※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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討鬼伝2が2016年に発売…だと…?
PV見ましたが、これだけだと内容が分からないなぁ。
DMC4のスナッチみたいなのが出てましたが…。


第93話

 

神変月アリサ視点日

 

 

 白娘危機一髪!

 …むかしそういう名前の処刑ゲームがあったそうですが、語呂はよくありませんね。

 黒ヒゲだったら罪悪感も少なそうですが。

 

 

 とにかく危機一髪でした…。

 

 マスターと別れ、一端農園に戻った私ですが、既に時遅く、農園には多数のゴッドイーター達が屯していました。

 我らが可愛い子供達(特にシモフリトマト)が荒らされていなかったの救いです。

 もしも手荒に扱っていたら、シオの事すら忘れて突撃していたかもしれません…。

 

 ともあれ、ゴッドイーター達の様子からして、まだシオは捕まっていないようです。

 しかし、農園のそこら中にシオの足跡があります…やはり戻ってきたのでしょうか?

 ですが、姿が見えない…。

 

 

 …戻ってきたはいいものの、私達が居ない事に気がついて、探しに出たのかもしれません。

 となると…シオも車の事は知っていますから、私達がそれに乗って出掛けたと思って、追いかけた?

 残っている車の轍は二つ。

 ひとつは雨宮指揮官がアナグラに帰る時の轍。

 もう一つは、私とマスターがエイジス島に向かう時の轍です。

 

 本当に私達を追いかけたのか、そうであったとしても、どちらへ行ったのか。

 少しばかり悩んで、私は直感を信じることに決めました。

 

 即ち、私とマスターの痕跡を追っている、と。

 厄介な事に、誰かが既に轍を辿っているようです。

 急がなければ…。

 

 

 

 

 

 

 流石に車で追いかけると音でバレるので、ダッシュで追いかけました。

 引き離される前にシオと追跡者(リンドウさん・ソーマさん・エリックさんです)を発見できた(された、とも言います)のは、幸運だったのか不幸だったのか…。

 

 しかもシオときたら、ここまで来る間に適当なアラガミをツマミ食いしていたようです。

 ご丁寧に、以前から嫌いだったシユウは齧って放置してるし…好き嫌いはいけないと躾けようとしたんですけどね。

 …人間に言い換えれば、生肉とかタマネギに齧り付いている感覚なのかもしれません。

 でもアラガミの調理法とか誰が知ってるんですか…。

 

 ともかく、発見されたシオは、どうやら一度会っただけのリンドウさんの事を覚えていたようです。

 「あー、ひさしぶりー」と言いつつ…あっ、こら近寄るんじゃありません!

 リンドウさんだけならともかく、最近マイルドになったと評判のアラガミ絶対仕留めるマンも居るんですよ!

 エリックさんは……どうだろ、子供に暴力を振るうような人じゃないと思いますが、特異点だしなぁ…。

 

 とにかく、ソーマは既に臨戦態勢に入っています。

 まだ息が整っていませんが、最早一刻の猶予もありません。

 

 懐から取り出したのは、マスターから持たされた煙玉。

 対人用秘密兵器と言われましたが、さてどんな物か…。

 何処に投げる?

 リンドウさん達のすぐ傍…いえ、飛んでくる煙弾を感知されて撃墜される恐れがあります。

 それに、煙玉の目的はソーマ達の目を誤魔化す事ではなく、シオの存在を覆い隠す事。

 

 …よし。

 作戦開始。

 

 まず、シオとリンドウさん達の間を狙って、煙玉を高く放り投げます。

 

「マスター直伝、煙玉!」

 

 こちらに次に叫んで注意をこちらに向けます。

 すぐに物陰を走ってシオに向かう。

 

 煙玉が爆発した音。

 むぅ、流石マスター直伝、火を点けたら粉塵爆発でも起こりそうな具合の煙幕です。

 ゴッドイーター3人組が身構え、煙幕から抜けようとする間に、一気にシオに接近して掻っ攫う!

 

 そのまま走って逃げました。

 

 

 

 

 ふぅ、何とか保護完了。

 「ありさー、どこいってたんだー?」と可愛らしく首をかしげるシオに、なんかこう劣情が沸きましたが、今は言ってる場合じゃありません。

 シオの姿を隠しながら、マスターと決めた合流地点へ向かわないと。

 

 

 

 …そんな事を考えてたら、並走しながら「よう」なんて言うリンドウさんが目に映りました。

 反射的に射撃してしまった私に、罪はあるでしょうか…と言うかまたリンドウさんに向けて撃つ事になるとは…。 

 

 

 

 

神変月リンドウ視点日

 

 

 いやー、もう最近は事態が一気に動きすぎだぜ。

 特異点の事もそうだし、姉上殿がアーク計画の事を知っていたのもそうだ。

 オマケにそれを知ったのがあの農園でシオに会った時で、更にシオの事を支部長に報告したのも姉上。

 

 …姉上殿よぉ、アンタの立場どうなってんだい?

 そりゃ、指揮官としちゃ作戦…というかエイジス計画、アーク計画成功の為にシオの事を報告しなくちゃならんのも分かるよ。

 でも、あの農園の主への義理はどうなる?

 アイツも承知の上だ、と言ってはいたが、行動があっちにフラフラ、こっちにフラフラ、蝙蝠みたいじゃないか。

 

 「事の原因を考えれば、見限りたくもなるさ」なんて言ってたが、その原因も教えちゃくれない。

 ついでに言うと、初めて(だと思う)の春に未練もタラタラなようだった。

 

 とにかく、アーク計画とやらには、正直俺は賛同できない。

 なら、代替案として終末捕食を防ぐ方法を見つけなきゃならん訳だが……。

 

 …特異点を始末する以外に、今のところ何の方法も見つからない。

 とにもかくにも、特異点…シオを探し出さない事には、何もできなかった。

 

 

 半ば状況に流されるままに動いている。

 なら、今はこの流れに乗ろう。

 流れが乱れたチャンスを見逃さずに、濁流から一気に抜けるんだ。

 抑制剤を確保しておこう。

 フェンリルから離反されたと看做されたら、もう抑制剤は手に入れられない。

 そのままアラガミ化しちまうが…抑制剤が無くなるまでにカタを付ける…どんな結果になっても。

 

 

 

 …と考え、暫くは流れに乗っていた。

 支部長からの命令である、農園の捜索にも逆らわなかった。

 幸いと言うべきか、農園にはシオも含めて誰も居ない。

 手荒な真似をせずに済んだ。

 

 車の轍を見つけて、それを追う事になったのもいい塩梅だ。

 ソーマとエリックがついてくる事になったが、こいつら結構話せる奴らだからな。

 …交渉決裂して、戦う事になったら厳しいが。

 やれやれ、アラガミ相手じゃなくて人間相手、しかも顔見知りを相手にする事を考えなきゃならんとは…。

 

 さて、車をゆっくり進める事十分ちょっと。

 何体かのアラガミの死骸…喰い遺しを見て、シオが近くに居る事に確信を持った。

 

 事実、見つけたはいいんだが…相変わらず暢気そうな顔してるな、コイツ。

 

 

 …あかん、やっぱ殺せんわ…。

 少なくとも、ギリギリの瞬間までは…。

 

 

 そうなると、問題になるのは隣の二人。

 ソーマは言わずもがなアラガミ発見=殲滅だし、エリックは…これで意外と決断する奴だからな。

 しかも、『手を汚すのは僕一人で充分だ』みたいに、私心を押し殺して、更にその後は誰にも悟られないように普段のペースを維持するタイプ。

 

 どうやってシオを逃がそうか、この二人を押し留めようかと悩んでたんだが…タイミングがいいなぁ。

 

 

 アリサの声が聞こえたと思ったら、突然の煙幕。

 どういう経緯でここに居るのかは分からないが、シオを確保しに来たのは想像がついた。

 

 …動くならここだ。

 銃撃が飛んでこない事だけ祈って、煙幕の乱れを探す。

 

 見つけた。

 どうやらアリサはシオを掻っ攫って、このまま走り去るつもりのようだ。

 悪いが、俺も便乗させてもらうぜ。

 

 

 

 

 …追いついたはいいけど、アリサからの射撃を喰らうのは2度目だな。

 まぁ避けたけど。

 

 

 

 

 

 

 

神変月雨宮リンドウ視点2日

 

 微妙に警戒されてたが、シオの事について今まで黙秘していた事もあり、何とかアリサは納得してくれた。

 これからどうするのかと聞くと、農園の主…いや、もう農園は接収されるだろうな…と合流するつもりらしい。

 言うまでもないが、俺もついていく。

 断られたって知らないね…いや、断られなかったけどさ。

 

 

 ところで、ナビゲーターとの発信機付き通信機を捨てたんだが、その直前にちょっと情報が入ってきた。

 エイジス島の事なんだが…何でも、あっちにマスク・ド・オウガが現れたらしい。

 

 マスク・ド・オウガが特異点ではないって情報は知らされているんだが、珍しいアラガミなのには違いない。

 何より、エイジス計画…正確にはアーク計画…の邪魔になるアラガミだって事には変わりない。

 もしもアイツが何らかの理由で人間の敵に回れば(そもそもアラガミが人間の味方をしていたのが不思議で仕方ないが)、途轍もない被害が出るだろう。

 仕留められるなら仕留めたい、という事か。

 

 それに、マスク・ド・オウガの正体は結局不明なままだ。

 好奇心もあるかもしれんし、実はあっちが本当の特異点、或いは特異点2号って事も考えられる。

 

 アリサが「マスターがあっちで陽動している筈」と言っていたが……まさか…なぁ?

 しかし、そう考えるとあいつの異常な体力や腕力も説明はつくか?

 下手なゴッドイーターじゃ足元にも及ばない身体能力は、実は元ゴッドイーターで…腕輪が無いのは、破壊されたけど何らかの理由でアラガミ化を免れていた為とか?

 

 …流石にそれは無いか。

 そもそも、マスク・ド・オウガがアイツだとしたら、アラガミ化を免れてないじゃないか。

 それなら、姉上殿が言っていたように、アイツがマスク・ド・オウガを飼い慣らしているって方がまだ可能性がありそうだ。 

 

 

 さて、奴さんとの合流場所とやらに到着した。

 ……のはいいが、姿が見えない。

 アリサの話じゃ、合流できなかったらフェンリルに捕まったものと仮定して行動する…という事だったが、当のアリサは「まさか、マスターに限って…」と不安そうにしている。

 

 だが、言っちゃ悪いがとても逃げ切れたとは思えない。

 エイジス島でどんな陽動を起こしたのか知らないが、あそこの警備の厳重さは侮れない。

 増して、今はゴッドイーター達まで警備についている。

 

 通信で最後に入った情報通り、マスク・ド・オウガにかまけている隙を狙って逃げればワンチャンあると思うが……フェンリルにとっても、アイツの存在は色々な意味で重要だ。

 特異点の事を知っていながら匿っていたと言う点だけで、超が付くほどの重罪人。

 加えて、奴を囮にして本物の特異点…つまりシオを誘き寄せるという手も使えるかもしれない。

 見つかったらそうそう逃げ切れるような状態じゃないだろう。

 

 

 どうする?

 アリサとしてはすぐにでも助けに行きたいようだが、シオを連れて行く事はできない。

 それこそ、飛んで火に入るナントヤラだ。

 行くなら、俺とアリサのどっちかだろうな。

 そして一人はシオの警護兼抑え役。

 

 ま、抑え役はアリサだろうな、この場合。

 俺もシオと面識はあるが、親しいって程じゃない。

 何かあった時、ちゃんと指示に従ってくれるか分からない。

 

 

 とにかく、一度身を隠せる場所を確保せにゃならん。

 出きれば情報を仕入れられる所がいいが…とりあえず、適当な集落にでも潜り込むかね。

 

 

 

 

神変月主人公視点日

 

 

 ドジった。

 現在、俺はエイジス島内部…恐らくは最深部にある一室に閉じ込められている。

 要するに捕まった。

 

 うーむ、アラガミ状態での継戦時間の限界を見誤ったか…なんといううっかり。

 いや、うっかり以前にあれだけ長時間、しかも多数のゴッドイーター達を相手に激戦するなんて、今まで無かったんだけどね。

 アラガミ化した状態での戦いは、大抵短時間で終わってた。

 ついでに言うと、全力を出した後はその場でぶっ倒れるとかデスワープばっかりだった。

 激しい戦闘や運動をすると、変身時間が削れるのか…盲点だったが、基本中の基本だな、ゲーム的に考えて。

 

 まーとにかく、仮面ライダーアラガミやってエイジス島付近で暴れ回り、陽動をかけたのはいいが、自爆してお縄になってしまったと。

 

 現在は随分と懐かしい檻に放り込まれ…確かループ序盤で同じ様な檻に入れられたぞ…、手錠やら何やらで過剰に拘束されてしまっている。

 自殺を防ぐ為か、口さえ開かせてもらえない。

 …あの、トイレに行きたくなる前に、早い所用件を話してほしいんですけど…。

 

 

 檻の向こうの壁に取り付けられたディスプレイには、シックザール支部長が非常に厳しい表情で写っている。

 よく見えないが、後ろの方では何やら研究者なのか技術者なのかよー分からん(そしてマッド臭い)人達が蠢いて騒いでいる。

 …俺の体を検査したのか?

 倒れて気絶している間にここに放り込まれたから、何されたのか分からんが…。

 

 …検査の結果が何か分かったのなら、俺にも教えてほしいな。

 我が事ながら、自分の体がどうなっているのか未だに分からん。

 アラガミ化はまだいいが、のっぺら集合体とか、なんかサイバースペースに入り込めるとか、マジ分からん。

 …でも一番謎なのは、鍛えただけで超人と化したハンターボディなんだよな…。

 

 

 とりあえず、この拘束から抜け出すのは、今は無理だな。

 アラガミ化も暫く出来そうに無い。

 と言うか体がダルくて眠い。

 何か薬物使われた可能性もある。

 

 …支部長の視線が痛いけど、このまま一眠りするか…。

 

 

 

 

 

「起き給え」

 

 

 

 

 

 

「…起き給え」

 

 

 

 

「………誰か目覚ましのベルを鳴らせ」

 

 

 

 ジリリリリリ

 

 

 ファ!?

 

 

「起きたか。 この状況でよく眠れるな」

 

 

 だって寝るしかする事ないやん。

 呼吸がスッゲェし辛いけど。

 

 

「さて、久しぶりだな。

 いつぞやの会合以来か。

 …ああ、口の拘束具を外してやれ。

 自殺はするなよ」

 

 

 しねーよ。

 

 ガチン、と音がして、顔の下半分を覆っていた拘束具が外れた。

 ふぅ、息苦しかった。

 とりあえず。

 

 

「腹減ったからメシとトイレプリーズ」

 

「便所飯というやつかね?」

 

 

 おいやめろバカ。

 

 

「さて、冗談はともかくとして、やってくれたものだな。

 只者ではないと思っていたが、君が特異点を擁護していたとは。

 ……そして…マスク・ド・オウガ」

 

「仮面ライダーアラガミでオナシャス」

 

「生憎、既にデータベースにマスク・ド・オウガで登録され、学術名もついている。

 変更は不可能だ。

 人間に変身するアラガミなのか、アラガミに変身する人間なのか…可能な限り調べたいところだが、生憎時間がない。

 最低限、君が本当に特異点でないのかを調べたが…」

 

 

 支部長はチラッと目を横にやった。

 多分画面の向こうの写らない部分に、何か検査の結果が出ているのだろう。

 

 

「どうやら本当に、特異点ではないらしい。

 君を起点として終末捕食が起こせないかと考えたが、不可能なようだな。

 

 細胞も、マスク・ド・オウガの状態は分からんが、今の君の体は人間そのもの…いや、ゴッドイーターの物だ。

 それでいて腕輪も無ければ抑制剤投与の形跡も無いのに、アラガミ化の兆候すらない。

 いや、マスク・ド・オウガに変わるところを考えると、自力でアラガミ化をコントロールできているのか?

 時間があれば是非ともその仕組みを解明したいところだが…繰り返すが、生憎時間がない。

 

 残念だよ…君程の人間がアーク計画に参加してくれれば、どれ程頼もしく、そして新世界で生きていく人間の力になった事か。

 既に途絶えたと思われていた植物の育成、マスク・ド・オウガとなった時の戦闘力…。

 

 だが、例えどんなに貢献するとしても、新世界にアラガミの痕跡を一つたりとも残す訳にはいかん。

 悪いが、君の方舟への乗船券は無効となった」

 

 

「…話の腰折って悪いけど、方舟に乗る人って検査とかしてんの?」

 

 

「当然だろう。

 性格や思想も考慮に入れているが、身体的な問題はそれ以上に注意している。

 密閉された宇宙船内で感染症なんぞ発生したら、目も当てられん。

 危険物持込など持っての外だ」

 

 

 …という事は、次回ループで方舟に入ろうとしても、検査で弾かれるか…?

 いや、肉体的にはアラガミじゃなくて人間だって言ってたから、仮面ライダーアラガミにならず、普通のゴッドイーターとして振舞っておけばワンチャンあるか…?

 

 

「駄目元で聞いておこう。

 こちらに協力、並びに情報提供する気はあるかね?

 多少でも協力するなら、扱いも考えよう。

 具体的には食事を、内容によっては追加でトイレを」

 

「協力しなかったらここで漏らせ(大)と申すか」

 

「単純だが効果的だろう?

 戦いには耐えられても、精神的な汚辱には耐性が無い人間は多いよ。

 放置しておけばいいから、手間がかからないのもポイントだ」

 

 

 …なんか支部長が妙にはっちゃけているような。

 いや、この程度ではっちゃけているってんなら、MH世界のG級連中は超新星爆発並みだけど。

 

 …ふむ、このはっちゃけ具合からすると…。

 

 

「…もうすぐ死ぬから、威厳なんて必要ないとか思ってません?」

 

「突然何を言い出すのだね」

 

「いや、色々やってて黒幕っぽいけど、私心を殺しての行動みたいなんで」

 

 

 ぶっちゃけ、ゲームのエンディング覚えてるし。

 

 

「君の想像力は評価に値するが、それが正解かはまた別の問題だな。

 もう少し話をしたい所だが、生憎…急用が入ったようだ」

 

 

 またチラリと画面の外に目を向ける。

 …?

 ワザとらしい言動は今更だが、どうにもそれに加えて嘘くさい。

 

 

「既に特異点は我々の手の内にある。

 アーク計画は最終段階に入った。

 身の振り方を考えるなら、今のうちにしておきたまえ。

 それではな」

 

 

 映像が途切れた。

 

 …ブラフ、ハッタリだ。

 支部長にしては下手なウソだ。

 

 もしも本当に特異点が、シオがフェンリルの手の内にあるというなら、態々俺を特異点かどうか、なんて調べる必要はない。

 ハッタリかまして、俺の協力を得ようとしているだけだ。

 

 その筈だ。

 

 

 

(…映像が途切れても、マイクが稼動し続けている可能性はある。

 ヘタな事を言うと、それだけ情報が漏れる。

 独り言もそうそう言えんな。

 

 …むぅ、日記も書けない。

 動けない。

 心を落ち着かせる手段が無い…焦りがあるな、鬱陶しい)

 

 

 あからさまなハッタリの狙いはこれだろうか?

 焦りを一つ吹き込んで放置しておけば、何もしなくても消耗は激しくなる。

 上手く行かないなら行かないで、脱出されないかだけ見張っておけばいい、と。

 

 

 うーむ…。

 焦りはともかくとして、実際どうしたものだろうか。

 

 シオが本当に捕らえられたのかは分からないが、このままここに囚われ続けるのも面白くない。

 脱出しようにも、長時間の仮面ライダーアラガミ化の反動なのか、霊力も大分少なくなっているし、こうもガチガチに拘束されていると縄抜けの術も使えそうにない…最初から使えないけど…。

 

 吹き込まれた焦りも合間って、「多少の情報を流してでも、自由を得た方がいいんじゃないか?」とも思う。

 

 アリサの性格なら、俺やシオが捕らえられたと知れば、フェンリルに反逆してでも助けに来るだろう。

 と言うか、実際シオを確保しに行った時には、フェンリルから切り離されるのも覚悟の上だったようだし。

 

 実力で言えば、今のアリサならそうそう捕まる事はないと思うが、俺を人質にされたら?と言われるとな…。

 ミイラ捕りがミイラになっちまう。

 

 だからと言って何ができる訳でもなく。

 もう一回変身できるようになるまで、空腹を堪えながら寝転がっているしかないのだった。

 

 …便意が無いのは救いだが、この空腹の恨み、必ず晴らしてくれる…。

 

 

 

神変月雨宮リンドウ視点日

 

 

 俺は今、密かにエイジス島に侵入しようとしている。

 勿論一人…で行こうとしていたのだが、サクヤにバレた。

 と言うか、集落にもぐりこんだ俺をよく見つけられたもんだ。

 「リンドウだったら、多分こうする」と予想して動いただけ、だそうだが…そこまで読みきられるのか…将来尻に敷かれるな…。

 

 一悶着あって、ド突かれたのはいいとして、結局二人での進入だ。

 

 目的は、アイツ…元農園の主の奪還だ。

 正直言って、時間が無い。

 

 と言うのも、シオが日に日に特異点としての本能に目覚めつつあるからだ。

 今までは何らかの手段で…例えばメシを食わせたりして…本能を抑え込んでいたのだが、唯一それが可能だった元農園の人が囚われてしまっている。

 このままでは、そう遠くない内に完全な暴走状態に陥り、終末捕食が発生するか…そうでなくても、俺達の制止を振り切ってエイジス島に突撃して、支部長に捕まってしまうのがオチだ。

 

 そういう訳なんで、何とかして農園の主を奪還し、シオを抑え込ませなければならない。

 今はアリサがあの手この手で宥め、農園の主と同じ方法を試してもいるようだが、その効果は今一つらしい。

 …やり方は教えてくれなかった。

 サクヤには話したらしいのだが、「ダメ絶対!」と言われて引き下がらざるを得なかった。

 

 …まぁ、アリサがシオを落ち着かせた後、服が少し乱れたり、色々痕跡が残っていたりしたんで、想像はついてるんだが…確かに俺がやるのもな…。

 と言うか、シオを相手にそういう風に見れないって…。

 

 とにもかくにも、終末捕食を防ぐ…最低限、時間を稼ぐ為にも、アイツを奪還しなきゃならん、て事だ。

 

 しかし、流石にエイジス島は警備が厳しい。

 しかも、既に俺がフェンリルから離反した事は通達されているようだった。

 隊長、しかも特務を負う人間という立場を利用して入り込む事も出来ない。

 更に厄介な事に、その辺を適当に壊して入り込む事も不可能だ。

 

 

 どうすればいいか悩んでいる時、サクヤが進入ルートの情報を持って来た。

 アナグラの地下から、エイジス島へ入り込めるルートがある…か。

 コウタと話をしていた時に、地下道の話が出てきて、それで閃いたそうだ。

 

 しかし、これは進入した後が問題だな。

 ここから入った事に気付かれたら、確実に退路を塞がれる。

 完全に気付かれずにアイツを奪還できるか…もしも無理だったら、施設を壊してでも脱出ルートを作らなければならない。

 

 

 …とは言え、現状、これ以外に方法は無い。

 繰り返すが、もう時間が無いのだ。

 アリサもいつまでシオを抑えておけるか分からない。

 

 今はこの作戦に希望を託すだけだ。

 

 

 

 

 

 結論から言えば、進入は上手く行った。

 どうやら警備が異常に厳しいのは、外周部だけだったらしい。

 考えてみりゃ、アーク計画の正体に気づかれるようなシロモノを設置している場所だ。

 例え警備員だったとしても、そうそう配置できないだろう。

 不安だろうがなんだろうが、外部からの干渉をシャットアウトして、内部はカラっけつにせざるを得なかったんだ。

 だっつーのに、もう使われてないとは言え直通ルートを塞ぎ忘れていたってのがマヌケな話だが…何かの罠だったんだろうか?

 

 とにもかくにも、エイジス島の中には人は殆ど居なかった。

 あるのは監視カメラやトラップと、数人程度の技術者だけ。

 この中から奴さんを探すのには骨が折れるんで、適当に技術者を拉致って尋問にかけた。

 

 まぁ、こんな重要機密を任せられる奴だけあって、随分と骨があったな。

 奴はどこだ、と聞いて、多少痛めつけて吐かせたんだが…まさか4回もウソの場所を教えるとは…。

 こういう侵入者に囚われた事態を想定して、予め侵入者を誘い込む為の場所を作ってあるのは予想していた。

 事実、最初の1回を吐かせるのは簡単だったが、それは迎撃用の部屋だとすぐ分かったからな。

 ウソを吐くのは苦手なタイプだったらしい。

 

 だが、普通は1度それを見破られたら観念するもんだ。

 …ウソを教える度に、あまり大っぴらにはできない手段で痛めつけた。

 

 

 それでも中々本当の事を教えなかったのは、それだけコイツも覚悟を決めてるって事なんだろうか。

 

 ともあれ、何とか救出には成功。

 どうやら監禁されていた部屋を見張られていたらしく、警報が鳴って、シャッターが下りたが……ブチ抜いた。

 対アラガミ防壁並みの壁ならともかく、単なるシャッターなんぞ、ゴッドイーターの前ではダンボールも同然だ。

 

 …農園の主まで、蹴り一発でシャッターを凹ませたのは本気で驚いたが。

 アリサが本気か冗談か、NOUKAはゴッドイーターより強いとか言ってた事があったが、割と洒落にならん…。

 

 

 後はまぁ、普通に脱出できたな。

 かなりの荒事にはなったが、内側から外側への侵攻というのは想定していなかったのか、思っていたよりは楽だった。

 出きれば、アーク計画の証拠となる写真でも撮っておきたかったが…流石にそこまで欲を張れない。

 

 

 一番厄介だったのが、エイジス島から脱出した直後だ。

 何故かって?

 決まっている。

 

 極東の腕利きゴッドイーター達が、エイジス島の警備についてたからだよ。

 多分、特異点確保の為に寄越された人員が、そのまま残ってたんだろうな。

 

 内部で騒ぎが起こって、その原因が俺とサクヤだって事が分かった時、あっちはかなり混乱していた。

 「リンドウさん、何でこんな事を!?」「サクヤさんまで!エイジス計画をぶっ壊す気ですか!?」と、色々言われたんだが…悪いが説明している暇は無い。

 

 

 …今頃、相当モメてんだろうな…。

 俺はともかく、サクヤは人望あったからなぁ…。

 それが反乱なんて起こしたら、そりゃ極東ゴッドイーターに限らず混乱もするわ。

 

 やれやれ、結局サクヤもフェンリルの反逆者になっちまったか。

 アラガミ化の抑制剤も、もう残り少ない。

 部屋に戻ればまだあると思うが、この状況でノコノコ帰ったらとっ捕まるだけだしな。

 

 …お互い、アラガミ化する前にどうにかするしかないか。

 『介錯』なんぞ御免蒙るしな…。

 

 

 

 

 ともあれ、何はなくともシオを抑え込んでもらわないといかん。

 急いでアリサとシオを匿っている集落に向かった。

 

 

 …で、集落の家に入ろうとしたら……サクヤからシャットアウトを喰らった。

 何事?

 




ツィッターにコメントを頂いていたのに、今更気付きました。
…どうやりゃ返信できるんだ、コレ…。
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