いやそれだけで済んだんだから、恩の字なんですけども。
3万くらいしたのが、郵送先を間違えて再送をお願いしたおかげで、5万くらいになっちまったんだよなぁ…。
それが僅か半年で…。
前から何度も風で飛ばされていたので、こりゃイカンと思って解体して家に運び込んだのですが、解体する時に上手く引っこ抜けずに折れてしまっていた模様。
部品のみ購入する事もできるようですが、少なく見積もって5,000円以上…。
しかもまた台風が来たら、同じ事になる可能性大。
…バイクカバーに戻します。
バイクで移動する時には、ブロックの下にでも入れておこう。
雨が降ってる時に被せるのは大変そうですが、仕方ありません。
黄昏月弐拾壱日目
うちの子達を数人連れだって、異界浄化に乗り出した。
ここ暫くの観察によると、鬼達の縄張り争いは大分落ち着いてきて、そろそろ共食いも期待できなくなってきたらしい。
だもんで、もう一回住処を粉々にして、他所の異界で縄張り争いしてもらいましょうね~。うん、改めて聞くと酷いね。まぁやるけど。
それと、これは考察の段階でしかないが、今までのように一つ異界を潰しては様子を見て、落ち着いてからその異界を潰す…と言う手法よりも、同時に複数の異界を潰し、そこの鬼を同じ異界に誘導した方がいいのではないか、という案が出た。
2つの異界の鬼同志の縄張り争いより、3つの異界の鬼の縄張り争いの方が、よく傷つけあってくれるのではないか?と言う事だな。
まぁ、それ自体は構わない。今までは一つずつしか異界を潰してなかったし、複数同時に潰したらどうなるか、って実験も必要だろう。最終的には全部…いや、相馬さんの希望で一部残すかもしれないが、とにかく鬼の居場所は無くすんだから。
そういう訳で、うちの子達も瘴気の元調査に駆り出す事にした。
…きららに拒否されるのは、予想外だったけど。
いや拒否って言うかね、別の仕事が入ってたのよ。仕事と言っても任務じゃなくて、里の人達にお願いされたってだけなんだが。
何事かと思ったら、『最近暑いから、氷を作ってくれ』だってさ。…いやよく分かるよ? うちの屯所と違って、里には冷房なんてもの無いからさ。熱中症も洒落にならない。
そこへ来て、きららの能力は救いだろう。水を集める必要もなく、ただ空気を冷やしてどでかい氷を作る。一家に1個、部屋の真ん中なり風の通り道なりに氷塊を作っておけば、一日冷たい風が吹いてくれる。
結構な稼ぎになる、ときららは笑っていた。
…これ、任務に出るから断れ、なんて言ったら色んな人との関係が悪化しそうだなぁ…。まぁ、きらら以外にも戦力は充実してるんで、そっちを優先してもらっても構わないのだけど。
俺と、三郎ことタマちゃん、六穂、それに木綿季の4人で瘴気の濃い異界に踏み入る。
ちなみに人選の根拠としては、六穂は毒や瘴気に強い体勢を持つ為、木綿季はそもそも本体がカラクリなので瘴気が基本的に効かない為。タマちゃんは、瘴気への耐性は一般的だが、現地の鬼を配下に付けて道案内が期待できる為である。
戦力的には……率直に言ってしまえば過剰だな。俺が居なくても、この近辺の異界の鬼なぞ、軽く蹴散らせる。
…実際に暴れてるのは、木綿季だけだがな。
人間と同じ生身(?)の体で戦えるのが、よっぽど嬉しいんだろうなー。基本的に無気力な六穂、引っ込み思案なタマちゃんを後目に、すっごいいい笑顔でばっさばっさ斬りまくっている。おお、今のは明日奈の切り札、『まざーず・ろざりお』じゃないのか? そういや木綿季が本家だって言ってたっけな。
楽しんでるのはいいが、あくまで異界の元探しが本命なんだけどなぁ…。
「…ちょっと若様、いつまで勝手にやらせてるの。見てるしかやる事がないんだったら、帰りたいんだけど、僕」
そう言うな、尻を撫でてやるから。
木綿季も久々の実戦だし、どこでしくじるか分からん。もうちょっとお守に付き合ってくれ。
「あ、っ…んっ…こ、こんなところでされても、生殺しにしかならないよ…。さっさと終わらせてしけこもうよ…。そんで早く体を変えて孕ませてよ…」
「あ、あうぅ…」
物言いたげなタマちゃん。チラチラこっちを見ているが、辞めろとも混ぜてとも言わない。…この子には、起こす時以外は手を出してなかったしなぁ。
タマちゃんに手を出すかどうかはこの後決めるとして。確かにそろそろ進めないと、タマちゃんの活動限界が近いな。木綿季を暴れさせるだけで終わってしまう。
おーい木綿季、暴れながらでいいからついてこい、移動するぞ。
「はーい! 19匹目ぇ!」
…また物凄い剣閃で、本人申告19匹目、実際には21匹目の大型鬼を討伐。
本当にすげぇな…。この濃い瘴気の中に居る鬼達は、縄張り争奪戦に勝ち抜いただけの事はあり、特に強力な個体…少なく見積もっても上位以上の個体が多い。
それを連続で、時は複数同時に相手取って連戦連勝。明日奈をして、幼い頃から『天才』だの『剣鬼』だの言わしめるのも頷けるってもんだ。
「…あの…若様…」
ん、どしたのタマちゃん?
「…なんだか、鬼の数が…多い…」
「同感だね。瘴気が濃い場所は鬼にとって居心地がいいとは言え、幾ら何でも多すぎない?」
…言われてみれば、確かに。21匹目の大型鬼。小型ならまだしも、こんだけデカイのが限られた土地の中に集結していれば、縄張り争い待った無しの筈なのに。
そもそもこれだけ続いて襲ってくるというのもおかしい。複数体同時に木綿季に襲い掛かった時も、お互いの行動の邪魔にならない範囲で、でしか同時に出てこなかった。
…戦力の逐次投入…になっているように見えるが、休む暇を与えない波状攻撃、という見方もできる。
見た所、腹を減らしている訳でもない奴が多いし…縄張りに入り込んだ俺達を、本能的に撃退しようとしているだけ…にしては連携が取れている。
なんだ、また指揮官の鬼でも出たか? だとしたら、さっさと潰しておきたいもんだが。
「…面倒だけど、放っておいた方がもっと面倒になるか。若様がやるって言うなら付き合うよ」
「…私も…です」
うん、ありがとう。正直、放置してても木綿季がどうにかしそうな気はしてるんだけども。
よし、そんじゃあもうちょっと奥の方に進んでみるか。
瘴気の中を進んでいくと、それに反応して鬼達が襲ってくる。やはり、この先にある物に近付けさせまいとしているようだ。
ただ、気になるのは鬼達の気迫である。必死、という言葉では足りないような勢いで、それこそ自爆上等で仕掛けてくる事が増えた。先程までは余裕綽々だった木綿季も、表情を変えて慎重に鬼達と渡り合っている。
無論、俺達も黙ってみている訳ではない。六穂は何だかんだと言いつつも、鬼に毒を仕込み、五感を潰し、背後から一突きするなど、補助と後衛を同時にこなしている。タマちゃんは、手頃な鬼を洗脳して、盾にしたり同士討ちさせたり。
俺は…まぁ、適当に斬ってりゃそれでカタが付く。
「…やっぱりおかしい」
「どしたの、タマちゃん? 異界の中なんて、大抵のものはおかしいよ」
「それは否定しないけど…洗脳しようとしても、抵抗が強い…。一度洗脳に成功しても、すぐに弾き飛ばそうとする」
「さっきから、次々に操る鬼を変えてるのはそれが理由か。長い間操ってられないんだね」
「うん…こんなの初めて」
タマちゃんの初めて…ふむ、続けて? なんて聞くに堪えないお約束は置いといて。
それだけ強い意志を持っている、と言う事か? 俺も鬼を利用、洗脳するような術には詳しくないから、確かな事は言えないが…。もしそうだとしたら、指揮官を守る、なんてのが動機じゃないな。
命じられただけでそんなに強い意思は生じない。隷属からは強い力を得られはしない。自発的な意思の発露こそ、力に繋がる…。
「じゃあ、こいつらは自分から僕達を阻もうとしている、って事だよね。それだけ重要な物が、この先にある…。なんか気になって来た!」
木綿季は元気だねぇ…。俺はさっきから、何だか嫌な予感がビンビンしてるよ。また頭の痛い事が起きる気がして仕方「うぁ!?」「タマちゃん!?」
目の前のカゼキリを斬り伏せて振り返ると、体制を崩したタマちゃんが吹き飛ばされていた。表情からすると、攻撃を受けた痛みより、信じられないと言った動揺が強い。
どうやら、洗脳を弾き飛ばした鬼が出たらしい。さっきから抵抗が強いと言っていたが、完全に無効化されるのは予想外だったのか。
咄嗟に飛んだらしく、強いダメージは無いようだが、その分勢いが付いたようだ。丁度、坂道になっていたのも悪かった。ゴロゴロと転がり落ちていく。
「やばいやばいやばい! あっちはまだ鬼が沢山居るよ!」
「あの子、複数体同時に洗脳できたっけ!?」
出来たとしても弾き飛ばされるだろ! 木綿季、突っ込め! 他の鬼はこっちで引き付ける!
久々の『挑発』系のタマフリ・スキルを総動員し、鬼達の注意を惹き付ける。…が、反応が薄い。俺よりも、転がり落ちて行ったタマちゃんを追おうとする鬼が結構いた。
まぁ、それはつまり俺に背を向けるって事で、致命的な隙を晒すって事なんだが。
無防備な背中、首、足を狙って連続で剣を振るう。一撃、多くても二撃で部位を粉砕して足を止め、木綿季が進む道を切り開く。
「六穂、目晦ましお願い!」
「ったく、しんどいんだけどなぁ!」
鬼達の背中を踏み台にして走る木綿季、それに狙いを付けようとする鬼に毒霧を吹きかけて視界を塞ぐ六穂。
そして、何だか知らないがさっきまでの比ではない勢いで暴れ始める鬼達。
…この気迫…覚えがある。さっきまでは分からなかったが、これはアレだ。
子供を守ろうとする親モンスターと同じだ。子供に手を出されてゴゴモアが怒った時とか、卵を持ち逃げしようとするハンターを追いかけるリオ夫妻とか。
タマちゃんが転がり落ちて行った先に、子供だか卵だかがあるんだろうか。でも襲い掛かってくる鬼の種類がバラバラだし、単なる子供の鬼って訳でもなさそうだが…。
いや、とにかく行けば分かるか。タマちゃん救出が最優先、何か発見できれば儲けもの。
先行した木綿季に追いすがるアメノカガトリを神機銃形態で撃ち落とし、追おうとする鬼を六穂と共に足止めする。
「タマちゃん! 何処!? 返事して!」
木綿季の声が響いて来る。藪の中に突っ込んでしまったらしく、姿が見えない。
異界の藪は危険だ。何が出るか分からないし、どこに通じているかも分からない。下手をすると、初穂のように時を超える可能性さえある。
…が、その心配は杞憂だったようだ。藪の中から、一際巨大なミフチが姿を現す。…と思ったら、体の上にタマちゃんが乗っていた。
無事だったか……あれ、何か違和感があるような?
まぁいいか。洗脳したミフチを足として使い、タマちゃんは木綿季を拾って戻ってくる。
「…ごめん、油断した…」
「無事でよかったよー。タマちゃんちっちゃいし、軽装だからさぁ」
「本当にね。ま、今回はそれほど手間じゃなかったけど……………………ちょっと、それなに」
「それより早く、異界浄化を…」
また反逆されても面倒なので、ミフチはさっさと使い捨てた。
六穂が目を見開いてタマちゃんに注目している。俺も正直すっごい気になるけど、今は言ってる場合でもない。
「んー…? 鬼の攻撃が、止んだ?」
油断なく周囲を見回す木綿季。彼女が言う通り、さっきから怒涛の攻勢をかけていた鬼が距離を取っている。
だが、戦意を喪失している訳ではない。むしろ姿を隠してもはっきりとわかる程の殺意を滾らせている。
試しに少し進んでみると、その邪魔をしないかのように行き先から移動する。…何が何でも殺したいのに、何らかの理由があって手出しできない、近付けない……ように見える。
「若様…瘴気の元っぽいの、見つけたかも…」
本当か? 何処で? いつ?
「さっき転がり落ちて行った先に、川があって…その下流の瘴気が、格別に濃かった。そこに瘴気の元があるか、ひょっとしたら上流から流れてきたのが溜まっているのかも…」
成程、お手柄だ。どういう訳だか鬼も寄ってこないみたいだし、ちゃっちゃと移動するぞ。思ったより時間くっちまったし…。
俺と木綿季はともかく、二人の活動限界時間も近付いている。あまり長くここには居られない。
タマちゃんが言っていた通り、川の下流に瘴気の元があった。
そこに近付いても、鬼達は相変わらず遠巻きに俺達を睨みつけるだけ。…これから異界浄化される事を、理解していないのか? 浄化の場面を見た鬼は…居なかったな。周囲の敵を掃討してから術を使っていたし。
…まぁいいか。浄化を始める。3人とも、敵を近付けないようにしてくれ。
「わかった」
「りょーかい!」
「……それより先に、そっちを追求した方がいいと思うんだけど?」
六穂の至極尤もな言葉から敢えて耳を塞ぎ、瘴気の元に向かい合う。
制御にしくじればオオマガトキ第二段…ではあるものの、いい加減にこの術にも慣れた。左程強い集中も必要なく、あっさりと術が発動。鬼の手で介入された瘴気の元を中心に、一気に瘴気が晴れていく。
「おー…晴れたねぇ。あはは、鬼達が大慌てしてるよ。さっさと逃げないと斬っちゃうぞー」
「やるんだったら君だけでやってよね。僕は正直、もう面倒くさい。ただでさえ、超がつく程面倒くさそうな話が残ってるんだから」
「…………」
そうね、正直見なかった事にして終わらせたくもあるけどね。
さて……改めて、タマちゃんよ。
振り返った先には、目を逸らし、お腹を抱えて立っているタマちゃん。そのお腹は、つい30分前までのツルペ…もといスレンダーな未成熟ボディとは裏腹に、大きく膨れ上がっている。
そう、それはもう、胎児が居ますと言わんばかりに。
その膨れたお腹はどうしたんだね? 正直に言って見なさい。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………若様に……孕まされたの」
「…………」
「…………」
無駄に真実味がある嘘を吐くんじゃありませんッ!