※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

53 / 611
GERB2、難易度14までクリア。
おいおい、反則だろ…だが良し!
久々にあんぐり口を開けて画面に見入ってしまいました。
追憶の○○○よりも、こっちの方が嬉しいや。


第53話+外伝6

神変月準備を怠る者久しからず日

 

 

 ソーマはアナグラへ戻り、リンドウさん・ナナ・俺とシオの4人で一晩明かした。

 帰ろうとするソーマにシオがダダを捏ねてたが、それは置いといて。

 生きていたリンドウさんと、無言のやりとりをしてたが、それも後回し。

 

 「おー、元気だったかー!?」とシオがリンドウさんとナナに声をかけていた。

 最初は人間を警戒してたのに、随分と慣れたものだ…実際に接していたのなんか、俺を含めて3人程度だろうに。

 

 二人はシオの予想外の反応(そもそもナナはシオが誰なのか、何なのかサッパリ知らないが)に戸惑っていたようだが、そこは天真爛漫、謎フェロモンで第一印象を「かわいい」にしてしまう、ある意味ロリコン製造機のシオだ。

 特にナナはあっさりと仲良くなってしまった。

 

 …でも、ナナの顔にはちょっと陰りがあるなぁ…。

 どういうやり取りでマグノリア・コンパスから出されたのか知らないが、多感な少女にはすぐに立ち直れるような問題じゃないか。

 

 …いっそ、ここでシオとリンドウさんと一緒に暮らさせるか?

 嫌な言い方になるが、誘引の力が暴走しても、多分最小限の被害で済むし。

 

 

 そうそう、ナナの誘引をシオが封じる事は不可能だった。

 と言うか、誘引とか血の力自体、シオがサッパリ理解してないし、アラガミ細胞とはまた別系統の能力みたいなんで、特異点の能力でパパーッ…と言うのは無理らしい。

 残念。

 

 

 あと、流石にナナもリンドウさんも寒そうだったので、ふくろに入っていたホットドリンクを何本も渡しておいた。

 久々に異世界のアイテム使った気がするな。

 

 

 

神変月獲物は天下の回り物日

 

 サクヤさんに締め上げられた。

 マジで怖かった。

 後ろで見てるカノンとアリサは、「黙ってたお前が悪い」と言わんばかりの顔で放置だった。

 足腰立たない状態にして置いていった意趣返しも兼ねているようだ。

 

 

 そーだねー、確かにねー。

 リンドウさんの無事が確認できたのに、理由はどうあれ恋人のサクヤさんに知らせないとか…この二人がほっとく訳がなかったよ。

 口封じもすっかり忘れてたし。

 

 だがそれで実姉のツバキさんの名前が出てこないのはどうかと思うが。

 

 

 まぁなんだ、今日はリンドウさんとッサクヤさんの水入らずで、ツバキ指揮官には明日にでも伝えるとしよう。

 リンドウさんの所に連れて行くのはいいんだが、サクヤさんは色々と目を付けられている可能性がある。

 偽装工作として、出撃のタイミングをずらして出かけた。

 俺が先に出撃して、いつも通りに帰りにブラブラ狩っていたら、サクヤさんと偶然会って、ついでに付き合ってもらった…というシナリオだ。

 どれだけ効果があるかは分からんが。

 

 偽装に必要な分のアラガミを狩り、現場で合流したサクヤさんと一緒に、一路シオ達の下へ。

 感動の再会シーンは……まぁ、何だ、実にアダルトだったと言っておこう。

 

 涙ながらに抱きついて、キスをするくらいならいい。

 ナナとシオが興味津々だったが、これくらいなら何も言わない。

 

 舌を入れるのも、別にいい。

 ナナが顔を赤くしながらガン見して、「うわぁ~うわぁ~」と小声でハシャいでいたが、ちょっと過激なドラマと大差ない。

 

 だが幾ら感極まったからと言って、そのまま押し倒しておっぱじめるのはどうかと思う。

 ここ、雪が降ってるくらい寒いんじゃが…平然とアオ姦に持ち込む辺り、やはり露出慣れしているんだろうか。

 

 

 顔を隠したナナが指の間からチラチラ見て…興味を持ったシオが近付こうとするのを、ソーマと二人がかりで無理矢理止めた。

 教育に悪いですよ。

 …ソーマがシオに「なぁなぁ、あれどうやるんだー?」って聞かれて、いろんな意味で苦虫を食いつぶしたような顔をしていた…助けを求める視線を感じたが、生憎それどころじゃなかった。

 

 

 デバガメしているカノンとアリサを発見しちゃったからな!

 

 

 どうやらサクヤさんの跡を追ってきたらしい。

 俺が二人をリンドウさんと接触させたがらない事を不審に思ったのだろう。

 サクヤさんと示し合わせてついてきたのかどうかは分からないが、とりあえず修羅場なのはこの時点で確定したと言っていいだろう。

 

 何せ二人も少女を囲っているところを目撃されてしまった訳だからな。

 一人はソーマの嫁だが、どっちにしろ囲っていたのは事実。

 

 

 今はこうして、微かに聞こえてくる喘ぎ声をBGMにして日記を書いている訳だが、すぐ後ろから極大の2つのプレッシャーと共に、「そろそろ遺言状は書き終わりましたか?」という声と、神機の作動音が聞こえる。

 ソーマは覗きに行こうとするシオを止めるのに手一杯だし、ナナは…声だけでも聞き取ろうと、耳を……ネコの耳みたいな髪の毛も……ピクピクさせているようだ。

 

 いつものように下半身でノックアウトして誤魔化そうにも、流石にここは寒いし、シオとナナの前でおっ始めても、ソーマの掣肘が入る事間違い無し。

 

 結論、救いの手は無い。

 

 

 

 

神変月昔取ったボウガン日

 

 えらい目にあった。

 まぁ、自業自得と言えば自業自得なんだけど。

 

 結局、シオの事も話す羽目になってしまったし…。

 終末捕食云々の事も話した……流石にナナには聞かせなかった。

 一応機密事項だもんな。

 違法な手段で探り出したのは俺達だけど。

 

 半信半疑だったようだが、とにかく事は命に関わるような機密事項。

 現時点で出来る事も無いに等しいので、とにかく黙っておくように、と伝えておいた。

 

 色々な意味で顔が青くなっていた。

 まぁ、文字通り世界の終わりが間近にあるって聞かされればな…。

 アラガミだって世界の終わりみたいなもんだけど、現状で抵抗する事は出来ている。

 

 正直、想像できるってだけでも大したもんだと思うけどなー。

 俺なんか、ディスプレイ越しとは言えGE1・GE2の終末捕食を目にしてるのに、今ひとつピンと来ない。

 阻止しようとしているのも、どっちかと言うとこのループを抜け出す手段になるかもしれないからだ。

 

 

 

 それはそれとして、五車多先輩が爆発した。

 いや爆裂四散した訳でも、カノンの誤射がとうとう人死を出した訳でも、上田されてしまった訳でもない。

 うちの班で、リンドウ生存やら何やらの件で皆動き回っているというのに、自分がハブられている悲しみが天元突破してしまったらしい。

 

 ああ…うん、考えてみりゃそうだよな。

 人に知られるのは最小限でいいとか思ってたんだけど、先日カノンも知っちゃったし。

 ハブってたのに気付かなかったわ…。

 

 意外と寂しがり屋な五車多先輩を慰めるため、久々にチーム全員で出撃した。

 …しかし、これを話すのはちょっとなぁ…。

 人間性を疑う訳じゃないが、善意で余計な事をしそうな気がヒシヒシとする。

 GE2のエミールの同類っぽいし。

 五車多先輩はなぁ…本人がやりたがらないかもしれないが、実家の金とコネという俺達には無い武器があるからなぁ…。

 

 よし、誤魔化そう。

 終末捕食や特異点の事はボヤかして、リンドウさん生存の事だけ伝える。

 ただ、リンドウさんのMIAには陰謀の疑いが多数あるので、まだ生存を皆に伝えるのはマズいから隠していた、という事で。

 

 

 

神変月「無理を通して道理を蹴っ飛ばすんだよ!」日

 

 リンドウさんの生存を隠す事について、五車多先輩は以外な程素直に理解を示した。

 伝えた時も大騒ぎするどころか、自分から周囲に人の目が無かったか確認したくらいだ。

 

 曰く、金持ちの間では時折こう言った陰謀が蠢く事があるらしい。

 嘆かわしい話だ、と大仰に額を抑えていたが、それ以上に表情が沈んでいた。

 …ひょっとしたら、五車多先輩もそういった陰謀に巻き込まれた事があったのかもしれない。

 

 ともかく、リンドウさんが無事だという事を、ツバキ教官に伝えないと…と思っていたら、何と五車多先輩からストップがかかった。

 確かに肉親に速く伝えたい(今まで黙っといてなんだけど)のはよく分かるが、同時にそれは暗殺した側からすれば最も予測しやすい事でもある、と…。

 そういう意味で言えば、サクヤさんに伝えた事すら早計だったと言えるだろう。

 

 実家の「そっち方面の」ツテを辿ってみて、そういった監視網がまだ健在か確認するから待ってくれ、との事だった。

 外見に反したモラリストの性格から更に反した…加えて言うなら、五車多、上田と呼ばれるネタキャラのイメージとは合反した…冷徹とさえ言える判断力。

 実に意外な一面である。

 

 案外、この世界の金持ちも、内憂外患と言えるのかもしれない。

 

 

 

 ところでふと思いついたんだが、ナナって血の力の事は知っているんだろうか?

 体つき(この発育は反則だろJK)を見たところ、軍事教練の類を受けているのは確実だ。

 マグノリア・コンパスで仕込まれているんだろう。

 

 しかしそのマグノリア・コンパスはラケル博士の息がかかった孤児院で、ブラッドとの関わりも深い。

 ひょっとしたら、血の力の事を聞かされているかもしれない。

 

 …だが、迂闊に聞いて大丈夫かな…。

 捨てられたと思っているかもしれない、というリンドウさんの見解が思い出される。

 ヘタに刺激すれば、それこそ心の傷が開いて誘引の力の暴走が起こるかもしれない。

 

 この世界の霊力は、恐らくモンハン世界よりも強い…いや、多い?…違うな……うん、顕在化しやすい、これくらいが丁度いい表現か。

 つぅか、理屈だけで言えばモンハン世界が霊力でもダントツの筈なんだよなぁ…。

 霊力ってのは生命や魂の力って言われてるくらいだし、桁外れの生命力を持ってるモンスター達なら、相応の霊力を持ってても不思議じゃない。

 …まぁ、オカルトパワーじゃなくて、霊力のエネルギー源を文字通り生命力に極振りしてるんだろうけど。

 

 むしろ、アラガミが多くても自然の生命が少なくなっているこの世界で、血の力なんてオカルトパワーが出現するのが不思議なくらいだ。

 

 ちょっと話は逸れたが、血の力がどういう物なのか直接見て、ある程度慣れれば、こちらから干渉する事もできると思う。

 お、これってひょっとしてGE2主人公の「喚起」か?

 …まぁそれは置いといて、繰り返すが「ある程度慣れれば」こちらから干渉できそうだ。

 つまり、ナナの力が暴発したとしたら、こちらから初見で対処するのは難しいという事だ。

 

 一度見ておければ、ある程度対策は立てられる。

 ひょっとしたら…本当に、ひょっとしたらだが、初見で対処できない事もないかもしれん。

 ついでに言うと、本当に「喚起」の力の真似事が出来れば、GE無印のメンバー・時期に、ブラッドアーツを広めるという荒業だって可能かもしれん。

 

 

 

 だがリスクがデカすぎる。

 

 

 

 

 もししくじったら、両手に花の状態からデスワープしちゃうじゃないか!

 

 

 というのは流石に冗談だが、成功の目も無いのに博打はできんよ。

 人の心の傷を素手で弄くろうとするようなもの…。

 

 

 

 …よく考えたらそれ、思いっきりアリサにやってたわ…。

 我ながら自覚以上の外道になっとるな…。

 

 

 

 

神変月狩りのアップデートも75日

 

 珍しいものを見た。

 コウタが何故か自棄酒していた。

 

 おい、お前今未成年とちゃうか?

 …いやまぁ、何も言わないよ。

 顔見れば何があったか、何となく分かる。

 

 失恋してら。

 

 そう言えば、憧れとは言えそういう感情をサクヤさんに持ってたっぽいんだよな…。

 何だ?

 告白して正面からフラれたか?

 それともリンドウさんを思い出す顔でも見て、勝てないって思っちゃったか?

 

 …後者みたいだ。

 しかもサクヤさんへの想いを自覚したのも同時っぽい。

 自覚、即失恋。

 

 これは…キツいな。

 

 とりあえず食え、食うのだ。

 空腹じゃ何考えても前向きな結論は出てこない。

 アルコールについては見逃してやるから、モンハン世界産の生命力に無駄に満ち溢れたメシを食え。

 

 

 

 …多分サクヤさん、まだリンドウさんの所に居るんだろうなぁ…。

 パコってるかはともかくとして。

 益々コウタが哀れに思えてきた。

 

 まぁいい、とにかく食って泣け。

 失恋の痛みを忘れられんと言うなら、再び俺ブートキャンプで心の痛みがどうこう言ってられるレベルじゃないトコまで引きずり上げてやるから。

 

 とは言え、ちょっと見ない間に随分と腕を上げていたようだ。

 多分、サクヤさんにいいトコ見せたくて頑張ってたんだろうが……うん、青春の痛みを乗り越えて、がんばれ青少年。

 

 

 

 

 

 

 酔いつぶれてコウタが眠った時、なんか全身の筋肉がバンプアップしていたような気が…まさかモンハン世界のメシの効果か?

 トリコのグルメ細胞じゃあるまいし…。

 

 

 

神変月艱難汝を狩人にす日

 

 いざとなったら即気絶させるつもりで、ナナに少し話を聞いてみた。

 「血の力」というのを知らないか、と。

 

 なんというか…気配がザワッとした感じはしたが、何とか誘引は発動しなかった。

 しかし、逆に首を傾げられたのには驚いた。

 どうも、ナナにとって「血の力」と言うのは一般常識…とは言わないまでも、態々確認するようなものではない、という認識らしい。

 

 ゴッドイーターにとっては、大抵の人は知っている物だと思っていた、と。

 

 …つまるところ、何か?

 マグノリア・コンパスでは、この世界のこの年代状態からしてみれば、文字通りのオカルトパワー…怪しげで不確かな力といえる「血の力」或いは「ブラッドアーツ」の事が普通に伝えられているって事か?

 あー、でもゲームじゃGE2の始まりの時、ナナはイマイチ「血の力」がどういう物なのか理解してなかったっぽいが。

 

 うーん、よく分からん。

 しかしあの「ザワッ」とした気配のおかげで、誘引の発動の予兆くらいは感じ取れるようになった気がする。

 勿論、すぐ近くに居ればの話だが。

 

 

 

 ところで、話をしてた時にシオが偶然近くに居たんだが、「お?」って顔をしてた。

 最近表情豊かになってきたんで一概には言えないが、ひょっとして霊力か誘引に反応した?

 

 …まぁそれは置いといて、アラガミを引き寄せるのが誘引で、特異点にも有効なんだったら、実は神機にも有効だったりするんじゃないか?

 神機が自分で動くことはできないから意味無さそうだけど…。

 …神機…もアラガミで……ゴッドイーターの中にあるナンタラ偏食因子も、アラガミみたいなもので…。

 

 ………ちょっとアラガミ化を防げるかもしれない策を思いついた。

 今のうちにシオに「わーっ」してもらえば、腕輪が壊れてもアラガミ化しなくなるんじゃないか?

 

 

 ああ、でもリンドウさんは結局アラガミになってたしな。

 シオが無印EDで月に行ってしまったから、アラガミ化を止めていた命令がなくなってしまったんだっけか。

 無駄だとは思うが、一度試してもらおうかな?

 このループでは無駄になったとしても、次回ループで案外役に立つかもしれない。

 

 

神変月月にジンオウガ、夕日にナバルデウス日

 

 試しに「わーっ」してもらったが、やはり効果は無さそうだ。

 腕輪を失った訳でもないから、体感だけどね。

 

 それよりもリッカさんが反応した。

 前から研究していた、「神機の制御を外して100%の力を出す」という技術だが、シオが持つアラガミを細胞をコントロールする力を使えば、ノーリスクで普段から発動状態にできるんじゃないか?

 …可能っぽくはあるんだが……シオがあんまり細かい事とか理解できてないから、どう命令すればいいのか分からない。

 だが、命令によって制御されつつも、拘束を受けてない神機というレアな状態のデータが得られた。

 神機100%状態の実現に、ググッと近付いたそうな。

 

 

 ソーマと交代し、一緒にアナグラに戻ったと思ったら、もう研究室に引っ込んでしまった。

 もうちょっと語りたかったが…いや、別に三股状態から更に増やそうって訳じゃないよ?

 

 

 ところで、支部長が何やら別の支部に出かけていったそうだ。

 多分、アーク計画…対外的にはエイジス計画…の事で何かあるんだろう。

 別の支部に行ったのが、建前であるエイジス計画の用事なのか、アーク計画の根回しなのかは分からないが。

 

 …動くとしたら今、か?

 支部長が居ないからって、エイジスの守りが緩くなる訳じゃないだろうが、トップが居ないとなると多少なりとも動きは鈍る筈。

 だが、忍び込んだとして何をする?

 

 …エイジスの中にあるのは、確か…終末捕食の始まりになる、ドでかいアラガミの…なんだっけ、アルダーノヴァ?

 あれを破壊できれば、アーク計画はオジャンになるだろうか。

 しかしアーク計画がぶっ壊れても、終末捕食は避けられない。

 シオが特異点として覚醒するのは、そう遠い話ではないだろう。

 ゲームの流れを元に考えるなら、長くて数ヶ月…。

 

 そう考えると、アーク計画を潰す事は、逆に人間が一部でも生き延びる可能性を詰んでしまう事になる。

 アーク計画を潰そうとするのは、シオを犠牲にしない為であって、計画自体がおかしな物ではない…小を捨てて大を生かす、という代物であっても。

 …この場合逆かな?

 犠牲になる数と生き残る数を考えると、大を捨てて小を生かす事になるね。

 

 

 とにかく、今アルダーノヴァを傷付けて得られるメリットは少ない。

 仮にエイジスに忍び込めたとしても、恐らく厳重な警備の奥に眠っているアルダーノヴァへの破壊工作は難しいだろう。

 ループする内に、忍び込む機会もまたあるだろうし…今回は見送るか。

 

 

 

神変月寝耳にウォーターカッター日

 

 事態急変。

 

 シオが特異点として覚醒したっぽい。

 ソーマとリンドウさんがちょっと目を離した隙に、シオが失踪したと連絡があった。

 偶然ナナがその寸前の姿を目撃していたらしく、「体中に光る模様が見えた」との証言がある。

 

 マヂか。

 

 かなり慌てていたソーマだが、タイミングがいいのか悪いのか。

 シオの向かった先は、恐らくエイジス。

 アルダーノヴァがある、終末捕食の始まりとなる場所だ。

 

 アーク計画の中心人物である支部長は出張中で、どんな手段で戻ってこようと、少なくとも2日はかかる場所に居る。

 支部長が戻ってくるまでに、エイジスに忍び込み、シオを探し出して脱出しなければならない。

 リスクが高いって事で、侵入を見送る事にしたばっかりだと言うのに。

 

 行き先が分かっている事でソーマを落ち着かせ、取り急ぎエイジスへの進入経路を調べる。

 ゲームでは確か、アナグラの地下の通路から入り込んだっぽいが、そのルートは使えない。

 シオは確実にそのルートを使ってないからだ。

 

 一番警戒すべきは、追いつけない事ではなく、すれ違う事。

 追いかけているなら、前方と、ミスリードだけ気をつければいい。

 シオに…特異点状態のシオにはミスリードなんぞ考える頭は無いだろうから、前方だけ気をつければいい。

 

 しかし万一、シオよりも先に侵入してしまう形になれば、後ろと前の両方を気にかけなければならない。

 それに、最初から内側に入り込んでしまうと、シオが何処から進入してどのルートを使っているかも分からない。

 

 その点、(多分)シオと同じように外部から接触し、なんか知らんが過去視も可能になった鬼ノ目(と言うかアサクリ版鷹の目)も使って調べた方が追いつきやすかろう。

 

 冷静に考えれば、エイジスに直接乗り込んだ訳ではないかもしれない。

 ゲームでも、一度覚醒の兆候が現れて姿を消したが、また別の場所で遭遇した事があった。

 

 だが楽観するには弱すぎる要素だ。

 とにかく、エイジス近辺を探して、シオの足跡を……いや、それなら失踪した場所から足跡を辿った方がいいか。

 エイジス近辺はソーマに任せよう。

 本人は嫌がるだろうが、一応支部長の息子という立場もあるし、特務を請け負っている事も割りと知られている。

 人間と揉めそうになっても、立場と特務を盾に誤魔化しとおせるかもしれん。

 

 シオがエイジスに向かったのだとしたら、どっちにしろ合流する事になるし…。

 よし、サクヤさんにも連絡して、ソーマのサポートについてもらおう。

 で、俺とリンドウさん、カノンとアリサは狩りの建前でシオを捜索する。

 

 この際だから、五車多も連れて行こう。

 ヘタに知らせると余計な事をしそうだから秘密にしてたが、事がここに至ってはその意味も無い。

 もしもこのまま終末捕食一直線だったら、戦力を出し惜しみする意味が無い。

 

 

 

 

 と言う訳で、五車多を巻き込んで、リンドウさん達の下へこれから直行する。

 シャワーを浴びて「さぁこれから!」だったタイミングなのは、俺としてもお二人さんとしても不本意極まりない事だが、事態が事態だ。

 …一発だけ、と思ったことも否定しないが。

 

 ああ、でもその前に、研究班の各所を巡って、集められるだけデータを集めておこう。

 

 

 




 さて、ここは一体何処だろう。
 目が覚めたら…というより、夢を自覚したら既に何処ぞの洞窟の中だった。
 いや、洞窟じゃないか?
 見たところ、地面は荒れてるけど明らかにタイルだし、柱はあるし、なんかよく分からん彫刻とかあるし。
 妙なギミックっぽいのもあるんで、遺跡…かなぁ?

 しかもウロウロしていたら、ボロボロの古代遺跡っぽい所に出たり、逆にメタリックな近代的な部屋に出たりする。


 あと、明らかに普通じゃないモンスターがウロウロと。
 まぁこいつらを倒すのは別に苦じゃない。
 人型の奴も居るけど、明らかに普通の人間じゃない。
 明確に俺を狙ってくるし、数も強さも大した事は無い。
 倒した奴らから剥ぎ取りしてみたが、どうやら火を通せば食えるっぽいし。

 ただ、デカい扉の先に居る奴らだけは別格だ。
 アレを狩るなら、入念な準備が要る。


 でもなぁ…狩るのは別にいいんだけどさぁ、あいつらなんか言葉を喋るのよ。
 しかも俺に分かる言語で。
 主に人型に近い奴と、デカブツだけだけども。
「ツマハドコダ」とか言われた時なんか、あまりの後味の悪さにふくろから大根だして「それをツマにしろ」とか言ってしまったくらいだ。
 穴を開ければオ○ホになるぞ。

 なのに会話は成り立たない。
 こっちの言葉を理解してないのか、それとも聞く耳持たないだけなのか…。
 

 まぁ、どっちにしろ狩るけどさ。
 中には何故か上質な牛肉なんぞ剥ぎ取れる奴も居たし。

 そうこうして彷徨ってる内に、妙な蝶を見つけた。
 …明らかに霊力がある。
 いや霊力だけなら、この夢ではあっちこっちから感じてるんだ。
 でもコイツは明らかに桁が違う。



 そういや、どっかの地域では蝶を佃煮にするって聞いた事あるな。

 霊力が強い虫みたいだし、食ったらパワーアップするかも…。




 なんて思っていたら。




「こんにちは…」



 …きょぬーの怪しいマダムの霊が現れた!


「色々な物を食べてきたけど、逆に食べられそうになったのは初めてよ…新鮮ね…」


 ご尊顔を拝見したら、今度は性的な意味で食べたくなりましたよ、そのおっぱいを。
 非常に怪しい人だけど。

 いやホント怪しい。
 美しいは美しい人なんだけど、紫色で派手なドレス、そして何より パピ! ヨン! と叫びたくなるようなマスク。

 むぅ…本人に備わっている気品が無かったら、SMクラブ辺りの人かと疑ってしまうところだった。


 なんかよう分からん人だけど、とりあえず先人(誰だよ)達からは、マダム・バタフライと呼ばれているらしい。
 やっぱSMクラブっぽい…いや突っ込むまい、世の中には蝶々婦人というオペラだってあるんだ。
 それに、本人が名乗っているんじゃなくて、他の人から呼ばれているだけのようだから。



 それはそれとして、マダムは食料と引き換えに、色々なアイテムをくれるのだそうだ。
 まぁ、こんなトコに居れば、まともな食料はまず手に入らないし、貴重品扱いだよな…。

 どんな物が欲しいのか聞いてみたところ、ラインナップに統一感が無い。
 
 蝙蝠の翼やヘビの皮から始まり、鍋やラーメン、プリンにゼリー。
 例外として、なんかの剣とも交換してくれるそうな。
 
 そしてその代わりとしてくれる物は……お面、壷、子供の落書き、オモチャの飛行機……その他、用途が分からない悪趣味な物も多数。



 そして何故か銃弾(本物っぽい)。









 ………苦労してんだな…。


 そうか…きっとこの遺跡だか迷宮だかの何処かで、何も食べられずに飢えて死んでしまった人の霊なんだろう。
 その怨念や執念が形を取り、しかし自分では食料を手に入れられないから、その辺で拾ったオモチャを物々交換しようとしているんだ。
 どう考えても、ヘビの皮とかと銃弾は等価交換じゃないと思うが、まあこの遺跡の中に、口径の合う銃が落ちてるとは限らないしな。
 そう考えると、銃弾であってもオモチャと大差ないか。

 OKOK、おいちゃんに任せんしゃい。
 ふくろの中には沢山食い物が残ってるぜ。
 こんがり肉Gだって、結構在庫はある。

 食ってみんしゃい!








 未知の味のお礼に、と色々なガラクタを貰った。
 持ってても使い道が無いのだが、好意を無碍にするのも悪い。

 そのままふくろにしまおうとしたら、マダムが首を傾げた。


「アナタは《宝探し屋》ではないの?」


 と。
 ええまぁ、なんかいきなりここに放り出されただけの一般人ですが。
 むしろ宝探しよりも狩りが生業ですが。

 何かツッコミが聞こえたような気がするが、どうでもいい。

 要するにアレですか、その《宝探し屋》っていうのは、遺跡を捜索するインディージョーンズみたいな人?
 あと、その辺をウロウロしているモンスターを倒し、調理し、食ってしまうらしい。
 ナニソレどんなハンター?

 更に特筆すべきは、その特殊能力だとか。
 右手にナニカ、左手にナニカを持ち、それを合わせてゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ…ヘル&ヘヴン!
 じゃなかった、それらを合わせると、「カンパーウンド!」という謎のSEが発生し、新たなアイテムが登場しているのだとか。

 例えば、ヘビの皮と蝙蝠の羽を調合すると、媚薬が出来上がるとか。


 はっはっは、そんな錬金術師みたいな謎スキル、当然のように保持していますが何か?
 だってハンターですもの。
 熟練者なら、大剣カチ上げを食らって空を舞ってる時だって、余裕で薬草+アオキノコ+ハチミツで回復薬Gを10個くらい作れますぜ。





 だからその媚薬調合について、もうちょっとkwsk。






 で、そのカンパーウンドが何すか?

 ほほぅ…このお礼にくれたアイテムは、色々便利なオーパーツの材料になると?



 …オーパーツ?





 …ま、そこは後で聞くとして、それじゃあカンパーウンドするのに必要な、もう一つの材料は?
 へー、この遺跡(やっぱり遺跡か)の何処かに転がっていると。
 それはちょっと興味が出てきたけど、何と合成すればいいのか、基準になる物が分からんな…。



 時にマダム・バタフライ。

 当方には、先ほど出した食材以外にも、コレとコレを組み合わせた新たな料理とか、色々な味を提供する用意があるのですが。
 特にこのMH世界産の通称狩人弁当なぞ、体力が増えたりスタミナが増えたり攻撃力防御力が上がったりと、新世界の味覚を味わえると思いますよ?
 アイルーでも連れてれば、幸運になったり爆破が上手になったりする味も出せたのですが。 







 何と調合すればいいかも教えてもらい、今居るメタリックな遺跡…訓練所というらしいが…をクリアすれば、報酬として特別な調合素材が手に入るとも教えてもらった。
 中には、遺跡の外…というか3つの世界で調達できそうな物もある。
 ふむ、ここは一丁頑張るしかあるまい。




 おぅ、ラストのデカブツ2体厄介すぎんよー。










 夢から目を覚まし、適当な所から取ってきた蛇の皮と蝙蝠の羽を合わせてみたところ、カンパーウンドとSEが聞こえた。
 媚薬も出来た。

 …まぁ、調合とプレイのレパートリーが増えたと思っておくか。





 オーパーツについては、ブツはあるけどなぁ…。
 マダムから教わった、永久電池の作り方を試してみたが、上手くいかなかった。
 夢から現実世界に持ってきたから、オーパーツの力が失われてしまったのか、それともこの世界の素材ではできないのか…。
 まぁ、とりあえずふくろに仕舞い込んでおくか。









 この時の俺は知らなかった。
 オーパーツをカンパーウンドする能力を得た事で、MH世界の錆びた剣とかを素材に調合できるようになった事を…。


外伝:九龍妖魔學園紀編
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