※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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皆してNOUKAに反応良すぎィ!
いつもの2倍くらい感想をいただけた上、何故かランキング2位まで浮上してたんですけど!?
わけがわからないよ。

ふぅ、8月のお仕事は後は棚卸しくらいです。
9月中旬には何とか帰省できる予定。

うーん、何のゲーム持って行くかな。
MHXもGEもまだ出てないし、レイギガントは手を出さない方が良さそうだし…。


第85話

神無月リンドウ日

 

 

 九死に一生を得た、雨宮リンドウだ。

 いやー、本当あの時ばかりは死んだかと思ったね。

 ホラ、アリサが錯乱して、教会にアラガミと一緒に閉じ込められた時さ。

 

 あの老け顔のヴァジュラ、やったら強力でやんの。

 絶対上位種だぜ、アレ。

 まぁ、アリサには立ち直ってきた頃を見計らって罰ゲームでもやってもらうとしてだ。

 

 色々とヤバい事に首を突っ込んでるから、何れ粛清に来るだろうとは思ってたけど、意外と速かったな。

 何とか生き延びれたが、これからどうする?

 調査続行なのは確定だが、ヘタな事をすると周囲を巻き込みかねない。

 慎重にやる必要があるな。

 

 

 アリサは姉上殿が、何故か農園の主の所に居候させている。

 大丈夫かね?

 あの農園の主は、信用できない事はないと思うが…まぁ、理屈は分かるんだ。

 

 あそこはフェンリルの庇護下にない。

 つまり、例え支部長がちょっかいを出そうとしても、NOと言える場所だ。

 最近注目されている、食糧難を救うかもしれないと言われている農園なだけに、強攻策も取りにくいだろう。

 下手な場所よりも安全だ。

 

 暗殺の首謀者…アリサを操っていると思われるオオグルマについては、もう極東に居ない。

 姉上殿が何処からか得てきた情報で、アリサの主治医を解任されている。

 そのまま別の支部へ異動の命令が来たらしいが…これは支部長の仕業だろうか?

 

 何れにせよ、オオグルマは命令に従って異動するに辺り、道中でアラガミに襲われて死亡したと知らせを受けた。

 ……これは隠蔽工作なのか…とも思うが、俺は違う。

 奴の死を確信している。

 

 先日見えた死相はコレだったんだろう…。

 それに、隠蔽工作にしては、アラガミに襲われたという地点が極東に近すぎる。

 身を隠すなら、確認できる者が誰も居ない場所での工作になるだろう。

 

 外道に情けは無用とは思うが、死人が出るのは嫌いだ。

 念仏くらいは唱えてやるか…真っ当な地獄に落ちれますように、ってな。

 

 

 さて、それはともかく、支部長が極東に戻ってくる。

 アリサを急いで極東から出したのはこの為だろうな。

 オオグルマが居なければ問題ないとは思うが、口封じなんてされないように。

 

 

 恐らく、支部長にとって計算外だった事が幾つかある。

 俺の暗殺もその一つだろうが、これは支部長にしてみれば許容範囲だろう。

 言っちゃナンだが、あの人が任せる特務を任せられるような人材は、まだ育っていない。

 

 あの人が言う、エイジス計画を行う要となる特異点。

 それを今までの特務で、極秘に探していた訳だが……これ、サカキのオッサンが盛大にバラしちまってるんだよなぁ…。

 しかも支部長が居ない間に独断で。

 

 マスク・ド・オウガの噂が広まった事を奇禍として(適当にコジツケて、とも言う)サカキのオッサンが先手を打ったって事だろう。

 傍観者を気取りながらよくやるぜ。

 

 ともあれ、特異点探しは新しいステージに進んだ訳だ。

 極秘に探すのではなく、ゴッドイーターが組織だって特異点…マスク・ド・オウガを探し始める。

 

 特異点……そう、特異点と、『思われている』マスク・ド・オウガを。

 

 

 

 俺も、最初はマスク・ド・オウガの話を聞いた時、特異点だと思ったよ。

 異常な戦闘力は置いといて、人間を全く食べないアラガミ。

 逆に助けるような行動をするアラガミ。

 

 コイツを確保できれば(話を聞いた時は噂の領域を出てなかったが)、支部長にもサカキのオッサンにも一歩先んじる事ができる…ってな。

 まぁ、俺が特異点を保護してたって、活用する事なんて出来ないんだが。

 

 でも違った。

 先日の死に掛けた一件での事だ。

 

 

 

 教会に閉じ込められた俺は、ヒジョーにまずい状況に追い込まれていた。

 あの老け顔ヴァジュラと一対一、しかも逃げる事も隠れる事もできない、ついでに言えば手持ちの回復錠だって殆ど無い。

 

 逃げ隠れできるんなら、苦労はするけどどうって事ない相手なんだけどな…。

 まぁ、やるっきゃない。

 アリサがどうしてあんな事をしたのかはわからないが、あの調子だとマトモに戦えるとは思えない。

 教会の外の皆にも、すぐに逃げるように指示を出さなきゃならなかった。

 

 …サクヤにも、な。

 

 

 だが、指示を出そうとしたその時だ。

 ヴァジュラ達のモノとは明らかに違う、連続した爆音が響いた。

 …教会が崩落しないか、ちょっと本気で心配したくらいだ。

 

 どうした、と声を上げるが、返答は何も無い。

 最悪の可能性が頭を過ぎり、飛び掛ってきた老け顔を咄嗟に避けた。

 

 その瞬間だ。

 教会の割れた窓から、人影が飛び込んできたのは。

 

 ソイツは老け顔ヴァジュラの上に着地するや否や、両腕のブレードを振りかざして斬りつけた。

 正体は不明だったが、咄嗟に味方だと判断して、痛みで仰け反った老け顔ヴァジュラの前足に一撃。

 反撃の雷球を避けた時、飛び込んできた奴が何者なのか、ようやく分かった。

 

 そう、マスク・ド・オウガだ。

 マジかよ、と思いながらも、俺は老け顔ヴァジュラの喉元、アイツは顔面を狙って一撃。

 離れ際に、アイツは腕を大きな口に変えて…明らかに神機のプレデターフォームだ…噛みつき、そして光り始めた。

 …バーストモード、か?

 

 そのまま、目にも留まらないスピードで正面から接近すると、右ストレート(だと思う…杭が打ち出されたような気がするが、よく見えなかった)で老け顔ヴァジュラの顔面を再び殴り飛ばし、首の骨をヘシ折ってしまった。

 ありゃ敵対したくねぇな…。

 

 とにかく、老け顔ヴァジュラを仕留めたあいつは、そのまま無言で背を向けた。

 咄嗟に声をかける。

 

 

「おぅ、誰だか知らないが、助かったぜ。ありがとな」ってさ。

 

 

 それに反応して振り返って。

 

 

「………屠杭典苧佐賀背…」

 

 

 それだけ唸って、ジャンプして外に行っちまった。

 …どうせだったら、外まで連れてってほしかったな。

 

 まぁ、その後何とかかんとか閉ざされた教会から脱出して(動けなくなっているヴァジュラ達に驚いた)、全員一斉に撤退してきたって訳だ。

 

 

 帰ってから、自室で冷静になって考えてみたんだ。

 アレがマスク・ド・オウガ。

 エイジス計画の要になるといわれている特異点。

 

 

 …が、ちょっとここで思い当たった。

 あの時の…マスク・ド・オウガの声。

 スッゲー聞き取りづらかったし、意味を成さない鳴き声の類だと思ってたんだが。

 

 

 屠杭天苧佐賀背

 

 と・くい・てん・お・さ・が・せ

 

 とくいてんおさがせ

 

 とくいてんをさがせ

 

 

 

 

 特異点を探せ。

 

 

 

 

 

 

 

   キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!

 

 

 

 

 

 ビックリした。

 マジビックリした。

 冗談抜きで叫ぶかと思った。

      キェェェェェェアァァァァァァサァァケンダァァァァァァァ!!!ウルサイゾグテイッ!アネウエドノッ!?

 

 

 人間の言葉まで分かるのかよ、あいつ…。

 いや待て、それも重要だが注目すべきはそこじゃない。

 

 

 特異点を探せ、だ。

 

 マスク・ド・オウガが。

 俺達が特異点だと思っていた、あいつがそう言ったんだ。

 自分を探せ、って意味だったのか?

 

 いいや、そうじゃない。

 

 マスク・ド・オウガは、特異点ではない別の『何か』って事じゃないか?

 しかも、特異点とは何なのかを理解している可能性が高い。

 

 本当に、一体何者だ?

 アラガミ…と言われちゃいるが、それも怪しくなってきたぞ。

 

 …まぁいい、とりあえず人間の味方ではあるみたいだし、一端置いとこう。

 とにかく、マスク・ド・オウガは実際には特異点ではない。

 が、俺達は彼こそが特異点だと思い込んでいて、恐らく支部長もそれに引っかかる。

 

 …助けてくれた恩を仇で返す事になっちまうが…スマン、そのまま暫く狙われていてくれ。

 本当の特異点は、こっちで全力で探すから。

 

 

 

 

神無月シックザール支部長視点日

 

 

 どういうことなの……

 

 

 む…んんっ、失礼、ヨハネス・フォン・シックザールだ。

 あまりに予想外の展開に、ついつい頭が呆けてしまった。

 いかんな、人の上に立つ者として、このような失態を見せては…。

 

 しかし、幾らなんでも話が急激に進みすぎではないかね?

 手駒であるオオグルマと新型使いを極東に呼び寄せる為、また、エイジス計画…その裏のアーク計画の梃入れの為、少しばかり極東から離れていた。

 オオグルマ達が極東に向かった後も、少しばかりのトラブルで帰るのが遅れたのも事実だ。

 

 だが、ほんの少し遅れて戻ろうとした矢先に、雨宮指揮官からはオオグルマの解任要求(しかも真っ当な理由で)が飛ぶは、警告程度に抑えようと思っていたリンドウへの妨害はガチの暗殺計画と化していたは、機密にしていた特異点が発見された上に宣伝され賞金首状態になっているは、オオグルマを避難させて隠蔽工作しようとしたら本当にアラガミに襲われて永久に行方不明になるは、もう訳が分からん。

 と言うかマスク・ド・オウガって何だ…旧世界の特撮ではあるまいに…。

 フェンリルの売店にオウガテイルの面が売っている(しかもそれなりに売れている)のを見た時は、思わず心中で遠い目をした。

 

 

 …うむ、やはり愚痴を吐くのも大切な事だな。

 これくらいの地位になり、しかも後ろめたい計画を進めているとなると、懺悔もできなきゃ愚痴も言えん。

 ストレスを吐き出すのは重要な事だ。

 私の場合、女遊びにも現を抜かせんからな…。

 ハニートラップに警戒せねばならん事もあるが、私は今でも妻一筋だ。

 …ヘタな事をすると、ソーマに向ける顔がなくなりそうだしな…今でも父親と思われていないのはわかっているが。

 

 

 やれやれ…しかし、こうなると今後の計画を大幅に修正せねばならん。

 まだ許容範囲ではあるが…本命のアーク計画さえ露呈しなければ、問題はない。

 やってくれたな、ペイラー。

 

 既にマスク・ド・オウガの存在は否定できない程に広まっている。

 極東だけでなく、別の地域にも情報が飛び火し始めている程だ。

 

 こういった情報の飛び火は、一度始まると『全消毒』でもしない限り消える事は無い。

 ならば、存在を肯定し、ある程度情報を弄るとしようか。

 …うまくいけば、マスク・ド・オウガ目当てにゴッドイーターが集まるかもしれんしな。

 

 

 

 さて、まだ幾つか問題はある。

 まずはロシアから呼び寄せたアリサ・イリーニチナ・アミエーラ。

 ロシア支部から貴重な新型使いを呼び寄せておいて、再起不能状態にさせかけている…と言われかねん。

 が、これは彼女の精神状態を明確にせず、対処もしていなかった(私が密かにオオグルマに命じていたのだが)ロシア側の手落ちとして対処。

 

 リンドウはどうする?

 現状、特務を任せられるゴッドイーターは彼以外には居ない。

 今回の一件が警告代わりにはなっただろうが、むしろ私が彼を殺しにかかったと思われているだろうな。

 如何に危険な警告があったとは言え、それで折れるような男ではない。

 元より忠誠心など期待していないが、これからはより慎重な扱いが必要となるだろう。

 とは言え、奴もすぐには動くまい。

 特異点の存在を公にして探している以上、こちらも奴もこれ以上の身動きが取れん。

 …いや、奴は私の計画の裏を探りに来る事は出来るか。

 ガードは既に固めているので、機が来るまでは現状維持だな。

 

 

 

 そして…問題らしい問題にはなっていないが、非常に注目を集めている、謎の農園。

 何故か雨宮指揮官と繋がりがあるらしく、アミエーラもそこに預けられているようなのだが…それはまぁいい。

 アミエーラは手駒として仕込んではいたが、本人は何も知らん。

 例え拷問にかけられようと、致命的な情報は搾り出せない。

 新型使いのデータが取れないのは惜しいがな。

 

 これは是非とも手にしたい案件だ。

 例え私のモノにならずとも、未来に向けて遺せる大きな因子だ。

 アーク計画実行時には、かの農園の主には是非とも方舟に乗り込んでほしいものだ…。

 例え計画が上手くいき、地球からアラガミが消えたとしても、新世界がどのような場所になるのかは私にも予想がつかん。

 人類が生き残ったはいいが、人間の食べられる物が全く残っていませんでした、では意味が無いからな。

 

 

 ふむ…一度、出向いてみるのもいいかもしれん。

 アミエーラは私が引き抜いた人材だ。

 様子を見るとでも言っておけば、建前にはなるだろう。

 なんなら、フェンリル本部の何処かに新たな農園を作るのもいい。

 農園の主が応じれば、の話だが…。

 

 

 

 

神無月主人公日

 

 ツバキさん経由で預かったアリサは、何とか持ち直しているようだ。

 ゴッドイーターとして戦えるか、というと疑問が残るが、少なくとも日常的に錯乱する事は無くなった。

 代わりに、錯乱しそうになる自分を自覚する度、頭を庇っているが……ド突きすぎたか?

 一応ミタマ癒で殴ってたんだが。

 

 ツバキさんも時々、アリサの様子を見に来る。

 立ち直っているかの確認と、俺が妙な事してないかの確認だろうな。

 実際、アリサの洗脳をどうにかしようと思ったら、俺が妙な事するのが一番手っ取り早いんだし…。

 

 そうしない理由?

 ……毎度毎度、洗脳紛いの事ばっかりやってたからな。

 偶には素のアリサを見てみたくなったんじゃないか? 

 差し当たり、アリサを急いで立ち直らせなきゃならない理由もないし。

 

 

 …私見だが、アリサはまだゴッドイーターとして復帰するのは厳しいと思う。

 周囲の人間との軋轢もあるが、それ以前に完全に自信喪失してしまっている。

 極東に来たばかりのアリサの自信過剰な一面は、やはり汚ッサンの暗示によるものだったんだろうか?

 オボロゲだが、「強い子になれるんだ」とか暗示にあった気がするし。

 それを受けなくなった事と、やらかした大惨事が重なって、いい塩梅に心が折れている。

 いっそ、感応現象でどうにかできないか…とも思って、初対面の時に握手を求めて試してみたんだが、やはり不可能。

 

 どーすっかなー。

 ゲームでは暫くの療養の後、主人公にくっついてリハビリしてたけど、今の俺は立場上、それが出来ない。

 ゴッドイーターじゃないからね。

 仮面ライダーアラガミの正体を明かすのも持っての外だ。

 

 ついでに言うと、最近じゃ妙な悩みを持ち始めているようだ。

 一人でブツブツ言ってて、俺が聞いても何でもないと誤魔化されるんだが、なんだ…えーと、く…く……くるすち?になるべきかどうか?

 ロシア語は分からん。

 

 …考えてみれば、ちょっと不義理かな?

 アリサとは何度かアレな関係になってたが、考えてみりゃアリサの母国語の事なんか気にしてなかった。

 平然と日本語使ってたからなぁ…。

 別に恋人の母国語を使えないといけません、なんてルールは無いが、相互理解の一環ではあったろう。

 …簡単な会話くらいはできるように、勉強してみっかな。

 幸い、アリサという練習相手も居る。

 

 

 

 話が逸れた。

 とにかく、なんかアリサはゴッドイーターを続ける自信を失い、なんか別のものに転職するべきなのか、と考えているっぽい。

 ゴッドイーターって辞められんの?

 怖いから止めます、なんて言っても受理されないだろう。

 抑制剤の供給が切られれば、アラガミ化して介錯一直線よ?

 

 と言うか一体何になろうとしてんの?

 最近は妙に農園の手入れに熱心だし、ミミズに慣れようとして非常にイヤそーな顔しながらツンツンしているのも見た事がある。

 

 

 むぅ……なんか妙な方向に突っ走ろうとしている気がするな……まぁ、気が晴れるんならやらせておけばいい。

 こっちには特に損は無い。

 ま、カウンセリングの真似事くらいはしてやりますかね。

 汚ッサンの暗示でツギハギ状態になった精神状態を、独力でどうにかするのは難しいだろう。

 …妙な方向に突っ走ろうとしているのを、止められるかもしれないしね。

 

 

 

 

 さて、アリサの事は置いといて、ストーリーの方はどうしたもんかね。

 リンドウさん暗殺は防げた。

 汚ッサンは始末した。

 特異点は…多分、支部長のサカキ博士もマスク・ド・オウガだと思い込んでるだろうから、シオに手が伸ばされる可能性は低い。

 エイジス計画、並びにアーク計画は準備はほぼ整っている状態だろうが、肝心の特異点が無ければ実行に移す事はできない。

 

 だがタイムリミットがある事には変わりない。

 シオを見つけられず放置しておけば、特異点としての本能が目覚め、前回ループのように意図しない状態から終末捕食が始まってしまう。

 人間と接して知性や情緒を育てなければ、本能に抗う事もしないだろうから、むしろ前回よりもタイムリミットは短くなるかもしれない。

 

 リンドウさんは無事だから、バーストのストーリーは恐らく発生しないだろう。

 立場で言えば、リンドウさんは味方…終末捕食を防ぐという点では…になるだろうから、暗殺シーンの去り際に「特異点を探せ」って言っといた。

 仮面ライダーアラガミ状態だと、スッゲェ喋りにくいのな…声色を変えようとしたのも一因だろうけど。

 ちゃんと伝わったかな?

 伝わってれば、色々と察してくれそうなもんだ。

 

 

 となると、矢張り急務となるのはシオの確保か。

 その方法は…例えばゲームと同じ手は使えるだろうか?

 付近一帯のアラガミを狩り尽くして、シオの食料となる物を消して誘き出す。

 

 …出来なくは無いが、リスクが非常に高いな。

 それだけの勢いでアラガミを駆逐すれば、確実にゴッドイーター達も異変に気付く。

 そこに『何か』が居るのがわかってしまい…『何か』であろうマスク・ド・オウガを捕らえにくるだろう。

 ひょっとしたら、そこでシオと鉢合わせして、本物の特異点を見つけてしまう可能性だってある。

 

 いや、そもそもこれはシオがどの辺りにいるのか、検討をつけていないと実行不可能だ。

 居るかと思われたリンドウさん暗殺シーン近辺にも全く姿は無かったし……何処にいるのか、本気で予測がつかん。

 ウチで作った野菜その他で誘き出す事も考えたが、シオはアラガミしか食べない偏食アラガミだ。

 通常素材(異世界の物も含めて)が囮になるとは思えん。

 

 …やるだけやってみるか?

 この世界の人達が聞いたら、財布の中身を確認して叫びだしそうな話だが。

 なんか知らんけど、予想以上の高値で取引されてるんだよね、生野菜その他…。

 

 GE世界の食糧事情を改革してやる、なんて意気込んでいた俺としては、あまりよろしくない話だ。

 高級食材なんざ、自称食通やセレブが勝手に在り難がってればいいんだ。

 食糧事情を改善しようというなら、もっと安価で、手軽に手に入る形にして広めにゃなるまい。

 

 …まぁ、どう考えたって供給量が足りないんだけどな。

 いくら育つのが速くて手間隙かからないっつっても、極東の人間に行き渡るだけの量だって作れやしない。

 所詮は一区画分の小さな畑なんだから。

 

 

 

 とにかく、シオを確保するのが第一目標。

 アリサも段々と自分で農園の仕事が出来るようになってきたんで、家を開けても問題ないのが嬉しい。

 今までは仕事が終わった後の短い時間しか探索・徘徊に当てられなかったが、これなら2~3日くらい家に戻らなくても大丈夫そうだ。

 

 ここはアナグラと違ってフェンリルの影響下にないから、シオを匿っても騒動を起こさない限りバレる事はないと思う。

 …アリサに事案扱いされなければいいんだが。 

 

 

 

神無月ツバキ視点日

 

 

 雨宮ツバキだ。

 奴の所にアリサを預けてから、時折様子を見に行くようにしているが、何とか立ち直りつつあるようだ。

 とは言え、ゴッドイーターとして復帰できる程ではない。

 

 奴が言っていた、洗脳をどうにかできる方法とやらは?と聞いてみたが、今ひとつ効果が薄いらしい。

 というより、思っていたより洗脳が厄介だったので、一気にどうにかしようと思うと如何わしい手段を取る事になってしまうそうだ。

 却下だ却下。

 自由意志と合意の下にそうなるならともかく。

 というより、それは奴が新たな洗脳を上書きしているだけではないか?

 

 やるなよ?

 フリではないぞ。

 

 さて、それはともかく、折角だからと農園の主に色々聞いておこうと思う。

 奴のコネツテを辿った情報とやらが何処までアテになるかは分からんが、リンドウの一件は確かに事実だった。

 とは言え、一体何を聞いたものか。

 漠然と「危険な出来事になりそうな情報」と聞いても、向こうも返答に困るだろう。

 

 うむ…やはり、最近噂の特異点ことマスク・ド・オウガか?

 以前話した時も、明らかに何か知っているようだったしな。

 最近は、支部長も特異点の存在を明らかにした事もあり、ゴッドイーター達は本腰を入れて特異点を探し始めている。

 特にカレルの奴など、賞金額を聞いてから目の色が明らかに違った。

 

 だが私としては、やはりどうにもひっかかる。

 エイジス計画の何処に、特異点とやらが必要になるのか…。

 私の理解が及ばない専門的な話になるかもしれないが、あの支部長と細目マッドが素直に真実を明かしているとも考えにくい。

 確認をとってみようとしたが、極秘事項という事で私でも閲覧する権限は無かった。

 

 それと、リンドウが探っているらしいエイジス計画の裏とやらも…。

 流石に情報は無いか?

 まぁ、聞くだけならタダか。

 情報の漏洩にならないように、上手く聞き出す必要があるな。

 

 いや、妙に聡い奴の事だ。

 適当な形で合わせてくるか。

 

 

 うん? 

 いや、確かにあそこのメシは美味い(高級食材であっても本人にしてみれば自分が作った物という意識しかないのか)が、それだけが目当てではないぞ。

 ソーマではあるまいし。

 

 …ソーマか。

 以前までの他者を寄せ付けない空気は何処へやら。

 エリックに連れられ、件の農園を何度も渋々訪れている……と思っているのは本人だけで、あそこで餌付けされているのは周知の事実なんだがな。

 

 一度エリックがソーマを連れずに農園に行ったと聞いた時には、本気でエリックを睨んでいたものだ。

 態度は以前と変わらないものの、明らかにソワソワし始めるし、胃袋を鳴らした事もある…極東のゴッドイーターなら、一度は聞いて耳を疑っている。

 愚弟に至っては、「ソーマが好物を前にオアズケされている犬みたいに見えた」とまで言う始末。

 かく言う私も、愚弟に影響されてかソーマに犬の耳を幻視した事さえあった。

 

 子犬というには図体がでかいな…。

 

 

 なんにせよ、本人としては非常に不本意なのだろうが、かつての死神という異名は薄れ、今ではシアン…フランス語で言う犬、という仇名さえ定着しつつある程だ。

 うっかり本人の前で漏らしたコウタが銃撃の的にされかけていた。

 

 私としては、歓迎すべき事だと思うがな。

 ソーマがどう思っているにせよ、人間関係の壁が薄くなれば連携も取りやすくなるだろう。

 自分の周りに居る者は死ぬ、という思いも、何かしらトラウマがあるのだろうが……率直に言うが、その死者の数はゴッドイーターの殉職率と比較してどれくらいだという話だ。

 

 

 

 前置きが長くなった。

 そろそろ行ってみるか。

 

 

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