※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第542話

 終末捕食の飛び掛かりを回避した隙に、チラリと眼下を見る。

 周囲の鬼達はほぼ掃討されており、ウタカタの主力陣もうちの子達も塔の元に集まってきている。あと、塔の足は無くなっていたが、何故か脛毛だけ抜け落ちて残っていた。

 しかし集まってくれたはいいものの、現状で参戦できるかと言われれば話は別だ。崩れかけの塔の上でホイホイ飛び回れるのは俺と速鳥、後は初穂。だが2人も3人も飛び回れる程、塔に足場は無い。

 

 「空に穴が」」「間に合わなかったの…?」「あの鬼は一体」と、口々に驚愕しているのが聞こえた。まぁ、実際大きさからしても超巨大鬼に分類されるし。

 と言うか、この光景ってアレやな、多分討鬼伝ストーリーのED…トコヨノオウを倒した後のシーンだな。

 ラスボスを討伐し、塔の元まで辿り着いたモノノフ達。しかし既にオオマガトキは開きかけていた。絶望しかけるも、その時橘花から貰った結界石が光を放つ。…で、ミタマ達が正しい順番で繋がり、「ムスヒは成れり」でオオマガトキが閉じると。

 

 

 …どうしたものかな。結界石、持ってないよ。

 つーか、この状態でオオマガトキが閉じたら、這い出てきている終末捕食がこの世界に残ってしまわないか? 核になってる部分から切り離されて活動停止してくれるならいいんだが。

 

 とりあえず、下に向かって援護射撃を依頼し、終末捕食の突進をまた避ける。…援護射撃って言っても、どれだけのタマフリが届くかなぁ。

 もうアラガミ化してしまうか? …いや、結果は同じか。あの終末捕食はアラガミだって食べる。継戦時間が短くなって、ついでに後々の自分の立場が悪くなるだけだ。

 

 どうしようか悩んでいたら、下からドンドンと爆裂音。何事かと思えば、終末捕食目掛けて大砲の弾が飛んできた。成程、据え付けていた大砲の向きを変えて使ったのか。

 しかしギリギリ届くかどうかの高度なので、着弾しても効果は薄い。むしろ着弾させられた事を褒めるくらいの難易度だが。

 

 終末捕食の目が、自分を害そうとしている獲物達に向けられる。

 そっちを見るな、と効果が無くてもオラクルバレットを叩き込もうとした時、下から初穂が塔を駆けあがって来た。

 

 

 おいどうした、この場で二人も暴れられんぞ。

 

 

「すぐ戻るわ。悔しいけど、私も速鳥もここで戦えるだけの技量はないから。それより、一発逆転の作戦を進めてる。悪いんだけど、もうちょっとあいつを引き付けて。タマフリ、霊力の攻撃は通じるのよね?」

 

 

 作戦…。ちょいと不安だが、どっちにしろ今の俺じゃ打つ手がないな。タマフリが利くのは確かだな。

 了解、どれくらいかかりそうだ?

 

 

「あいつからの妨害が無ければ、お茶が冷めるくらいの時間で終わるわ。準備が整ったら那木が鏑矢を打つ。もう一回あいつの注意を逸らして、私か速鳥がまだ来るから。仕上げの一発、任せるからね」

 

 

 了解。大一番にも慣れたもんだ。何とか決めてやるさ。

 

 

「…正直、ちょっと悔しいわ。私達の里の事なのに、後からきた人達に頼りっぱなし」

 

 

 何言ってんだい。俺らだってもう里の一員だろが。前も先もあるもんか。

 

 

「お姉ちゃんなのに、弟や妹に頼ってるのが悔しいの。…できる限りの援護をするから。してほしい事があれば、何でも言ってね」

 

 

 ん? 今何でもするって…いや言ってないな。冗談はともかく、その一発逆転の策を早めに用意してくれ。

 できれば、塔が崩れ落ちる前にどうにかしたい。

 

 

「わかって…うぁ!?」

 

 

 叫びを挙げる初穂と同時に飛び上がる。直後、俺達が居た場所を終末捕食の体当たりが薙ぎ払った。

 反撃するよりも前に、初穂の着地先を確かめる。

 

 いかん、あの軌道だと自由落下…

 

 

「あっぶな! そんじゃ、頼んだわよ~」

 

 

 …そういや鎖鎌使いだったね。

 初穂は器用に空中で体勢を入れ替え、鎖分銅を塔に打ち込む。それを起点にして体を塔の方に引っ張って、軌道修正しながら落ちて行った。

 あれなら途中でちゃんと着地できるな。

 

 よっしゃ、それじゃ気を取り直して。

 終末捕食に対する嫌がらせと対処法を、改めて考えるとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 攻防を繰り返す事数度。観察と反撃を続け、幾つか分かった事がある。

 

 まず、こいつの破片は終末捕食として機能しない。部位破壊したとしても、通常アラガミと同じように結合が解けて消えるだけだ。

 やはりこいつには核となる部分があってそこに繋がっている事か、或いは一定以上のアラガミ細胞が結合していなければ活動しないらしい。

 これは朗報。核を特定できなくても、粉々に砕いてしまえばこいつは戦闘能力、捕食能力を失う。一番心配だった、散った細胞が大事の元になるんじゃないかという心配は無くなった訳だ。

 

 次に、ラケルてんてーのような知略は無いに等しく、反射で(或いは食欲で)動いているという事。

 ラケルてんてー並みとは言わないまでも、人並みの知能があれば、下に居るモノノフ達を害するのは簡単なのにそれをしなかった。塔から剥ぎ取った岩を落下させるなり、自分の体の一部を伸ばして薙ぎ払うなりすれば、即全滅とは言わないまでもちょくちょく突き刺さる援護射撃は無くなるだろうに。そしてそれを防ぐ為、俺が隙を晒すのも予測できるだろう。

 考えてみれば、それもおかしくないかもな。

 終末捕食が発生した時点で、本来であれば止める術はない。ただ接触するもの全てを喰らい続ける。それを止める方法は無い。ただただ力圧し、いや食欲任せでいいのだ。ラケルてんてーのような知略を残す必要はない。

 今、俺だけを狙っているのは、アラガミ細胞に反応しただけ。率直に言えば『美味そうだから』だろう。

 

 だったら、どうしてラケルてんてーの面影を残しているかだが…単純に、最初に学習したから…だろうか? その方が『食べやすい』と判断して、その形を残し続けたのかもしれない。

 流石のラケルてんてーも、終末捕食に取り込まれて尚自己を残しているとは……いや、ラケルてんてーじゃなくて、彼女に囁いていたアラガミの意思か。だったらラケルてんてーが消えても、そっちだけ残る可能性はあるな。

 

 後は……疑似餌、かな。何度か反撃したが、全くと言っていいほど自分を守る動きをしない。ただただ俺に喰らい付いてくるだけ。

 脳天を撃ち抜こうが、目玉を潰そうが、喉を掻き斬ろうが、心臓がある筈の部分を穿とうがお構いなしだ。しかもあっさりと再生する。これだけやっても痛痒を殆ど感じてないようだ。

 よく分からない巨体の中に、一か所だけ造形が違う部分があれば当然目立つ。誰しも、そこが急所、少なくとも重要な部分だと思い込んでしまう。

 

 仮に、姿を現している部分全てが、人間で言う手に該当するとしたら…。手にあるのは触覚のみ。それで充分な情報を得る事は難しい。

 さっきから単調な動きしかしないのは、こちらの状況を殆ど把握できてないからだとしたら? アラガミ細胞の気配だけを頼りに、手を適当に振り回したら発見できた塔にちょっかいを出しているとしたら?

 

 オオマガトキで開いた円を見る。

 そこからは、ずっと終末捕食の体が伸び続けている。ゆっくりとだが、全体をこちらに押し込もうとしているようだ。

 …やはり、核となる部分があの先にあると考えた方がしっくりくるな。

 目の前のラケルてんてーボディを破壊したところで、終末捕食は活動を停止しないだろう。

 

 つまり…どうにかして押し返すか、オオマガトキを閉じるかせにゃならんのね。

 しかし、終末捕食の体が邪魔して閉じられないんじゃないだろうか?

 

 

 

 

 …趙火力で押し返すしかない…か。現状じゃどうにもならんな。

 やっぱり、ここは後の事なんぞ考えずにアラガミ化するしか…!?

 

 

 覚悟を決めようとした時、塔の根本近辺から力の急激な昂ぶりを感じた。その強烈さは、俺でさえ背筋が寒くなるほど。

 何より異常なのは、霊力でも血の力でもない、今まで感じた覚えのないエネルギーだという事だ。

 

 膨れ上がる力は天井知らずに高まっていく。

 眼下を見れば、そこでは塔を囲んで手を繋ぎ、輪になっているうちの子達と里のモノノフ達。その中心、塔に体を寄せるようにして立つ橘花。

 

 立ち上る力が空まで届き、オオマガトキの円を照らす。

 

 

 

「 じゅ   じゅ  じゅ  ぅぅぅぅぅ!!!」

 

 

 終末捕食が苦悶の声を上げた。見れば、円が僅かながら縮小しようとしているようだ。無理矢理通ってきた胴体部分が締め付けられている。

 …だが、やはり胴が邪魔になってオオマガトキが閉じない。あのまま閉じてくれたら、終末捕食の本体とチョン切れてくれたろうに。 

 

 

 

「お待たせ!」

 

「呆けている暇はない! 決めるでござる!」

 

 

 

 速鳥と初穂が駆け上がって来た。その背中には、何故か荷物が抱えられている。

 風呂敷で包まれたその荷物を、俺の前にドンと置いた。ジャラジャラと擦れる音を立てるそれは。

 

 

 

 …宝玉? こりゃ、シノノメの里で使ってた宝玉じゃないか! どっから持ってきたんだ!?

 いや、そんな事言ってる場合じゃないか。

 

 宝玉には一つ一つに強烈な力が籠められている。それが、こんなに数があれば…。

 

 

「締めの一発は任せるって言ったでしょ。叩き斬ってしまいなさい!」

 

 

 おうさ!

 これだけあれば、特大濃厚な鬼千切・極で行ける!

 

 さぁ…力を束ねて……!!!!

 

 宝玉に貯めこまれた力が、俺に伝わってくる。

 塔の周りを囲む皆から更に力が送り込まれてくる。

 

 暴走しそうな力を抑え込み、形を与えていく。長く、長く伸ばす。

 出来上がった輝く剣は、1キロ近い長さとなった。それだけの大きさにしても、その密度は全く薄れない。

 

 

 

 一発目ぇぇぇ!!!!

 

 

 輝く剣を横薙ぎに払う。狙いはオオマガトキの円から飛び出ている胴体部分。

 防ごうとしたらしい動作ごと、全く抵抗を感じずに叩き斬った。

 

 

 二発目ぇぇぇ!!!!

 

 

 今度は突き。剣を一度縮めて構えを変え、狙いを定める。

 あえて切れ味を鈍く変化させ、勢いを付けて伸ばした。伸びろ如意棒、って気分。

 一撃目で切り落とした断面に叩き込む。

 剣を伸ばし続ける事で強引に抵抗を突き破り、尚もこちらに出ようともがいていた終末捕食を押し返した。

 押し返した先で、終末捕食の何処かを破壊した手応えがあった。…致命傷かどうかは分からない。

 

 すぐに剣を縮めて引っ込めると、つっかえていた物が無くなったオオマガトキの円は、眼下の皆から立ち上る力に触れて、急速に収縮、そして消滅した。

 

 

 だがまだ気を抜かずに乱舞!

 

 塔から飛び降りながら剣を振り回す。狙いは本体から切り離されて落下していく、終末捕食のラケルてんてー部分。

 皆に当たらない程度に剣を伸ばし、真っ二つ。更にもう一閃、一閃、一閃。

 

 

「落ちるぞー! 円陣はもういい、退避せよ!」

 

 

 大和のお頭の号令が聞こえる。そりゃそうだ、このまま終末捕食が落下したら、塔を囲んでいる皆に直撃コースだった。

 下に居る者達が繋いでいた手を離して各々退避する。

 それと同時に、注がれ続けていた猛り狂う力が急速に衰えていき、作り出していた剣が消えてしまった。

 

 これ以上の攻撃は不可能と判断し、空中ダッシュで軌道を変えて着地。

 一息吐くと、横から分厚い手で肩を叩かれた。

 

 

「おう、大したもんだったぜ! あれだけの力を見事に制御するたぁな」

 

 

 富獄の兄貴…。

 

 

「押し寄せていた鬼達は討伐できたし、オオマガトキも防げた。…で、あれはまだ動くのか?」

 

 

 …いや、そんな気配は無いな。だが例え動かなくても、あれは存在そのものが危険だ。強いとか弱いとか、何が出来るとかに関係なく、徹底的に滅却せにゃならん。

 

 

「ほう…。おい、聞いたかお前ら! 最後のひと踏ん張りだ! あのでかいのは動く様子はねえが、油断だけはすんなよ! 後は好きなようにぶっ放せ!」

 

「「「「応!」」」」

 

 

 疲労の色を滲ませながらも、モノノフ達が気炎を上げる。この粘り強さは、うちの子達にはまだ無いな。過酷な戦を長期間戦い抜いてきたウタカタのモノノフだからだ。

 とは言え、うちの子達も黙っている筈も無く。

 

 

「あたし達も負けてられないわ! 瞬間火力はこっちが上なんだから、どんどん撃ちましょ!」

 

「あまり大人数でやってもタマフリが干渉し合いかねないわね。交代制でいきましょう」

 

「若様が一番厄介なところをどうにかしてくれたんだ。後は俺らがやらないと、無駄飯ぐらいになっちまうぞ」

 

 

 疲れは隠せないものの、まだまだやれると主張している。この子達のタマフリは、普通のタマフリよりも強力な分、負担も大きいからな。結構な長丁場になったし、意地だけで立っている子もいるようだ。

 ここで止めるのも何だな…。

 

 全員、油断だけはしないように。そいつ、何をやらかすか分からないからな。特定の刺激を与えたら爆発、そして復活なんて事になっても驚かないくらいだ。  

 直接触れるのは厳禁だ。タマフリで潰せ。

 

 

 

 指示を出して少し下がる。何かあった時にすぐ気付けるよう視線だけは離さないようにして、適当な場所に腰を下ろした。

 腰を下ろすと、どっと疲労感が押し寄せてくる。久方ぶりに、本気で疲れた。

 相手が相手だったのもあるが、それ以上に注ぎ込まれた力を制御するのに神経と体力を使った。

 

 

「お疲れ様でした。恰好よかったですよ」

 

 

 おう、ありがとう橘花。…と言っても、正直何がどうなったのか把握してないんだけどな。

 一発逆転の策があるって言うから乗って、後は状況に流されるまま斬りまくっただけだし。

 策ってどういう事だったんだ? あの宝玉は何だ? 何がどうなってオオマガトキが止まったんだ?

 

 

「御所望とあれば説明しますよ。元は、あなたが立てた策に、明日奈さんと神夜さんが追加要素を作った感じなんですけどね」

 

 

 まぁ、確かに宝玉の事を知ってて、使い方を理解してるのはあの二人と木綿季くらいだわな。

 しかし、あんな量をどっから持って来たんだか…。

 

 

「シノノメの里からです」

 

 

 …そりゃ、確かにあそこにしか無いけどさ。どうやって…。

 

 

「そうですねぇ、どこから話したらいいか…。いえ、一から説明していきましょう。まずはオオマガトキを閉じた力ですが…」

 

 

 俺の隣に座り込み、橘花は一つ一つ語りだした。

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