※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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今更気付いたことー。



修羅連舞砕、崩撃雲身双虎掌じゃねーか!
で、これをどう使えと。


第541話

 

 鬼疾風を使う訳でもなく、移動するうちの子達と里のモノノフと共に塔の近くへ。

 「橘花様を背負うとか羨ましい」みたいな声も聞こえたが、背負う所の話じゃないだよねー。いや今はナニもしてないけど。

 

 それはともかく、状況は思ったよりも厄介だったようだ。

 塔が動かなくなっている。これはいい。

 橘花と木綿季の結界に阻まれ、鬼は足止めされている。これもいい。

 

 主力部隊が少々手古摺っている。…この辺からが問題。

 塔に近付いて分かったのだが、既に塔からは貯めこまれた力が徐々に流れ出しているようだった。オオマガトキを起こす為の力であると同時に、その力は普通の鬼達に力を与えるものだったらしい。元が、鬼達が集めた血の力モドキだからな…。納得できる話だ。

 このため、塔に近付けば近づくほど禍々しい空気や気配が漂い始め、異界…と言うよりは、力場が形成されている。鬼達には強化、主力部隊には弱体化の効果が現れているようだった。

 妙に鬼達が粘ると思っていたが、この為かぁ…。

 

 流石に俺もこの力場を消し飛ばす、なんて真似はできない。やれるとしても、味方への被害をお構いなしにやる事になる。流石にそれは…。アラガミ化したら、異界を消し飛ばした鬼が俺だってバレるしな。

 

 

 

 クッソ、虚海が突然出てきて手を貸してくれないものか。…いかんな、他人の力を狩場で当てにするようじゃ。

 

 

「おい、何か出てきたぞ。お前、あれを知っているか? 少なくともこの世、通常の鬼に属するものではない。…貴様、異界の知識を持っているのだろう」

 

 

 博士が俺の頭を叩いて注意を向けさせる。

 指さす先は、塔の真上。

 

 

 …空に穴が開こうとしている。赤黒い雲に覆われた空、その中にぽっかりと開いた向こう側の見えない円。

 あの光景には覚えがある。オオマガトキが開かれる時の光景だ。

 ゲームでも見たし、何度か現実でも見た。…実を言うと、あんまり覚えてないが。

 

 

 でも、いつもと何か違うような気が。

 雲は赤黒いだけじゃなくて、なんか赤雷みたいなのも走りまくってるし、ウネウネした物体が円から伸びてきてるし。……あれは……木? の根っこ…に見えるが…。

 何だ、鬼達の世界にある木にあの円が繋がってるのか?

 

 

「…違うな。あれは根ではない。枝だ。…この世界の樹木とある程度以上の共通点があるとすれば、だが」

 

 

 枝ぁ? …確かに言われてみれば…大きさに惑わされて根だと思ったけど、特徴的には…。と言うか、大きさで言えば根だろうが枝だろうが異様の一言か。

 どっちにしろ、何であんなところからそんな物が出てきてんだ。しかも瘴気まで噴き出してきてるし。

 

 

「あれは…鬼達の世界に繋がった訳ではなさそうだ。正確には、そこまで届かなかったようだな。どこか妙な、次元の狭間とでもいう所に繋がって…あの枝はそこから…」

 

 

 博士が言葉を止めた。珍しく絶句している。

 もう一度俺も空に目を向けて……うん、これは黙るわ。

 

 

 円の中が見えてきた。その先では、得体の知れない肉の海のような物が蠕動を繰り返していた。

 その肉の海から、何かがせり上がって来て、向こう側から円を覗き込んでいる。

 

 顔が見える。人の顔だ。色々と異形だけど。

 金髪、赤く光る眼、ひび割れた真っ白な肌。なまじ整っているだけに、無機質さを感じさせる表情と異質さで言いようのない不気味さを感じさせる容貌。

 鬼なのだから…いや、鬼ですらないのだから、人間味が感じられないのは当たり前だ。だが、あいつはあんな姿になる前から、人間味なんて感じさせなかった。

 

 

 

 

 

 

 っていうか、ラケルてんてーの顔じゃねーか!

 

 

「羅蹴天帝? 何者だ」

 

 

 いや大和のお頭、日本人名じゃねーから。天帝でもないから。うえええ、何やってんだあの人…元々人かどうか怪しかったけど、まさかああまで人間辞めるとは…。

 と言うか、アレがラケルてんてーに関係しているとしたら、鬼じゃなくてアラガミ関連か? ここ討鬼伝世界…いや、博士が言ってたように、あの円を通じて次元の狭間みたいな所に繋がったのか。だったら何が出てきてもおかしくはないが…。

 

 いやいや、顔が…顔らしき部分が俺の知り合いと一致しているだけだ。無関係って可能性も、無くは無い。

 

 

「あなたをじっと見据えているようですが…」

 

「どう見ても友好的な感じじゃないよね」

 

 

 口元が動いている。えーっと……じ? り? う? す? …ジュリウス、か…。

 …本人くさいなぁ。

 

 何でこんな所にあの人が出てくんだよ…。…でも、ちょっと見えてきたぞ。

 

 あの木の部分と、肉の海。GE2のエンディングであった……なんだっけ、螺旋の樹、だったっけか。

 木の部分が螺旋の樹だとすると、肉の海は終末捕食か。そういや、あんな感じのに呑まれてデスワープした事もあったっけな。あっという間の出来事だったから、あんまり覚えちゃいないが。

 

 詰まる所、あれは螺旋の樹が作られはしたものの、何らかの理由で拮抗できずに圧し負けたか、出来上がった後にラケルてんてーの謀略で壊れたか何かした結果なんだろう。ラケルてんてー、自分が死んだ場合の謀略も準備してたからな。

 んで、いよいよもってどうにもならなくなったので、榊エモン辺りがどうにかして次元の狭間を開くようなトンデモ装置を作り上げ、そこにあれを放り込んだ、と。

 そしてアレは何もない空間(多分ね)を漂い続け、今回のオオマガトキもどきでそこに繋がってしまった。

 

 …どんな天文学的確率だと言いたいところだが、大方そんなもんだろう。

 今までのループであんな物が出来上がった覚えはない。いつぞやループに至っては、俺が直に首を跳ねたくらいだし。

 と言う事は…クサレイヅチに因果をまるごと奪われた、覚えていない幾多の繰り返しの中でああいう事があったんだろう。………それ言い出したら、何が出てきてもおかしくねーんだよな。橘花の話じゃ、覚えてたら確実に廃人になるくらいに繰り返してるらしいし、それだけ繰り返せばあんなモノが出来上がる可能性も多少はあるわな…。

 

 

 

 

 ていうか、これマジでヤバイんですけど。オオマガトキモドキと終末捕食。どっちも世界レベルの案件じゃないですかヤダー!

 オオマガトキモドキはまだ対策を考えておいたけど、この状況から終末捕食って、打つ手が思い浮かばないよ!

 

 …いや待ておちつけ、あれは終末捕食そのものじゃない。ラケルてんてーと混じってるみたいだし、特大級にヤバそうだがアレ自体は単なるアラガミだろう。何でも食って、延々と大きくなり続けるアラガミ細胞の塊。

 だったら、消し飛ばすなり次元の狭間に押し返すなり、まだ何とか出来る筈。

 

 

「考えは纏まったか? なら、さっさとあれをどうにかしろ。何だか知らんが、不愉快で仕方ない」

 

 

 まぁ、全てを捕食する現象の具現みたいなもんだからな。本能的に嫌ってもおかしくはない。

 しかし、こうなるとうちの子達が一緒に来ていたのは幸運だな。アレには物理攻撃はほぼ効かないが、霊力を使った攻撃なら通る。俺が囮をやっている間に、タマフリをありったけ叩き込ませよう。

 

 …空の円から、枝…まるで手のようだ…が這い出して来る。

 強い抵抗を突き破ろうとするように、ラケルてんてーによく似た顔が空間の断面に押しつけられる。塔から立ち上る瘴気で、次元の穴が少しずつ広がっていく。

 

 一拍置いて、何かが突き破られるような音と共に、終末捕食の頭がこの世界に顔を覗かせた。

 

 

 

 さて、どうしたもんか。どうにかしろと言われてもな。いやどうにかしなけりゃ、冗談抜きで滅亡の危機なんだけど。

 アレが地上に降りてくる前に潰すのが理想なんだが、流石に距離があり過ぎる。タマフリだって距離で減衰するんだから、ここから上に向けて撃ったとしても、届くころには豆鉄砲同然だろう。

 幸い、終末捕食は一気に全身をこの世界に押し込む事はできないようだ。体に対してオオマガトキモドキが小さすぎる。自分の体の形を変えて何とか通れるようにしようとしているが、何度もつっかえていた。体の形を変えるにしても、限界はあるらしいな。

 

 ここから攻撃しても効果は薄い。というか、何でも喰らう終末捕食だし、叩き付けられたエネルギーを吸収してしまう可能性もある。

 攻撃が通る可能性が一番高いのは…やっぱり神機の直接攻撃かな。触れた部分から喰われなきゃいいんだが。

 

 …何にせよ、こうしていても始まらんか。とにもかくにも距離を詰めなきゃならん。

 橘花、すまんがそばを離れる事になる。うちの子達に守ってもらってくれ。

 

 

「大丈夫です。私とて戦う手段が無い訳ではありません。何より、戦場に出てきた時点で覚悟は決めています。私の事に構わず、全力で戦ってください。それが、きっと一番の解決方法です。今までの繰り返しでも、そうだったんですから」

 

 

 …そうか。そうだったかな。下手に暴れて事態をややこしくした覚えばっかりだけど。

 じゃ、行ってくるぞ。

 

 

 

 あまり気は進まないが、行く先は座り込んでいる塔の上。現状、この近辺ではあそこが一番終末捕食に近付ける。

 塔がじっとしてるとは限らないから足場が不安定になる上、終末捕食が塔を破壊したら落下一直線。おまけに塔から漏れ出す瘴気でデバフ山盛りという悪手だが、他に方法が無い。

 

 

 塔の体を駆けのぼる。抵抗があるかと思ったが、塔は脛毛もとい足を投げ出して座り込んだまま微動だにしない。

 …まるで、気力を全て失ってしまったかのような無頓着振り。考えてみれば、塔はオオマガトキを起こす為に逃げろ、という命令を与えられて、それに従っていた。モドキとは言えオオマガトキを発生させた以上、逃げ回る理由も無くなったのかもしれない。

 或いは、そうするだけの意識すら無くなっているのか。塔から溢れ出している瘴気は、塔に貯め込まれたエネルギーそのもの。塔はそれを消費して、足を作ったり、逃げ回ったりしていた。ならば、そのエネルギーが減って行けば、出来る事は少なくなるし、それどころか意識さえ無くなっているかもしれない。

 そうだとしたら、足場が揺れ動く心配が一つ減るので、有難い事ではあるんだが…。

 

 

 

 塔の天辺に駆け上がった時には、終末捕食ラケルてんてーは細く伸ばした体をこの世界に随分と捻じ込んでいた。全体像がどれだけあるか分からないが…いや、さっき見えた分だけでも、この10倍はあったな。

 木からぶら下がって獲物を見る蛇のように、伸ばした体で俺を見ていた。ラケルてんてーの面影が残る顔は、よく見れば小さくじゅりうす、じゅりうすと繰り返している。

 意思を持っての事とは思えない。ここにジュリウスが居ないのは明白だ。こいつが発生したループでのジュリウスは……あまり考えたくないが、螺旋の樹みたいなものが終末捕食に取り込まれているという事は、そういう事なんだろう。

 ラケルてんてーの意思が無いとしても、俺を注視してるって事は、獲物として興味を持っているか、計画の邪魔になる障害だったという意識だけが残っているのか。

 

 何にせよ、こっちに集注してくれるのは有難い。このまま下に降りられるのが一番危険だからな。

 

 

「じゅ  り  う す !!!」

 

 

 それって鳴き声? なんて思う暇も無く、体を伸ばして掴みかかってくる終末捕食を避ける。ラケルてんてーの顔部分目掛けて、神機による銃撃。更に伸びた胴体に斬り付ける。続けてタマフリと投げナイフで追撃。

 塔に激しく体をぶつけた終末捕食。予想はしていたが、痛痒を感じている様子は無い。

 

 …が、攻撃が全く通らないという訳でもないようだ。投げナイフは刺さったものの、そのまま取り込まれた。神機による銃撃、つまりオラクルパワーはほぼ無効。効果があったのは、タマフリと神機による直接攻撃のみ。この分だと、鬼杭千切もどれだけ効果があるか。

 線引きの根拠がイマイチ分からないが、それで削り切れ、或いは押し返せって訳だ。

 

 終末捕食の動きは……。

 

 

 

 よっ、 ほっ

 

  うらっ!

 

 

 …よし、読めるし対応できる。率直に言って、こいつの動きは単純だ。ただ只管に俺を狙って、スピードとパワーに任せて捕らえようとしてくる。 

 体自体は不定形で、どんな動き・形も自由自在の筈なのだが、実際にはそれこそ蛇の動きに近い。こいつの動きの軸になっているのは、オオマガトキモドキから突き出された部分。

 どんなに不定形で、素早く形状変化したとしても、体を支える軸が丸見えであれば予測はつく。素早く立体的に動く為に、骨や関節のような部位を捨てられてない。つまり、半分近くは生物と同じ動きなのだ。

 終末捕食だってアラガミと同じ性質を持ってるみたいだからな。食った物を学習した結果、俺のよく知る敵の動きに近付く…か。皮肉なもんだね。

 

 大きな蛇型の相手は慣れてるよ。ラヴィエンテにぶっ飛ばされた時の事は、忘れたくても忘れられないくらいだからな。

 

 

 が、動きが読めても押し返せるかって言われると別の話でねぇ!?

 奴が俺を捕らえようと近付いてきた瞬間しか攻撃が与えられない。カウンターの形にはなるが、それで奴に与えるダメージが大きくなる訳じゃない。質量が違い過ぎる。

 ついでに言えば、迂闊に部位破壊もできやしない。終末捕食の欠片がその辺に散らばったら、今は何も無かったとしても今後どうなる事か…。

 

 さらに厄介な事に、終末捕食が何度もぶつかり、足場の塔が崩れかけている。元々罅が入っていたのに、これだけ耐えているのは素直に凄い。内部にまだ残っている瘴気が、塔の崩壊を防いでいるのだろうか。

 だがそれも、あまり長くは保たない。塔に終末捕食がぶつかる度に、罅が増え、溢れ出る瘴気が尽きていく。

 何より、この終末捕食は『塔を喰らっている』。本命は俺のようだが、ついでとばかりに齧りついては取り込んでいるのだ。

 その為に動きが泊まる一瞬を狙い、あちこち斬りつけているのだが…。

 

 

 

 

 …考えろ。

 

 終末捕食となってまで、ラケルてんてーの姿でいるのは何故だ? 単なる残滓? それとも核となる部分がある?

 俺を執拗に狙うのは、俺の中のアラガミ細胞に反応しているだけか? それとも明確…曖昧かもしれないが…な意思を以て俺を障害と認識しているのか。

 ジュリウスの名前を繰り返し呟いているのは? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わっかんねーから大樽爆弾Gをくらえぃ!

 

 

 

 

「じゅ     りぅ すすすすす   」

 

 

 よく分からんが効いたらしい。流石はMH世界の最終兵器。

 静流達に、タマフリ使って爆弾量産させようか…駄目だ、単なる爆弾ならともかく、大樽爆弾は作り方に秘密があって教えていない。単なる火薬アタックで効くかな…。

 

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