高いけど、DMCとかfalloutとか欲しかったゲームも入っているようだし、大体のソフトは動くようだし、元は取れる…かな。
問題は、予約できるかどうかだよなぁ…。
車が無いから、近場で買えそうになければ通販するしかない。
しかし転売ヤーどもは見てるだけでムカつくなぁ、35万とか…。
そもそも直前にアサシンクリードヴァルハラが出るし、時期的に仁王2の第二段DLCもこの頃だろうし、焦る必要も無いか。
初期版は何かしら不具合がある、と言うのが世の常ですしね。
黄昏月弐拾弐日目
虚海が目を覚ました。特に何かイベントや切っ掛けがあった訳じゃない。朝が来たから目が覚めた…みたいな感じで、普通に起きたそうな。
ひどく疲弊しているが、精神的な異常は無し。
強いて言うなら、酷いマイナス思考と言うか、人間不信の傾向があるが…これは無理もない事だろう。
目を覚ました直後、自分が人里に居ると知って、まず逃げ出そうとしたくらい人間不信だ。…虚海の世話をしている医師も、半身の鬼の体に関しては未だに顔を顰めるからな…。
危害を加えられる、捕らえられて処刑されると考えるのも無理はあるまい。
尤も、体がまともに動かなくて、逃げるに逃げられなかったみたいだけどな。
これは取り込まれていた事による後遺症なのか、それとも単純に疲労、或いは暫く寝たきりだった為に筋力が衰えてしまった為なのかは…暫く経たないと分からないだろう。
肉体的には問題ないけど、アラガミ細胞の謎の性質によって動かなくなっているとか、鬼の体が更に変質してしまったとか、そういう可能性もあるからな。
とにもかくにも話をしなければ始まらない。
大和のお頭と、俺、秋水の3人で部屋に向かう。護衛をつけるべきではないか、という意見もあったが、病床の相手に物々しい恰好でおしかける訳にもいかない。不要な警戒を抱かれると、上手く行く話も上手く行かなくなる。ついでに言えば、大和のお頭の護衛と言う意味では、俺一人でも充分なくらいだ。
「陰陽寮の虚海、か…。例の鬼を作り出した張本人。あまり甘い顔はできぬが…」
「大和のお頭が非情に徹したところなど、一度として見た事がありませんね」
だな。なぁなぁで済ます気はないだろうが、非情な決断が出来るとは最初から思ってない。
まぁ、そうなるだろうと思って、虚海の身の上を色々話した訳だが。
「あなたもあなたで、何処で虚海さんの事をそうも知ったのやら…。虚海さんは一度聞きましたが、あなたの事は全く知らないそうですが」
人間、どこで誰に見られてるかなんてわかるもんじゃないからのー。
知らない相手に一方的に知られているなんて、よくある事さ。特に悪巧みしてる奴はな。
「よく、はないと思うが」
「そうでしょうか? 珍しくないと思いますが」
…秋水が言うと、なんかストーカー染みた情報収集とかしてそうな気がしてくるなぁ。
俺は俺で前ループと言う、ある意味前世の記憶みたいな電波入った戯言な訳だが。
ところで、ホロウは呼んでないのか。
「ホロウと知人なのだったな。だが、今のホロウは記憶を失っている。そうでなくても、結界の効かない鬼を生み出すなどというとんでもない事をしてくれた輩だ。今後の動向も確認できてないのに、協力者になるかもしれん人物に引き合わせられる筈が無かろう」
ホロウを疑ってる訳じゃないんだろうが…いや、ここは疑わなければいけない場面か。虚海を切っ掛けにして記憶が戻って、過去に絆されて…って事も考えられるし。
俺としては、絆されてしまっても問題ないんだけどな。記憶が戻れば、クサレイヅチ討伐の使命も思い出すだろう。
その為であれば、虚海を無罪放免とする手助けをするのも吝かではない。
さて、そういう訳でホロウの部屋を訪れたのだ。
声をかけると、中で人が緊張するのが伝わって来た。…しかし動けないようだ。
ホロウの世話をしている医師が出迎えてくれる。
「失礼する。…気分はどうだ」
「……ようは、無いの」
「でしょうね。いくら虚海さんと言えど、鬼に取り込まれて気分がいい筈がないでしょう。…いえ、取り込まれた割には、まだ気分がいい方なのでしょうかね」
秋水、何を煽ってんねん…。
虚海に対して言いたい事や鬱憤でも溜まっていたのか、珍しくあからさまな笑顔で話している。
「嫌だなぁ、病人を相手に顰め面をして話していては、余計に悪化しそうじゃないですか。これは気遣いですよ、気遣い」
「これほど白々しい気遣いもない…」
「うむ全くだ」
苛立ちを堪えて、唸るような声を出す虚海。それに心底同意する俺と大和のお頭。
…秋水を連れてきたの、失敗だったか?
ジロリと大和のお頭が睨みつけると、秋水は肩を竦めて一歩引いた。これ以上、話を引っ掻き回すつもりは無さそうだ。
「陰陽寮の虚海だな。俺はウタカタの大和。…と言っても、お前はこの里の事を色々と知っているようだし、紹介は不要か」
ああ、動物と会話できるって事はもう知ってるよ。動物達を味方につけて、里の家の地下に隠れてたこともな。
「…いんや、直に見るのは初めてじゃ。獣と言葉を交わす事は出来ても、視界を共有はできん。獣の目では、人の判別はよう出来んのでな」
特徴があれば別だけどな。長い棒を持ってる奴(槍使い)とか、遠くからいつも見つめてくる人(速鳥)とか、いつもご飯をくれる人とか。
この分類でいくと…大和のお頭は、目が片方だけの人、とか?
「…よう分かっておるの。そういうお主は、『番が沢山いる人』とか『食べられそうでこわい人』だったな」
おっふw
番が沢山居るのはむしろ誇らしいが、そういう風に見られてるか…まぁハンターだもんなぁ。
ま、それはいい。
率直に聞くが、虚海。お前、メガラケルてんてー…オオマガトキのあの穴から出てきた奴の欠片をどうした。
お前が切り札として持っていた、触鬼の触媒は?
あれを使って、何をしようとしていた。
「…言う理由があるのかの? 言ったところで詮無き事よ。既に種は撒かれた」
「虚海さんの意図しない形で、暴走して…ですね」
「…秋水、貴様…」
「僕は別に虚海さんを売ろうという気はありませんよ。元より、僕達は味方や仲間ではありませんしね。ですが、少なくともここで口を噤んだところで意味はありません。既に殆どの事が暴かれ、その裏付けに来ているだけですので」
まぁ、そうだな。態々聞き出す必要がある事は少ない。
何を思って世に混乱を巻き起こそうとしたか、触鬼とは何か、どうして取り込まれていたのか、何をしようとしていたのか。大体の事は把握できてる。
極論すれば、今聞きたいのは……好きな食べ物とか?
「……おはぎだ」
「何を聞いとるか阿呆」
別にいいじゃん、質問に答える気がある、って証明にはなるでしょ。
じゃあ改めて…俺達に協力する気があるかどうか、だ。
「…阿保らしい。本当に把握しておるなら、そのような無為な問いをする筈もない。何のつもりか知らぬが、おんしらに手を貸す理由など無いわ」
そう言うと、虚海は仰向けに倒れ込んで天井を向いてしまった。
虚勢やポーズ…じゃないな。本当に投げやりになっているようだ。…なんつーか、今までとちょっと違う反応だな。
今まではもっとこう、良くも悪くもリアクションがあったと思うんだが。
前ループと何もかも同じでなければいけない理由は無いが、何事も無ければ同じような事ばかり起こるのもループの特徴。虚海をここまで投げやりにさせる『何か』があったのか…。
いや、触鬼やアラガミに取り込まれるって、精神的ダメージを受けるには十分過ぎる経験ではあるが。
全てに投げやりになっている事で、虚海は妙な雰囲気を纏っているように見える。おかげで、あのポンコツ虚海がとてつもない陰謀の黒幕にさえ見えてしまう。
退廃的な色気と言うべきか、色々な物をじわじわと侵しながら暗く深い穴に誘い込んでくるような……そうだ、『破滅』の気配。ラケルてんてーの本性に通じるような、『何か』が感じられる。
内心で戸惑っていた。多分、虚海はそれを見透かしていただろう。そしてその上で、どうでもいいからと追及も利用もていない。勝手にしろと、何も無い天井を見上げるばかり。
どうなっているのかと頭を回転させるが、回答はすぐ横から飛んできた。
「いやはや…相変わらずですね、虚海さん。大仰な計画を建て、それが出来るだけの実力と準備があるというのに、いつもいつもどうでもいいとばかりに、直に放り出す。興味を見せたかと思えば、翌日には路傍の石と変わらぬ視線を向ける。それが僕らには恐ろしかった。注ぎ込んだ労力への対価に固執する事もなく、全てが些末事と言わんばかり」
…え、誰の事、それ?
……いやいやいや、待て待て、逆だ。秋水がこう言っている以上、それが今までの虚海だったんだ。俺が知らなかっただけで。
「その名の通り、虚ろな海、暗く深く冷たい海を思わせる…。僕達には、それが理解できなかった。僕達はただ一つの目的の為、全てを利用する者の集まりだった。それに属しながら、全てに興味が無いあなたの姿は異端だった」
つまりは、何だ…。ポンコツだった虚海の姿は、『何かあったから』そういう風になったんだ。
絶望に沈んで無気力になっていた虚海が、何かしら心に熱を宿し、興味を持って動き出した事で……アレな言い方だが、色んな歯車が狂ってポンコツと化していった、と。
いや、よりにもよってアラガミ細胞を利用して呑み込まれる辺り、最初からポンコツだったのは確かなんだけどさ。それも秋水からしてみれば、『化け物に呑み込まれても平然としていた』ように見えるんだろう。
「ですが、弱り切った姿を見て、ようやく分かりました。実力が桁外れだったのは確かですが、何よりも深かったのは、貴方の絶望。そこから来る無気力さが、僕達の目を見誤らせていた」
「…おんしらが、勝手に恐れておっただけよ」
「ええ、そうだったのでしょうね。己の目的にどこまでも執着する陰陽寮だからこそ、あなたの無気力さが理解できなかっただけです。あなたにも目的はあるのでしょうが、既に叶う事は無いと諦めている。この度の策謀も、ついで、或いは惰性でしかない。違いますか?」
「おんしがそう思うのなら、そうなのであろうよ。どうしても聞きたければ、わっしの事を把握していると豪語するその男にでも聞くがよい」
………成程にゃー。何を言われてもお構いなし、些事など知らぬとばかりのこの態度。
そんで術の腕や研究についても一級品。…アラガミ細胞については一級品程度で扱えるようなもんじゃないが、触鬼なんて物を作りだせる時点で、研究者としての腕も確かなのは変わりない。
秋水達が勘違いして、一種の超越者みたいに見てしまうのも分からないではない。
知ってるとアレだけど。勘違い物をリアルに見るとこうなるんだな…。まぁ勘違い物で勘違いが露見する事は少ないけど。
とは言え、種が割れてしまえば後は簡単。
ポンコツに引っ張り込んでやるとしよう。要するに、未練なり欲望なり、虚海が自発的に動かざるを得ないような衝動を引き起こせばいいんだ。
つまりは……まぁ、いつもの手段で肉欲漬けにしてしまえばいい訳だ。
とは言え、いきなりそれをやるのは大和のお頭が許すまい。性的虐待は、明かな拷問だ。条約なんぞ無い世界だが、人道に反する事をそうそう許してくれる人じゃない。
大和のお頭にこっそり耳打ちし、ホロウに関して教えていいか許可を取る。
お頭は少し沈黙したが、暫し後に頷いた。
さて、どう切り出すか…。
この無気力さを見るに、ただ名前を出しただけでは強い興味は惹けそうにない。元々、世界を混乱させてホロウ…翠瞳の乙女を呼び出すという計画も、ほぼヤケッパチ。残金1000円になるまでパチンコで擦った挙句、こんなの残っててもどうしようもねーやとばかりに1000円も万馬券狙いでお馬さん競争に次ぎ込むような心境だったろう。
ホロウがこの場に居るとしても、『どうせ無駄』という意識は取り除けそうにない。
…事実、ホロウは記憶を失っているし、虚海を元の時代に送り返せる能力なんぞ、多分無い。
…よし、ホロウの名前だけで無理そうなら、数で押すか。
ホロウ。
ピクリ、と体が動く。だがそれ以降は反応なし。続けていくか。
正義のモノノフ。腐れ…もとい、イヅチカナタ。
千歳。
「………その名で呼ぶな」
体を動かしはしなかったが、睨みつけてきた。
千歳の名前は、虚海にとっては捨て去った過去であると同時に、戻りたい時代の象徴。やはりこれは無視できなかったか。
なぁ千歳。
残念ながら、俺にはお前の望みを叶える方法は無い。色々と経験してきたが、過去への逆行なんぞ聞いた事もない。……デスワープは、ちょっと違うしな。
だが、幾つかの心残りを解消する事は出来る。どの道、やる事も無いし、自分から積極的に死のうともしてないだろう。
動けるようになるまでの間、そっちに注力したらどうだ? そしてその結果が気に入ったなら、俺達に力を貸してくれ。
「……私の事を知っているというのは本当のようだが、心残りか。思い当たらんな…。面倒だし、興味も無い」
また興味を失ったように、フイとそっぽを向いてしまう。だが、まだ多少は聴く気が残っている。この場合、本当に興味が無いのであれば、さっさと眠る体制に入るだろう。
興味が無いと言い張っているのは、心残りとやらに期待して、また失望するのが嫌だからだ。
構わず接近し、耳元で囁く。
処女を卒業したくないか? なんなら、童貞を捨てる手伝いもしてやるが。
「…………~~~!!!!」
おお、反応絶大。
寝返りをうつような形で、動かない筈の腕を振って殴って来た。だが避ける。
シモのコンプレックスってのは強力で根深いからな。幾ら絶望して無気力になったからって、無反応でいられるものじゃない。特に、拗らせてる奴のは。
虚海の拗らせ具合は、ひどいもんだからのー。鬼になった体の中でも、最も受け入れられない部分だろう。
年頃の少女(呪いを受けた当時はね)にとって、興味もあるかもしれないが、触れたくもない部分。汚らわしい、鬼の陰茎、魔羅。
しかも無駄にデカくてゴツくて禍々しい。しっかり朝立ちまですると来た。
虚海にとって、誰かと懇ろになる事が出来ない最大の理由でもあろう。
例え、鬼の体を受け入れられて、枕を同じにする関係になろうとして…互いに裸になった時に突き付けられる、ナニ。
初見であれば、俺だって逃げ出しかねない。具体的には、『実は男で、俺を掘る為に近付いてきたんだな!?』みたいな感じで。…そうでなくても、恋人が実は同性だった…なんて疑惑があれば、そりゃあ混乱する。
そんな風に拒絶されるのを恐れて、人に近寄らなくなっていくのも無理はない。
が、俺なら別に問題は無い!
千歳…ここに居る虚海じゃなくて、まだ若い千歳も同じ状態だったが、お構いなしにヤってたからな!
千歳は正面から抱き合うのが好きと言っていた(ちなみにその場合、大きくなった千歳のモノが俺の臍に当たる事が多い。イッた時にはぶっかけられるが、それもまた良し)が、カラダの方は後ろから抱きしめられて突き上げられるのが好きみたいだった。その時に彼女のナニを扱いてやると、いい声で鳴いたんだよなぁ。
早くクサレイヅチから解放して、またキンタマが空っぽになるまで搾り取って、それ以上に注いでやりたい。
…話がそれた。
地雷を踏み抜かれた虚海は、今からでも呪術を発動させそうなくらいに俺を睨みつけているが、ああ、そういう反応がいいねぇ。
以前のループでも、そんな目をした虚海を無理矢理躾けてやったものだ。結果的に、本人も悦んでいたから問題ない。コンプレックスも解消されたしね。
…何より、虚海は涙目になっていぢめられてるのがよく似合うしね! 千歳とは違って、嗜虐心がビンビン刺激されちゃうのよ。
今すぐにでも事に及んでしまいたいが、流石に大和のお頭と秋水の前で強姦に及ぶのはマズい。
今でさえ、『何を言った?』と大和のお頭の目が厳しくなっているんだから。
ま、そういう訳だ。お前が気にしている事は、俺にとっては些事もいいところなんでな。折角産まれてきたんだ。一生に一度くらいは経験しておいてもいいんじゃないか?
返事はまた聞きに来るわ。
大和のお頭、悪いけど後は任せる。
…話を引っ掻き回したけど、虚海も今なら平静じゃいられないだろう。何か話すなら今の内だぞ。
「…全く、お前は…。いや、確かにあのままだと何を言っても受け流されたがな…。一応言っておくが、強引な真似をするなよ」
分かってる。うちの子達に顔向けできなくなるような事はしない。
ちょっと考えたけども、本当に無理矢理なのは好きじゃないしね。
…釘をさしてくる辺り、何を言ったのか予想がついてるみたいだ。虚海の経験はともかく、俺が言いそうな事は分かるんだろうな。
言いたい事だけ言って、さっさと退散。
後始末を任せる大和のお頭と秋水には悪いが、これ以上の事はできそうにない。やらない方がマシだった、と言われると反論できないが。
さて、虚海は何とかこっちに取り込むつもりだが…それはそれとして、ホロウをどうしたもんだろうか。
虚海がショックを受けるとか、その辺の事を差し引いても、あいつとの間に感じる壁はどうにかしたい。いざクサレイヅチを前にした時、ホロウの戦力を当てにできないとなると…いや勝てるには勝てるだろうけど、少々面倒な事になるかもしれない。
しかし、どうやって記憶を取り戻させたものか…。ゲームストーリーであれば、過去の関係者…つまり虚海と出会う事で、何らかの切っ掛けになりそうなもんだが。
でももう会ってるしなぁ。その上で、ホロウも何も思い出さなかったし。
「キュ、キュ、キュイッ」
ん? …おお、天吉じゃないか。
なんだ、一人…もとい一匹か? ホロウは一緒じゃないのか。 これから虚海の所にお見舞いか? 今難しい話をしてるからな。虐めてる訳じゃないから、入って行くなら無茶しちゃ駄目だぞ?
「キュイッ、キュイィ」
そっか。お見舞いに木の実を持っていくか。それくらいならいいだろ…。
ん? 何? ホロウと博士が話?
…なーんかイベントの予感がするな。どっちだ?
「キュイ」
飯処? …ホロウが入り浸って離れないから、博士が会いに来たのかな。
呼び出したところで、来るかどうか疑問だしなぁ…。飯で釣れば話は別だろうけど、博士はそっち方面はあんまり強くない。
天吉に教えてもらった通り、飯処では二人が会話していた。
割り込もうかと思ったが、ホロウの俺に対する態度もあるし、ひょっとしたら聞かれたくない話でもしているのかもしれない。
…なので、気配を消して忍び寄り、耳を澄ます。
…忍び寄っても、5分くらいはホロウが飯食う音が響くだけだった。
どうやら、話をする対価として博士が奢っているようだが…あの博士が、よく大人しく待ってるもんだ。それだけ重要な話なのだろうか。
「……トキワノオロチ…?」
「そうだ。聞き覚えはあるか?」
「………………………わかりません。記憶が無いので」
「記憶が無くても思い出せ。お前の素性は、奴から聞いて私も知っている。イヅチカナタを追っているなら、十中八九関わりがある筈だ。甘味を追加してやるから、死ぬ気で思い出せ。心当たりはないか」
「……………」
ぜんざいを啜りながら、ホロウは考え込んでいる。
トキワノオロチ…知らない名前だ。鬼の一種だろうか? でも大蛇ってくらいだし…。まぁ蜘蛛で鬼なんてのも居るし、蛇で鬼が居てもおかしくないが。
博士の言い方だと、クサレイヅチに関係がある鬼なんだろうか。しかし、追いかけ続けてるけど、俺は聴いた覚えが無いな。
「…響きに覚えがあるような気はします。どのような鬼ですか?」
「イヅチカナタとは少し違うが、時空を超える鬼だ。現在は封印されている筈だが、何せ時間移動を可能とする鬼だからな。いつ何処に出現してもおかしくは無い」
「時空を超える力なら、鬼ならば大小の差はあれ持っています。特に珍しくないのでは」
「奴の力は桁違いだ。奴の為に滅んだ国は数知れない程にな。もしも奴を操る事ができれば、遥かな過去だろうと未来だろうと、行けない場所はないだろうよ」
ほう…。それはまた恐ろしい話だ。しかし、操る…ねぇ。博士がそんな事を言い出すって事は、その鬼を操る方法、或いは操りそうな奴に心当たりでもあるんだろうか?
鬼を操るなんぞ、真っ当な人間の発想じゃない。…いや、真っ当じゃない連中は珍しくないけどさ。
考えてみれば、虚海とか真っ先に目論みそうじゃないか。上手く行けば過去に戻れる、下手をすればクサレイヅチと戦って鬼門に流されたという過去すら改変できる…。
虚海だけじゃない、秋水だってやりそうだ。…本当に、その鬼を操る事が出来るのなら、だけど。でも、出来なくても出来るようにする為の研究なんだよな。
…つーか、博士は前ループの時に、ホロウにその鬼の事を聞かなかったんだろうか。少なくとも俺は聞かれなかった。
あの博士の事だから、もしも聞き出していたとしたら次ループの自分に対して確実に情報を残す筈。
…聞かなかったのか、聞いてはいたが不十分な情報だったのか、それとも単に理由があって伝えてないだけか。
「危険な鬼と言う事は理解しましたが、拘る理由でもあるのですか」
「貴様らと同じように…いや、今の貴様は違うのだったな。私にも多少のしがらみや因縁はあるというだけだ。その因縁も、何かおかしなことになっているようだが…」
「よく分かりませんが、やはり思い出せる事はありません。記憶が戻れが、何か思い出すかもしれませんが」
「…そうか。ならば行くぞ」
「? どこへでしょうか?」
「記憶を戻す方法に心当たりがある。流石に確実にとは言えんが、座して待つよりは可能性はあるだろう」
「……そういう事であれば、食事が終わってからお付き合いします」
「さっさと食え。私は準備をして、先に向かっている」
「どこへですか?」
なんかホロウの食いつきがちょっと強いな。流石に自分の失われた記憶は気になるのか。
博士は代金(ホロウの分含む)を置くと、傍らに立て掛けてあった得物の銃を持ち、振り返りもせずに言う。
「滅鬼隊の源流が封印されているという遺跡だ。あそこはいつも存在している訳ではないから、さっさと来る事だ」
「話に聞いた、現れては消える遺跡ですか。今存在しているとは限らないのでは」
「いいからさっさと来い」
…博士は行ってしまった。
ホロウはマイペースに、残された団子を味わっている。…いや、ちょっとだけ上の空かな。
しかし、そうか、あの遺跡…箱舟か。
確かに言われてみれば納得だ。前のループで博士も話していたが、ホロウには恐らく『同類』…クサレイヅチを討伐する為に編成された仲間が居る。
その仲間…と言っていいのか分からないが(だってホロウは一人だけで追ってたし)、それが箱舟の連中である可能性は充分にある。
少なくとも、箱舟自体はホロウと同じ世界の代物だと思う。茅場が狂喜乱舞して、遺跡と一緒に消失するのもお構いなしに調べてたしな。
その箱舟を見せれば、失われた記憶が刺激される可能性は高い。少なくとも、このまま茫洋として座して待つよりは。
どうするかな…ホロウがどういう反応を見せるのか、興味はある。案外、以前のホロウ自身さえ忘れ去っていたようなレアな情報とか出てくるかもしれない。
しかし…俺が行くと、なんかホロウがやる気を無くしそうな気がするんだよなぁ。
依然、ホロウとの間に感じる壁は消えてない。気のせいではなく、確かに拒絶されてしまっている。
もっと言ってしまえば、何かと俺との同行を拒否しようとしているようだった。
理由はともかく、俺が行ったら臍を曲げて『帰ります』なんて事になるような…。そもそも、ここで出たら盗み聞きしてましたって白状するようなものだし。
…よし、俺じゃなくて他の誰かに行ってもらおうか。あの遺跡に興味を持ってる子も居たし、別段不自然ではないだろう。
急な任務になるから、丁度よく誰か掴まるとは限らないが…。
とりあえず、ここに居てもホロウに気付かれる危険が増すだけだ。一旦、屯所の方に戻るとしよう。
丁度暇していたらしい、凛子・凛花のコンビに依頼。急な話だったのに、二つ返事で引き受けてくれる辺り、本当にいい子だよ。
報酬は夜の優先権でいいって言うし。…いや、流石にそれだけじゃ悪いんで、ハクも出すけどね。そもそも優先権って言っても、誘ってくれればホイホイついて行く、或いは誘い込むからな。何ならその場で即本番もありだ。
ホロウを探るような言動はしないように、ときつく言い含めた。頭は悪くないんだけど、対人経験が極端に少ないのはうちの子達の共通の弱点。余計な事は考えない方がいい。