※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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アサシンクリー…もとい、ゴーストオブツシマ、大体終了。
風に誘われて蒐集物を集めたら、ストーリー終わらせてトロコンに向けて作業かな。
思ってたのと少し違いましたが、充分楽しめました。
エピソードの回想機能とか無さそうなのが残念。

さて、次は仁王2DLCだ…。
落ち着いて執筆できるのはいつになるやら。


第562話

 ちょっと恥ずかしい(そして隊の女性ならほぼ共通している)事を言い合ったのは置いておきまして。

 山の中に何か見えないか気を配りながらも、私達は哨戒を続けました。ですが、何か変わった事がある訳でもなく…あったらあったで困るのですが…。

 哨戒する路の、7割ほどを進んだ時です。凛花さんが足を止めました。

 

 

「待って。誰か来る。……3人」

 

「…? 今夜の警備担当だと、先程擦れ違った人達で最後の筈…」

 

 

 気配を探ろうとしますが、私には今一つ分かりません。やっぱり凛花さんは凄いです。若手の中でも主力級と言われているだけはあります。…若手もなにも、殆どの人が同年代みたいなもので、目を覚まして半年も経ってないのですけど。

 敵…野盗の類でしょうか? この近辺にそのような命知らずが出たという話は聞いていません。何せここは、鬼との戦いの最前線です。どう考えても、旨味と命の危険が釣り合いません。

 

 

「武器を持ってるけど、殺気は感じない…。…と言うより、何だか覚えのある気配ね。あちらも私達に気付いたようだし、接触してみましょう。油断はせずにね」

 

「はい!」

 

 

 戦いになってもいいように、手甲を着けて進みます。自画自賛になるようですが、私の突きは怪力のタマフリとも相まって、一撃の威力なら富獄さんにも褒められる程です。

 相手が誰だとしても、うまく当てて行けば足手纏いにはならない筈。……自信ないけど…。

 

 

 という緊迫した思いとは裏腹に、謎の3人組は極めて気軽に近付いてきました。

 

 

「おーい、お仕事お疲れ様ー」

 

「…鹿之助君? それに骸佐君と権佐さんも」

 

「俺だけさん付けなのは、ちょいと堪えるものがありますな」

 

 

 …ここで謝ると、猶更権佐さんを傷つけるような気がします。

 それはそれとして、一体こんな時間に何を? 今日は警備担当などでは無かった筈…。

 

 

「ああ、俺達はちょっとした調査に駆り出されててな。最後の一件がこの辺りで、これくらいの時間に発生したらしいから調べに来たんだ」

 

「そう言えば、時子さん達から何かを任されてたらしいわね。どうなの、進捗の方は?」

 

「それが、さっぱりだ! 調べた話の殆どはくだらない落ちだった。本命の目的は調査そのものじゃなく、そのやり方を里の人間から学べ…って事だったんだが、こんな話から何を学べばいいのやら」

 

「俺は楽でよかったけどなー。本当に幽霊とか出てきたら堪らないよ」

 

「俺は逆に見てみたいな。鬼とどう違うのか、槍が通じるのか、興味がある。ああ、門限後に外出する為の手続きはとってるぜ」

 

 

 鬱憤を吐き出すように、骸佐君は大仰な動作で空を仰ぎました。寡黙で真面目な彼が、ここまで言うとは…一体何があったんでしょうか?

 逆にほっとしている鹿之助君と、面白がっているような権佐さん。……権佐さん、その余裕っぽく見える態度も、年上扱いされる要因だと思いますよ。声には出しませんが。

 

 

「…その調査に関して、聞いてもいいですか? 私も少し気になる事があって、ここに来る為に夜警当番を代わってもらったんです」

 

「いいよな、骸佐? …うん。実は、樒さんから聞いたんだけど…」

 

 

 ………なるほど。…なるほど? なんていうか…。

 それを調査しろって、普通に無茶振りじゃありません? 何ですか、『何も見えないけど何か居るような気がするから、それについて調べなさい』って言われてるようなものじゃないですか。

 

 

「そりゃそうだし、今までの話も阿保くさい結果ばかりだったが、指令は指令だ。それに、その『何か』を感じたのは祭祀堂の樒さんだ。あの人、巫女としての力は神垣の巫女に迫る程らしいぞ。そんな人が感じ取って、人に話すような事なんだから、何かあっても不思議はない」

 

 

 骸佐君は、どっちかと言うと『そうあってほしい』と思っているような口ぶりでした。意気込んで臨んだ調査が全て空騒ぎだった、では収まりが悪いのでしょうか?

 でも、その話…。

 

 

「実はこっちも……」

 

「……ほう?」

 

 

 ちょっと笑う骸佐君と権佐さん。鹿之助君は嫌そうな顔をしていました。

 

 

「森の中か…。確かに、道中で蠢く…と言われていたから、そっちには注意を向けていなかったな」

 

「ですが、まり嬢ちゃんが歪みを目撃したのは昨日、樒さんが感知したのは数日以上前。辻褄が合いませんな」

 

「蠢く何かが、歪みの前兆だったとすれば…どうだ?」

 

「ふむ。例えば…その小さな歪みがあちこちで散発的に起きていて、それが樒さんの感知に引っ掛かっていた…という推論かしら?」

 

「ああ。目の前に転がってる情報を、強引に繋げただけだが…存外、いい線行ってるんじゃないか? 大規模な何かが生じるなら、それだけ予兆があってもおかしくないだろう」

 

 

 ううん…頭ごなしに否定も出来ず、積極的に肯定も出来ず…。

 仮にそうだったとして、結局あの歪みは何なんでしょうか。本格的に、錯覚ではない気がしてきました。

 

 

「実際の所、鹿之助君には何か感知できないんですか?」

 

「いや…正直何にも。普通の森だね。…こうして見ると、気味が悪いけどさ。ただ、俺の探知もミタマにまでは効果が無いから…。もしも実体のない幽霊とかだったら、感知できないかも」

 

 

 ありそうな話ですけど、それを言い始めると切りがありません。

 退屈そうにしていた権佐さんが、軽く背伸びをしました。

 

 

「やれやれ、これじゃ夜警でも探索でもなく、単なる夜道の散歩だな。埒が開かんし、ここは一つ山の探索に行ってみようか。それで何事もなければ、今日は解散って事で」

 

「ええ~!? いやもうこのまま解散でいいじゃん! 結局、何も無かったんだって! 樒さんの勘違いか、蠢く何かはどっかに行っちゃったんだって!」

 

「だったら猶更、怯える事はないだろ。単なる位山に入って行くだけだって」

 

「その山が怖いんだよ! 見ろよこのまっっっっっくらな闇! 絶対何か出るぜ!?」

 

「出るなら出るで、調べなきゃいけないんじゃない?」

 

「それ以前に迷うよ~! 右も左も分からない真っ暗な森の中で夜通し過ごすなんて、何も来なかったとしても確実に遭難するってば~!」

 

「それなら猶更、お前を連れて行かなきゃならんだろうが。探知を使えば、夜道も昼間の平原も大して変わらないだろうに」

 

 

 余程嫌なんでしょう。じたばたと駄々を捏ねるように抵抗する鹿之助君は、まるでお風呂に入れられるのを抵抗する子犬のようです。

 こういう姿が、一部の里の人達に異様な(そして密かな)人気を博しているそうなのですが…。

 

 

「落ち着いてください、鹿之助君。私達も一緒に行きますから。ね、凛花さん」

 

「そうね。本来の道筋からは離れるけど、哨戒の一部と言う事にしておきましょう。大丈夫よ。確かに遭難はこわいから、そう奥までは進まないわ」

 

「ほれ、お嬢さん方がこう言ってくれてるんだ。覚悟を決めな。お嬢さん方の前で喚き散らす趣味がある訳でもないだろ」

 

「うぅぅぅ…」

 

 

 喚き散らしてほしい趣味の方なら何人か…いえ、黙っておきましょう。

 私としても、渡りに船の出来事です。気になりながらも、山の中に踏み込んで行けなかったのは、その暗さと遭難の危険性の為。鹿之助君が居てくれれば、逸れてしまったり、迷ってしまったりする確率は非常に低くなります。

 

 鹿之助君には悪いですけど、覚悟を決めてもらいましょう。

 

 

「…うーん、この子がこのままだと、流石にちょっと不安ね。ちょっと発破をかけましょうか」

 

「うん? いい方法でもあるのか?」

 

「任せなさい。ねえ、鹿之助君。あなた達が調べていた怪談の話、女の子達から注目を集めてるのって知ってた?」

 

「…え? し、知らないけど…」

 

「不安がっているのが半分、面白がっているのが半分、といった所だけど…これを解決したら、注目されるわよ」

 

「…………」

 

「光も見えない夜の山に踏み込んでいく、勇敢なモノノフ。その中心は、当然感知役のあなたよね。株があがるでしょうね」

 

 

 …鹿之助君、迷ってますね。怖い、でも男らしい行動で注目を集めたい。

 それはいいんですけど…これ、若様の定めた規範に反してないですよね? 慢心駄目、絶対。おやくそく(隊長の指示)は守りましょう。…隊長…はこの場合、鹿之助君になりますね。帰ろうという指示は…これは指示ではなく提案なので、まぁよしとしましょう。

 手柄を焦って突っ走っている……にも、当てはまらないと思います。これは調査の範疇ですし。

 

 

「……よし、行くっ!」

 

「よく言った、鹿之助!」

 

「それでこそ男の子。足が震えてるのは武者震いね。さて、鬼が出るか蛇が出るか…」

 

「鬼は出ないんじゃないでしょうか。ここは結界の内側ですし」

 

「じゃあ蛇が出たら?」

 

「晩酌のつまみかな…」

 

 

 軽口で、主に鹿之助君の…少し私も…の恐怖心を紛らわせながら、私達は山の中に踏み込みました。

 

 

 

 そして、若干後悔しています。鹿之助君が居ない状態で、森の中に入り込んだりしないで正解でした。

 ここに居る皆、多少なりとも恐怖を感じているでしょう。

 

 夜の森に入った事がない訳じゃありません。任務や訓練で入り込み、そこで一晩過ごした事だってあります。若様にこっそり連れ出されて、乙女として口では言えないような事に耽ったりも…。

 でも、これ程に暗くはなかったし、何も見えない有様でもありませんでした。考えてみれば、あの時は月明りの強い夜でしたし…。

 

 私達が慣れたと思っていた森や山は、危険が無いように整備された場所だったんでしょうか…。

 それとも、私達には感知できない『何か』があるから、こんなに暗くて不気味なんでしょうか

 

 

「な、なぁ、骸佐…。調査に入るのはいいんだけどさ、何処まで行くって決めてなかったよな?」

 

「ああ…少し見回るだけのつもりだったが、この暗さは予想外だ。お前を連れてきておいてよかったぜ」

 

「褒めたって誤魔化されないからな! …でも、実際どうする? 暗いし足場は悪いし、何より俺の探知にもなーんにも引っ掛からない。続けても無駄だと思うんだけど…」

 

「確かに、さっきからちょいと強引だな、骸佐。いつもならもう少し具体的な目標を立ててから行動するのに」

 

「…どうにも、このところ肚が落ち着かなくってな。ふとした拍子に、妙な焦燥を感じるんだ。目の届かない、だがすぐ手の届くところで、何かとんでもない事が進行しているような…」

 

「ふむ…」

 

 

 …どう、なんでしょう。そういう焦りも、暗示の効力の一部なんでしょうか? 全く違う、とは言い切れないのが恐ろしい所です。

 或いは、いわゆる思春期の少年少女も、時にそんな感覚に襲われる事がある、と聞きますが…。

 

 

「だけどさぁ、それだって言っちゃなんだけど、根拠のない感覚でしかない………んぅ?」

 

「どうしたの、鹿之助君?」

 

「…いや、さっきあっちの方で、何か変な感じが…」

 

 

 私達の目が、一斉に彼が指さす方向に向かいます。

 山の奥の方…ですが、どっちにしろ何も見通せません。

 

 

「…鹿之助、遠いのか?」

 

「いや、すぐそこ。この状況でも、足音に気を付けて走って、1分かからない距離」

 

 

 …近いですね。でも、誰も鹿之助君が言う『何か』を感じられません。

 

 

「…分かった。そいつを見に行って、何も発見できなければ今日は撤収しよう。元々、俺の根拠のない勘でしかない。これ以上突き合わせるのも悪いからな」

 

「私達も、夜警の続きがあるから、そういてくれると助かるわ。まりちゃん、結局何も見つかりそうにないわね」

 

「私も、半ば勘みたいなものですし…。それに、何事も無ければそれが一番です」

 

 

 私の言葉を最後に、全員が黙り、足音を消して歩き始めました。

 …ですが、後から思えば、この時点でみんな油断していました。感覚を研ぎ澄ましても何も感じられませんし、鹿之助君のせいにする訳ではありませんが、『そう大した事でもなさそう』みたいな印象でしたから。

 せめて、武器に手をかけておくべきでした。奇襲はいつ何処でかけられるか分からないから奇襲。いつ何処に敵が沸いてもおかしくない。そう若様に散々叩き込まれていたのに…。

 

 どうせ何も無い。そう願っていたのか、たかを括っていたのか…。私達は、あまりにも予想外な光景を目にして、固まってしまいました。

 

 

 

 真っ暗な森の中、僅かな月光に照らされる、醜悪な姿を。

 小柄ですが、生理的な嫌悪感を掻き立てられる姿。

 小さいけども鋭い牙と爪、全体的に細いのにそこだけ膨らんだ腹、申し訳程度に垂れ下がった腰蓑(?)。

 

 

「ゲゲッ」

 

『餓鬼ッ…!?』

 

 

 何で。ここは結界の中なのに。入ってこれる筈がない。もしも入ってこれたとしても、餓鬼程度なら結界の効力に圧し潰されて消滅する筈。

 揃いも揃って、驚愕の声を出してしまったのも最悪でした。

 

 私達に見られている事に気付いた餓鬼は、すぐに踵を返して逃げ出そうとします。

 

 

「逃がさん!」

 

 

 真っ先に飛び出したのは権佐さん。餓鬼など一突きとばかりに、躊躇いなく槍を突き出します。

 私は驚いて、戦うどころか目で追うだけでもやっとでしたけど、その鋭い突きは間違いなく餓鬼を間合いに捕らえていて、次の瞬間には餓鬼の喉元を食い破る筈でした。

 

 

「「止まれ権佐!!」」

 

 

 ですが、そうはならなかった。突き出された槍は、鬼を一突きにするどころか、逆に食べられてしまったかのように穂先が消滅していたんです。

 それを感知したのは、誰が先だったんでしょう。少なくとも、突撃しようとしていた権佐さんを引き留めたのは、鹿之助君と骸佐君の腕でした。…鹿之助君は、止めきれずに手がほどけてしまっていましたけども。

 

 権佐さんは、何故止める…とも聞かず、突き出していた槍を掲げてみています。

 

 

「…助かったぜ、二人とも。よく分かったな」

 

「俺は…なんかあの餓鬼から、物凄く嫌な感じがしたんで、咄嗟に…」

 

「…俺は、普段黙ってるミタマが突然『止めろ!』って叫んだんで」

 

「そうかい。…何にせよやばかったぜ。ありがとな」

 

「仲間だろ。助けられただけで礼なんか言うなよ。それにしても…みんな、見たか? 今の餓鬼…」

 

 

 ええ、見ました。あの鬼…。

 

 

「転移を使って逃げて行った…わね。ここに居ただけでも異常だって言うのに。結界の内側で、転移なんかできるものなの?」

 

 

 そう。権佐さんの槍に貫かれる筈だった餓鬼は、あろう事か、突然現れた黒い穴に入って逃げて行ったんです。

 あの穴には、この場に居る皆が見覚えがあります。規模こそ違いますが、あれは先日の大戦、オオマガトキで開かれた穴と同じように思えます。

 権佐さんの槍は、その穴に突き込まれた事で、こんな風になってしまったんです。もしも体ごと、あの中に入り込んでいたらと思うと…。

 

 元々、鬼が異空間…あの黒い穴から現れるのは、そう珍しい事ではありません。

 ですが、それは大型の鬼であれば、です。小型の鬼、しかも鬼の中でも特に力の無い餓鬼が、空間転移なんて大技を…?

 結界に守られた場所に、鬼は出入りできません。増して、空間を渡って入り込んでくる、或いは出ていくなんて…。もしそんな事が出来ているのであれあば、人はとっくに生息領域を削られ、滅んでいる筈。

 

 では、あの餓鬼は一体…? 昨日のあの歪みは、この前兆だったのでしょうか?

 

 

「……予想してたものとは違ったが…最後の最後で、とんでもない物が出てきたみたいだな」

 

 

 強張った口調の骸佐君。また、大きな戦いが始まるのでしょうか。

 不安を堪え切れず、つい口に出そうとした瞬間に。

 

 

 

      ターン………

 

 

「! 銃声!」

 

「しまった! 転移で逃れたからって、結界の外とは限らないわ! 誰かが襲われているのかも」

 

 

 ! 確かに、結界の中から外へ逃れるよりも、中から少し離れた中に移動する方が、難易度は低そうです。

 そして銃声と言う事は、襲われているのは人間…早く助けに行かないと!」

 

 

「鹿之助!」

 

「こっちだ!」

 

 

 仲間が襲われているかもしれないと知り、恐怖がぶっ飛んだんでしょうか。それとも、見た目単なる餓鬼だから、そんなに怖がる必要が無いと思っているのか。

 何にせよ、鹿之助君は言われる前に駆け出しました。私達も、それに続きます。 

 

 …走りながら、ふと疑問を感じました。この方向は、夜回りの道の方向です。暗い森から脱出する方向なので、それは渡りに舟なのですが…もうこの辺りを歩く警備担当は居ない筈。

 一体、誰が襲われているんでしょう?

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