仕事で疲れて帰ってきたら、暖かく迎え入れてくれる家が。
自分には縁のないものだと思っていました。
理由をつけて無理だからと諦めていました。
ですが、ふとした閃きを得て、手に入れる事ができると気付いたのです!
新しい家族を迎えます!
家族が増えるよ! やったねたえちゃん!
エアコンやファンヒーターと言う家族がね!
(物理的に)暖かい家が欲しかったんだよぉ!
去年は乗り切ったけど、今年はマジで寒い。
手が動かなくて執筆できないし寒くて気力が削れるしストレスで口内炎になりまくりです。
喋ったり食べたり、舌を動かすだけで痛いっす。
古い部屋なのでブレーカーの使用量が問題になってましたが、ブレーカーの配線が分かれている事に気付き、これなら付ける場所によってはどうにかなんじゃね、と考えたのです。
…あとは数万円出して買ってきた後に、「ブチッ」とブレーカーが落ちて使えない、或いは使えるけど出力が足りなくて全く温まらないという結末が訪れない事を祈るばかりです。
え? リア充的な意味で暖かい家? 来世で手に入るといいね!
黄昏月惨拾日目
夢を見ている
黄昏月惨拾壱日目
目が覚めると一日過ぎていて、片付けも色々と終わっていた。看病してくれていた子達が感極まって抱き着いてきたけど、随分心配させてしまったらしい。
医者として走り回っていた那木も、目を覚ました俺を見てほっとした表情を見せてくれた。
それはいいんだが……結局、あの後何がどうなったんだ? 負傷者はどれくらいだ? クサレイヅチとトキワノオロチは?
…ほうほう。
負傷者重傷者多数なれども死者は無し……また? あ、いやいや不満がある訳じゃないよ。死人が出ないって最高だよ。
ただ、あれだけ強力な鬼とその群れとやり合ってそんな都合のいい話あるのかな、って。
少数精鋭での戦いならまだ分かるし、一回だけなら奇跡と割り切る事もできるけど、前の大戦でも似たような結果だったろ? ちょっと都合よすぎないかな、って…。うん、それが実力の為せるわざと言われれば納得もするし、都合がいいに越したことはないんだけども。
どうにもスッキリしないモヤモヤ感があったものの、それはあくまで俺個人の話。確固たる証左もないのだから、論じても仕方のない事だ。
それよりも、あの後一体何がどうなったのかと言うと…。
…は? クサレイヅチも、トキワノオロチも逃げた? あの状況で?
「はい」
淡々とした表情で、何故か説明に来たのはホロウ。共闘して少しデレた?と期待したが、相変わらず壁を感じる。…いや、むしろ今までよりも明確に拒絶されているような気が…。でもだったらどうしてホロウが説明役を買って出たのだろう。
…いや、今はホロウの考えよりも、状況の把握だ。
逃げたというが、どこに行ったのかは分かるのか? また襲来してくる可能性は?
そもそも誰の見解だ?
「博士の見解です。何処に行ったかは不明ですが、遺跡の誘導機能が届く場所に居るのは確かなようです」
近いとみるか遠いとみるか、微妙な場所だな。何せ次元を隔ててやがる。しかも、あっちに限ってはその隔たりをひょいと超えてくると来た。
…逃げた、というのはどういう事なんだ?
あの状況であの力の波動。ホロウの鬼千切や俺の投石で被害を与えられていたとは言え、あのまま戦っていればまず間違いなく大打撃、下手をすると里ごと全滅だった筈。
結界が保てているのが不思議なくらいだったからな。
「ええ。現に樒や橘花、千歳は体力を使い果たし、3人交代で辛うじて結界を維持できている状況です。正直な話、見た目…つまりは
隙を見せないように、形だけの結界張ってるのか。それだけなら神垣の巫女でなくても出来るって事ね。
…しかし、そこまで消耗していたなら、猶更奴らが逃げる意味が分からん。
「…これも博士の言ですが…脅威を感じて退いたのではなく、予定通りにいかなかったから退いたのだ、と」
…よく分からん。
「我々が追うイヅチカナタに限った事なのかは分かりませんが…どうもあの2種の鬼は、他の鬼とは違う性質を持つようです。まるで、人から躾けられた獣のようだと」
…………躾け、ね。
「誰が躾けたのか、どうやったらそんな事が出来るのかは分かりませんが…博士が言うには、『安全装置』が働いたのだそうです。何か重大な…そう、例えば重く大きく、爆発する危険がある荷物を運搬して手渡ししていたとしましょう。しかし、その途中で予期せぬ事が発生しました。梱包が解けたか、運び手の草履が切れたか、何でもいいです。そんな時にまずするべき事はなんですか?」
そりゃ、安全確保でしょ。荷物は地面に置いて、爆発に備えて距離をとって……って、ああ、そういう事か。
奴らは因果の受け渡しをしようとしていたが、突然予期しない被害を受けた。例え体力的に余裕があったとしても、その状況で強引に続けるのは何が起こるかわかったもんじゃない。だから、まずは離れて落ち着くまで様子を見る事…。
少なくとも、奴らを躾けた誰かさんはそう考えた訳だ。
まぁ、考えられん話じゃないよな。あんなとんでもない力を捻りだす技術があるなら、有事に備えての安全装置くらい10個20個付けとるわ。
「あくまで博士の言が正しければ、の話ですが。とは言え、私も奴らが撤退したのではなく、離れて様子を見ていると考えるのは賛成です。…あまり喜ばしい話ではありませんが」
…そうだな。クサレイヅチから因果を受け取った途端に溢れ出した、あのトキワノオロチの力…。ありゃちょっとやそっとじゃ抵抗できん。国を亡ぼす程の力と言うのは誇張ではなかったようだ。
少し整理しよう。
クサレイヅチとトキワノオロチは、人工…少なくとも、誰かに何かしらの加工を施されて産まれた鬼である。
奴らは遂になっている生物兵器で、クサレイヅチは因果と言う燃料を集め、それを消費してトキワノオロチは真価を発揮する。
ただしその扱いには慎重を要しているらしく(その割には、作った国はトキワノオロチに滅ぼされたっぽいが)、アクシデントが発生した時には供給作業を一時中断し、距離を置く。
…で、また時間を置いてから供給作業、と。
うーん、トキワノオロチはともかく、クサレイヅチについては以前から色々考察してたんだけどな…。色々と矛盾が生じるが、そもそもその考察だって何処まで正しいかすら分からなかった。
あんまり気にするような事でもないのか…?
それとも、クサレイヅチって特性上、設定が後からゴタゴタついてるだけなのか? 奴は因果を喰らう…正しくは集める鬼。色々な因果を吸収した結果、無駄で矛盾した設定が後から後から付け足されていって、何が真実かすら…。
「ところで、一つ聞きたい事があります。私と共に、『キカヌキの里で』戦った時の事を覚えていますか」
うん? キカヌキって…ああ、堅悟さんのあの里な。
共に戦ったって言っても、主に人間の足の引っ張り合いが相手だったっけどな。
堅悟さんには世話になったが、あんだけ排他的な里でいつまでも留まろうとは思えんよ。
鬼を斬れば斬るだけ、恐ろしい物を見る目で見られちゃな。
当面の敵は片付けたんだし、後はあっちで何とかしてもらうしかない。
まぁ、堅悟さんがヤバイとか、助けてほしいとかあるなら、また色々やるのはいいけどさ。
あの時の事がどうかしたのか?
「…成程、そういう答えになりますか」
だから何よ? 気になる事があるなら、話してくれなきゃわからんよ。
特にホロウは境遇がややこしい上に、頭の中がかなり天然だからな。
「芯から色狂いのあなたに言われたくありません。自覚が無いようなので言いますが、あなたは『その記憶を今まで失っていました』。つい先日まで、こうして私と出会った繰り返しは何度目だと思っていましたか?」
そりゃ二度目………え?
…違う、キカヌキの里で再会した。人と出会う気になれずに荒野を彷徨っている時に出会った。色々な事を放り出して自棄になっている時に銃撃を受けた。
ウタカタの里で再会した事もある。クサレイヅチを追いかけている途中に、奴の巣でバッタリ会った事さえあった。
出会わない繰り返しの方がずっと多かったのは確かだが、それでも何度も巡り合った。
にも関わらず、少なくとも俺は昨日…いや一昨日まで、「ホロウと会ったのはこれで2度目」と何の違和感もなく考えていた。
そして、それが変わっている事にまるで気付いていなかった。
「奪われた因果が戻って来た、と言う事でしょう。私も昨日は混乱しました。イヅチカナタから、奪われた因果を取り戻すなど考えた事すらありません」
そうか…。俺は、ある意味ずっと考えてたかな。因果に限らず、千歳や俺の子を取り戻すって考えてたが…それが可能なら、確かに奪われた記憶だって帰ってきてもおかしくない。
今まで何度も記憶を奪い取られているのは予想されていた事だし、そこまで不思議な事じゃないか。
「あの時、イヅチカナタからトキワノオロチに因果の受け渡しを阻止しましたが、恐らくそれでしょう。行き場の無くなった因果が、元のあるべき場所に戻って来たという事です。確認できてはいませんが、恐らくこの里に居る何人かにも同様の現象が起こっているでしょう」
うへぇ…。地雷とか爆弾なんて範疇じゃ納まらないんだが。俺の今までの人間関係的に考えて。
何せ、ホロウに指摘されるまで俺は自分の記憶にまるで違和感を覚えていなかった。そういう事があった、ということも、それが何も意識せずに思い出せるという事も。
今までの覚えていない繰り返しの中では、自棄になって橘花を攫い、里を滅ぼすような事をやらかした事もあった。誰にどう憎まれていても不思議ではない。
厄介なのは、それを確かめる事すらできないという事。下手に記憶を刺激すれば、それが切っ掛けになって余計な事を思い出させてしまうだろう。
おまけに、自分の中でもよみがえった記憶が事実なのか妄想なのか区別がつかない。
忘れていた前ループについてホロウと情報のすり合わせをしてみたが、「こんな事もありました」…え、ナニソレ身に覚えが無い。あんな事もあったよね?「…確かにありましたが、その真相はこうでした」…それはホロウがこの部分を知らないからそう見えているのでは。「それを言ったら、そこのソレをあなたも知らないでしょう」そういえばあの時ってこんな事なかったっけ。「いえ、それはありませんでした。冗談で似たような事を言っていたのは覚えていますが、それを事実と勘違いしているのでは」。
…一事が万事この調子だ。因果が全て戻ってきている訳でもなく、元より同じ事件に対しても統一した見解が出ていた訳でもない。思い出した情報と、奪われたままの因果と、こうだろうという憶測や思い込みと、間違った記憶、さも現実にあったかのように沸いて来る妄想とと…。
とにかく記憶がゴチャゴチャになっていて、どの記憶がどれなのか分からない。
「率直に言って自業自得の極みですが、それでイヅチカナタ討伐に支障がでても困り物です。白を切るのが一番いいでしょうね。幸い、今回の記憶が上書きされるような事にはなっていません。私のように、あなたが『繰り返している』事を理解している人でもなければ、恐ろしく現実味のある妄想や白昼夢としか捉えられないでしょう」
……その白昼夢の中で、俺が繰り返しについて語っていたら?
「それこそどうしようもありません。単なる夢の中のこじつけと受け取るか、それが真実だと判断するかは相手次第です」
…とりあえず、毒見と腹に雑誌は基本だな…。
それにしても、妙な気分だ。因果を奪い返す、記憶が戻ってくるというくらいだし、洪水のように失われた記憶が押し寄せてくるのかと思ったら、言われないと気付かないし、言われても「そんな事もあったな」って感じでしか思い出せない。そーいや、目を覚ますまでに混沌とした夢を見ていたような気がするが、案外あれがその記憶の濁流だったのだろうか? それにしては、明かに世界観が違ったり、こんな事起きる筈がないだろって光景もかなりあったりしたが。…いや、それも単に知らない世界に飛ばされた記憶だったり、複数の記憶が交じり合ったりしてたのか?
ついでに言えば、戻って来た記憶も虫食いだらけみたいだ。
ホロウと出会った一部の事は思い出せたが、その前後がどうなってるのか今一つはっきしりない。
「まだ奪い返せていない、と言う事でしょう。ひょっとしたら、既に一部は消費されてしまい、永遠に戻る事はないかもしれません」
…むかつく話だ。やっぱクサレイヅチは(PI----)しないと気が済まん。
「…今、何か妙な音が」
なんだ、発禁音でも聞こえたのか。口に出してはいけない事を言葉にしてしまった場合やあまりにもアレすぎる言葉を打ち消す、世界の意志みたいなものだ。まぁ出鱈目だが。
「………ふむ…」
発禁音の冗談を真に受けた訳でもないだろうが、ホロウは何やら考え込んで立ち上がった。
なんだ、どっか行くのか。
「ええ。イヅチカナタの再来に備えなければいけません。あなたが目を覚ましたという事は他の方々にも伝えておくので、後日大和のお頭の元まで出頭しなさい」
出頭って、自首する犯罪者じゃあるまいし……いや、戻った記憶次第では、そうなってもおかしくないのか。
誰からいつどんな怨みを買ってるか分からなくなってるって、とんでもねー事になってきたな…。
こりゃ、なるべく里人との接触は避けた方がいいかもしれない。クサレイヅチはウタカタの里近辺で遭遇する事が多いから、俺も大抵この里にやってきていた。つまり、それだけ爆弾をこさえた可能性が高い。
うちの子達だって、いつのどんな記憶が残ってるか分かったもんじゃないが、皆はずっと封印されてた訳だし、今までのループで俺と関わってる可能性はまだ低い。
はぁ…。もともと自分が爆弾みたいなものって言われれても反論できないのは自覚してたが、まさか里が一つ丸ごと火薬庫同然になるとは…。
最低でも、うちの子達との抗争が起こる事は避けなきゃならん。最悪、里から離れる事も考えておくべきか…。
ったく、ようやくクサレイヅチに追いついたと思ったら、妙なところから火種が出てきやがる。毎度毎度のパターンだが、これまた失敗のもとになる流れかなぁ…。
…いかん、ちょっとブルーになってきた。うちの子達と交流して癒されよう。どっちにしろ、様子見しておかないとならんしな。
これにて年始の連続投稿は終了となります。
次は7日の17時の予定です。
改めて、今年もよろしくお願いいたします。