※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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ふと気が付くと、短めですが2~3話分くらいの書き溜めが出来上がっていました。
ただし10日以上過ぎている。
そして話が殆ど進んでない。
でも、ちょっとは調子が戻って来た…かな?


第606話

 

 

 

 

 里に帰還したところ、既に結界は縮小されていた。

 てっきり、結界の中に留まれなかった人達が、儀式場の周囲に屯していると思っていたのだが…逆に、警備の人すらいなかった。

 まさか全滅!?と思いきや、あちこちから人の気配はする。…既に因果簒奪の影響が出始めているようだが、今のところ死者や、互いに争う気配はないようだ。

 あと、何故か民家の外に、包丁やらハサミやら、刃物が一杯放置してあった。

 

 儀式場に向かうと、結界の内側で周囲を警戒していた真鶴と鉢合わせした。

 

 

 よう、真鶴。お前も結界内に残ったか。

 

 

「ああ、戦力としてな。…あちら側では、私達は結界の外だったんだがなぁ…」

 

 

 状況が状況だから、とボヤく真鶴。妙な居心地の悪さがあるらしい。

 戦力扱いされてるって事は、どっちにしろクサレイヅチへのカチコミ隊にカウントされてる。死地に向かうのは変わらないんだけどな。

 

 で、皆はどうしてるんだ? どうにも、里のあちこちに散らばってるようだが…。

 

 

「結界の中に居られないのなら、せめて家の中に籠るそうだ。まぁ、鬼が襲ってきたとして、野晒か建物の中かで言えば、建物の中の方がまだいいだろうさ。後は……本当にやっているのかは知らんが、互いに縛り合ったり監禁したりするそうだ」

 

 

 

 

 

 

 ……What’s?

 

 

「外来語は分からん。…いや言いたい事は分からんでもないが。縛り合ったり、監禁したり、だ」

 

 

 

 …何でいきなりそうなった? 里人全員、SMに目覚めた? それともメンシス学派化? 里が獣狩りの夜に包まれてしまう。

 

 

「託宣の話は聞いたな。巫女の予言に、人が互いに争う場面があったそうじゃないか。ならば、争うに争えない状況にしてしまえばいい…と言う理屈で、誰かを害そうにも身動きできない状況にしたそうだ」

 

 

 誰も居ない状況に、物理的に閉じ込めてしまえってか。監禁(合意)であったとは…。

 後から解放されなかったら、飢え死にコースやん…。

 ついでに、家の外に放置してあった刃物その他は、武器になりそうな物を極力遠ざけようとしたからだそうな。まぁ道具なんて大体のものは鈍器に出来るから、悪足掻きと言ってしまえばそれまでだが。

 

 

「とりあえず、里の事はいい。誰かが監禁から抜け出して暴れ出すようなら、我々が対処しよう。それより偵察に行ってきたのだろう。成果はあったか」

 

 

 ああ。…大和のお頭と博士、茅場は何処だ? 話しておかなきゃならん。

 …にしても、真鶴も災難だな。

 元はと言えば、異界浄化の方法を知る為にこの里まで来たってのに、博士にこき使われるし、何度も何度も大戦に巻き込まれるし。

 

 

「…ふっ、確かにな。だが悪い事ばかりではないさ。よい友人も得られたし、それ以上に協力者が出来た。我々サムライは、マホロバの里では立場が弱いからな。大きな組織と繋がりを持てるのは有難い。異界浄化の方法に関しても、無収穫と言う訳ではないよ。…まぁ、この戦いが終わったら、一度戻るのはありかもな」

 

 

 …そうかい。納得してるんだったら、それに越した事はない。

 だが死亡フラグを立てないように。

 

 

 

 

 

 

 

 儀式場の中は、静かに大騒ぎだった。

 あれだよ、ゆっくり急げを全員にやらせたような感じ。

 確かに静かは静かだ。互いの邪魔にならないよう、静かに戦支度を整えている。だが人口密度が非常に高いんで、何もしなくてもざわめきが生じるし、何よりもこれからの過酷な戦いに向け、戦意や僅かな恐怖が漏れ出している。

 

 相手も相手、状況が状況だからな。気負うのも無理はない。

 立て続けの大戦なだけでなく、本来なら守るべき里人達を差し置いて結界の中に居る、という負い目も感じているんだろう。

 

 だからこそ、猶更勝たねばならない。力を示さなければ面目が立たない。

 …んだけど、博士達の予測によると、それも難しいんだよねぇ…。

 

 

 持ち帰ってきた情報を、大和のお頭や頭脳派軍団に話したところ、物凄く苦い顔をされた。

 そりゃそうだ、ただでさえ厄介な相手が、もっとワケワカメな状態になっていってるんだから。鬼の生態が謎だからって、何でもやっていい訳じゃねーぞ。だがそれを俺に言われても困る。俺は見た事を伝えているだけだ。文句があるなら、刃でクサレイヅチとトキワノオロチに直接届けてほしい。

 

 

「以前から推測はしていたが…やはりか」

 

「ああ。イヅチカナタ…何と羨ましい…!」

 

「違う」

 

 

 おい茅場、クサレイヅチが羨ましいって何じゃ。奴と同じように俺に斬られたいって事か? …いかん、俺もイラついてるな。ムカつく軽口だが、ここまでキレる必要もなかった。

 で、博士、何がやはりだって?

 

 

「お前の言うクサレイヅチは、イヅチカナタの中でも特別製だと言う事だ。お前から因果を散々吸い取った為ではなく、元からな。性能自体が、他のイヅチカナタとは一線を画していたんだろう」

 

「ふむ…。他のイヅチカナタからして、そもそも資料がないから基準が分からんが…何か分かった事があるのか」

 

「うむ。このイヅチカナタの能力は…いや、イヅチカナタ単体なのか、トキワノオロチと交じり合う事によって生じた能力なのかは分からんが…」

 

「奴が特別製だと言うなら、そこは一先ず考えなくてもよかろう。同じ能力を得る個体が出る可能性はあるが、相当な希少種と見た」

 

「…それもそうか。話が逸れたが、奴の能力は…」

 

 

 

 

 

 能力は…?

 

 博士は言い淀んだ。もったい付けていると言うよりは、口にするのも忌々しいと言わんばかり。

 代わりに言おうとしたのか、口を開こうとした茅場を制し、改めて声を出す。

 

 

 

「奴の能力は、因果の『押し付け』だ。因と果を、切るも結ぶも自由自在と言う訳さ。…生物兵器の化け物が、随分と思い上がったものだ」

 

「押し付け…? 簒奪は因果を奪う事。そうなったら、周囲の事が認識できなくなったり、過去にあった事が無かった事になってしまうのだったな。因果を押し付けられたら……どうなる?」

 

「逆になるでしょうな。かつて、何処かの誰かから奪った因果…例えば全くの他人の憎悪を植え付けられたり、負ってもいない傷によって死に至るなど当たり前。無機物に生物の因果を押し付けたら…存在自体が変わってしまいかねませんな」

 

 

 茅場、それってつまり…俺が見たアレか。そこらの砂とかが、形を変えてトキワノオロチの一部になっていったのは、そういう理屈って事か。

 

 

「恐らくは。下手をすると、因果の押し付けで未来まで決められてしまう可能性すらある」

 

 

 いやそこまで………有り得る!

 と言うか、今までの俺が正にそれをやられていたっぽいぞ。今まで何度も無茶苦茶な横槍で奴を取り逃がしてきた。ホロウも言っていたが、それは俺の周りにそういう因果が漂っているからだと…。

 

 

「フン、それに気付かず追い続け、いいようにあしらわれてきた訳だ。間抜けな話だな」

 

 

 うっせい。知っていたとしてもやる事は変わらんわ。奴は仕留める。千歳達は解放する。無理だろうが負けが決まってようが、これは変わらん。

 出し抜こうにも奴の情報は集めなきゃならんし、何度かの遭遇は下地作りの為と割り切っとったわい。…全部忘れてたけど。

 

 が、今回は情報収集だのなんだのは言わん。確実にこの戦いで仕留める。

 

 

「意気込みは結構だが、既にお前は因果を押し付けられているのだろう。負けの因果が確定しているなら、お前は近付かせる事はできんぞ」

 

 

 止められても行く。手段を被害を問わずに行く。

 悪いが大和のお頭、こればっかりはどうなろうと譲る事は無い。

 

 

「貴様がそうやって無策に突っ込むから、いつもいつも取り逃がしていたのではないか?」

 

 

 それでも行く。

 

 

「ほう…」

 

「大和のお頭、お待ちください。止める必要はありません」

 

 

 大和のお頭の空気が変わりかけた時、間に入って来たのはホロウだった。

 本気で大和のお頭を張り倒して傀儡にしてでも向かうつもりだったんだが…ここはホロウに任せてみるか。何か考えがあるようだし。

 

 

「どういう事だ、ホロウ」

 

「彼にまとわりつく因果については既に私も気付いていました。ですので、博士と協力してそれを無効化する手段を整えています」

 

「なに? …本当か、博士、茅場」

 

 

 こっちも初耳なんだが…いや黙っておこう。

 しかし、その因果について気付いてからまだ数日も経ってない…いや、それは俺がホロウから告げられたのが数日前で、ホロウはもうちょっと前から気付いてたんだっけ。

 それにしたって、半月も経ってない筈だが…。

 

 

「事実だ。正直、私としてはどう考えても無理と言うか話にならんだろうと思っていたのだが、博士が『いけるな』と乗ってしまってな…」

 

「こればかりは茅場には分からんから、そう考えるのも無理はない。まともに考えていれば、私も銃弾で返答しているところだ。……さて、これだ」

 

 

 

 博士が取り出したのは…………な、何と言うか………PSVR?

 そこまでメカメカしくないんだけど、どう見てもヘッドセットの類なんですが…。

 

 なぁ博士、これ頭に被るもんだよな? 目が見えない状態でも戦えない事は無いけど、流石にそんな面倒くさい事をやってられる状況じゃないんですが。

 それとも、内側が映像を映してくれるのか? クサレイヅチの姿だけ変えて。相手がクサレイヅチじゃないなら、負ける因果も無効化されるとか。

 

 

「たわけ、そんなひ弱な因果なら、ここまで面倒な事にはなっておらんわ。こんな形だが、これは鬼の手の一種だ」

 

「鬼の手…と言うと、こいつが時々出現させる、あの霊力の塊か? ………手?」

 

「元と原理がそうだった、というだけだ。これを使えば一回限り…効力は恐らく一戦分程度だろうが、押し付けられた因果を無効化できる。そこから先は貴様次第だ。…原理を聞きたいか?」

 

 

 是非とも。成功するにせよ失敗するにせよ、覚えておいて損は無いだろ。

 そもそも因果の無効化は、俺が奴と戦うには必須条件だ。何らかの失敗で壊されたりした時の為、ちょっとでもいいから理解しておきたい。

 

 

「殊勝な事だが、詳しく説明するだけの時間もない。ただ、これだけは忠告しておく。使うなら至近距離で使え。出来るなら、周囲に人は……最小限にするようにな」

 

「博士?」

 

「…私も多少は影響されていると言う事だ」

 

 

 

 ホロウと博士が、なんか意味深なやり取りをしている…。

 しかし、なるべく人が周囲に居ない状況で…か。周りにまで何らかの被害や影響が出るって事かな?

 

 

「ああ、曲がりなりにも因果を捻じ曲げる訳だからな。周囲にどこまで影響が出るか分からん。使い方は、敵の前でこれを被り、この突起を引き抜くだけだ」

 

 

 えらいお手軽だな…。簡単すぎて不安になってくるぞ。

 取り込んだ鬼の手ですら、使うのに強く詳細な想像が必要なんだが。

 

 

「その分、装置を起動させる手間はいらんだろう。特化させた分、不要な機能を削ればそれくらい手軽に出来る」

 

 

 そういうもんかね…。

 まぁ、ここまで来て疑う気はないけども。効果がないならないで、やる事は変わらないし。

 

 

「ふむ…対策があると言うなら、認めるのも吝かではないが…原理の説明すらないのではな…」

 

「ちっ……一言で言えば、負ける因果よりも多く、勝てる因果を集めるというだけだ。やっている事は普段の戦いと変わらん。負けに繋がる要素を排除している。ただ、それが目に見えにくい因果という存在であるだけだ。単なる願掛けだと思うか?」

 

「……いや、因果によって負けが決まっていると言われるよりは、余程分かりやすい話だ。元より、結果が最初から決まっているなど思いたくもない。道が敗北に繋がっているのなら、道のない場所を切り拓くのがモノノフの本懐というものだ」

 

 

 …納得してくれた、って事でいいのかな。

 流石の大和のお頭も、ここで人情を基準にはしないと思ってたが…。いや、最後までそのスタイルを貫けるなら、それは立派な道の一つだ。許してくれてるんだから、余計な事は言うべきじゃない。

 

 

 

 

 

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