識の事は後で…具体的には明日くらいに話をしに行くとして、雪華に連れられて両さんの元に向かう。
風華・練の姉御は、自分の仕事があるらしくそれぞれの職場に戻って行った。
里長用の屋敷は、暫く見ない間に随分と様変わりしていた。
何だかよく分からない小物と酒瓶が、所せましと置かれている。酒は…まぁ分かるが、他は何だろうな。木彫りの熊やら刀の鍔やら何かの絵やら、統一性が無い。ただ、それらが非常に大事に扱われているのは分かった。
「ああ、これですか? お頭が集めた蒐集物ですよ。異界で拾ってきた物もありますし、霊山との取引で手に入れた物もあります。よく分かりませんが、『出すところに出せば、相当な値が付く』だそうで」
財テク用かな? いや、それにしては愛着を持って扱っているのが分かる。
まーアレだろな、マニアックなコレクションと言うか、貴重なプラモ・フィギュア・カード的な。
「お頭、寒雷さん。雪華です。お連れしました」
「おう、入ってくれ。…よう、元気そうで何よりだ」
雪華の声に応えたのは、部屋の主ではなく寒雷の旦那の声。襖が開かれると、囲炉裏を前にした寒雷の旦那。そして、部屋の奥で何やら作業台に向かっている両さんの姿が見えた。
えらく集注しているらしく、声が聞こえてないようだ。
「ああ、こいつの事は放っておいてくれ。こうなったら梃子でも動かん。…ま、どうせ居ても悪巧みするか、妙に専門的な知識をひけらかすかしかしないから、あまり意味はないけどな」
それでいいのか里長が。
「今の場合だといいんだろうな。特に悪巧みが。こいつの機転のおかげで、霊山との取引で随分と優位に立てたもんだ」
「識さんを見事に陥れてましたからねぇ…」
何をやらかしたのかと聞いてみれば、使者としてやってきた識の有様を、霊山に伝えたのだそうだ。…オオマガトキで見捨てた謝罪や、今後の付き合いに関する取り決め、霊山の意向を伝える役割、宝玉や超界石に関する研究などを丸ごと放り出し、全財産+公的な資金を超界石ガチャに注ぎ込む様を。
そりゃ、識が解任されるのも無理ないわなぁ。霊山の使者を汚点とし、それを使者として遣わした事に「どれだけ舐めれば気が済むのか」と難癖をつけ、同時に宝玉の有用性もアピールする事で「だったら勝手にしろ」と突き放されるのを防止する。
それを元にして、散々に譲歩を引き出した…か。
うーん、ようやるわ…。
と言うか、それだけされて識がよく大人しくしてたな。
「あいつも色々と後ろ暗い身だからな。今、霊山に帰るのは自殺行為だと分かってるんだろうよ。……待たせたな。白浜からも聞いてるぜ、霊山でもウタカタでも随分派手にやってるそうじゃないか」
ああ、両さん。あんたも相変わらずみたいだな。里人からの評価も含めて。
識が後ろ暗いって、無駄に説得力が……ああ、いやそれよりも先に面倒な事を済ませてしまうか。
シノノメの里のお頭。
ウタカタの里から、窮地を救われた礼として…。
「ああ、やめろやめろ、そういう堅苦しいのは好かん。とっとと済ませてしまえ。要は、雪華が言っていたあの話だろう? 流石に、大量の宝玉をウタカタまで転移させるとは信じがたかったが…その礼か。期待してもいいんだろうなぁ?」
わっるい顔してんじゃねーよ、両さん。相応の物を運んできたが、言っちゃなんだが里そのものの意思で助力されたんじゃなくて、雪華一人の咄嗟の行動だったからな。一番重要な礼は、雪華本人に手渡す事になる。
…と言っても、送ってきてくれた宝玉に力を最充填したものと、ウタカタの名産品、物資、それに雪華がしてほしい事があったらできる限りそれに沿う、と言う事になるが。
あ、これ雪華向けと里向けの目録な。
「…………」
おう、雪華、無言で目の色変えるなや。
「ふむ……まぁ、落としどころと言えば落としどころか。確かに、力を尽くしたのは雪華一人だったんだしな。その割に返礼が多いのは、これからの付き合いを見越しての事か。…確か、大和…だったか。話の分からん武断者という訳じゃなさそうだ」
「俺は気に入らんな。こういう時はもっと徹底的に毟り取るもんだ。他の里の神垣の巫女の力を借りておきながら、この程度とは舐めているのか、ってな」
「ならどうする? ここでごねても、こいつにそんな権限は無いぞ。どれだけ強くても、立場で言えば一介の外様だ。むしろ、ここで貸しを作っておいて、後々の販路の布石にした方がいいだろう」
「……貸し、か。………いや、それを言ったら俺達はこいつに借りがあるからな。さっさと返しておかんと、尻がむず痒くて仕方ない。今はこれで良しとしておこう」
そらどーも。貸し借りを語るのは、それこそ苦手なんだけどな。
ともかく、そういう訳で色々持ってきた。結構な量があるんだが、何処に置けばいい?
「ああ、俺の蔵に「お前は勝手に金策に走るから、俺の店で管理する。流通させるにも、そこで管理するのが一番楽だからな」………ちっ」
既に何か企んでいたようだ。
興味がないではないが、最終的にろくな事にならないのは明らかなので首を突っ込まないでおこうと決めた。
「ところで、ちょいと協力してほしいんだがな。…ああ、商売の話じゃない。新しい鬼の痕跡が発見された、と言うのは聞いたか?」
ああ、雪華達からな。ノッペラ坊みたいな奴と、でかい爪痕を残す鬼…だったかな?(スットボケ)
しかも、昨日の夜遅くに山の方で大暴れがあったとか。
「うちの連中も捜索に出ているんだが、どうにも足取りが掴めん。外から来た鬼かもしれんし、何か心当たりはないか?」
…さぁね。俺も気になってたから、捜索に参加させてもらおうと思ってたんだ。
とは言え、流石に今日は長旅の疲れもある。明日からでいいかな。
「おう、構わん。今日は、以前お前が使っていた部屋を使うといい。風華に感謝しろよ。お前が来ると聞かされて、部屋を掃除してたんだ」
へえ、風華が。複雑な感情を持たれてると思ってたけど、思ってたより好かれてるのかな…。
「それはそうと、明日奈や神夜、木綿季はどうしている? 霊山では白浜にも会っただろう。牡丹も一緒だよな。向こうでの話を色々聞かせてくれ。こっちも色々と情報網を構築しようとしているが、流石にここから道が繋がっているのが霊山だけの状態では、どうしても限界がある。…あと、雪華の覗き見とかな」
「私はこの人の周囲しか見えません(見るつもりがありません)ので…」
はいはい。両さんが喜びそうな話もあるよ。
そうさなぁ、まずあの二人の様子だけど…。
それから暫く話をして、懐かしい…と言う程でもないが、寝泊まりしていた家に入る。
風華は相当念入りに掃除してくれたらしく、塵一つ落ちていない。そして、置いた覚えのないでかいベッドが部屋に鎮座していた。
…これ、神夜が作ったベッドだよな? と言うより、この里にベッドは、その試作品の一つしかなかった筈だが。
そういや、神夜と明日奈の家もどうなってんだろうか。
運び込むのも大変だったろうに…。
「大丈夫です、神夜さんから許可は貰っています。私の『初めて』を捧げた床ですし、使われないからと言って放置するのも気が引けましたし…。今日は思い出の床で…」
家に入るなり、ねっとりとした情欲を隠さなくなった雪華が、ベッドに乗ってシナを作って見せた。
無論、俺も一晩も発散してなかったお陰で、極太兵器がいきり立って仕方なくなっている。…里に到着して以来、ぴったりくっついている雪華からヤりたいヤりたいって無言の秋波を受け続けていたからな!
「ふふ…あの夜以来、私も、風華も、練さんも、毎晩体が疼いて仕方なかったんですよ? それぞれ、精一杯趣向を凝らしてお待ちしていましたので……存分に可愛がってくださいね」
追記
風華、ロリボディなのにそんなエグい下着を…。どっから調達してきたの……犯罪ですよ! 喜んで犯罪者になりますが!
…え、なに、識の店から買い取った? ………は、はんざいですよ(恐)