※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第559話

 

 

黄昏月拾弐日目

 

 

 半日ほどかけて山狩りしたものの、のっぺら共は居なかった。

 全部狩り尽くした…か、実体化の制限時間が過ぎて、消えてしまったのかもしれない。まぁ、吐き気を催すウザいのが消失したのは何よりだ。問題は、機会があったらまたしても実体化するかもしれない、と言う事だが。

 

 ああ、見た事のない大型鬼も、居るには居たな。人型で、鎧を着込んだような姿の鬼だった。でもあんまり印象に残ってないんだよな…。だって弱かったし。

 いや、鬼の生態という意味では、見るべき所は多かったけども。

 道具を使う、珍しい鬼だった。武器として道具を使う鬼は幾らか居るが、身を護る防具…鎧と盾を使うのは初めて見た。しかも、鱗などが鎧の形になっている、という意味ではない。明確に、何者かが加工して、外骨格として身に付けた鎧だった。

 鬼にもある程度の社会性、上下関係などがある事は今までにも分かっていた。だがこの鬼の存在はそれ以上に、道具を作って誰かに渡す鬼が居る、という可能性を示唆している。無論、自分一人で作って、自分で身に付けている、という可能性もあるが。

 

 仮にそんな鬼が実在して、この近くに居るのだとしたら…ここらの鬼が、軒並み強化されてしまう恐れもあった。種類にもよるが、道具を使えそうな形状の鬼は珍しくない。

 鬼の目・鷹の目を駆使して痕跡を追いかけたのだが、まだ浄化されていない異界の中から出てきた鬼のようだ。

 随分な距離を移動してきたようだが、一体何が目的だったのか…。

 

 気になりはするが、これ以上の探索しようと思うと時間がかかり過ぎる。俺もそう長く留まっていられる訳じゃない。

 

 

「そう心配するな。後の事は、俺達で調べていくさ。…と言っても、また同じようなのが出てくるかもわからん状況だがな」

 

 

 泥高丸…。いや、心配してる訳じゃないんだよ。あの鬼自体は、まぁ4人揃えば普通のモノノフでも充分勝てるくらいの力しかなかったしさ。

 どっちかと言うと、これからの鬼の在り方が大きく変わっていくかもしれない、って方が気になる。

 

 

「ああ、確かにそいつは心配だ。俺も、そこらの鬼が道具を使い始めたら…と思うと、どうにかして鬼纏の参考にできないか頭を捻らざるをえん」

 

 

 それはいつもだろ。相変わらず鬼纏に拘ってるな。

 鎧の完成度からして、鍛造方法は確立されていない。手探りで作ってるのは間違いない。

 何せ、見掛けは重厚でも、それを支える部分が貧弱過ぎた。正面から何度か衝撃を与えてやれば、それだけで剥がれ落ちてしまうような代物だったのだ。まぁ、数発はモノノフの攻撃を無効化する、と考えると、あまり馬鹿にできる物でもないんだが。

 

 

「うーむ…新種、新種と考えていたが、一度文献を当ってみるかな。存外、過去にも目撃された事のある鬼かもしれん」

 

 

 その場合、当時は鎧は着けてなかったかもしれないな。着けていたら、鬼の生態研究で絶対に追及されているだろう。知能、鬼の社会構造、その他諸々、どれをとっても無視できる話じゃない。

 

 

「確かに。ところで話は変わるが、雪華の所に居なくていいのか? 礼の為に来ているのだしな。お前達の関係について、無粋を言う気はないが…」

 

 

 ああ、雪華は多分、昼寝してるよ。昨日は夜遅くまで語り合ったんでな。(練の姉御と、風華も) 

 夕方までは起きてこないだろ。両さんや寒雷の旦那とも話すべき事は話したし、あとやるべき事と言えば…土産の準備くらいかな。

 

 

「そうか…。なら丁度いい。少しばかり、手合わせに付き合ってもらおう」

 

 

 おいおい、例の鬼の調査はいいのか。

 

 

「鬼纏に関する研究ならともかく、俺は調査とか書類仕事とかは苦手なんだ。こんな時の為に副官が居るのさ。……手合わせのついでに、いつぞやの話の続きも聞かせてもらいたい」

 

 

 いつぞやの話? …ちょくちょく話をしていたけど、どの話やら…。

 

 

「…嫁のご機嫌取りの話だ。あの時聞かせてくれた技のおかげで、麗亜も満足してくれているのだが…やはり同じ技ばかりでは飽きが来るものだろう」

 

 

 ああ、下半身の話…。別にいいけどさ…子供とか考えてる? 何なら、確実に的中させる術も教えるけど。

 

 

「子供を考えてるのかって、それお前にも言える事だからな。子供…子供か。欲しいとは思ってるんだが…うーん、孕んだらご機嫌取りも使えなくなるしな…。しかし、そうか…。もう孕ませてもいいんだよなぁ」

 

 

 むしろ孕ませちゃいけない理由があったのか。

 

 

「そりゃ、ちょっと前までのシノノメの状況じゃな。赤子と言えど、人が増えれば消費も増える。女モノノフであれば、貴重な戦力が減る事にもなる。産まれても、暖かい飯や寝床が無ければ遠からず死ぬ。死んだらそれまで食わせた分が無駄になる。産むか否かだけでなく、いつ産まれるかまで決められてたようなもんだ。ああ、ちなみにその辺を計算して統制していたのは寒雷だぞ」

 

 

 状況が状況だから無理もないが、よく不満が噴出さなかったもんだ…。

 ま、ええわ。折角産んでも大丈夫な状況になったんだし、孕ませてしまえよ。百発百中の術、教えてやるからさ。

 

 

「使うかどうかはともかくとして、有難く教えてもらおう。…が、それは手合わせの後での話だ。ほれ、道場行くぞ。待ってる連中だっているんだからな」

 

 

 待っている? 誰か居たっけか。

 …ああ、兼一君と一緒に訓練してた、あの教官か。

 

 

「それも居るが、練武戦で大暴れしただろうが。あれから鍛え直して、再戦したいって奴らが結構いるんだ。立場的には客人だから、こっちから喧嘩ふかっける訳にもいかなくてな。引き受けてくれて助かったぜ」

 

 

 誰も全員とやるとは言ってねえよ! …まぁ、いいけどさ。

 

 

「それにしても時期が悪いというか何と言うか…あいつがまともに動けるようになっていれば、戦わせてみたかったもんだが」

 

 

 ん? 誰か重症でも負った人がいるのか? それとも、期待の新米モノノフでも出てきたか?

 覚えている限りじゃ、数か月で大化けしそうな新米には心当たりがないし、医者は暇になったってぼやいていたと思うが。

 

 

「ああ、少し前にどっからともなくやってきたモノノフでな。言ってる事はよく分からんかったが、まぁとにかく訳ありらしい。だが手練だぜ、あれは。得物は間違いなく大業物、それを負傷した体で十全に扱える技量、死に至る程の大怪我を数日で…全回復でこそないが、動き回れるくらいに回復させる体…。代わりにタマフリは苦手らしいが」

 

 

 ふ、ん…? 興味あるな。そいつは今どこに?

 

 

「寝床で寝てるだけじゃ、治るものも治らないって言ってそこらの山野を駆け巡ってるぜ。前にも何度か出て行ったが、従来通りなら10日は戻ってこない。あれで勘も体も鈍ってるって言うんだから、恐ろしいもんだ。外にはお前以外にも結構な化け物が居るんだな」

 

 

 なんか酷い言われようだ。

 まぁ、世の中には化け物染みた実力者はゴロゴロ転がってるからな。俺だってその氷山の一角にすぎん。

 

 しかし、そんなに戻ってこないんじゃ、会ってみるのは無理か。ま、次の機会がある事を祈りますかね。

 それじゃあ、道場に行ってお望み通りに暴れるとしますか。危機的状況が去ったからって、気を抜いてる奴は居ないよな? もし居たら、兼一君より弱くなってるって言ってやる。

 

 

「あいつが前に戻って来た時、随分な変わりようを見せ付けたから、説得力はあるだろうな。さて、一番槍は俺だぜ。鬼纏だけだと思うなよ。数か月程度の期間だったが、以前に指摘された欠点も、それ以外も一から叩き直した。一味違うってのを見せてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 道場での大暴れは夜まで続いた。本当なら夕方で辞めておくつもりだったのだが、騒ぎを聞きつけた両さんが煽る煽る。しかも寒雷の旦那まで悪乗りしてきた。

 臨時練武戦と銘打たれ、唐突に開始された試合は、当然の如く博打の対象となっていた。

 俺は博打には参加させてもらえなかったから、何をどう賭けていたのかは知らないが…両さんが部長に怒られたような顔になり、ついでに識が高笑いしていた事から、大体の結末は想像できた。

 

 鍛え直したというモノノフ達の評価については、2つに分かれる。

 一つ目は、打ち直し、研ぎ直し…と言ったところか。以前の練武戦の結果や、兼一君の成長に奮起し、基本に立ち返って徹底して鍛え上げた連中。

 以前の、鬼纏を偏重する戦術も改善され、全体的な底上げが見られる。

 

 二つ目は……過渡期、かな…。

 霊山とのやり取りが再開されて、本格的に色々な技術や情報が入ってくるようになった。

 それをきっかけに、シノノメの里では失われていた技や戦術が幾つも伝えられ、独自に磨き上げてきたものと混じり始めているのだ。

 とは言え、技術のミックスなんてそうそう上手くできる筈もない。俺も一時期、3つの世界の戦術を織り交ぜて良いとこ取りできないかと四苦八苦していたもんだ。

 技と技の繋ぎが上手く行かなかったり、おかしな体勢になって自分から隙を作ってしまったりしているが……長い目で見れば、確実な戦力増強に繋がるだろう。

 問題は、そこまで気力と工夫が継続するかだけどな。

 ま、そこは行く末を見守るくらいでいいだろう。無理に技術を混ぜる必要はない。効果が低い、或いは難易度が高すぎると判断されれば、徐々に廃れていくだろう。

 …ただ、ここの連中は泥高丸を見てるからなぁ。たった一代で、兄との夢という執念を以て、鬼の瘴気を有効利用する鬼纏なんて術を編み出した。それに触発され、意地でも形にしてやろうと踏ん張りまくるかもしれん。

 

 

 

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