※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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突発的に徹夜仕事の可能性が出てきたので、息抜きの為に投稿です。
業者さんの作業終了を待ってる時、感想読むのっていい気分転換になるのよね(チラッ

ま、事前にわかって出勤が遅くなったのが救いです。
何時ぞやなんて、17時に出勤して、業者さんの作業が長引いてそのまま朝8時コースだったし…。

ところで前回、外伝の執筆具合で投稿が早くなったり遅くなったりするかも?と書いたな。
アレはウソだ。
投稿してから2時間くらいで書きあがってしまった…。


第83話+外伝13

神無月リンドウ視点

 

 

 どーも、雨宮リンドウだ。

 ちょっとばかり腕利きな程度で、何処にでも居るゴッドイーターさ。

 強いて他人と違う点を上げるなら、男っけが全く見られない姉上殿より先に結婚しちまっていーのかなーと悩んでる点かね。

 ま、もう暫く気楽な生活したいんだがね。

 

 最近はまぁ、ゴッドイーターの仕事も段々しんどくなってきててなぁ…。

 支部長の事を嗅ぎまわってるのが悪いんだろうか。

 特務もこの頃じゃ、殺意を隠さないレベルになりつつある。

 まぁ、それを何食わぬ顔でこなして戻ってきて、支部長に内心「どやぁ…」って顔してやるのが最近のムーブだ。

 支部長が全然反応を見せないのがつまらないけどな。

 

 真面目な話、サクヤにも心配かけてっからなぁ…。

 引き際を見誤らないようにしないといかん。

 ドジって死んじまったら何にもならないし何もできないし、後を追っかけて首を突っ込みそうな奴まで居る。

 色々な意味で死ねねぇよ。

 

 

 さて、そんなこんなして支部長と水面下で腹ダンスしてるウチに、ロシアから新型使いから呼び寄せられた。

 適合率も高く、能力だって高いエリートだって話なんだが…大丈夫かね?

 

 支部長の息がかかってるんじゃないかって疑いを差し引いても、資料を見る限りじゃこのお嬢ちゃんはルーキーの域を出ていない。

 しかも、訓練開始当初から優秀な成績を収め続けた……言い換えれば、挫折を知らないタイプのルーキーだ。

 

 こう言っちゃなんだが、極東のアラガミは他の地域のアラガミとは明らかに違う。

 とにかく強いは群れてるは、相性が悪い筈のアラガミ同士でつるんで行動しているなんて日常茶飯事だ。

 コンゴウ堕天種と一緒にグボロ・グボロ堕天…ああ、赤い方な…が一緒にいたって珍しくもなんとも無い。

 氷のコンゴウと炎のグボロ・グボロとか、どう考えても一緒に居づらいのになぁ。

 

 まぁ、アラガミが何を考えてるかなんて、それこそ考えるだけ無駄な事だ。

 とにかく、極東のアラガミは行動から個体性能まで、アホみたいに高い。

 

 だから、他の地域でエースと呼ばれる奴が極東に派遣されてきて、そのままの感覚で戦って痛い目を見る、或いは見る事すらできなくなるなんて、それこそ日常茶飯事だ。

 俺の目の前で、目の届かないところで、何度も防いで、それ以上に同じ事が起きている。

 

 …あくまで資料から判断したら、だが…どう考えても負けん気絶頂と言うか生意気盛りというか、顔付きからしてツンケンしてるよなぁ…。

 こりゃ上からの物言いも、対等の目からの話も通じそうにない。

 好きにやらせておいて、上手くやったつもりの所を釈迦の掌の上だった、と思わせるのが一番いいな。

 「お前の行動なんぞお見通しだ」と思わせるのがコツだ。

 プライドが高くても真面目そうではあるし、上手いこと転がしてやれば、その内自分の力量にも気付くくらいの聡明さはありそうだ。

 

 まぁ、要するに暴れさせるだけ暴れさせて、疲れたところを仕留めるようなもんだ。

 暴れさせて被害はないのかって?

 

 無いな。

 何でも受け流してウヤムヤにするには定評があるんだよ。

 どんなに辛い事でも、どんなにヤバい場面でもな。

 

 

 

 

 まーそれはともかく、だ。

 折角の休みだってのに、小難しい事ばっかり考えてちゃ気が休まらん。

 ここは一つ、秘蔵の酒でも飲んでみるとしますかね。

 

 このサクヤと一緒に行ってみた、最近話題の農園で貰ったもんだ。

 この酒がまた安物なんだろうが、ビールとは違った味わいがある。

 ホピ酒って名前らしいんだが、このアルコールが強いのなんのって。

 決して美味いワケじゃないんだが、ビールばっかりってのも飽きるっちゃ飽きるからな。

 

 高級な酒としちゃ、黄金芋酒とか達人ビールなんてのもあると言ってたが、どんなシロモノなのかね?

 残念ながら、あそこの農園では作られてないそうだ(だったら何処で作ってるんだって話だが)。

 

 ま、無駄に高級な酒なんぞ飲んでも、安物に慣れた俺の舌じゃ大した味なんぞ分からんだろ。

 身の程にあった酒が一番って事さ。

 

 その分ツマミに力を入れるとするかね。

 

 

 

神無月リンドウ視点2日

 

 

 ロシアの新型使い事アリサは、まぁ予想した程度にはお転婆さんだった。

 つまるところ、想定の範囲内って事だな。

 実力もそこそこあるし、負けん気も強いが、緩急がついてないねぇ。

 勢い増せ若さ任せってトコだ。

 ちょいと矛先を逸らしてやれば、あっという間に失速する。

 

 害にならないタイミングで失速させてやらなきゃならんがな。

 

 ま、この分なら、アリサ自身が支部長の部下って事は無いだろう。

 立場的な意味じゃなくて、派閥的な意味でな。

 

 となると、胡散臭いのは主治医だっていうオオグルマとかいうオッサンか?

 一見すると、まぁちょいと太めの普通のオッサンだ。

 あれが医者の格好か?という疑問はあるが、衣装について考えるとキリがないからな。

 サクヤや姉上殿も含めて。

 

 そもそも、主治医ってナンだ。

 そりゃゴッドイーターにも医者は必要だ。

 極東にだって何人か居る。

 

 だが特定個人に対する医者は居ない。

 …新型使いのデータ取りも兼ねて、と言われれば納得もできる。

 実際、最初のゴッドイーターが誕生した頃は、当然のように先任の医者だって居たそうだ。

 

 が、それはたった一人じゃない。

 何人もの優秀な医師(或いは研究者)が、最初のゴッドイーターを…或いはモルモットを…あらゆる角度から診察し、サポートしていたそうだ。

 今となっては、それが基になったのか、ゴッドイーターの診察のノウハウも確率されているので、主治医が一人だけ居ても不思議ではない。

 

 ただ、あの支部長がわざわざロシアから呼び出したんだ。

 あの二人の内、どっちかは支部長と繋がりがある筈。

 アリサが無さそうだったら、消去法でオオグルマのオッサンになるんだが………さて、どんな奴なのやら。

 

 

 

 

 

 

 …うーん……一度直接会ってきたんだが……胡散臭いとか、目の光がどうのとか言う以前にな…。

 

 

 

 

 俺はこれでもそこそこ腕は立つ。

 

 修羅場もいくつかぬけてきた。

 

 そういう者だけに働く勘がある。

 

 その勘が言ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 こいつ もうすぐ 死ぬ

 

 

 

 て言うか、かつてないレベルで死相が見えている。

 頭の上にデスノボリがダース単位で見えそうなくらいに。

 手相とか占いとか全然分からないし信じてもいないが、「あ、こいつヤバイ」って思って、それが的中した事は何度もある。

 ヤバイのを凌げたか、手遅れだったかは別として、俺はこのカンを信頼している。

 

 だからって、物理的に目に見えそうなくらいに死相が出る事ないだろうに。

 ありゃ無理だ。

 昔、アラガミが近所に居なかった頃に世話になってた兄ちゃん…通称寺生まれのGさんでも無理だ。

 大喝一つでポルターガイストを鎮めた所を見た事があるが、多分それでも無理だ。

 ちなみにそのGさんは、今では最初のゴッドイーターとか呼ばれてる百田ゲンさんな訳だが。

 

 

 なんだコレ。

 俺が変な特殊能力にでも目覚めたのか?

 それともあのオッサンが、マジモノの死神にでも目をつけられてるんだろうか。

 

 

 むぅ……あの世界から呪われて拒絶されてるんじゃないかと疑うくらいの死臭はともかくとして、どうする?

 助けるべきか?

 

 俺としちゃ、人死にが起きるとわかって放置するなんて冗談じゃない。

 相手が支部長の部下であってもだ。

 こんなワケの分からない、救いの無い世界なんだ。

 敵かもしれないってだけで死んでもいいなんて考えてちゃ、残ってる希望だって摘み取ってしまうだろう。

 

 …暫く張り付いたほうがいいかもしれん。

 ここの所、性急に支部長を探りすぎてたのも確かだ。

 少しばかり大人しくして、クールダウン期間を置くのもいいかもしれない。

 

 あのオッサンが支部長と繋がってるってんなら、近くに居れば監視にもなるし、支部長との連携を邪魔する事もできるだろう。

 その時に何かが起こって、助けられればそれでよし。

 

 

 

 …助けられるかな…正直、俺程度じゃどうにもならん、それこそブッダにでも頼まなきゃどうにもならんレベルの死相のような気がする。

 一体何やったらあんなに呪われるんだ。

 前世で行いが悪かったのか?

 

 

 今回助けたって、ロクな死に方しない気がするぞ…。

 荒野に放り出したら、アラガミホイホイ扱いされるレベルで寄ってきそうな気がする。

 

 

 

 …そういやアラガミホイホイと言えば、あの農園の男が妙な事言ってたな。

 「え、ゴッドイーターの任務って、体力の続く限り連戦したり、道中に見つけた奴もついでに狩ったり、アラガミホイホイして乱入前提で戦うんじゃないのか?」っと。

 

 確かにそういう事もあるが、それは滅多にない、例えば緊急事態…群れのアラガミが押し寄せてきて、背後に通せば被害が出るような防衛戦でもなければ、まず無いぞ。

 日頃からそんな戦いばかりだったら、いくら極東のゴッドイーターでも保たない。

 そんな修羅道まっしぐらな奴居ないって。

 

 

 そういったら、農園の主は何故か頭から地面に突き刺さっていた。

 動きが見えずに、コマ落ちしたみたいに上下180度回転してたが、どうなってたんだろうか?

 

 その後、「極東のゴッドイーターってこんな奴なんだろ!?」って物凄い勢いでまくし立ててきたが、全部的外れだと言い切った。

 大体だな、アイツが言ってるように連戦する事自体がそうそう無いんだ。

 ゴッドイーターのノルマの問題もあるし、何よりも担当時間と担当区域が決められている。 

 無理に出撃してそれを乱せば、どれだけ周囲に影響が出るか。

 ゴッドイーター達の作戦だって不安要素が出るし、神機のメンテナンスだって予定以上に必要になる。

 

 

 

 

 今度は近くにあった棒に捕まって90度の角度を保ち、横にグルグル回り始めた。

 新体操の大車輪って奴だが、横にやるとは器用だな…しかも回転速度が滅茶苦茶速い。

 

 

 

 

 

 過剰に出撃する事も可能ではあるが…まぁ、確かに日に何度も出撃してれば、アイツが言ってたみたいな事にもなるかな。

 

 出撃回数が増えれば、予定外のアラガミが寄ってくる可能性だって高まる。

 あっちで暴れ、こっちで狩ってとやってれば、近場のアラガミだって殺気立って迎撃に来るし。

 全然違う条件のミッションを連続して受けていれば、オペレーターだって追いつけなくなるから、どれがターゲットのアラガミなのか分からなくなる事だってあった。

 そうなれば、目に付く相手を片っ端から葬るしかない。

 

 オペレーターの数と能力だって限られてるんだ。

 過剰に出撃し、他のチームの担当を奪い取れば、オペレーターは即興でそれに対応しなければならない。

 無理に出撃したって、あんまりいい事は無いもんだ。

 

 

 サクヤに言わせると、「必要以上に働きたくないだけでしょ」だけどな…それの何が悪い!

 人間可能な限り怠けたいもんだ!

 

 ………そう言ったら、農園の主は何か叫びながら何処かに走っていってしまった。

 カメンライダーがどうの、八つ当たりがどうの、今なら誰にも迷惑かけないとか聞こえたが……なんだったんだろうな。

 まぁ、帰ってきたら失礼な事を言った侘びとか言われて、あのホピ酒をもらえたから、別にいいんだが。

 

 

 

 

神無月サクヤ視点日

 

 

 橘サクヤよ。

 極東地域でゴッドイーターの衛生兵をやってるわ。

 最近はアラガミの活動が活発的になってきていて、衛生兵も大変なのよ。

 

 ホント、最近はおかしな事ばかりで、気が滅入ってくるわ。

 リンドウは何か危ない事に足を突っ込んでいるみたいだし、ゴッドイーター全体にも妙な噂が広がっている。

 極めつけにおかしかったのは、以前リンドウとデートに行った農園の人の奇行だったけど、アレは被害が出ないから別にいいわ。

 

 真面目な話、ゴッドイーターに広まっている噂…謎のアラガミ、マスク・ド・オウガ。

 これはゴッドイーター達の厭戦気分が元になって作り上げられた話ではないかと思っている。

 単なる見間違いにしては目撃情報が多いから、実在自体はしているんでしょう。

 でも、例え本当に別のアラガミから助けてくれるようなアラガミだったとしても、それで人間の味方だと思うのは早計もいいところ。

 

 アラガミは同士討ち、共食いする事だってあるし、何よりもその行動は予想ができない。

 一見生物が持つ本能に忠実に動いているように見えて、その行動原理は未だに解明されてない。

 人間に味方するような行動をとっていても、それは単なる偶然であったり、気紛れによるものであったりする。

 そんな事は、極東のゴッドイーターなら熟知している筈なのにね。

 

 ずっと激しい戦いが続いて、夢見たいな話にでも縋りたくなっているのかもしれない。

 ここのゴッドイーター達がそんなにヤワなメンタルだとは、到底思えないけども…。

 

 

 おかしな話と言えば、今度新型使いのゴッドイーター……アリサが来たというのもおかしな話かもね。

 極東は最前線だから、使えそうな人材が居れば引き抜いてくるのはおかしな事じゃない。

 でも、発見されたばかりで充分なデータも揃ってない、数も少ない新型使いを、殉職率が世界的に見てもトップクラスの極東に、わざわざ連れて来るかしら?

 フェンリルの性格なら、まずは比較的安全な所でデータを集めそうなものだけど。

 

 しかも、支部長が直接出向いて、ロシアから引き抜いてきた子。

 新型使いを強引に引き抜けば、ロシアとの関係に亀裂が入るかもしれないのに。

 そうまでして連れて来るに値する理由があるのか…それとも、亀裂が入らないように前々から手回ししていたのか。

 

 何れにせよ、間違いなく「ワケ有り」の子って事ね。

 本人がワケ有りなのか、それとも周囲の方なのかは分からないけど…扱いに注意って所かしら。

 とりあえず、同じ女性のゴッドイーターとして、何かと目をかけておきますか。

 

 …あと、私の直感が言っている。

 まず何よりも目をかけないといけないのは、彼女の部屋の方だと…。

 

 

 まぁ、ツンケンしていて他人を寄せ付けない…というより、ゴッドイーターとしての自分に全てを賭けようとしているみたいだしね。

 そうなると、ゴッドイーターの先輩としての言葉は素直に受け取りそうにない。

 全く違った方向から近付くのがいいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 ハァ…リンドウの私生活もいい加減だらしないけど、私ったらそういう子を世話したくなる性癖でもあるのかしら?

 到着三日目にして、アリサの部屋は混沌と化しつつあった。

 せめて服を床に放り出すのは止めなさい。

 洗濯しないと、辛い目を見るのは自分よ。

 特に極東の夏は蒸し暑いから、何時の間にやら服が汗臭くなっちゃうわ。

 

 ちょっと用事があってアリサの部屋を訪ねたんだけど、チラッと見えた部屋の中を見て、強行突入させてもらった。

 世話焼きと言うか一方的に押しかけた自覚はあるけど、流石にこれは同じ女として見ていられない。

 アリサも多少は自覚があったのか、迷惑そうな顔をしながらも(ちょっと怯えられているような気もしたけど、そんなに私は怖かっただろうか?)素直に従っていた。

 

 …これは、度々様子を見に来た方がよさそうね。

 暫く放っておいたら、また散らかってるのが目に見えるわ。

 

 

 私生活ではそんな感じのアリサだけど、ミッションでは確かに能力は高かった。

 連携能力を除いては、だけど。

 相手がまだあまり強くない部類だというのもあるけど、確かに新型使いというのは強力みたいね。

 近付けば剣、離れれば銃、そして盾。

 

 近距離攻撃、遠距離攻撃、防御を一人でこなす事によって、アラガミのどんな行動にも対処できる。

 勿論、相応の練度は求められるけどね。

 今までの神機使いは、剣使いなら近距離、銃使いなら遠距離を維持する事を求められた。

 それを達成できなければ即敗北…とはいかないまでも、非常に不利な間合いでの立ち回りを求められた。

 私だって、不意を撃たれて接近された時、ナイフ程度でもいいからアラガミに効く武器があれば、と何度思った事か。

 

 牽制程度でも、苦手な距離を克服する道具があるという事は、生存率を跳ね上げる切欠になるでしょう。

 

 

 

 …ただ、今の彼女の行動を見る限り、「仲間の生存率を上げる」事に繋がるかと言われるとね…。

 旧型使いなんか不要、と言わんばかりに突っ走るから。

 実際、リンドウも「旧型は旧型なりの仕事をしていればいいと思います」なんて言われたみたいだし。

 

 …ちょっとムキになって反論するみたいだけど、今ってその旧型使いが最大戦力なのよね。

 新型は強力かもしれないけど、必要な適合率が高すぎて数が揃わない。

 アラガミが数にモノを言わせて襲ってきたら、確実に対応しきれないもの。

 

 ま、しばらくはリンドウに任せておきましょう。

 私は私生活の方からサポートするから。

 こっちもこっちで、暫くはコウタの面倒をみたいといけないものね。

 

 

 

 

神無月サクヤ視点2日

 

 

 今日はリンドウが休暇…多分特務…なので、アリサと合同任務。

 コウタに対しては相変わらずの態度だけど、私がちょっと睨むとそれだけで怯んだ。

 私生活にアレコレ口を出した成果かしら。

 

 掃除しても掃除しても、翌日になると強盗に襲われたんじゃないかと思うくらい散らかるから、最近ちょっと態度が厳し目だったのよね…。

 と言うか本当に片付けなさい。

 虫が出るわよ、虫が。

 

 

 コウタとアリサの間は、よくも無く悪くもなく、と言ったところだろうか。

 コウヤが悪口に対して鈍くて助かったわ…。

 

 任務は特に支障なく進んだ。

 相手はシユウだったけど、コウタも腕を上げ、最近では慢心もしなくなっているし、3人がかりでならそんなに苦戦するような相手でもない。

 またアリサが突っ走ろうとしたけど、予め止めてたし。

 やれやれ…。

 

 

 

 まぁ、ミッション自体は問題なく終わったんだけどね。

 最後の最後で、ケチがついた。

 ヴァジュラとの遭遇。

 

 幸運と言うか不幸中の幸いと言うか、戦う事はなかったわ。

 満腹だったのか、ビルの上で顔から顔だけ出して、そのまま何処かに消えてしまった。

 仮に戦うとしても、コウタとアリサを連れて無事で済むとは思えないから、撤退戦になったでしょうけど…。

 

 それにしても、この辺りにヴァジュラが…。

 これは深刻な問題になりそうね。

 この辺りはまだ経験の浅いゴッドイーター達の練習場みたいな役割もあるから、あまり強すぎるアラガミはいなかった筈なのに。

 群れから逸れて一匹だけ迷い込んできたのか、それとも何かの理由でナワバリが変わって、このあたりに流れてきたのか…。

 

 何れにせよ、討伐の必要がありそうだ。

 

 

 

 そして、もう一つ気になったのが、アリサの反応だ。

 天狗になっていた新米ゴッドイーターが、強力なアラガミに突然出会い、威圧感で鼻っ柱を折られる事は珍しい事ではない。

 コウタだって冷や汗を流していたし、アリサもその類かと思ったのだけど……どうも様子がおかしかった。

 

 ヴァジュラが去った後も、へたり込んで息を荒げ、顔色が真っ青。

 どうにも反応が大きすぎる気がする。

 

 あれは……威圧感に心を折られたというより、トラウマに直面した表情ね。

 同じような表情を、何度か見た事がある。

 ゴッドイーターをやっていれば、死にかけるのも、何とか生き残っても心に傷を負って戦えなくなるのも珍しくない。

 

 ヴァジュラと何か因縁でもあるんだろうか?

 

 もしそうなると、今後のアリサの活動はかなり難しくなってくるわね。

 ヴァジュラは代表的な大型アラガミ。

 数も多いし、亜種だっている…いえ、ヴァジュラの方が亜種なのかしら?

 

 最低限、ヴァジュラを単騎討伐できるくらいの実力が無いと、極東でやっていくのは難しい。

 ……こう聞くと、極東のアラガミ出現率が異常と言われてるのがよく分かるわ…。

 

 繊細な問題ではあるけど、放っておく事もできない。

 とりあえずは調べて

 

 

 

 

 あら?

 

 

 

神無月雨宮ツバキ視点日

 

 

 雨宮ツバキだ。

 相変わらずの日常が続いている。

 つまりは地獄という奴だ。

 

 まぁ、地獄であっても、人間長く暮らせば慣れるものだ。

 トチ狂う奴の方が多いがな。

 

 それはそれとして、サクヤから相談を受けた。

 アリサの事についてだ。

 

 あまりにも単独行動が多すぎるから、再訓練コースで叩きなおしてくれ…という話かと思ったが、違うらしい。

 まぁ、そういった事の指導も、私ではなく上司…この場合はリンドウ…の役割だしな。

 

 そうではなく、アリサのプロフィールの事だった。

 先日ヴァジュラと遭遇した時(すでにその時点で問題だが)、アリサが過剰な程の反応を見せたらしい。

 こんなご時勢だ。

 アラガミに対し、トラウマや狂気的とすら言える恨みを持っている者など珍しくも無い。

 

 だが、それが支部長が引き抜いてきた新型使いとなると話は別だ。

 新型使いのデータは、常に収集され続ける。

 戦闘能力もそうだが、神機への適合によりメンタルに異常が出てないかも検査対象だ。

 

 また、どういった経歴を持っているのかも、ある程度調査される。

 ゴッドイーターになったはいいが、トラウマで全く戦えなかったり、指示を聞かない狂犬であったりする事だって考えられるからな。

 当然、アラガミに対するトラウマを持っているのかも調べられている筈だ。

 

 だが、私は勿論のこと、配属されたリンドウでさえその手の情報は一切知らされていなかった。

 こちらから調べに行くのが筋、と思うかもしれないが、それは間違いだ。

 経歴書にも全くそれらしい記述はなかった。

 

 少なくとも、主治医である筈のオオグルマはこれを知っていた筈だ。

 だが口頭での報告も無し、記入しておく書類にさえ全く手付かず。

 

 

 どう考えても、忘れていたのではなく、完全な故意だろう。

 問い詰めるのは容易い。

 だが、問題は……この事を、支部長も知っていた筈という事だ。

 ロシアから引き抜くに辺り、アリサのプロフィールも見ているし、裏付けも取っている筈。

 だと言うのに、トラウマの事だけを知らなかったとは考えられん。

 

 つまり…支部長がアリサに期待する役割は、ゴッドイーターではなく別の『何か』だったという事か?

 ヴァジュラと戦えなくても問題ない、或いはその方が好都合…。

 

 キナ臭いな。

 偽装工作が非常に杜撰な事を考えると、何か起きるとすればそう遠くない…いや、直近とすら言えるだろう。

 それまでの間誤魔化せれば、それでいいという訳だ。

 そう考えると、今回ヴァジュラと遭遇したのは幸運だったかもしれんな。

 コレがなければ、致命的な瞬間まで対策すら考えられなかっただろう。

 

 

 さて、どうしたものか…。

 一番手っ取り早い方法はアリサを遠ざける事だが、根本的な解決にならない上、そもそも不可能だ。

 支部長直々に引き抜きしてきた人材だ。

 強行手段を取ったとしても、覆しようのない人事である。

 

 ならば、ヴァジュラに対するアリサの恐怖を克服させる?

 成功すればいい戦力になりそうだが、どうやってやるかという問題がある。

 また、ヴァジュラに対する恐怖が無くなったとして、それが近い内に起きるであろう『何か』を防ぐ事に繋がるかは分からない。

 

 多少強引だが、私の手元に置くという方法もあるか。

 能力は高いが、連携能力及び普段の素行に問題あり、再教育が必要…といった理由で。

 「再教育」でヴァジュラのトラウマが消えればそれで良し。

 

 …うむ、この手で行くか。

 

 

 

 




 はて、今度は一体何処じゃろな?
 
 久方ぶりに夢を見ている。
 いや、単なる夢じゃなくて、何処か異世界に飛ばされてる疑惑があるあの夢だ。
 本当に久しぶりだなぁ…何ループぶりだっけ?

 まぁ、それはいいんだが…思いっきり荒野だ。
 しかも、このカンジは……北斗の拳とかじゃなくて、西部劇っぽい?
 何となくだけど。


 ま、夢だからってカンカン照りの荒野に突っ立ってたら気分悪くなってきそうだ。
 どこか街を探してみようかね。


 



 近くにあった丘に登り、そこで見つけたサボテンをスライスして食料と水を確保。
 幸い、近くに街が見えた。
 あまり活気がありそうなカンジはしないが、ゴーストタウンという訳でもないようだ。
 うーん、益々持って西部劇っぽい。
 吹き抜ける風やら、アカラサマな建物やら…少なくとも日本ではないな。

 少なくとも数人、人が屯して動いているのが見える…アレがバイオハザード的なゾンビだったら、正真正銘ゴーストタウンだろうけど。

 …ああ、誰だか知らんが、街に向かって歩いているのが一人見えるな。
 アイツに接触してみるか。
 あのペースなら、走っていけば街に入る前に声をかけられるだろう。




 走った。
 近付いた。
 向こうもこっちに気付いたようだった…結構距離があったと思うんだが。


 そして違和感。



 白い服。
 まぁいい。

 黒目黒髪。
 …西部劇なら金髪や茶髪がメインだと思うが、これは俺の偏見だろう。

 ヒゲをはやしていない。
 …西部劇、ガンマンと来たら渋いヒゲのオッサンだと思うんだが、それこそ偏見か。

 ズボン(?)に括りつけられている、旅行カバン。
 随分と使い込まれているようだ。
 動きの邪魔にならない位置に調整されている辺り、結構な荒事を潜り抜けてきたのかもしれない。


 そして髷。
 髷だ。
 マゲ。
 ちょんまげ。
 ちゃんとした髪型の名前は分からないが、とにかく髪を束ねて頭の上で結っている。

 腰に挿している得物も見逃してはならない。
 明らかに西部劇の夢(世界)だというのに、世界観なんぞ何するものぞと言わんばかりに存在を主張している、刀。

 そう、刀だ。
 剣でもなければレイピアでもない。
 反りもある、鍔もある、明らかな日本刀だ。


 そもそもからして、白い服からして…着流し? いや、胴着?
 とにかく和服だ。
 


 て言うか明らかにサムライだ。
 繰り返すが、西部劇だというのにサムライだ。



「Who are you」

「日本語でおk」

「…………」

「…………」

「…………」

「日本語でお願いします」

「何者だ」



 平然と英語喋るサムライだけど、おkは通じなかったか。
 丁寧に言い直してくれるお侍さんに感謝だ。

 …明らかに幕末あたりの人間なのに、現代日本語が平然と通じる理由は知らん。


「旅の日本人です。
 こんな所で日本人を見かけるとは思ってなかったんで、つい寄ってきました」

「……この男を知っているか」


 マイペースな方ですな。
 紙を受け取って見てみる。

 手配書かと思ったが……単なる似顔絵、か?


「いや、見た事ないな…。
 何かやった人なのか?

 …おいおい、冷たいなぁ。
 折角会った日本人じゃないか。
 俺もあの街に行くんだし、一緒に行ってもいいだろ」

「…好きなようにいたせ」

「んじゃお言葉に甘えて」


 ぶっきらぼうだな。
 でもさっきは日本語に直してくれたし、ツンデレタイプか?
 昔の武士とかは、寡黙かつ仏頂面であるべし、みたいな風潮があったと聞いたが…。

 色々話しかけてはみるが、あまり答えは帰ってこない。
 反応がありそうなのは、刀とか武術に関してなんだが…。


(ヘタに突くとややこしい事になる気がするんだよな)


 今の俺は丸腰だ。
 そこそこ戦える自信はあるが、この男もかなり強い。
 下手に地雷を踏むようなマネはしない方がよさそうだ。





 が、世の中には自分から地雷を踏みに行く奴が沢山居てな?
 

 街についてから、5分と経たずに銃撃戦の真っ最中です。
 まーアレだ、銃を持ってるにせよ多勢に頼るにせよ、相手が自分より弱そうに見えたらチョッカイを出しに行く奴は珍しくもないって事だ。
 チョッカイを出された方は、大抵は実際弱くて、反撃するような奴は少ない。
 だからこそ、弱いもの苛めというのは成立する。

 だがこの男と、ついでに今の俺は反撃するタイプだった。


 あっちはあっちで銃弾を避けて接近し、一刀の元にガンマン(要するにチンピラ)を切り伏せている。
 銃弾を打ち返してる所を見た時は流石に驚いた。

 おー、やったれやったれ。
 相手が弱いと思って無茶苦茶な難癖つけてきたり、鉄砲撃って来るような奴は斬っていいぞ。
 命の尊さ?
 相手に言え。


 ちなみに俺はというと…。


「なんだこのバケモノ!(英語)」

「銃が効かないぞ!(英語)」

「当たってる筈だろう!?(英語)」

「ちょっ、こっちにくるなうわぁあぁぁ!(英語)」


 銃弾なんぞ避けもせず!
 男らしく全て筋肉(とミタマ「防」)で受け止め!

 そこら辺のよく分からん木箱をハンマー代わりにしてぶん殴っています!
 勿論パンチやキックもしてんだけど………ほら、グロ画像…。
 ハンターの腕力舐めるなよ?
 いくら武器の威力が高かったって、それをモンスターに通じさせる勢いで振るってるのはハンターなんだから。

 ま、隣で真剣で切られてモツがはみ出してる死体とかあるから、グロ云々は正直今更だけどね。

 と言うか、銃ってこんなに攻撃力が弱いのか?
 時代が時代だから、あんまり性能が良くないだけか?
 GE世界の銃(神機じゃなくても)とか討鬼伝世界の銃は、もっと威力と射程があったと思うんだが。
 MH世界のは…まぁ、火縄銃もあったけど、一応は基本がボウガンだし。
 それに、討鬼伝世界の銃は長銃だしな。

 …だからって、鍛えてる人間を殺せないような威力というのはどうかと思うが。
 少なくとも、火縄銃とかでも鉄の鎧を貫通するくらいの威力はあったろうに。

 それともアレだろうか。
 普段受けてる攻撃が、モンスターやらアラガミやら鬼やらの大火力攻撃だから、それと比較してショボくみえてるだけなんだろうか。


 まぁいいけど。
 
 そんな事を考えてたら、何時の間にやらチンピラ共は全滅していた。
 …言うまでもないが、ブッタ斬られて 生きてる奴は居ない。
 俺にぶん殴られた方は……どうだろ、別に死んでてもいいやって思って殴ったけど、殺すために殴った訳でもなし。
 運が良ければ生きてんじゃない?
 

 …というか死体どうすんだよ。
 ちゃんと片付けないと疫病が発生しそうなんだが。




 そんな事を考えつつ、一服しようと立ち寄った酒場で、相棒…豪次郎が探していた例の人物について情報があったり無かったり、おかしなガンマンが話しかけてきたり、モノクルハゲが乱入してきて大乱闘になったり。
 酒場が半壊する騒動になっちゃったけど、これ慰謝料とか払わないといかんのだろうか…。
 今手持ちが無いぞ。

 精々、乱闘の最中に手に入れたアフロのカツラとか、近代兵器とか、超弩級手裏剣とか、棺桶とか、回転駆動式とか、その程度しか無い。
 代わりにちょっと労働するくらいでどうにかならんかな…。


 …よく分からんが、ゴールドバーグとかいうオッサンが街を支配していて、炭鉱で強制労働させたり死体を改造したりして色々やってるんだな?
 死体を改造して生きているように動かすとか、時代を無視した技術力だと思うが、慰謝料の為とあらば仕方なし。

 どーも豪次郎が探している男もゴールドバーグの下に居るらしいし、ちょっと暴れてみますかね。
 豪次郎もそれでいい?
 …是非も無しって第六天魔王かアンタは。

 さて、ゴールドバーグを仕留めるだけなら、俺が適当に忍び込んでアサシン(或いはニンジャ)すりゃいいだけなんだが、それだとトップを失ったチンピラ共が烏合の衆になって、あちこちで暴れ始めるだけだ。
 豪次郎が探している男も、多分どっかに消えてしまうだろう。
 最低限、集まっているチンピラ連中を蹴散らして追い散らして勝たなきゃいかん訳だ。

 つまり…アサシンじゃなくて、正面突破が必要な訳ね。
 豪次郎も「望むところ」なんて言ってるし、俺も今回は脳筋スタイルで行くとしますか。 
 ええ、後の事なんか考えずに、ゴールドバーグの拠点ごとぶっ潰す勢いで。



 ところで、基本的に寡黙な豪次郎だが、やはり興味がある事ならそれなりに喋るようだった。
 具体的には、さっきの乱闘での戦いだ。
 俺は豪次郎が刀で銃弾を跳ね返すのを見て驚いたし、豪次郎も同様に、俺が銃弾を受けても平然としているのを見てかなり驚いたらしい。
 まず第一に出てきた感想が、「厳しいが、斬れなくはない」なのはどうかと思うが。


「あれはどういう技術なのだ?」

「カラテは知ってるだろ?
 あれにコツカケとかサンチン立ちなんて技があるんだが、その応用だな。
 鍛えた体を全力で固めれば、銃弾も弾ける。
 ま、もうちょっと威力が上がると流石に無理だと思うが」

「見事な技だった。
 拙者も空手は多少嗜むが、思っていた以上に深いらしい」

「豪次郎だって似たような事してたじゃないか。
 二刀流持って、弾を受けても平然と接近してたし。
 あの時斬られた奴、恐怖で泣き出す寸前の顔だったぞ」

「気迫の問題だ。
 致命傷さえ避ければ、後は気力で体を動かせばいい」

「その理屈はおかしい」

「お主も結構な無茶を言っておるぞ」

「ああ、それにあの銃弾を相手に跳ね返すのが凄いよな。
 正面から一発撃たれたのを弾くだけなら俺もできるけど、正確に撃った奴に戻っていくし」

「あれには少々技量が要る。
 だが、要点さえ使えんでしまえばそう難しくは無いぞ」

「…火の玉とかも跳ね返せるか?」

「どんな火の玉かにもよるが、やってやれない事は無い」

「お前ら両方同類だよ…。
 軍を動かす前に終わっちまった……日本人怖ぇ…」


 最後の一言は、一杯奢ってくれた謎のガンマン(どこぞのエージェントっぽかった)・ラルフのコメントでした。









 後日、サムライの強さと共に、カラテカの脅威がアメリカに語り伝えられる事になったらしいが、夢の話だからよく分からんな。

 ついでに言うと、更に何年か後ではインディアンと白人との戦争で誰かさんが大暴れし、単身で騎兵隊を食い止めたそうな。
 以後、アメリカ各地で「腹を括った日本人に関わるべからず」と実しやかに噂が流れていたとか…。


 ちなみに、例によって例の如く、妙な技術を使えるようになっていた。
 豪次郎に教わったように、火の玉その他を通常攻撃で弾き返せる……んだが、かなり難易度が高い。
 こんがり焼かれながら練習したが、アラガミ状態のアクセラレイトを使ってようやく成功した。
 これを素の状態でやってたのか…サムライってスゲェ。
 
 

外伝:サムライウェスタン編 …と、ちょっとだけ修羅の刻
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