15日に本社から判断が下されて、16日からお仕事再開とかスケジュールが無茶苦茶すぎるわ!
この状況で、上層部に真っ当な舵取りを期待するのが無茶なのは分かってますが、もうちょっと何とかならんかったのであるか…。
いや自分だって結構な大ポカやらかして、各位に迷惑をかけて信頼を損なってしまいましたが。
営業再開前に凹む…。
要請解除になったら、気になっていた博物館とかにも行けそうなのが救いです。
でも安心して行けるかって言われるとな…。
まず、オオマガトキを閉じたのは、俺が発案したムスヒの方法と同じだった。
つまり、ミタマとミタマが繋がり合い、その余波で因果を正す。これを、ここに居る全員で行った訳だ。
発案した時は解決していなかった、誰と誰が繋がるか、についてだが…これはミタマの指示に従ったらしい。
ここで少し勘違いしていた事が発覚した。オオマガトキを防ぐには確かにミタマ同士が繋がる必要があったのだが、それは別に時代順に並べる必要は無かったらしい。まぁ、結果的に大体そんな感じにはなるらしいんだけど。
博士曰く、ミタマ同志、何らかの関係を持っている者と繋がればよかったのだ。
知人同士であれば、当然因果はある。知人でなくても、同じ時代を生きたミタマであれば、薄くても因果は生じている。それらが繋がればよかったのだ。
「そもそも、一言で同じ時代と言っても、いつミタマになったのかは分かりませんからね。天寿を全うしてミタマになった方も居れば、本来死なない筈だった時期に鬼に因果を乱されて死んだ方も居ます」
まぁ、確かに。同じ場所、同じ時間を共に過ごしていた者でも、いつミタマになるかはそれぞれだものな。ミタマ達自身、自分が辿った歴史の流れと違う…みたいな事を言ってた事もあるらしいし。
それでも、強い因果を持つミタマ同志が順々に並んでいけば、自然と時代順にもなるか。
100人以上のミタマの結びつき…それだけあれば、確かにオオマガトキを閉じる事だって出来るだろう。あの時感じた、桁外れに高まる力を思い出す。
…役割分担ではあるんだけど、俺だけそこに入っていなかったのはちょっと寂しいなー。
いや、のっぺらミタマが誰と結びつけばいいんだって話だが。
「そんな事はありませんよ。鬼千切・極…でしたか。あれを使った時、宝玉からの力だけでなく、皆からも力を注がれていたではありませんか。いわば、貴方を中心として皆が繋がっていったのです、私が仲介しましたけどね」
そう言う橘花の手の中には、見覚えのある石があった。何度かループで預かった事もある結界石だ。持ってきてたのか…。
「ええ、私にとってもあなたにとっても、お守りのようなものですから。結界を張る媒介にもなりますし、持ってこない理由がありません。この石を通し、皆の力をあなたに託したのです。ムスヒによって生じる力だけではありません。皆が霊力を振り絞り、戦う貴方に届けようとしたのです」
…動かない終末捕食にトドメを刺そうと、タマフリを使い続けている皆を見る。
疲弊しているのは激戦が続いた為だと思っていたが、確かにそれだけでは説明がつかない程、皆の霊力が底を尽きかけている。
そこまでして援護してくれたのか…。
「ですが、元より霊力も尽きかけていた為、充分な力が集まらないのではないか、という不安がありまして…。そこで持ち出されたのが、あの宝玉です。聞けば、あの宝玉は貯めこまれた力を癒す事に使う事も、逆に力を籠める事もできるそうではないですか」
確かに、異様なまでに汎用性が高いんだよな…。でも、あれがあるのはシノノメの里だけだぞ。明日奈達なら最後の手段として持ってきていてもおかしくないが、それにしたって数が無い。
「…それはその…実は、雪華さんが…」
雪華? 少し目を反らす橘花。
「……話には聞いていましたが、まさか本当にあれ程の力を持っているとは…。私もそれなりに術や力、それに……何と言いますか少々特殊な性癖に対する寛容さには自信があったのですが、実際に目にすると寒気すら…」
何か妙なものに戦慄しているようだが、一体何がどうなったというのだ。そもそも雪華が何故ここで出てくるのか、そろそろ説明を続けてほしいな。
「はい…。宝玉を使って皆を回復させようとしたのは神夜さんなのですが、やはり数が足りず、充分な回復量は得られませんでした。その時、突然明日奈さんが叫んだのです。『雪華! 見ているんでしょう、宝玉を送って!』と」
……マジか。超絶反則技じゃねーか…。
確かに雪華は、その力でよく俺を覗いている。千里眼の術をノーリスクで使い放題になっているのだ。特にエロい事している時とか、戦っている時とか、雪華の視線を感じる事は珍しくない。
「何事かと思いましたが、すぐに分かりました。あの多数の宝玉が、この場に転移してきたのです。…物質の転移は、私にもできると言えば出来ますが…その物質に強い霊力が籠められていれば、それだけ必要な力は跳ね上がります。籠められた力と術が干渉されてしまいますから、それを防ぐために転移させる物をより強い力で包み込んでから転移させないといけないのです。加えて、転移先が遠ければ遠い程、強い力と…それ以上に緻密な制御が要求されます。それこそ、数日かけて力を蓄え、身を清め、儀式の準備をして、それでようやく半里の距離を飛ばせるかどうか。ですが、雪華さんは千里眼の術を使用していた直後に、間を置かずあれだけの宝玉を送って来たのです。しかも、シノノメの里からこの戦場に直接。どれ程の力があれば、そんな事ができるのか…」
ああ…。今のあいつは、色々特別性だからな。力の強さだけで言えば、橘花が10人居てもまだ及ばないくらいだ。
それにしたって、あいつも結構きつかっただろうけどな。力の絶対量はまだ余裕があるかもしれんが、制御に関しては橘花とそう差はない筈。…いや、突然手に入れた大きすぎる力を制御するうちに、上達した可能性はあるな。ずーっと千里眼の術を使ってるから、自然と熟練していくだろうし。
転移の術は、転移先の設定やら計算やらが非常に面倒くさいと聞く。それも、千里眼の術で視認した場所に送るのであれば、幾らか難易度が下がるかもしれない。
「別に、雪華さんが怖くなったとか、そういう事じゃないんです。文通も続けてますし、とてもいい人だというのは知っています。『趣味』に関しても色々と話が合いそうですし」
それについては橘花の方が上だろうなぁ。色々仕込んだとは言え、一緒に居られた期間は非常に短かった。体も開発はしていたが、特殊なアレコレに関してはまだまだ教え込めていなかったのだ。
…二人の性癖や開発についてはともかくとして、怖くなったというよりは単純に驚いた、って事かな。隣にいる友人が、ふと振り返った瞬間に世紀末覇者ばりの筋骨モリモリバスターゴリラになってたら、そりゃ驚くわな。
「言っている意味が今一つ分かりませんが、そういう事ですね。誰だって、突然自分の隣に突然山が現れたら驚きます。…ええ、そういう事ですね。言葉にしたらすっきりしました。ええ、怖がっているんじゃありません。これまで通りのお付き合いができそうです」
そりゃよかった。…ていうか雪華はこのやり取りも……いや、視線を感じない。流石にこの距離の転移は疲れたか。今度、労ってやらないと。
…もしもこの転移を軽く済ませられるようであったら、橘花を経由して宝玉から何から送って貰い放題、なんて考えたけど流石に無理か。…一応言っておくけど、対価は払うからな。今回送ってくれた宝玉についても。
「話を戻しますね。雪華さんが送ってくださった宝玉のおかげで、皆はかなり回復できました。宝玉は力を失いましたが…それを捨てるのは勿体ないとばかりに、今度は神夜さんが」
神夜の指示で、皆はそれぞれ一つずつ懐に宝玉を入れた。その状態でムスヒを行い、更に橘花経由で俺に霊力を送り込む。
こうする事で、力の余波が宝玉に浴びせられる。力を貯め込む性質を持つ宝玉は、溢れ出た力、飛び散った力…つまりロスとなる筈だった霊力を吸い上げて、また力を得た。
それを速鳥と初穂で俺の元まで持ってきて、皆から注ぎ込まれる力+宝玉の力を束ねて鬼千切・極にした訳だ。
ついでに言えば、普通なら一発撃った後にすぐ消え去ってしまう鬼千切・極を持続して振り回す事ができたのは、力が注がれ続けていた為。
逆に消え去ってしまったのは、終末捕食の落下から逃れる為に円陣を解いた為、注がれる力が少なくなって維持ができなくなった為だ。
「…と、大体こんな所ですね。何か聞きたい事はありますか?」
いや、大体の事は分かったと思う。見事なサポート…いや、援護だったよ。助かった。
「そちらこそ、あの大物を見事退治されましたね。惚れ直し…あ、姉様がこっち見た」
無駄に勘のいい奴だな…。手遅れだって事にだけは気付いてないみたいだが。
さて、休憩はこの辺にして、俺も処理に加わりますかね。
終末捕食の体の処理には、朝までかかった。
何せ物が大きすぎた上に、直接接触は禁止でタマフリのみという縛りがあったからな。時間がかかるのも当たり前だ。
もう放っておかないか?と言う考えも出るには出たのだが、ここは里のすぐ近く。見た目も不気味だし、得体の知れない物を放置しておくと後が怖い。
…大分追い込まれてたんだな、改めて見ると。
結論から言えば、また動き出すかも?という懸念や、取り込まれるかもしれないので直接接触を禁じたのは杞憂だったようだ。
本体から切り離された為なのか、それともGE世界とは違う世界に居るからなのか、アラガミ細胞は完全に活動を停止していた。
同じアラガミ細胞でしか傷つけられないという特性も消え、単なる死骸となっている。
更に細胞同志で結合する力も弱まっていたらしい。ある程度小さく砕いたら、黒い水のようになって溶けてしまった。アラガミを討伐した後、死骸がああなるんだよな。
「それで、結局あれは何だったのだ? 異国の女の姿をしていたが、外つ国にはあのような鬼が居るのか」
あれは鬼とはまた別者だよ。まぁ、大まかな所は間違ってないけど。
…あれは何でも呑み込んで増殖していく…言ってみれば、アレ自体がオオマガトキみたいなものだ。放っておいたら、それこそ人だろうが鬼だろうが呑み込んでいってどうにもならなくなる。
救いなのは、二匹も三匹も居るものじゃないって事かな。
「ふむ…。だが、オオマガトキの穴の向こうに居た本体を討滅できた訳ではあるまい。それに、一匹現れたのであれば、可能性が低くとも二匹目が出る可能性はあるぞ」
…そうなんだよなぁ。またどっかで、あいつが出てくるんじゃないかって不安は確かにあるよ。今回あいつが出てきたのは、塔が作ったオオマガトキモドキが偶然あいつが居る空間に繋がったからだと思うが…。
あいつを異空間に追放したのだって、多分殺し方が見つからなかった為だよなぁ…。
それでもどっかでカチ合う可能性は高いんだから、対策を考えておかないと…。
ところで、塔の方はどうすんだ。中に籠められていた鬼の力は、完全に消え去ったようだが。
「今すぐと言う訳ではないが、破壊せねばならん。もう鬼に利用されるような力は残ってないが、だからこそ非常に脆い。ただでさえ罅やら何やらが入っているのだ。いつ崩れ去るか分かったものではないぞ」
そうか。そうだな、何かに使えないかと思ったけど、安全を考えればそれが確実か。
じゃあ、この辺一帯は暫く封鎖した方がよさそうだな。幸い、塔が瓦解したとしても、里に影響が出るような場所じゃない。人が居なければ怪我人も出ないだろ。
「うむ…。その辺りの事は、また追々決めるとしよう。今は、この戦いを乗り切れた事を喜ぼう。幸い、死傷者も居ないしな」
大勝利だよなー、本当に。死人が出なかったのは、苛烈な直接戦闘を行ったのが里の主力陣だけだったから、と言うのもあるだろうけども。
さて、終末捕食も砕けるところまでは砕いたし、全員撤収するぞー!
でかい戦を超えたし、一休みして宴会するぞー!