※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

558 / 611
ゴーストオブツシマまであと僅か。
…なのはいいんですが、正直執筆に詰まっています。
思い付きで突っ込んだネタを膨らましきれずお茶を濁す、考えてはいたけど思ったより話が膨らまなかった等で、無駄に停滞してしまっている…。
幾つかのネタはお蔵入りにして、そろそろストーリーを本格的に進めようかと思っています。
…なので、4日に1度投稿が保てなくなってしまっても、それは津島を走り回っているからでも、期間限定で再公開された天魔を見てる訳じゃないよ!
…多分。


第558話

-----------------------Side 滅鬼隊(骸佐)--------------------------

 

 

 

 ……ん? ああ、すまん、呆けていた。骸佐だ。

 どうにもここ数日、気が抜けてな…。鍛錬は怠っていないんだが。

 

 言い訳をするようだが、気が抜けているのは俺だけじゃない。うちの連中は、何処か楽観的になっている節がある。大戦を乗り越えて自信がついた為か、すぐには大きな戦いは無いだろうと思っているのか。頭領が居ないから、というだけではないな。

 実際、現状くらいであれば問題はない。慎重になり過ぎるのも問題と言えば問題だし、湧いてくる鬼は雑魚ばかり。万一がないよう、徒党を組んで任務をこなしている。相当な不運がなければ、最悪の事態は起こらない。

 頭領が残した言葉を、全員それなりに意識して動いているしな。

 

 その点、ウタカタの連中は流石と言うべきか。戦いが終わった後だと言うのに、もう次の戦いに向けて備えを始めている。

 と言っても、次に何が起こるか分かってないので、とにかく備蓄、修練、その他諸々を徹底しているのだ。

 

 少し話す機会があったのだが、ウタカタの主力・桜花によれば、「本当に厄介なのは、鬼の企みなどではない。鬼が跳梁跋扈するのが当然となっている、この日常なのだ。企ては潰せば終わる。だが日常は世界を根本から変えなければ、決して終わる事はない」…だそうだ。

 なるほど、至言だ。終わらない戦いほど厄介なものはない。敗北するまで延々と続く、勝利など無い戦い…考えたくもないな。

 桜花に対する俺達の評価は、何時ぞやのやらかしでかなり下がっていたが…こうして見ると、ウタカタ部隊の中核を担っているのもよく分かる風格だ。剣の腕も、悔しいが今の俺では勝てそうにない。

 

 そして、その桜花から奇妙な話が舞い込んできた。と言っても、俺は執事秘書組からの又聞きだが。

 

 

 

「幽霊? ……時子、それは冗談の類…いや、比喩か?」

 

「比喩…が近いかしらね。報告を受けた大和のお頭も、『何かあるかもしれない』とは言っていたけど、鬼だとも、文字通りの幽霊だとも言ってないわ」

 

「ただ、そういう奇怪な現象が幾つか目撃されているのは確かよ。ならば、何かの前兆と考えるできでしょう」

 

「…確かに」

 

 

 時子と災禍の言葉に頷いた。普段と違う事が起こっているのであれば、それは予兆だ。それも、大抵は不吉な。

 

 その現象を、最初に目撃したのは桜花。誰も居ない場所から呼びかけられただの、夜道で不気味に光る人影が目撃され、そのまますーっと消えていっただの、不気味な鎧武者が茂みの中で見えない何かと戦っていただの、古典的な怪談みたいな話が幾つかあったのだそうだ。

 それらが異界であれば、鬼の仕業だと断定するんだが……これは里の中、結界の中での話なのだ。

 

 

「…現状、被害らしい被害は…」

 

「出ていません。強いて言うなら、一部のモノノフと里人が怯えているくらいです」

 

 

 鬼を斬るモノノフが、人の霊に怯えるのか…。

 鬼と幽霊は別物、と言われると確かにその通りではあるが。

 

 と言うか、何故それを俺に? 他人事とは思わないが、少なくとも俺はそういう事に詳しくはない。

 心当たりがないかと言われても、それこそ全く思い当たらない。幽霊と言えば夜だろうが、俺達男組は、夜はさっさと眠って出歩く事はまず無いのだ。…何処で頭領が盛ってるか、分からんからな。目撃したら気まずいってもんじゃない。

 

 調査をさせるにしても、鹿之助の方が適任だと思うが…。

 

 

「…性格を鑑みても?」

 

「俺が悪かった」

 

 

 

 場数を踏み、隊に貢献してそれなりに自信がついてきたようだが、人の性格と言うのはそう簡単に変わるもんじゃない。切っ掛け一つで、鹿之助の自信は空気が抜けた風船のように萎んでしまいかねない。

 そうでなくても、怪談とか苦手みたいだしな…。

 

 

「無論、調査を担当するのは骸佐のみではありません。今も、天音が現場を確認して回っています。それに加えて、男性陣を統率し、あなたも調査に回ってください」

 

 

 俺に隊長役をやれ、と言う事か。それは別に構わない。男三人で任務を請け負う時も、何だかんだで自分が中心になって動いているという自負はある。権佐も鹿之助も、補助役に回る傾向があるからな。

 しかし、俺も頭を使うのはあまり得意じゃない。誰か、頭脳役が欲しいところだが…うちの連中で、頭を使うのが得意なのは…。

 

 

「すみません、静流や不知火といった面々は別件に対応中です。どの道、頭脳労働や調査を担当できる人材が殆ど居ないという状況は何とかしなければいけません。ここは、ウタカタの人に助力を請うべきでしょう」

 

「そして調査のやり方や心得なんかも学んで来い、と言う事か。しかし、誰に助力を求めるか…」

 

 

 すぐに思い浮かぶのは、割と繋がりのある富獄や和真。

 しかし富獄は主力だし、他の任務で忙しいだろう。和真は…性格にも能力にも難あり。面倒事、しかも恐ろしいかもしれない事に積極的に首を突っ込む筈もない。

 

 となると………少々面倒だが、あいつに頼むか。

 

 

 

 

「幽霊、ですか。確かにそういった噂話は届いています」

 

 

 嫌がる鹿之助を、権佐と一緒に引っ張って、陰険眼鏡こと秋水の元までやってきた。

 こっちに視線も向けず、資料を整えている態度に少々腹が立ったが、協力を求めているのはこっちだ。多少の不快は我慢せねば。

 

 

「な、なぁ秋水…本当に、出る…のかな」

 

「さぁ。僕は幽霊を信じても否定してもいませんので。ですが、火の無い所に煙は立ちません。何かが起きているのは確かですね。…この資料も外れ、と…」

 

 

 目を通していた資料を、几帳面に積み上げる。表紙に目をやってみると、古い書体で今一つ読めなかったものの、怪談集…のように見えた。

 なんだ、こいつも調査中だったのか?

 

 

「秋水、今わかっている事は? お前さんの事だ。調べながら、何か統計でも取ってるんだろ」

 

「よくお分かりで。とは言え、この短期間では大した記録はとれませんでしたが…これをどうぞ、権佐さん」

 

「どーも。…って、渡されても正直何が何だか分からんな。幽霊騒ぎが目撃された場所と時期…か?」

 

 

 ほう、どれどれ。覗き込んでみると、地図と細かい数字が並んでいた。

 題名に書かれているから内容は分かったが、これで何か推測できるのか? ……これでも、任務を受けるようになる前の書類仕事の重要性では、そこそこ成績は良かったんだがな…。

 

 

「期待しているようですが、それだけの資料で意味のある情報を抜き出すのは、僕でもまず無理ですね」

 

「なら何で見せた?」

 

「権佐さんに聞かれたからですが、何か? そもそも幽霊騒ぎが始まったのは、ここ数日です。分析できるほどの数が発生していません。その中でも、単なる見間違いや思い込みもあるでしょうしね」

 

「ぬ、ぬぅ…」

 

 

 言われてみれば、それもそうだ。情報の全てを鵜呑みにしてはいけない。

 とは言え、それならそれで何を信じて調査を続ければいいのか…。

 

 

「そうですね…。仮説になりますが、気になる事はあります。僕がそれを調べるので、その裏付けをお願いします」

 

「つまり、お遣い?」

 

「そうなりますね。別に貴方達を安く使おうとは思っていませんよ。僕は協力を求められたので、仮説を述べた。あなた達はそれが的中しているか確認する。それだけの事です」

 

「力の安売りをするなと言われているが、ここでそれを言う気はねぇよ。里の問題は俺達に直結する問題でもあるんだし、懐で何か起きてるならおちおち昼寝もできん」

 

「結構。では、僕の予測ですが…」

 

 

 

 

 

 

 今一つ釈然としないものを感じはしたが、秋水の要望に従って確認に向かう。

 目撃情報があった場所の確認と、それを目にした人を探し出して直接話を聞く。…後者が真面目に厄介な話だった。

 この里の人間は限られているとは言え、噂話の始まりなんてそうそう見つけられるもんじゃない。本人に自覚が無い場合は猶更だ。

 

 …そしてその調査の結果、確認の指示を受けた3件中2件は単なる錯覚であった事が判明した。

 誰も居ない場所で呼びかけられる声は、聞いた本人についているミタマの声。祭祀場の樒さん曰く、『元々無口なミタマの上に、モノノフ本人の方もミタマの声を聴きにくい体質』だそうだ。何故かよりにもよって、人気のない夜道で話しかけた為に、幽霊の声と勘違いされてしまった。勘違いされたミタマは、不貞腐れてタマフリを起こすのもやめてしまい、件のモノノフはご機嫌取中だとかなんとか。

 

 あちこちで目撃されていた不気味な人影は、修行中のモノノフだった。しかも一人ではない。速鳥、初穂、雪風、神夜さん、里のモノノフ・俺達問わず。

 最近、夜中の奇襲に備えて夜間訓練が流行ってるんだよな…。何せ、里に最も近い異界が潰れたからな。仮に鬼達が里を襲撃するとしたら、少しでも人目を誤魔化して接近できる夜になるだろう…と言うのが、里のモノノフ達の見解だ。確かに頷ける理屈だよ。

 そんなもんだから、普段の道場とは違う、森の中や整備されてない道を走り回ったり飛び回ったりする連中が多いんだ。

 特に鎖鎌や双刀使いは、飛び上がって三次元的な動きをする事も珍しくない。視界の悪さも相まって、突然消えたように見えたんだろう。鎧武者の正体もこれだった。

 これらが判明した結果、、大和のお頭から夜間訓練の場所を指定され、利用する場合は必ず申請すること…という決まりが設けられた。

 

 

 正直な話、ここまでで俺達のやる気は限りなく低下している。別に切った張ったや、鬼でも人間でもミタマでもない『何か』と戦う事を希望していた訳じゃないが、肩透かしもいいところだ。

 しかも、あんな事を言いながら、秋水は『大体予想通りですね』なんて事を言いやがる始末。適当な事を吹かしてるだけじゃないだろうな、と思ってしまうのも無理はないだろう。

 

 

「どんな化け物が出てくるかと思ってたけど、これなら残りの話もすぐに片付きそうだな!」

 

「幽霊が居ないとわかったら、途端に元気になってるなぁ鹿之助。俺はむしろ残念だね。霊体を相手に、俺の槍が通じるのか試してみたかったんだが」

 

「俺はもう、正直何でもいいから帰りたくなってきた。一応治安維持任務でもあるんだし、張り切ったのが馬鹿みたいじゃないか…」

 

 

 捜査のやり方を覚えるにも、どこからどう学べってんだ。顎で使われただけじゃないか。確かに聞き込みはしたけども。

 

 

「まぁまぁ、とにかく今日はもう帰ろうぜ。いい時間なんだしさ。残りの一つもこんな落ちだと割り切ってれば、気にならないだろ」

 

「あー、まぁ時子達への報告はこっちでやっとくわ。阿保な落ちだったが、笑い話の種くらいにはなるだろ」

 

 

 ……そうだな、不貞腐れてるのも疲れるし、明日もさっさと終わらせちまうか。

 えーと、秋水から確認の指示は受けてないが、他の怪談は…。

 

 

『夜毎に響く啜り泣き』

 

『怪奇!人面犬・猫・豚・その他諸々。なお人語を解し被虐趣味あり』

 

『人里の陰に、突如現れる気味の悪い液体や水たまり』

 

 

 …ちなみに、若が出立してからは一切発生していない。

 

 

「……………」

 

「………………」

 

「…………………や、これは発生場所と内容を聞いた時点で、もう真相の検討はついたし」

 

「「せやな」」

 

 

 宿舎の中でやるならまだしもよ…。人里の物陰でやってんじゃねーよ、若…。あんたの女癖にどうこう言うつもりは無かったけど、流石に文句言いたくなってきたぞ。

 つーか、隊の連中は特殊な趣味の持ち主しか居ないのか…。

 

 

「聞き込みの途中でアサギさんに会って、少し話をしてみたんだけど…『無意味に物を壊さないだけ、まだいいわ』だってさ」

 

「そういや、きららの奴が唐突に湖を一つ凍り付かせた事がある、って言ってたよな。理由は未だに不明だとか。本人も忘失してるから、首を傾げてたっけ」

 

「下を比べてどうするんだよ。上を見ろ、上を。…後は何だったか…」

 

「女の声がする、ってのが一つ。ただ、これは他の事件とは明らかに離れた場所で起きたらしい。…その分目撃者も少なくて、面白がった誰かが便乗して流した噂…だと思うけどな、俺。さもなきゃ、若がこっそり誰かに手を出したとか」

 

 

 俺も鹿之助の意見に同意する。…正直、調査が惰性になっている自覚はある。

 別に、秋水の言葉に従うのが癪だ、という理由じゃない。単純に、阿保らしくなってきただけだ…。

 

 

「で、それと…ああ、『道端で蠢くよく分からない何か』だったか。表現まで投げやりになってきたな」

 

「と言うか、怪談かこれ? この話の出元だけははっきりしていたよな。樒さんだった」

 

「あの人か…」

 

 

 …判断に迷うな。何を考えているのか分からない人だ。ただ、能力自体は疑いようがない。

 同時に、無意味な発言で周囲を引っ掻き回しそうな気もするが…いや、これは内心が分からないって思っている事からくる、俺の勝手な印象なんだが。

 

 で、どういう内容だったか。

 

 

「樒さん曰く、日時を問わず、道端で何かが蠢いているんだと。目には何も見えないけど、ミタマはそこに何かあるって騒ぐし、樒さんの感覚にも微妙に何かが引っ掛かる。蠢くものは、あっちこっちで発生しては、すぐに消えてなくなるらしい」

 

「…権佐、ひょっとしてそれ『さんちちぇっく』失敗してるんじゃないか? 若様の言ってた事だからいまいち要領を得ないけど、失敗したら一時的に正気ななくなるらしいぞ」

 

「それを俺に言われてもな。それを言ったら、一番失敗してるのは若様じゃないかな」

 

「言うな。出てきては消える、じゃ検証もできんな…。取り敢えず、樒さんが何かを感じたって場所に行ってみるか。鹿之助、感知を頼むぞ」

 

「やるだけやるけど、とんでもない物に引っ掛かったりしないよな…」

 

 

 

 そう言いながらも、鹿之助は怯えていない。…この案件も、他のと同じで下らない落ちが待っている、と思っているんだろう。正直、俺も同感だ。

 何にせよ、明日だ明日。溜息を吐いて、俺達は帰り道についた。

 

 

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