※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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~前書きの戯言~

 「今の自分の知識と経験を引き継いで、子供の頃に戻れたらどうなるか」

 誰しも一度は考えた事がある空想だと思います。
 時守も何度考えたか、数える気にもなりません。
 ですが、都合のいい妄想だけを考えているならともかく、真剣に考えてみたら、常に結果は同じです。

 何も変わらない。

 変わる事があるとすれば、精々履歴書やテストの点数欄に書き込まれる数字と名前が少々違ってくる程度でしょう。
 何故なら、知識と経験を受け継いでいたとしても、現在の自分の性格も受け継がれるだろうからです。

 内向的で、排他的で、自分だけの世界に没頭したがる自分。
 方向性はどうあれ、逆行・転生したところで、それだけで自分を変える事ができないのは、誰でも同じだと思います。
 何せそれまでの自分の経験が、引き継がれた経験が、人格を形成する強固な土台となるのですから。

 スペックだけ引き継いで過去に戻っても、一日一日を何気なく暮らし、今までと、前回の自分と同様の行動しかしないでしょう。
 弁当のおかずを一方的に欲しがる同級生に「じゃあ代わりに何かくれよ」という事もせず、慕ってくれた下級生(未だに理由が分からない)に「それ、俺の名前と違うよ」と伝える事もせず、大嫌いだった鬱陶しい連中に文句を言う事もできず、親しい付き合いなんか全然無しに3(PI-)歳まで年を食い、ただただ黙っていた自分の人生をリピートするしか想像できません。
 もしも、そんな事は無い、自分なら前回とは全く違う生き方が出来ると思う方は、これからでも自分の人生を変えていけると、心底思っている方なんだと思います。

 このSSは、そんな思いから生まれました。
 異常な世界でも、異常な環境でも、何度も何度も繰り返しても、その度に違う行動をする。
 性格は変わっていなくても、前回とは確実に違う『何か』を生み出す。

 変わっていけるんだ、全然成長できてなかったとしても、以前とは違う行動ができるんだと思いたい。
 逆行、ループ、デスワープという特異な状況の中で変わっていけるのなら、今からでも自分も変わっていける。
 そう思いたいからこそ、毎回のループで彼には違う行動を取らせてきました。

 それを是と思うか非と思うかは、時守には分かりません。
 ですが、同じような事件・案件に差しかかった際、前回と違う対応が出来るのは確かです。
 ループが無くても、人生には何度も何度も似たような困難が降りかかってくる。
 その時に、前回よりも悔いの無い選択が出来るのであれば、逆行ややり直しなんかしなくても、人は変われるんだな、と考えるようになりました。
 




 上記は全て酔ってるときに後付で出てきた理由で、最初は単に討鬼伝極が出るのが嬉しかったから書き始めただけなんだけども。
 思えば遠くへきたもんだ。



第609話

 

 

 

 

 

     ハッ、また意識が涅槃に跳んでた。

 

 

 

 どうせなら体ごと涅槃にいってデスワープ出来りゃいいものを…。

 

 

 

 …ま、まぁ、ここまではアレだ、致命傷で済むんだ。

 当時は真剣に自殺を…今までのループの中で一度として選んだ事のない選択だったけど、それを今回ばかりは本気で考えた。

 

 だが、そんな致命傷を吹っ飛ばしてしまう程衝撃的な事があったのだ。

 

 

 

 原型をとどめない程にわからせ…もとい、(主にピストンの衝撃で)叩き潰されたムスヒホトキの遺体の中、得体の知れない体液に塗れて、彼女は倒れていた。

 ああ、見た瞬間呼吸が止まったよ。ずっと追いかけ続けていたんだから。

 

 本当に現実なのかと疑問に思うよりも先に、彼女に駆け寄っていた。

 黒く長い髪、ほっそりとした手足、体を覆う白い服…は体液で極彩色になっていた。体の半分が大きく変わっているが、見間違える筈もない。

 

 

 

 

 千歳だ。

 鬼となっていた体半分が人間のものに戻っているが、間違いなく千歳だ。

 

 

 

 千歳だ。千歳、起きろ、起きてくれ。目を覚ませ! クサレイヅチから解放されたんだよ! 起きろよ!

 

 

 

 

 …そんな感じの事を喚き散らしていたと思う。

 例え、目の前にいる千歳が本物だったとしても、間に合わなかったのではないか、目を覚ます事はないんじゃないかという不安がある。ずっとクサレイヅチに取り込まれていたのだ。どんな影響があってもおかしくない。

 どれくらいの間喚き散らしていたのかは、自分でもよく分からない。ただ、周りを俺を遠巻きに見ていた連中も、気が付けば怪我人らしき人物に対処する為に近付いてきていた。

 那木が千歳を診断しようとし、他の者達は周囲に残敵が居ないか、何か異変がないか確認しようとしていたのだが…。

 

 

 千歳の瞼が、僅かに動いた。

 

 

 気が狂いそうな焦燥と歓喜と不安の中、千歳の瞼が開いていく。

 

 

「………………    …」

 

 

 まだ意識がぼんやりとしているのか、焦点の合わない目で俺を見上げて。

 

 

 それでも確かに、俺の名前を呼んでくれた。

 生きていた。目を覚ました。覚えていてくれた。

 

 感極まる、とはこういう心持だろうか。

 

 

 解放されたのは、千歳だけではない。

 いつの間にか空から降り注いでいる、無数の青く輝く光…これは因果の光だ。だが因果簒奪のように空に昇っていくのではない。叩き潰した鬼の中に蓄えられていたものが吹き上げられ、そして降り注いでいる。

 その中で、確かに感じる因果がある。

 

 

 フラウやセラブレスの子供達。まだ産まれてなかった赤ちゃん達の気配を、確かに、隣り合うように感じる。

 

 

 こんなに嬉しい事があっていいんだろうか。報われてくれたのだ。

 長い長い繰り返しを乗り越え、怨敵を討ち果たし、囚われの恋人を解放し、奪われた子供達を奪還して…。

 

 視界が歪むと思っていたら、ぼろぼろと涙が零れていた。それすら、抱き起こした千歳の胸元に水滴が落ちているのを見てようやく気付いたくらいだった。

 

 

 

「………      ……」

 

 

 もう一度、千歳が俺の名前を呼んでくれた。微かに、だけど確かに微笑んで。

 

 目の前に横たわるのが幻ではない事を実感したくて、震えながら、壊さないようにぎゅっと思い切り抱き着いた。

 半身の鬼化が解けた千歳の体は、健康的な10代の少女の体そのものだった。

 千歳も、まだ力があまり入らないのか、ぎこちない動きで抱き着き返してくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あのね わたし    イヅチカナタに つかまって て から    ずっと みてきたの」

 

 

 

 

 あの   

 

 

 

「わたし にきづいてから   ずっと たすけようと してきて くれたね」

 

 

 

    千歳さん

 

 

「  ありがとう  」

 

         抱きしめてくれるのは嬉しいのですが

 

 

「でもね」

 

              なぜ、背中越しに首を掴むのでしょうか

 

 

「許せない事もあるの」

 

 

 

 

 

「色んな女の人と、浮気しまくってるのは、いいよ。そうでもしないと、疲れて壊れちゃってたのは、イヅチカナタの中で見ていたから、分かるよ。許すよ」

 

 

 

   しかもこの感触は

 

 

「どうせ全部無かった事になるからって、悪い事をしちゃった事もあったね。それもいいよ。『私は』許すよ。無かった事になったんだから、これ以上どうこう言えるのは思い出した当事者だけだもの」

 

 

       また片腕が鬼になってませんか

 

 

「でもね」

 

 

 

  い、いや、この感じは鬼だけじゃなくて、アラガミの気配が……更にこの呼吸法は紛れもなく狩技・獣宿し…!

 ていうか、腕どころか全身が鬼に…! こ、これはまさに俺のアラガミモードと同じ…!

 

 

 

「絶対に許せない事が、一つあってね。思い出したみんなが口を揃えて言うだろうから、私が代表して言うね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達と交わってた時よりも、あの鬼を犯してた時の方が興奮してたのはどういう了見だーーーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 あ う゛ ぇ し ッ !!!!!

 

 

 

 音速を超えてすっとんできたパンチで、ぶっとばされてムスヒホトキの残骸に叩き付けられた。

 技を超える純粋なパゥワーとでも言わんばかりの超威力。

 

 再会早々に何でいきなりブン殴られなきゃならんのだろうか。いや、後から思えば、千歳はクサレイヅチに捕らわれてからも、奴の目…だか、吸収してくる因果だかを通じて俺がやってきた事を見てきたみたいだし、それを考えると殴られるどころか絶縁、下手すると処刑されても文句は言えないとは思うんだが。思い出した事だけでも浮気三昧に悪行三昧。何度再審を訴えても、問答無用で有罪判決になるだろう。

 でもあの時、千歳は『そうでもしないと疲れて壊れちゃった』と、許してはくれたしなぁ。…許されたからいいってもんじゃないが。

 

 

 

 

 そして更に混乱は続く。

 叩き付けられたムスヒホトキの残骸から、俺の体に押し出されるようにしてボコッと出てきたのが一人。

 

 

「ふぅ、ようやく外に出られたぞー。外の空気が美味しいなー。お腹がいっぱいにならないのが残念」

 

 

 聞き覚えのある、しかしいる筈のない声。

 まさかと思って振り向こうとしても、千歳のパンチのおかげで体が痺れて動かない。…かつてないダメージだぞマジで。それでも目玉だけでも動かし、声の主を確認しようとしたら、ひょいとばかりに持ち上げられた。

 両脇に手を突っ込まれ、人形を持ち上げるようにして対面させられる。

 

 ムスヒホトキの体液や肉がへばりついて、見るも無残に汚れてはいるものの、白い服と、それ以上に白い肌と髪を持つ彼女は、俺と目を合わせると嬉しそうに、ちょっとイタズラっぽく笑って見せた。

 

 

 

 

 ………シオ…?

 

 

「シオだぞー。農園で、アリサと一緒に3人暮らししてたシオだぞー。時々ツバキも一緒だったなー」

 

 

 なん、で…?

 

 

「イヅチカナタに捕まってた! 助けてくれてありがとなー!」

 

「イヅチカナタに捕らえられてたのは、私だけじゃないのよ。あなたの子供だって奪われて捕らえられてたんだし、他に居てもおかしくないじゃない」

 

 

 それは……そう、なの…か? そうなのかもしれんが、何か問題とするところが根本的に違っているような?

 

 色んな情報が一気に押し寄せてきていて、頭が混乱している。

 …と言うか、クサレイヅチを斬った……斬ってないけど、とにかく仕留めた為か、色々と思い出してきた。まだ戻ってなかったループの記憶が、雪崩のごとく押し寄せてくる。

 

 い、いや、それよりも今優先するべきは…。

 

 

「こうしてお話するのは初めてだなー。シオだぞー」

 

「千歳よ、よろしくね。お互い、他に誰か捕らえられているのは分かってたけど、話す事なんてできなかったものね」

 

「これからゆっくり話そうなー。でも、それよりまずは…」

 

 

 …あの、シオさん……なんだか手が物騒な形に変形しているのですが…。

 しかもこの感触、アラガミのものじゃない。千歳も同じような感じだが、アラガミ以外の何かが色々混じっている感じがする。

 

 

「このセッソー無しのカイショー無しに、みんなでオシオキだなー。丁度いい機会だなー。ここにいないアリサ達の分まで」

 

「そうね。いつもみんな、なぁなぁで誤魔化されたり、床の中で納得させられたりしてたけど、物事には限度があるって事を教えてあげるわ。色々と因果が戻ってきてるんだし、これもその一つって事で」

 

「そうだな、毎回毎回橘花を弄んでくれたようだしな。おまけに橘花と共謀して何度私を襲った事か」

 

「思えばかつての浮気の制裁も、直接下す前に死なれてしまいましたし」

 

「おねーちゃんはそこまで気にしてないけど、それはそれとして今回私に何もしてないってどういう事よ」

 

「私は今回が初めてでしたので特に言う事はありませんが、腹いせに丁度いいので参加します」

 

「皆が何を言っているのかよく分かんないけど、とりあえず若が悪いのは確かだわ」

 

「若様のする事に異論を挟もうとは思わないのですが、流石にこれは女としての矜持が傷ついています…」

 

「私も色々思い出したわ。前も助けられていたけど、その分やってくれたわねって思った事も何度あったか」

 

「その趣味、矯正してあげるわ…。あんたがそっちの方面に進むとか、頭痛くなってくる」

 

「悪い事言わないから、ここで報いを受けておきなさい。ここで無傷のままだと、後からもっと大きな報いが回ってくるわ」

 

「そういう趣味を否定はしませんが、当事者になると別の話極まりないです」

 

「ま、こんな僕でも、あんなのに比べられて下扱いされると、頭に来る程度には矜持があるみたいでね」

 

 

 俺を囲んで口々に、物騒な雰囲気で言葉を発する。

 シオ、千歳、桜花、那木、初穂、ホロウ、雪風、災禍、アサギ、きらら、明日奈、神夜、木綿季…包囲網はどんどん厚くなっていく。拳を握ったり、武器をとったりの違いはあるが、とりあえず言えるのはとにかく殺気立っている事。

 

 

 …体が動かん。そして逃げ場がない。 

 

 

 

 

 

 

すくいのてはないんですか

 

 

 

 

 …ないみたいですね。

 

 女性陣は個人的な感情で苛立っているのと、怪物相手に交合するモノノフの恥の変態を生かしておきたくないのと、女の敵を叩けそうだからとりあえず叩こうとしているの3種類。

 男性陣は、状況はよく分かってないようだが、ヤバイ雰囲気を察したのか距離を取って遠巻きに眺めている。危険な場所には近づかない。危険になったら走って逃げる。素晴らしい危険回避能力ですな。

 念仏唱えて笑ってる奴とか、女衒は地獄に落ちろとばかりに自分の武器を女性陣に貸そうとしている奴もいる。

 

 

 ………マジどうしよ。アラガミ化して耐えられるかな…。

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「「「

               

天誅!!!!!

                   

」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、気が付けば俺はどっかの河辺に流れ着いていた。

 いやーもう見事にボロボロだったわ…。

 

 何がどうなってそうなったのかは、俺もよく覚えてない。

 リンチは御免だとばかりに、動かない体に鞭打って必死に逃げたような気もするし、女の敵はタヒねとばかりに怒り狂う女衆に投げ捨てられたような気もする。誰かが俺を独占しようと掻っ攫った所に邪魔が入って乱闘、その余波で吹っ飛ばされたような気がしないでもない。

 まぁ、ボコられたのは間違いないよね。

 

 そもそもあの辺に川なんぞ無かったと思うんだが………うーん、どっかに移送して投げ捨てられたのか? しかし、あの権幕だとそんな悠長なことをしているとは思えんしなぁ。

 最初はデスワープしたのかと思ったんだけど、そういう訳でもなさそうだった。

 

 

 

 …まぁ、何にせよ、こうして生きている以上、死なないように動かなければならない………いや、正直言ってクサレイヅチ相手にあんな真似してしまった心の傷で、死んでしまいたい気分だったが…訳で。

 ただ、このまままっすぐうちの子達の元に戻るのも躊躇われた。

 とんでもねー場面を見せ付けてしまったバツの悪さもあるし、それをやっていた俺を見る目が……理解できない、恐ろしい怪物を見るような目が…。わけのわからんものを見る目を向けられるのは慣れてると思ってたんだが、身内から向けられるとまたダメージが違うなぁ…。今までも身内にもおかしなものを見る目で見られ続けていた? それは半ば意図してやってた事だから、また別の話。

 

 …何にせよ、目を覚ました河辺がどのあたりに位置するのかも分からず、とりあえずサバイバル生活していた訳よ。

 うちの子達にかけられていた暗示も、大分弱くなってきているからな。すぐに帰らなくても、揃って錯乱して全滅…なんて事にはならない筈だ。代わりに欲求不満になるかもしれないが、そこはタコ殴りにしてくれた意趣返しって事で。

 全く土地勘のない場所に来てしまったらしく、進めど進めど異様な地形ばかり。そのくせ瘴気が無いので異界ではない。

 人が暮らしている形跡さえろくに見当たらないと来た。

 

 

 …そうして、何ひとつ分からない土地で一からサバイバルを続け、今に至ると言う訳である。

 いやー、生活するのに苦労するレベルで秘境なのはまぁいいとして、少なく見積もって一か月以上彷徨い続けるハメになるとは思わなかった。

 

 マジで人が居ない。人が暮らしていた形跡がない。

 討鬼伝世界の殆どは異界に沈んでいるし、かつては残っていた建物や人の営みの後も、風化したり鬼に蹂躙されたりで無くなっているのはおかしくないんだが…ここまで何も無いとなぁ。

 

 加えて、生育している動植物が未知のものばかり。

 異界の産物と言ってしまえばそれまでだが、それにしては妙に生気が漲っているし、動物も……なんつーか、鬼特有の悪意を持ったデフォルメと言うか、生物としての形を歪めて尖らせたような雰囲気がない。何より、仕留めても瘴気となって消えていく事がない。…どっちかと言うと、単純に未知の生物に思えるくらいだ。

 

 なーんか……世界的なレベルで、とんでもない事起こってないか?

 

 

 

 

 

 …いや、まさかなぁ。クサレイヅチは犯……もとい叩き斬って、千歳達を解放し、俺の因縁にもケリはつけたけど、それだけだし。

 それで一体何が起こるって言うのかね。うん、俺の自意識過剰だね。

 

 つまらん事考えてないで、そろそろ本気でみんなの所に戻る事を考えよう。サバイバルは嫌いじゃないが、いい加減に落ち着いた状況で飯と風呂とセックスがしたい。

 ……いい加減、心の傷も癒えてきた…と思う。

 あと、俺が居ない隙を狙ってうちの子達に誰かがちょっかい出したら………キレそう。お構いなしであしらっただけでもキレそう。うちの子達に手ぇ出すな!

 

 

 …あー、でもウタカタに戻るとえらい事になりそうだよなー。

 具体的に大和のお頭の殺意が。俺もようやく記憶の整理がついてきたんだけど、その中では木綿ちゃんにまで手を出した事があったし。『木綿に手を出すな』はウタカタの里で公式に文書化されるくらいの掟なんだよな。

 それ以外にも、里を崩壊か、その一歩手前くらいにまで導いてしまった事も何度か…。ああ、思い返すと頭とか良心とかいろいろ痛い。

 

 

 

 

 

 その辺は帰ってから考えよう。とにもかくにも、現在地と地形を確認し、どっちに向かうか決めなければならない。

 地形が無茶苦茶すぎて、河辺水辺を辿るって手段も使えないのが痛い。

 こうなるともう、とにかくどっか高いところか…。今まで彷徨ってきた道の中で、幾つかあったな。ちょっと道を戻ってみますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて考えて、歩き続ける事数日。

 

 

 

 彼女達は唐突に現れた。

 

 

 

「やっと見つけたわ。この私から逃げようだなんて、相変わらず度胸だけはあるわね」

 

「教官先生! お久しぶり…久しぶり? なんだかよく分かりませんけど、無事でよかったです」

 

「ようやく追いつきましたね。まったく、あまり心配をかけないでください」

 

「確保対象を確認。護衛に移行します」

 

 

 お約束の4人パーティで、俺を見るなりいきなり襲い掛かって…いや敵意を持ってじゃないんだけど、とにかく抱き着きにと言うか、逃げられないように確保しようと組み付いてきた。

 俺としては、驚きと混乱で逃げるどころじゃなかったけども。

 

 

 ナターシャ。

 カノン。

 紅月。

 2B。

 

 

 ……え、ナニコレ? なんでこの4人が一緒にいるの?

 紅月まではギリギリ理解できるけど、他の3人はマジで何でここにいるの? 居られるの?

 

 ここ、討鬼伝世界だよね?

 ナターシャはMH世界のレジェンドラスタ、カノンは…まぁ、何だ、最後のループ…何故かGE2の時期から始まったループでは開拓民扱いされて会う時間も無かったっけ。

 紅月は俺とアレコレしていたループの記憶が戻って、捕まえに来たのか殴りに来たのかはともかくとして追いかけてきたと分かるけど……2Bに至っちゃマジで分からん。MH世界で見た、現実と微妙にクロスする夢で暫く一緒に過ごしたが、彼女の元の世界の立ち位置だってろくに分からない。

 

 

 

 混乱している間に、素早く簀巻きにされてしまった。

 

 

 

 

 

 誰が俺を運ぶかで一悶着あったものの、咄嗟の時でも手が塞がらない(重力制御で武器を振るうからね)2Bに担ぎ上げられて運ばれている。

 無表情を装っているが、すっごい嬉しそうなのが見え見えだ。随分と感情豊かになったものよ…。いつぞやの夢でも、最後の方は大体こんな感じだった気がするが。

 

 

 んで、結局どういう事なん?

 

 

 

「教官先生、ひょっとしたらと思ってましたけど……世間がどうなっているのか、全く知らないんですか?

 

 

 この一か月ほど、だーれも居ない天外魔境を一人でフラフラ歩き回ってたんでなぁ。

 真面目な話、ここが何処で、どういう経緯でここに居るのかもわからんのだ。最近はともかく、最初の頃は人と接する気になれずに、人が居ない方へ方へと進んでたし。

 

 

「道理で見つからない筈よ…。2B達の猟団の、かんしえーせー? が無ければ発見にどれだけかかった事か…」

 

 

 かんしえーせー…監視衛星!?

 いやいやいや、何でそんなものあんの!? そりゃ確かに、2Bから聞いた話なら、彼女の世界になら残ってるかもしれんけど!

 

 

「では、その辺りは私から。…ふふ、那木さんが居たら嬉々として説明しそうですね」

 

 

 ああうん、その辺は長くなるから辞めてくれると嬉しい。

 

 

「………索敵を続行中…」

 

 

 …なんか褒めるというか労ってほしそうな気配が。

 うん、2B、運んでくれて嬉しいよ。自由にしてくれたらもっと嬉しいけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 俺の運び方はともかくとして、紅月から聞いた話は衝撃的だった。この一か月の散策でおかしいおかしいとは思っていたが…まさかマジでそんな事になっているとは。

 一言で言えば、世界の合併?

 

 分かっているだけでも、MH世界、GE世界、討鬼伝世界の3つの世界が交じり合っているのだ。

 地形は地図を一から作り直さなければならない程にぐっちゃぐっちゃに変化しており、ちょっと探しただけでも聞いた事もないような国や土地、動植物があちこちに転がっているとか。夜空を見上げれば自重しろと言いたくなる数の星が瞬き(少なくともその一つは2B達の拠点である)、海を見れば渦巻竜巻シャークネード津波のオンパレード、大地を見渡せば見知らぬ土地、見知らぬ人々、見知らぬ生物に見知らぬ怪生物ときた。

 今まで俺が彷徨っていたのもその一部で、まだ全く人の手が入っていない秘境と考えられているそうだ。

 

 いや本当にどうしてそうなった。

 クサレイヅチを潰した事が原因か? しかし奴は確かに危険な鬼で因縁の相手ではあったが、そんな世界融合なんて自称を引き起こす切っ掛けになるとは思えんのだがなぁ…。

 

 

 

 で、どうなってるって?

 

 

 

「人と人の関係で言えば……今のところという前提がありますが、正直言って平和ですね。見知らぬ隣人が突如出現した時には相当に混乱しましたが、今では小康状態に落ち着いています。マホロバの里に至っては、以前より平穏なくらいですね。外様の方々の住居問題なども、一段落つきましたし」

 

 

 ええ…嘘だろぉ?

 切っ掛けは分からんが、世界が急激に変わったって事だろう? しかもそこには見知らぬ人が沢山居る。生活様式も文化も…まぁ、共通点はあるが、文字からして違う世界だぞ。

 そんなのがいきなり出現したら、すわ侵略者かと早合点して武器を持ってつっかかるのが人間って生き物だ。

 

 

「あんたの意見も尖り過ぎな気もするけど……今回に限っては、タイミングが良かった以上に、他2つの世界が限界まで追い詰められていたってのもあるでしょうね。人間が滅びる寸前まで追い詰められて、物資も殆ど無くなった世界よ。そこに豊富な自然がある世界が突然現れた。ここで国が『奪い取る』とか『高値で売りつける』とか考える前に、友好的な関係を結べたのは大きかったわ」

 

 

 …GE世界と討鬼伝世界を、MH世界の物資で援助してるって事か!

 成程、そりゃあ大人しくもなるわ。個人間での小競り合いはともかく、戦争なんざ絶対に仕掛けられんだろ。どう考えたって物量が違う。

 世界が入り混じってるみたいだから、その辺から物資を取り放題…なんて考えもあるかもしれんが、3つの世界の素材はとにかくそれぞれ癖が強いからな。物資があっても、使用の為のノウハウが無きゃ意味がない。

 

 

「同じ荒神細胞からしか攻撃を通せない荒神、生物とは思えない程に強力な生命力を宿すもんすたぁ、そして霊力を用いた攻撃でなければ効果が薄く、再生してしまう鬼…。それぞれの世界に居た外敵の対処法が必要でしたし、それらを融通し合う必要があったのも重要です。まぁ、国よりも先に、現場のモノノフ・ごっどいーたー・はんたーの皆さんが真っ先に意気投合したようですが」

 

「えらい人同志の話し合いが、早めにできたって聞いてます。…嘘か本当か、その中で教官先生のお話が凄く重要だったとも」

 

「普通なら嘘って思うんだけど、最優先捜索対象として指定された上に、私違まで派遣されたんだもの。あながち間違いって訳でもなさそうなのよね…。首脳会談でも話が分かるトップが全陣営揃い踏みしていたって話だし、正直言って何者かの意図を通り越して胡散臭ささえ感じるわ」

 

 

 うーん…よくもまぁ、そんな都合のいい話になったもんだなぁ…。俺の捜索に関してはともかくとして。

 とにかく、今は3世界+αがごちゃ混ぜになって、それでも平和と。

 

 

「アラガミと鬼とモンスターとよく分からないのの相手でてんやわんやだけどね」

 

 

 この辺には、よく分からないのしか居ないっぽいね。

 

 ところで…最初に聞いておくべきだったんだけど、みんなって記憶はどれくらいあんの? 揃って俺の事は思い出してるみたいだったけど、そもそも…なんつーか、いつの時期の皆なのか…。

 それに、うちの子達……っと、この言い方だとMH世界の猟団とか、GE世界のアイドルやGKNGとかも含まれそうだな…。ウタカタの里に居る筈の子達はどうなってる?

 

 

「繰り返しの記憶がどれくらいあるかは人それぞれね。基本的に、世界融合が起こった日に思い出しているようよ。私なら…そうね、あなたに分かりやすく言えば、あなたがまだ訓練所の訓練を受け始めた頃、かしら」

 

「私は、開拓地でアラガミと戦ってた頃です。調べてみたんですが、教官先生は月に行ってしまったみたいでしたね。それ以外の記憶もあるので混同しやすいですけど」

 

「黄昏月の肆拾漆日目でしたね。2Bさんは?」

 

「…記憶の欠損は認められていません。ですが、以前に訪れた世界を基準とするなら、ナターシャさんのいう日付になるかと」

 

 

 ふむふむ、MH世界は毎回のループ開始時、GE世界は月から変えてって来た日…つまり前回ループの始まりか。

 討鬼伝世界は、クサレイヅチを仕留めた世界戦の日付が続いていると。

 と言う事は、うちの子達もちゃんと封印から解放された状態でいる訳だな。

 

 

「ええ。…あなたを袋叩きにしたと言う事で、色々な所から厳しい視線を向けられましたが、事情を知ると『自業自得』となりましたよ」

 

 

 …あの、紅月さん、笑顔が怖いのですが。

 

 

「自業自得よ。こっちに来る前に会ってきたんだけど、パピとか凄い顔してたもの。またお母さんって呼んでくれたけど、母から奪う事も辞さない、覚悟を決めた女の顔だったわ…」

 

 

 お゛お゛う゛…。

 と、ところで結局、俺はどうしてここに居るんだろうね? そして、そんな状況でよく見つけられたな。

 

 

「露骨に話題を逸らすあたり、都合の悪い事から逃げようとする癖は変わってないんですね、教官先生。そういう所もステキですけど」

 

 

 …カノンって、こんなダメンズスキーだったっけ…? いや確かに修羅場になるかと思ったら欲望一直線に3Pに突入してくれたりと、割とアレなところもあったけど。

 

 

「私達も、らぶらびっつ隊からの伝聞でしか知りませんが…一通り貴方をしばき倒した後、突如地震が起こったそうです。マホロバの里でも…いえ、全国各地、それこそカノンさんやナターシャさんが居た場所でも大きな地震が起こったとか。今にして思えば、あれは世界融合による衝撃だったのでしょうね。凄まじい揺れだった割には、何故か被害は殆ど無かったようですが…」

 

「その揺れの中で、突如開いた空間の孔に吸い込まれてしまったそうよ。空間がどうの、世界がどうのはよく分からないけど、随分と狙いすましたような話だこと。なんと言ったかしら、イヅチ・高菜?が作る空間によく似ていたそうだから、まだ生きていて反撃しようとしたんじゃないかって騒ぎになったそうよ。特に千歳が」

 

 

 ああ、千歳ってクサレイヅチの孔に呑み込まれて時代を超えた挙句、体が鬼になったんだもんな。そりゃ慌てもするわ。

 で、当の俺は意識のないままその穴に呑み込まれて?

 

 

「単純に考えれば、この辺りのどこかに放り出されたのでしょう。そして目を覚ましたあなたは状況がどうなっているのかも把握できずに放浪、私達はあなたが呑み込まれた穴の解析を行って、どうにか当たりを付けて探しに来たのです」

 

 

 …空間の解析…って、どうやって? どの世界にも、そんな真似ができそうな技術は無かったと思うんだが。

 MH世界は時々謎の技術力を持っているが、基本的には原始的と言っていい。

 GE世界はアラガミ出現前には結構な化学文明を持っていたが、いわゆる現代社会的な範疇でしかなく、空間云々は机上の空論。

 討鬼伝世界は、オカルト技術とも言える技術が育っているが、解析云々は苦手で、個人の力に頼るところが多い。

 

 

「ええ、私達には出来ませんでした。強いて言うなら神垣の巫女の千里眼の術ですが、それを試す前に2Bさん達の組織が接触して来たんです。ね?」

 

「…はい。空間転移や、時空の歪みの解析は最近になって研究が始まりました。それを用いて、どのあたりに空間が繋がったのかを調べ、監視衛星により居場所を突き留めました。地形の問題で見失う事も何度もありましたが、今も監視は続いている筈です」

 

 

 都合のいい話もあったもんだなぁ…。というか今も見られてるのか。流石に衛星かの視線は分からんな…。

 ちなみに、何でそんな研究が始まった訳で?

 

 

「……猟団長の世界に移動する方法を探そうと、全部隊の希望で最優先事項として…」

 

 

 ほほう、つまり俺に会いたかったと。

 俺に限らず人間にも、かな…。あーもう、可愛いなぁこの子達は!

 

 

「2Bを可愛がるのは後にしてあげなさい。感情を持つ事は禁止されている、なんて言いながら内心では嬉しくて荒れ狂ってるんだから。この子、最初に私達レジェンドラスタに接触してきたのよね。空からいきなり妙な塊が落ちてきて、そこから出てくるものだから、最初は新手のモンスターかと思ったわ」

 

 

 うーん、この一か月くらいの間で随分な情勢の変化というか世界の改変があったんだな…。

 そんな中で、よく俺を探しに来れたもんだ。世界情勢は大混乱の真っただ中だろうに。

 

 

「あなたの事を覚えている人は、あなたが思っているよりずっと多かったと言う事ですよ。放置しておくと何をしでかすか分からない、どこか他の組織に確保される可能性がある、戦力として考えたら使わない手はない…。色々理由はありますが、各世界の重要人物と言える方々の中に、あなたと接点があった方が多く居て、口を揃えてあなたの重要性を訴えたのです。…その理由が、個人的な理由なのか、情勢的な理由なのかは微妙なところですが」

 

 

 心当たりが多すぎるのぅ、やらかした事も功績も含めて。

 ちなみに、人選の根拠は? 不満がある訳じゃないんだが、ハンター、ゴッドイーター、モノノフ、アンドロイドとご丁寧にバラけさせて…。

 戦い方も文化も考え方も何もかも違うんだから、下手に一緒に行動すると軋轢になったりしない?

 

 

「そういうのも確かにあるけど、あなたを捕まえるのが最優先って事で手を組んだわ」

 

「それもありますが、必要に駆られてですよ。世界が変わって以来、未知の鬼、荒神、もんすたぁが続々と発見されています。いつどこでどれに出くわすか分からないのです」

 

「アラガミはゴッドイーターの攻撃以外は効果が薄いですし、モンスターはとにかく頑丈で力強いからハンター並みの火力を撃ち込まないと倒れない、鬼に至っては霊力を使って正しい対処をしなければ何度でも再生します。遭遇した敵にに有効ない対処法がないと、途端に不利になりますから…。今はそれぞれ1人ずつが班を組んで動くのが基本なんです。残り1人は、出てくると思われる敵に合わせて変えますね。今回は、監視衛星から映像を受け取れる2Bさんになりましたけど」

 

「後はまぁ、消去法? 捕まえに…もとい迎えに行きたいって人は、あっちこっちに居たんだけどね。まず未開の秘境に踏み込む訳だから、サバイバル能力と戦闘能力は必須。これだけで8割は足切りよ」

 

「らぶらびっつ隊の皆様は、世界融合直前に袋叩きにしたのだから今回は譲れ…じゃなくて、会ったらその場でまた実力行使に及びかねないとして除外されました」

 

「私は開拓地に居たんですけど、隠密戦闘が評価されて抜擢されました。勿論、教官先生に会いに行こうと立候補もしましたけどね」

 

「立場がある人だと、そうそう動けない事もあったようです。猟団ストライカーの方々とか、団員で連絡を取り合ってはいますが集合できていない状態ですし、ごっどいーたーの方々は復興に駆り出されててんやわんや…。私は時期里長として期待されてはいますが、今はまだ一般モノノフの立場でしたので動けましたが」

 

 

 ほうほう。…ちなみに、真っ先に立候補してきそうなフラウとかは…? まさか刃傷沙汰にはなってないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

「妊婦を開拓地に送り出す訳にはいかないでしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 ほへ?

 

 

「に・ん・ぷ。心当たりがないとは言わせない…と言うか、心当たりしかないわよね? …奪われていたのを、奪い返したんでしょ?」

 

 

 …そりゃそうだ! そっかー、フラウが妊娠してんのかぁ……。あ、と言う事はセラブレスも?

 やっべ、これは愛に…もとい会いに行かないと!どのツラ下げてって言われても行かないと!

 

 

「それでも自分が行くってゴネたんだけどね、あの子…。もう暴れる暴れる。あんたが霊力の扱い方まで教えたもんだから、レジェンドラスタの中でも短期戦なら頭一つ突き抜けちゃってねぇ。酒場が一つ潰れたわ。…2Bのところに比べれば、まだマシだってのがね」

 

「マシ…だったんでしょうか? 何やら装備品を持ち出して、A2さんを初めとした方々と壮絶な空中戦を繰り広げたそうですが」

 

「マホロバの里からでも見えましたねぇ、夜空の中で幾つもの箒星と閃光が閃くのが」

 

「…最重要護衛対象に対し、最も確実に護衛が出来る者を選定する為です。…それと先程の話ですが、アラガミに関しては、少し性質が変わってきているようです」

 

 

 うん? 2B、どういう事だそりゃ? (内心を見通してニヤニヤしている。)

 

 

「ゴッドイーターからの攻撃しか通じない、という部分です。アラガミは徐々に変質しています。有機物・無機物問わず捕食する雑食性と、驚異的な進化速度はそのままですが、外傷を与える事が容易となっています」

 

 

 ふーん、それもまた興味深い話だ。

 アラガミは元々、限界に近くなってしまった世界全てを喰い尽し、生命を再分配する終末捕食の末端、星の意思による存在だった。

 世界が統合され、充分な資源(不必要なくらいに充分すぎる!)を得て世界が延命された事で、その役割を失ったんだろうか。

 

 そう考えると、3つの世界の…2Bの世界も含めると4つ、或いはこれまで見てきた夢の世界の統合にも色々と意味があるように思えてくる。

 討鬼伝世界、GE世界、2B達の世界は共に滅亡寸前だった。だが、そこにMH世界という生命力が過剰なまでに満ち溢れまくった世界が融合したら…。

 

 

 

 …融合っつーか、受け入れの方が正しいかな?

 肝っ玉母ちゃんが、生活苦で立ち行かなくなった一家を2つ、「困った時はお互い様だよ!」とか言いながら家に住まわせているよーな。

 

 

 

 

 

 

「さて、立ち話も何ですし、この未開の地でいつまでも貴方を捕縛しておくのも、それはそれで危険です。いったん戻るとしましょう」

 

「そうね。このあと貴方をどう“ケジメ”するかは各々の裁量に任せる事になるけど、ここでやる案件じゃないでしょう。殴ったり撃ったり斬ったり訴えたりしたい子は、それこそ数える気にもならないくらいいるんだから」

 

 

 ……ちなみに、その色々したい方々の割合はどれくらいで…?

 

 

「2B? アンドロイドとやらは、こういう統計の話は得意なのよね?」

 

「…データベースによると」

 

 

・許しはするけど気が済むまで殴る…80.9%

 

・ここまで来ると怒りより称賛を感じる…62.%

 

・自分から土下座しにくるまで一切関わらない…59.0%

 

・一回会ってから考える…45.4%

 

・一滴も残らず搾り取って、心底後悔するまで許さない…30.1%

 

・もっと気持ちよくしてくれるなら許す…26.2%

 

・あきれ果てて色々どうでもよくなった…19.5%

 

・絶縁…2%

 

・どれにも該当しない感情がある……99.98%

 

 

「…統計を合計すると、300%を超えるのはどうして?」

 

「一人で複数回答も可能な為です。パーセンテージは、アンケートを受けた方々のうち、どれだけがこの意見に賛同したかの意味です」

 

 

 

 うーむ……なんだかなぁ。いや、やらかした事を考えれば温情極まりないって事は分かるんだが。

 何にせよ、一人一人会いに行かなきゃならん。改めて絶縁されたり、毒とか叩き付けられてもそれはそれで仕方ないってもんだ。

 それを言ったら、まずは目の前の4人に対して詫び自殺でもしなくちゃならんが…。

 

 

「やめさない。自殺されても一文の得にもならないわ」

 

「そうです。どうせ会いに行ったら行ったで、何を言われても同じ対応になるでしょう。体で説得しにかかるに決まっています」

 

 

 紅月、それはちょっとひどくない? 俺だって嫌がる相手を無理矢理するのは…………ご、合意の上での遊びの範疇ならともかく、基本しないよ?

 

 

「……見知った相手と体、どこをどう触れれば屈服するのか分かり切っている雌が目の前に居て、口では嫌だと言いながらも知ってしまった肉欲を持て余し、拒絶の中に少しだけ期待が混じる。言葉巧みに唆して拒否感を薄れさせ、夜這いをかけて最後の抵抗を突き崩して、一晩かけて都合のいい女に染め上げる…」

 

 

 あっあっあっあっあっ、欲望が煩悩がリビドーが征服欲が! ナターシャちょっと止めてマジ止めて会いに行った相手が全部獲物にしか見えなくなっちゃう。

 

 

「教官先生、教官先生。そんな事より…まず私達に対してやらないといけない事があるでしょう? ひょっとして、気付いてません? 教官先生なら、見ただけで分かるって全員一致の見解だったんですけど。その為にもはやく拠点に戻りましょうよ」

 

 

 カ、カノン…教官先生ね、今ちょっと自分の中のオスとモラルが戦ってて色々とそれどころじゃなくて…。

 いや、話逸らした方が気が紛れるか。

 

 その、やるべき事って一体なんだ? 謝罪とか求婚とか、そっち系の話だろうか?

 

 

「まぁ、間違ってはいませんけど」

 

 

 

 俺の言葉を聞いた4人は顔を見合わせて、処置無しと言わんばかりのリアクション。

 感情を隠そうとしている2Bでさえ、あきれ果てたと言わんばかりに天を仰いでいる。

 

 なんだよぅ、自分だけが気付いてないとか、不安になってくるじゃないか。

 トドメ刺すならさっさと刺してくれよ…。そんな温情を請える立場かと言われるとそれまでだけど。

 

 

「仕方ないわね。これ以上ここでゴネられても面倒だし、さっさとヤる気出して拠点まで帰ってもらうとしましょ」

 

「そうですね。では、私達の体をよーく見てください」

 

「もう一つのヒントは、私達の記憶が戻ったのは何時なのか、ですよ」

 

「…私の体は義体ですが、改良も重ねてありますので…構造的には人と大きな違いはありません」

 

 

 か、体…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私達全員、まだ処女よ」

 

「心はあなたに散々躾けられたままですけどね」

 

「教官先生を思い浮かべると、まだ男の人を知らない体なのに、子宮が疼いちゃうんです…」

 

「人間に…猟団長に奉仕する事が、我々アンドロイドの悦びです…」

 

 

 

 

 

 

   だから    

する事は、きまっているでしょう?

 

 

 

 

 速攻で彼女達の拠点に連れ帰ってもらって、遠慮なくビーストモードで大暴れしました。

 

 

 うん、これぞ狩りの醍醐味だね! 逃げる獲物、向かってくる獲物、まだ気付いてない獲物を知略と技の限りを尽くして屈服させる。時に力及ばず追い回され、喰らい尽される。その間を綱渡りするスリル、興奮、高揚感。

 相手が女だろうがモンスターだろうが何だろうが、やり方が違うだけでそれは全く同じだった。

 

 ああ、全く困ったものだ。

 関係者各位に土下座行脚を始めるつもりだったのが、狩り行脚にしかならなくなってしまったじゃないか。

 

 詫びに行くんじゃなくて、狩りに、犯りにいく。

 結局、ループを脱出しようが何しようが、俺はそういう生き物に成り果ててしまってるって事なんだな。

 

 

 

 

 

 

 

~数か月ほど経過~

 

 

 

 

 まぁ、そんな感じで人間社会(定義が若干怪しいが)に舞い戻った俺は、なんやかや色々あった後に、全国行脚の旅に出ている。

 目的は勿論、色んな人に土下座&詫び割腹…と見せかけた女漁り。反省? してたんだけど、この煩悩には逆らえなかったよ。

 

 勿論、目的は女だけじゃない。何だかんだ言っても元はハンター、ゴッドイーター、モノノフである事に変わりはないのだ。

 世界が融合した事で、自然界もてんやわんやの生存競争、適応進化の嵐が始まっている。人間だってその中に組み込まれているのは言うまでもない。

 新種のモンスターが出現したり、進化の方向間違えてんじゃねーかってアラガミが出てきたり、どっから湧いて出たんだと小一時間ほど問い詰めたくなる鬼が目撃されたり、モンスターでもアラガミでも鬼でもない正体不明の生物が跋扈していたり、見た事も聞いた事もない国が少し離れた地域に出現していたり…。

 そういった、従来の技術だけでは対応が難しい揉め事の解決役を担う事となった。

 

 最初はMH世界のハンター組織、GE世界のフェンリル、討鬼伝世界の霊山、ついでに各世界の政治の間で、俺の扱いをどうするか喧々囂々の話し合い(拳は最後の武器で、それまでに恩や餌や情報や金やらで殴り合ったようだ)が行われていたのだが、結局各世界のトップとその側近から、『どう拘束しようとしても絶対に思い通りに動かないから、もう都合のいいように使って後は好きにさせようぜ』という意見が出され、実際にそうなってしまった。

 今の俺は、逸れ者みたいなものだ。

 各組織からのバックアップを受けることが出来る代わりに、国からの支援や庇護は無い。法に守られることがない代わりに、法を守る必要も無い…犯罪を犯したら処罰はされるけど。

 まー要するに、「もう面倒見切れん、悪い事しなければ何処でナニやってても構わないが、何かやらかしたら手段を問わず処分する」とされてしまった訳だね。

 そんな立場だから、基本的には未開の地を探索する任を受ける事になる。誰も居ない所なら、問題も起こせないだろうって魂胆だ。未開の地と言っても、人の生息地域からそう離れた場所じゃないけどね。何せ世界各地の地図を一から作り直さなければいけない状況だし。割と距離的には近いから、色々思い出した人達に会いに行くのも、そう支障はない。

 

 特例措置もいいところだが…まぁ、やってきた事がやってきた事だしな…。

 そしてこれからも色々やるからな。

 

 

 …いや、別に早速処分されそうな事をやらかしていくんじゃないんだ。

 ただ、やらなきゃいけない事が山積みになっているってだけで。

 俺の子を孕んでいる女達に会いに行って、女漁りに、あんな事をやらせてくれやがった博士とホロウへのお仕置き(分からせ)に、やらかしてきた土下座行脚に、まだ封印されたままの滅鬼隊面々の解放に、フロンティアで結成していた猟団に所属していた奴らの様子を見に行って、必要かどうかは知らんがGKNGにも顔を出して、忘れていたループや夢で得た能力の検証もして、その上で各組織からの使い走りもやって……数え上げればキリがない。

 

 

 ああもう、体が幾つあっても足りやしない! そして下半身も乾く暇がない。

 もう何人か会ってきましたが、口では色々と言いつつそれはもう愉しませてくださいました。ちょっと殴られたけど。

 

 

 

 

 まぁ、なんだ、色々と環境は激変したが、因縁にもケリをつけ、慕ってくれる子も沢山いて、そこそこ程度に命の危機(人からもモンスターからも)もあり、順風満帆な人生を送っています。

 今まで何かとトンデモない事に巻き込まれ続け、クサレイヅチに食い物にされ続けてもきたけど、これなら収支は大幅に黒字だね。あくまで今のところは、だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……でも、どうしても頭から離れない懸念が一つある。

 

 

 

 

 

 

 俺は本当に ル ー プ か ら 開 放 さ れ た ん だ ろ う か

 

 




展開が強引すぎると感じる方も多くいると思いますが、ご容赦くださいませ。
この終わり方は、大分前から決めていた事です。

融合後の世界での事や、登場人物達がどうなっているのかなど、説明しきれないことが山のようにありますが…例えば、虚海はイヅチカナタの呪いが解けて人間の体に戻っているとか、囚われていた千歳は色々な因果を取り込んで、主人公と同じハンター・ゴッドイーター・アラガミ・モノノフ・鬼の混合体状態になっているとか、そもそも千歳と虚海だけじゃなくシオが2人居る状態になってしまうとか、因果が戻ったタイミングの問題でフラウとセラブレスが処女懐胎した状態になっているとか…。

全て書いていたら、それこそまた半年くらい間が開いてしまいそうですので、断念させていただきました。


近日中に聞いてみたい事や疑問に思っている事のアンケートを、活動報告で行おうと思います。
それを盛り込んだ次話の裏話を投稿したら、狩りゲー世界転生輪は一区切りとさせていただきます。
これがまたかなり時間が空いてしまいそうですが、どうか気長にお待ちください。

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