※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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予約してある投稿は、今回分で最後となります。
骨折の経過は順調なようですが、充分な書き溜めはできておらず、次回の投稿は 12月以降になりそうです。



第583話

 

 虚海と話をして調査を頼むと、少し渋い顔をされた。

 騙す訳ではないが、知人友人を誤魔化して胸の内を探るという事に抵抗があるようだ。尤も、ご褒美を仄めかすだけで簡単に吹っ飛ぶ抵抗のようだが。

 …肉欲の為に、虚海が俺の側に付いたと知ったら、ホロウはどんな顔をするかな。

 

 それはそれとして、博士がクサレイヅチやトキワノオロチが出現する場所を予測できた、と報せがあった。

 いつもの集会所に向かうと、既に皆は地図を囲んで話し合っていた。

 

 遅れてすまん。奴らは何処に出るって?

 

 

「来たか。出現すると思われるのは、ウタカタから少し離れた異界だ。強いて言うなら、戦の領域に近い」

 

「第二候補、第三候補の場所もあるようだが…」

 

「流石に確実な事は言えん。時空の事は、私にとっても未知の領域だ。ここまで予測できるだけでもありがたいと思え」

 

「そりゃそうだがな…」

 

 

 ふむふむ。どの予測地点も、里から東にある異界、特に広大な場所だな。

 遮蔽物が極端に少ない。戦いやすいっちゃ戦いやすいか。

 

 出現したらどうすると思う? 最初は包囲で考えてたんだが、ヒノマガトリみたいに空を飛ばれると手が出せなくなる。

 

 

「間違いなく飛行能力はあるだろうな。時空の流れを回遊する鬼が、地面に足を付けて歩くとも思えん」

 

「なぁ、遺跡にはその鬼を引き寄せる機能があるんだろ。いっその事、そっちで待ち構えてはどうだ?」

 

「…有り、だな。だが、その分ウタカタに近い場所で戦う事になるぞ」

 

「逆を言えば、補給もしやすい。結界担当が3人居るし、宝玉もあるし、そうそう破られないんじゃない?」

 

「いや、相手は国を亡ぼすような鬼だ。普通の鬼の尺度で考えるのは危険だろう」

 

「確かに…。それに、イヅチカナタとやらの因果簒奪を防ぐ機能を付ける為、強度が犠牲になっているやも…」

 

「そこは確認だな。…と言うより、イヅチカナタの因果簒奪の事を考えれば、ウタカタの結界近くで戦うしかないのでは?」

 

「出現前にトキワノオロチだけでも討伐…と言うのは楽観がすぎるわね」

 

 

 

 口々に見解を述べて意見を交換し合う。この光景も見慣れたもんだ。

 俺としては、誘き寄せる前に平野で討伐してしまいたい。アラガミモードになる可能性は高いし、その状態で全力出したら里に余波が押し寄せるだろう。

 鬼は撃退したが、里が半壊じゃ笑い話にもならない。

 

 しかし、平野で撃退するなら、出現地点の3択で正解を引かねばならないわけで…。

 どっかで待ち構えて、違う場所に出現したら鬼疾風で向かう…と言うのも考えたが、何処に出現したかの伝令が到着するまでの時間を考えるとリスクは高い。

 

 

 

 

 

 

 

 会議の流れは変えられず、結局ウタカタ近く、遺跡に誘き寄せて戦う事となった。

 まぁ、それは別に構わない。利益不利益、危険や対策を考え、これが現時点では最良の形、という結論に達したのだから。

 俺の個人的感情はさておいて、効率的に戦力を発揮できる形になった事は確かだ。…問題は、それを十全に使わせてもらえるかどうかだが。

 

 

 大雑把な流れは、こんな感じだ。

 

・遺跡の装置を起動させて、トキワノオロチを呼び寄せる。

・備えていたウタカタ主戦力+うちの子達で迎撃する。

・イヅチカナタが出現したら、俺とホロウで討伐に向かう。

・速攻で叩き潰して、取って返してトキワノオロチを撃退。

 

 

 

 ……うん、こんな感じなんだ。言いたい事は色々とあるだろうし、本当に迎撃できるのかとか、そーいう事は沢山言いたいと思うけど、実際こんなもんなのだ。

 敵の全貌や戦力が殆ど分からないから、こんなガバガバな作戦しか立てられなかったんだ。

 その分、怪我人が出た時の救助方法とか、補給経路とか、そういうドクトリンは出来る限り突き詰めたけども。

 

 

 ところで、ガバガバさとは別に、一つ気になった点はないだろうか? 主に三つ目。

 

 

 

・イヅチカナタが出現したら、俺とホロウで討伐に向かう。

 

 

・イヅチカナタが出現したら、『俺とホロウで』討伐に向かう。

 

 

・『俺とホロウで』

 

 

 

 …うん、そうなんだ。

 総勢2名、参陣!になるんだ。

 

 いや、ちゃんとした理由はあるんだよ。

 前のループ、千歳と一緒の時を思い出せばわかる。あの時、千歳を中心として結束していたモノノフ集団は、クサレイヅチの因果簒奪の影響を受け、互いの事を忘れて連携を失っていった。

 自分が目の前の鬼と戦っているという事すら忘れて、過去の出来事に捕らわれた。

 千歳や俺でさえ例外ではない。

 

 はっきり言って、数を揃えても意味が無いのである。

 その為、大和のお頭は俺とホロウにクサレイヅチ討伐を任せた。俺とホロウなら…自分でも分からないくらいに長い間、クサレイヅチを追い続けてきた俺達なら、因果を奪われても関係ない。ただ目の前のクサレイヅチを斬る事だけを考えていればいい。幸いにして俺もホロウも、単体でクサレイヅチを正面切って相手できるだけの戦力はある。

 …千歳を解放しなきゃならんのだがね。あと、それだけの戦力がある筈なのに、今まで失敗してきたんだよなぁ…。

 

 色々不満と言うか疎外感みたいなものはあるが、それをひっくり返すだけの材料も無い。

 ホロウも俺に対して拒絶があるとはいえ、感情で否を突き付けるような真似をする筈も無い。…正直、いつ地雷を踏んで大爆発するかドキドキしています。いっそ自分から爆破解体してしまおうかと思うくらいに。

 

 

 

 そんな訳で、非常に気まずい雰囲気になりながらも、ホロウと二人で作戦会議しています。他の皆は軍備について相談や準備を進めている。

 お互い、クサレイヅチとは何だかんだで長い付き合い(ヴォエッ!!)になってるし、奴の手の内は読めている…と思っていたんだが、この前の博士の話を聞いた後だとねぇ…。

 今までのクサレイヅチの行動や傾向を見ていると、不自然さを感じた事も一度や二度ではない。その辺も含めて、打ち合わせが必要だった。

 

 

 で、今までの繰り返しで、どんな感じだった?

 俺は博士が言っていた通り、まだ知らない何かが残ってると思う。そもそも、トキワノオロチとクサレイヅチに何か関係がある、と言うのだって今回が初耳の情報だったし。

 

 

「…確かに。私も長く奴を追っていますが、それらしいものは一度として目にした事はありませんでした。博士の言う事です、憶測であっても可能性は高いのでしょう」

 

 

 同感。

 今までの俺の繰り返しだと…そうだな、現地の巨大生物(ラヴィエンテ)に乗って襲撃をかけてきたり、脈絡も無く宇宙から巨大生物が襲来したり(この前のGE世界)、なんか赤い電撃みたいなのを纏っていたり…あと何があったっけか。

 

 

「私の繰り返しの中では、そのような行動は一度として認識されていません。…と言うより、今思い出している繰り返しの中では、イヅチカナタと遭遇した記憶は一度もありません。そこに辿り着くまでに、何処かで記憶が途切れます」

 

 

 そうか…。

 トキワノオロチと接触しようとしているなら、そこには何かしら理由があるだろう。意味の無い習性とも考え辛い。2体揃ったら、合体技でも出してくるんじゃないだろうか。

 参ったな、千歳の事もあるってのに…。

 

 

「…? 千歳? 千歳に何かあるのですか? 確かに、体はイヅチカナタとの闘いで変形してしまいましたが、それは今どうこう言う事では…」

 

 

 …ん?

 

 

「何です?」

 

 

 いや…ちょっと待って、ちょっと待って。確認。最初に俺と会って、その後一緒にクサレイヅチと戦った時の事、覚えてる? ほら、鬼の手使ってた時の。

 

 

「はい、そこは最後まで覚えています。あの時はあと一手まで追い詰め、私が使っていた鬼の手を目晦ましにしてあなたが強襲を仕掛けました。…私が覚えているのはそこまでですが、仕留め損ねたという事でしょうね」

 

 

 …ああ、不甲斐ない事に。

 俺を見るホロウの目に冷や汗を垂らしながら、確認を続ける。

 

 その時に、見えなかったのか? 俺がしくじった理由…。

 

 

「鬼の手の爆発で、貴方達がどのような遣り取りをしたのかは分かりませんでした。あの状態から、どうすれば返り討ちに合うのか分かりかねますが」

 

 

 …そっか、爆発が目晦ましになったのはクサレイヅチだけじゃなかったか。

 危ねぇ…あやうくそのまま、纏めて殺すとこだったかもしれん…。

 

 …あのな、ホロウ。クサレイヅチの中には、千歳が居るんだよ。

 

 

「…何を言っているのです。千歳なら、今この里に居るではありませんか。…それとも、千歳の因果が、と言う事ですか?」

 

 

 いや、文字通りの意味だ。何でそうなったのかはよく分からんが、クサレイヅチの体内に、千歳が囚われている。

 ホロウと出会う前の繰り返しで、千歳…スレてポンコツになった虚海じゃなくて、次代を飛ばされて間もない頃の千歳と一緒になった事があったんだ。…これ、前にも言ったっけ?

 その時、クサレイヅチと戦って、仕留め損ねたんだが……どうもその時に、千歳を取り込みやがったらしい。

 ホロウと共にクサレイヅチと戦った時、最後の一撃をくれてやろうとした瞬間に、胸の部分が開いて千歳を見せ付けてきやがった。咄嗟に刃を止めたが、危うく千歳に斬り付けるところだったんだよ。…で、その隙を突かれて返り討ちって訳だ。

 

 

「…千歳が、イヅチカナタの中に…。今まで、一度もそのような事は目にした事がありません」

 

 

 人質を使う必要を感じなかったのかもな。大抵の相手は、因果簒奪で棒立ちになり、抗う事すら出来なくなる。

 外敵と直接接触する必要すらないだろう。

 …考えてみれば、どういう体の構造してるんだ…と思うけどな。鬼の生態なんて元々出鱈目極まるようなもんだが、体の中に人を取り込んで拘束するなんざ、何の意味があるってんだ。

 

 

「俄かに信じられる話ではありませんが…やる事に変わりはありません。イヅチカナタを倒します。そして千歳を解放する。…そうなると、千歳が二人になるのですね」

 

 

 そうなるな。ややこしくはなるが、そう問題もないだろう。

 あの時の千歳は、虚海とも仲良く…とは言わないが、それなりに折り合いをつけてたしな。

 

 そういう訳で、千歳を助けつつクサレイヅチを仕留める方法だが…。

 

 

 二人で暫く連携について話し合った。

 

 

 

 

 

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