一旦話し合いを切り上げて、ホロウ、俺、そして秋水は虚海の元に向かった。
橘花の発案については、結構揉めた。確かに虚海の腕はいいが、味方という訳でもなし、素直に協力してくれるか? 敵対は考えないとしても、今は無気力状態もいいトコロだ。
秋水が説得に手を貸してくれるとして、記憶が戻ったホロウにどれだけ反応するか。そのホロウからしても、虚海の望みを叶える…元いた時代に戻す事はできない。結局、また絶望して無気力になるのではないか。
…と言うのが、橘花と俺以外の見解な訳ですな。
ぶっちゃけ、ホロウの件が駄目だったとしても、R-18な行為を餌にすればナンボでも手伝ってくれます。今の彼女は、某煩悩霊能者並みに性欲に満ち溢れているのだ。…いや、流石にそりゃちょっと言い過ぎか。サカリの犬くらいでいいや。
尤も、それを知っているのは襲った俺、同行した静流、千里眼で覗き見していた雪華と、夢で繋がって連動して覗き見していた橘花のみである。
…うん、雪華の覗きは感知してたけど、橘花もなんだ。こっそり参加しに行こうか、かなり迷っていたらしい。上手く抜け出す事ができず、諦めたようだが。
虚海を手籠めにした翌日には、皆には見せない下卑た性欲に満ちた笑みで、「虚海さんも仲間入りですね♪」なんて囁かれたもんだ。
まぁ、そんな訳で、虚海に協力させる事は簡単だ。ベイビーサブミッションもいいとこだ。…赤ちゃんの手を捻るとか、罪悪感で死ねるけども。
どっちにしろ、橘花と樒だけで因果簒奪なんて反則的能力を防ぎつつ、大型鬼の襲来を受けても壊れない結界なんて、宝玉があっても技量的な意味で難しい…と主張し、とにかく駄目元、出来なくても失うものはないとして押し切った。
ホロウとしては、非常に気まずい気分のようだ。
虚海が眠っている間に、一度顔を見に行ったからな。その時は知人だと言われても全く何も思い出せない結果に終わった。今、こうして会いに行く気分はどんなものだろうか。
しかも、虚海が今までやってきた事は、分かった限りでは知らされている。
かつてはホロウの仲間の一人として、世の為人の為に、鬼と戦うモノノフという組織を立ち上げた一人。正義のモノノフを称する程に純真で正義感が強くてお人好しでアイドル…は俺がプロデュースしたんだっけ…だったあの千歳が、ポンコツなのはともかくとして鬼を使って世を乱すようなテロリストになっちまってるんだものなぁ…。
…そして今から会いに行く虚海は、中身が自慰を覚えた性欲猿に変貌している。うーん、この落差よ。
しかし秋水、お前さん、いつになくよく関わってくるな。
いつもだったら、部屋の隅っこで話を聞きながらも、我関せずとばかりに自分の仕事や調べものばっかりやってるのに。
「酷いいいぐさですね。僕がそうやって下調べしているからこそ、話が早く進むというものですが」
そこは理解してるけどね。事前準備や鬼の情報の話ならともかく、荒事の話に秋水が首を突っ込んでも、大した意見も出せないだろうし。
ただ、それでも人に直接は関わらない、基本的に傍観者みたいな立ち位置に居ただろ。まぁ、橘花には妙なちょっかいを出そうとしていたようだが。
「ただ単に、僕も傍観したまま死ぬのは御免被るというだけです。聞いた話だと、先日の大戦よりも危険な状況のようですしね」
さっさと逃げればよかろうに…とは思わないのかね。
「御冗談を。…僕は、誰か一人に犠牲を押し付けて助かるとか、見捨てるとかいうのが大嫌いなんですよ。ええ、それだけはしてやるもんか」
お、おう…。いきなりいつも以上に真顔になりおって。
つくづく初対面の印象とは真逆だよな、こいつ。一見するとクールで冷徹な秀才君って感じで陰険で粘着質…なのは変わらないが、言ってる事は割と熱血だ。
そう言えば、橘花に対してストレスをかけて神垣の巫女の地位から降ろさせようとしていたのも、橘花一人が犠牲になるのが気に入らなかった…という解釈もできる。かなり拡大解釈してるけど。
それも多分、絶対に見捨てないという信念とかじゃなくて、九葉のおっさんに対する意地とか当てつけみたいなもんだと思うけども。
何でもいいが、一緒に来るって事は、虚海を説得する案を持ってるって認識でいいんだろうか?
「なくはない、という所ですが…正直、あなた方に任せた方が上手く行きそうです。僕が虚海さんを見に行くのは……ある種の怖い物見たさでしょうか。あの虚海さんが、どんな有様になっているのか…」
………ところで秋水、虚海と話をした日の夜って何か変わった事あったっけ?
「僕はありませんよ。僕は。誰かさんが如何にも何かやりそうな気はしていましたけどね」
あっはっは、バレテーラ。
証拠が無くても、確信してるんじゃはぐらかしようがない。…大和のお頭には黙っといてくれよ。
「橘花さんにはばれているようですが。…いえ、正直言って今の橘花さんを相手に化かし合いは無謀ですね」
本当にな。なんであんなんなったんだろ…何やらかしたんだ、前の俺…。
さて、馬鹿話もこれくらいにしようか。ホロウも自分の世界に入ってないで、ちゃっちゃと行くぞ。
悩まなくても、話すのに支障はない程度には立ち直ってっから。
虚海の部屋に入ると、微かな性臭が鼻についた。…どうやら我慢できずにオナッたようだ。鬼ちんぽは勃起封じ状態だから、女の体の方だろうね。
普通の人では気付かない程度の匂いだから、秋水もホロウも気付かないだろう。気付いたところで、虚海が恥ずかしいだけだから、別にいいんだけど。
やってきた俺と秋水に何か声をかけようとした虚海だが、続いて顔を出したホロウに絶句した。
「…久しぶりですね、千歳」
「……………ホロウ…ホロウ? 本当に…あのホロウ?」
「はい。あなた達と共に鬼と戦い、天狐の言葉を教わったりしたホロウです」
「……あぁ……あぁ、ホロウ! ほんに来た! 今更来た! はっ、あはははははは!!!」
何がツボにはまったのか、布団から身を起こした状態で虚海は大笑いする。
ついついやかましいと蹴り倒したくなったが、流石にそれは空気が読めないってもんじゃないので自重した。
絞り出すような笑い声をあげる虚海を、ホロウはじっと見つめている。まるで信じたくないものでも見ているかのような顔で。
「…千歳…随分、様変わりしましたね」
「くっ、くはっ、はっ、は……ふ、ふふ、変わりもするさ。こんな姿に成り果てて、百年以上の歳月を過ごせばな…。情も無くし志も擦り切れ、精も根も尽き果てたとも」
欲望だけは尽きてなかったけどな…。
「元の世界に帰りたい。それだけが私に残った望みだった。その為にホロウ、おんしを呼び出そうとしていたのさ。その為に、世を混乱に陥れようとした」
「失敗して、自分が鬼に呑まれていたようですがね。…全く、柄にもない事をするからです」
「ほっとけ。……ホロウ、おんしがここに居るという事はイヅチカナタが近くにいるのだろう。私にとっては全ての元凶となった、憎んでも憎み足りぬ鬼だが…それも今はどうでもいい。私を、あの時代に戻す事はできるか…?」
ホロウをじっと見つめる虚海。だが、あまり重要だとは思っていないようだ。
そもそも最初から期待していない。…今までの人生の中で、諦観が完全に根付いてしまったのか。それとも、つい先日覚えた『オタノシミ』に夢中になって、帰ろうという気があまりなくなってしまったのか。
だが、ホロウはそうは捉えなかった。あの『千歳』が、こんな有様になる程の悲惨な道をたどり、全てに絶望しながらも唯一残された望み…それも、実現可能とはとても思えないような代物…だ。地獄に垂れた蜘蛛の糸同然だ。
そして…それを一刀両断しなければならない。
「…無理です。私に時代を逆行する機能はありません」
「……そうか…。そう、か…」
俯く虚海。意外とショックだったんだろうか? …いや、普通に考えれば最後の望みすら絶たれて、文字通り絶望するような状況なんだけど。
今の虚海はなぁ…。
「…ならいいさ。元々、大した期待もしていなかった。「その大した事のない期待の為に世を混乱させるのはどうかと思いますが」…お前も大して変わらんだろう。…望みは潰えた。残った時間は、夢に沈むように過ごすとしよう。灰となって散るまでな…」
「…無為に過ごすくらいなら、もう一度私達に手を貸してください。イヅチカナタは、あなたにとっても敵の筈」
「そしてもう一度、あの穴に落ちるのか? あの真っ暗な穴の中に。…今度目を覚ましたら、残った半身も鬼になっているやもしれんな。…ふふ、そうなったら今度こそ身も心も鬼となるのもいい」
いやよくねーだろ。何を陰鬱な想像して影作ってんねん。灰になるって、燃え尽き症候群かよ。
「文字通りの意味だよ。…陰陽寮には以前、私と同じように半身が鬼となった者が居た。私程ではないが、結構な長生きでな…。そいつは最後、どうなったと思う? ……望みが叶わないと悟った時、崩れ落ちて散っていったよ。文字通り、体の端から塵になってな。…いずれ、私もそうなるのだろう」
…体一つ残す事を許されない、か。
しかし、今もそうなってないという事は、まだ何か望みや執着があるんだろう。クサレイヅチが襲って来れば、それすら奪われる。
文字通り、最後の望みすら奴に奪われるのは癪だろう。
それとも、因果も魂も奪われて、永遠にクサレイヅチの腹の中で飴玉にされるのがいいか?
「……ふん、分かっている。元より、ホロウに含むものは無い。…確かに、昔はモノノフを立ち上げた事自体が間違いだった、と思った事もあったがな。いいだろう。その時になったら手を貸す」
おし。思ったよりゴネたけど、言質はとった。流石にホロウの前で、虚海の鬼ちんちんを弄り回して言う事を聞かせるのもアレだったからな。…いや弄るのはそこだけじゃないよ、おっぱいも女陰も不浄の穴も弄るよ。
「千歳、私は…」
「もうその名で呼ぶな。私は虚海だ。あの頃の千歳は、既に死んだ。鬼として扱われる事にも、悪行を成す事にも耐えられずに死んだ。戻ってくる事は、無い」
………居るんだよなぁ、千歳…。クサレイヅチの中に、だけど。
いやまぁ、そうだとしてもこの虚海とは別人な訳ですが。
虚海の協力を取り付けて、俺は部屋を去った。ホロウはもう少し話をしたいと言うので残り、秋水は「拍子抜けでしたね」と言い捨てて何処かに行ってしまった。自分で言っていた通り、大した用事ではなく見物気分で来ていたようだ。
ま、何にせよ、クサレイヅチ討伐の為に手を貸してくれるのは確かだろう。クサレイヅチを放置してしまえば、『女』になった瞬間の事も忘れ去ってしまう。
今の虚海にとって、快楽と性欲は生きる意味そのものと言っていい。…事実、さっき話をしている間も、腰をモゾモゾさせて弄りたそうにしていたからね。
ありゃー今日明日中に解消してやらんと、夢精とかしそうだな。勃起封じの術も、虚海なら自分で解除してしまいそうだ。
うちの子達へのお披露目もあるし、舞台を整えておかないとな。
…お披露目と言えば、今日の夜伽当番は明日奈、神夜、詩乃の3人だったっけ。幹部級、っていう表現も何だけど、うちの子達の中心人物大集合だ。
ヤりすぎてしまうかもしれん…。
と言うかそういう気分だ。まったりイチャチャ、王様みたいに奉仕されまくるのもいいんだけど、今はなんかもっと攻撃的な気分になっている。合意があっても怖気づくような強烈な凌辱とかしたい。
いつもなら、相手の子達が疲れ切ったらそこで切り上げて、適当に摘まみ食いとかしに行く(だから当番スケジュールとかあってもあまり意味が無いんだよね)んだけど、今は気絶しようが許しを請われようが壊れようが、お構いなしに一晩中責め立ててやりたい。
さーて、どうすっかな。分身して輪姦プレイか。久々に触手でも出して、全身ぐっちょぐちょにしてしまおうか…あ、触手の先頭に口とかつけて、全身prprもいいかな。それとも、女達の体をふたなりにして乱交させるか。
「おい、全身性欲変態男」
ん? ああ、博士か。虚海の協力ならとりつけきたぞ。
「…躊躇いなく返事をするな、貴様…。まぁいい。貴様にこれを渡しておく」
…なんぞ、これ。手紙?
「『前回』の私と同じだ。万が一があった時の為、『次』の私へ受け継がせる手札だ」
ああ、そういう…。博士にしては珍しいな。私が居るのに失敗などありえん、くらいは言いそうだが。
「例え私が失敗しなかったとしても、貴様らが失敗する可能性は充分にある。お前は何度も何度も繰り返している。経緯はどうあれ、それだけ失敗を続けているという事だ」
それを言われると、ぐうの音もでない…。っとに、何でしくじるんだろうなぁ…。クサレイヅチだけなら、もうソロで討伐するだけの力量はあると思うんだが。
毎度毎度、理不尽極まりないトラブルが湧き出てくるんだもんなぁ。
メガラケルてんてーだってその類だもの。
「そう思っているなら、またしくじるだろうな」
…何?
「イヅチカナタも、トキワノオロチも、単体で国を亡ぼすような鬼だ。確かに貴様は比肩する者を探すのに苦労するような凄腕だが、そんな鬼に簡単に勝てると思うか? …奴らの真価を、貴様はまだ知らん」
真価とな。トキワノオロチの事は知らないが、クサレイヅチにまだ知らない何かがあると…。
いや、確かに言われてみれば、以前からクサレイヅチの様子はおかしかった。デスワープした直後に姿を現したり、何故かいきなりラヴィエンテに乗っていたり、体に赤い電撃みたいなものが走っていたり。奴には、俺の知らない『何か』がまだ残されている。
鬼に限らず、追い詰められた生物は時に思いもよらない力を発揮する。奴の力を見切ったつもりでいれば、手痛い反撃を喰らうだろう。
「そういう意味とは少し違うが…。理解したならそれでいいか。ではな。精々うまくやる事だ」
はいよ。
…ふぅ、痛い所突かれたな…。今まで何度もしくじっているのに、どうして根拠も無く上手くやれると思うのか。
最近、色々上手く行ってたからな…。そういう感覚が薄れていた。
と言うより、今までもそうだったかな。調子に乗ってるところに足元を掬われるか、頭上からとんでもない災難が振ってきて潰される。
まだ勝ってもいないのに、兜の尾を緩めてた気分だわ…。
…しかし、クサレイヅチの真価、ねぇ…。因果簒奪以外に、何があるんだろうか…。