああ…成果はそれなり、と言ったところだ。お前達が異界浄化を繰り返したおかげで、博士も大分研究が進んだようでな。刀也達にもいい報告が出来ている。…とは言え、やはり鬼の手が必要な事もあり、まだ戻れそうにはないが…」

 

 

 正直、下手に教えていいモノでもないからな。下手をすると、再度オオマガトキを、今度は人の手で引き起こしかねない。

 異界が全て浄化されたら、一切を封じなければいけないかもしれないな。…いや、どっちにしろ異界の元となる穴が必要だから、そこは考えなくてもいいか。

 

 まぁなんだ、お前さんとは一度ゆっくり話をしてみたいと思っていた。今は任務があるから無理だが、ちょいと付き合ってくれるとありがたい。

 

 

「……これが俗に言う、軟派と言う奴か」

 

 

 硬派でないのは間違いないけど、そーいう話じゃないと思う。

 いつも女に囲まれてる俺だけど、偶にはそーいう関係じゃない人と、純粋に話をする機会は必要だと思うんだ。

 

 

「男と話せ」

 

 

 話そうとすると、「羨ましいんだよ!」って心の声が聞こえてくる事が…。

 まぁ、とにかくまた今度。美味い茶菓子を用意しとくよ。

 

 

「まだ受けるとは言ってないのだが…まぁいい、仕事だ」

 

 

 

 

 

 

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