※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

95 / 611
ただいま実家から戻りました。
実家の妹が、「直接お別れしたいだろうから」とお犬様の遺骨を取っておいてくれました。
ありがとう妹よ。

エアロバイク買いました。
目指せ一日40分。
暇潰しは討鬼伝とGERとMHXかな。



第95話

 

 

神変月雨宮リンドウ視点日

 

 

 ようやくここまで来た。

 色々な意味で予想外な事が山ほどあったが、ここを乗り切れば一段落だ。

 

 決意表明でもしたいところだが、生憎支部長が融合したアラガミはそんなヒマを与えてくれそうにない。

 …それに、サクヤの前で言ってもノロケになるだけだしな。

 

 

「降り注ぐ雨を…あふれだした贖罪の泉を止める事などできん。

 その嵐の中、ただ一つの舟板を手にするのは…この私だ!」

 

「だから一般人にもっと分かるように喋れ!」

 

 

 カルネアデスの板の話なんぞ、よっぽど上等な教育を受けられた奴じゃないと知らないんだよ!

 

 とにもかくにも、戦闘開始。

 

 

 

 …数回打ち合っただけだが、成程強い。

 純粋に火力が高い。

 その分、意外と体は脆そうなんだが…当てるまでが一苦労だ。

 

 この動き、多分支部長の人間としての理性が残っているんだろう。

 普通のアラガミが相手なら、どれだけ強力でも、動き回って霍乱して隙を突く。

 初見の相手でも、同じように動き回り、距離を取り、行動パターンを把握してから切り込んでいくもんだ。

 

 だが、このアラガミは行動パターンを把握させない。

 大火力で一気に押し切りに来ている。

 幾つか手札は見えたが、まだ隠している。

 

 支部長は実戦慣れしてないみたいだが…よくもまぁ、ここまでアラガミの体を上手く動かせるもんだ。

 付け入る隙がありゃしない。

 

 だが、これは「戦う人間」としての強さじゃないな。

 道具を上手く使う人間の強さだ。

 予め武器や攻撃の役割を上手く組み合わせるようにデザインされて、正確なプログラムによってそれを動かし、遺された支部長の理性によって揺らぎを与える…。

 そんな、よくもまぁ成り立ったものだと歓心する程のバランスだ。

 こんなモン、どれだけ繊細に計画しても、机上の空論以上にはならないだろうに。

 

 それを可能にさせているのは、支部長の執念か、それともアラガミ側に宿った『何か』なのか…。

 

 

 

 だが、そんな奇跡も長くは続かない。

 強靭な精神力の賜物だろうが、アラガミ側に宿った何かの産物であろうが、バラバラの要素をツギハギにして、更にスペック差で強引に押し切ろうとしている事には変わりなかった。

 そもそも、俺達ゴッドイーターは一般人よりも強化されているとは言え、相手はその更に上を行くアラガミ達を相手にしてきたのだ。

 自分より強い相手と戦うのが当たり前なんだ。

 

 今も、この厄介なアラガミの動きを把握し、対応できるようになってきている。

 最初の猛攻で決められなかった事が…いや、そもそもこうやって戦いの場を避けられなかった事が、支部長の敗因だ。

 

 アラガミになった支部長も、それを察しているのだろうか。

 それとも単に奇跡のバランスの限界が近付いているだけなのか、徐々に動きが乱れてきている。

 そうなると、『事故』に警戒する必要はあるが、むしろ付け入る隙は増える訳で。

 

 男女に分かれているアラガミの体に徐々に傷が増えていき、髪が、浮かんでいる輪が、装甲が。

 

 そして、ソーマのチャージクラッシュによって、男の部分に致命的な亀裂が入ったとき。

 

 

 

 それが起こった。

 

 

 

『ヌッ   グ   オ  オォぁ」

 

 

 

 アラガミから発せられる声。

 致命傷を受けた苦悶の声かと思ったが…違った。

 

 突然膨れ上がる、異様なプレッシャー。

 思わず一歩下がりそうになった。

 

 

「ぁぁ   ァ  ぁああああああ!!!!』

 

 

 

 プレッシャーは、明らかに目に見える『何か』に変化した。

 苦しんでいるアラガミ…いや、支部長は、体から赤い『何か』を放ちだす。

 

 波紋のようにも見えるそれが広がってくる。

 新手の攻撃かと思い、それぞれ距離を取り、防御体勢を取った。

 俺も赤い『何か』に触れたんだが、ダメージは無かった。

 ダメージは。

 

 最初に気付いた事は、神機を盾形態から剣形態に戻せない事。

 次に気づいたのは、赤い『何か』に触れた感触に覚えがある事。

 

 つまり。

 

 

「霊気!?」

 

「…霊気?

 何言ってやがんだ、リンドウ」

 

 

 ソーマが頭のおかしい奴を見る目を寄越すが、構っているヒマは無い。

 と言うか、俺だって好きで霊気なんて呼んでるんじゃねーよ。

 コレの事を俺に教えた奴がそう呼んでただけだよ。

 

 

「全員距離を取れ!

 コイツを受けると、神機に影響が出るぞ!」

 

 

 赤い『何か』の影響から逃れようと、少しでも離れるが、赤い波はエイジス島を覆おうとするかのように広がっていく。

 最悪な事に、支部長の苦悶の声も治まり、フラついてはいるが行動可能になったようだった。

 

 

『ぬぅ…なんだ、この溢れてくる力は…。

 アラガミには、まだ知られぬ力があったというのか…』

 

 

 やっぱ、支部長が設計した力ではないようだが…この赤い波、あのアラガミの体にも影響を出してくれないものか。

 …無理そうだな。

 今まで与えたダメージは癒えていないようだが、動き自体はスムーズになっている。

 …むしろ、今までよりも素早くなったと思った方が良さそうだ。

 

 オマケに、赤い波は今以て消えていない。

 これがアイツが見せた霊力と同じ物なら、時間をかければまた元通り動き出すだろうが…そんな時間がある筈も無かった。

 剣使いは防御体勢の為に神機を盾にしたまま止まり、銃使いはそもそもオラクルを打ち出す事ができない。

 

 …盾と銃を鈍器に使って戦えってか。

 笑えねぇ冗談だ…。

 

 

「全員、一端下がれ!

 神機は時間が立てばまた動き出す。

 それまで俺と…ソーマが時間を稼ぐ!」

 

「チッ…!」

 

「リンドウ!」

 

「早く下がれ!

 んで神機が動くようになったら、遠距離からの狙撃に徹しろ!」

 

 

 そうでもしないと、戦いようがない。

 この赤い波だって、放出し続けられる訳ではないだろう。

 突然使えるようになった力なんで、支部長もあまり当てにはしたくない筈。

 

 とは言え…。

 

 

『成程、確かに今の私と戦うにはそれしかないだろう。

 だが…追い詰められたこの身だが、防戦一方で凌げるとは思うな…!』

 

「格上が相手でも、余計な色気を出さずに守りに徹すればそうそう負けないもんだぜ?

 泥試合にも慣れてるしなぁ!

 背中は任せたぜ、ソーマ!」

 

「…仕方ない、か…」

 

 

 強がり以外の何者でもないんだけどな!

 

 

 アラガミの髪が振り乱され、俺達に襲い掛かってくる瞬間。

 

 

 

 

 3発の射撃音が響いた。

 今にも襲い掛かろうとしていたアラガミが、バランスを崩す。

 

 

 なんだ、もう神機が回復したのか!?

 と思って振り返ると……そこに居たのは、霊力を使うと嘯く胡散臭いあの男。

 

 

 

 …おい、その神機は誰のだ?

 

 

 

 

 

神変月主人公視点日

 

 

 間に合ったと言うべきか、間に合わなかったと言うべきか。

 俺がエイジス島中心部に着いた時には、既に戦闘は佳境に入っていた。

 既に相手の動きを見切りつつあるゴッドイーター達に、満身創痍とまでは言わないが、あちこち破壊されているアラガミ。

 一発逆転を許すほど、この場に居るゴッドイーター達が甘い訳でもなし、これは大勢は決しただろうか?

 

 それにしても、あれがアルダノーヴァ、そして星を喰らうアラガミ・ノヴァ…。

 思っていたよりデカいな。

 

 だが、これは俺が乱入する必要はないかな?

 放っておいても勝ちそうだ。

 …そうなると、ゲーム版のエンディングに到達…だろうか?

 

 ゲームと違ってソーマとシオに殆ど面識はないが…そうなると終末捕食ってどうなる?

 シオが月まで持って行くのが、無くなるんだろうか?

 

 そして、そのシオはノヴァの下で力なく倒れている。

 …わかってはいたが、間に合わなかった、か。

 ツバキさんからも、既に特異点コアの摘出は済まされている、と聞いていた。

 

 もう急いでも無駄だ、って聞かされたんで、ちょっと寄り道してきたんだが…やっぱりあれって時間稼ぎだったんだろうか?

 アレに突き合いさえしなければ、シックザール支部長がアルダノーヴァに融合する前に、人間ボディを狙撃して終わりにできたかもしれんのに。

 

 

 …ともかく、コアが摘出されてしまっているという事は、あそこにあるシオの体は文字通り抜け殻だ。

 真言立川流で霊力、生命力を流し込み、生命活動を続けさせる事はできるかもしれない。

 だが、恐らく意識は戻らない…宿らないだろう。

 

 …ゲームでもシオの意識はノヴァに宿っていた。

 コアにこそ意識・魂があり、体は器に過ぎない…。

 

 

 …こんな事を考えて誤魔化してはいるが、やっぱり実際に見るとショックだな。

 まだ死んだと決まった訳じゃない、シオの意識を器に戻せる可能性があるかもしれない、と言い聞かせているが…。

 

 

 

 そうやって傍観して、少し距離を詰めた時だった。

 突然膨れ上がるプレッシャー。

 

 これは霊気だ。

 俺の霊力よりもずっと大きな霊力だ。

 

 まさか、と思って覗き込むと、やはりと言うべきか、アルダノーヴァから赤い波動が放たれている。

 …これ、なんかシオの体内に残ってる筈の俺の霊力と似てる気がするんだが。

 

 …ちょっと考えてみよう。

 霊力とは魂の力。

 シオ、特異点の魂はコアに宿っているっぽい。

 コアはノヴァに取り込まれている。

 

 ……まさか、ノヴァが霊力に目覚めた?

 で、GE2の感応波を受けたような感じで、アルダノーヴァまで目覚めた?

 

 しかも、タイミング的に考えると、俺が距離を詰めた瞬間…。

 自分以外の存在の霊力を感知した事が切欠!?

 

 

 …いやいや、この際理由は置いとこう。

 この広がっていく霊力が、外にどんな影響を及ぼすか…いきなり感応種誕生祭とかはこの際考えない。

 

 今一番に考えなければならないのは、この場に居るゴッドイーター達への影響だ。

 予想通りと言うべきか、神機が正常に作動しなくなっているようだ。

 しかも、あの波動を警戒して防御態勢を整えていたもんだから、その状態から動かせない…不意打ちっつーか初見殺し以外の何者でもないな。

 

 リンドウさんとソーマが殿を務めて、一端全員下がる…か。

 思い切った判断をしたもんだ。

 

 …どっちにしろ、俺が乱入するしかなさそうだけどな。

 

 

 

 

 退避するアリサ達の前に姿を見せる。

 

 

「よっす」

 

「マスター!? ツバキさんは!?」

 

「戦いは長引いたけど、切り札が上手く決まってくれた。

 今はあっちで気絶したままだ。

 暴れられても困るから、拘束はしてきたけど」

 

 

 …ウソです。

 戦闘開始と同時に煙幕を使い、いきなりアラガミ化して開幕ブッパ。

 何もさせない、認識させないうちに超高速攻撃でケリをつけました。

 それでもカンで反撃を当ててきたのには…まぁ驚いたな。

 強さ云々じゃなくて、一線から退いてたのにまるで鈍ってなかったって事に。

 

 煙が張れた時、流石にツバキさんも唖然としていた。

 仮面ライダーアラガミを俺が使役している、と考えてはいたが、変身出来るとは夢にも思っていなかったらしい。

 まぁ、この世界観じゃ普通は無いわな。

 アラガミ化=死、或いは介錯だし。

 

 

 …んじゃ、なんでこっちに来るのが遅くなったかって?

 

 ……アレだ、空気を読まずに悪い癖が出たっていうか、分かれたとは言えイイ仲になった相手の話を無碍にはできんかったって言うか…。

 

 

「…拘束……ツバキさんを……。

 ……………(クンクン)………………………………」

 

「一番確実に無力化する方法やったんや…」

 

 

 

 

 アリサのジト目が痛いです。

 要するに色仕掛けに引っかかりました、ハイ。

 

 

 堪え性の無さもここに極まる。

 人類滅亡の瀬戸際で、ナニをやっとったんだろうか…。

 

 まぁ、ツバキさんから聞いた話が本当だったら、今から急いでもシオを救出する事はできないし、急いでもあんまり意味無かったし。

 結局事実だったし。

 ツバキさんを無力化できたはいいけど、気絶まではいかなかったからな…もしも拘束を解いて後ろから強襲されたらと思うと、気が気でなかったのも事実。

 「しっかり無力化しておく事だな」って、色々な意味で意味深なセリフまで吐かれて。

 それに加えて、ツバキさんからの秋波がね…。

 

 

 

 …まぁ、なんだその、「最後に」って言われたし、ちゃんとやっていけばも敵対しないって約束したし。

 

 

 

 

 

 いいシチュエーションでくっ殺プレイできたし。

 縛ってるから尚良し。

 ちなみに、ツバキさんはアラガミ化攻撃では気絶しなかった。

 何故現在気絶状態になっているかはお察しである。

 

 

「マスターへの罰は、極東総出で考えるとして…。

 状況は分かりますか?

 何かいい案でも?」

 

「おう、あるある。

 あの赤い波で神機が動かなくなってるんだろ?

 俺が近くに行けば無効化できるよ」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。

 そうなると、アナタもあのアラガミの前に行くのよ?

 戦えるの?

 と言うか、腕輪も無いのに神機まで持ってるし、大丈夫?」

 

「大丈夫っすよサクヤさん。

 神機を使える理由は…全部じゃないけど、俺があそこに行けば分かります。

 突入する前にも言ったけど、それなり以上には強いつもりですよ」

 

「まぁ…仮にも雨宮教官に勝ってきたのは事実ですね。

 仮にも」

 

「仮をつけんでもちゃんと勝ちはしたわい。

 …まぁ、反則気味だったのは否定できんが。

 とにかく、あの赤い波は俺が突入前に見せた霊力と同じ物だ。

 アレを打ち消してしまえばいい」

 

 

 

 とは言え、思ったより霊力が強くて、あまり長時間は保ちそうにないし、無効化できる範囲も狭くなりそうだ。

 全員戦えるようにしようと思ったら……まぁ、言うまでも無く変身だわな。

 

 事がここまで至った以上、隠し立てする必要もない。

 後がどうなるかは、またその時に考える。

 

 

「じゃ、ちょっと行ってくるわ。

 かなり驚くと思うけど、援護ヨロシク」

 

「…ハァ…ものすっごく不安だけど、この状況じゃ他に手はないわね。

 しくじらないでよ」

 

「人間性は最悪ですが、マスターがやると言うからには何かしら算段があるんでしょうね。

 常識に適ったモノではないでしょうが…まぁいいです。

 これでもゴッドイーターNOUKAの端くれ。

 今度は大根も育ててみたいので、チャッチャと事態を片付けましょう」

 

 

 

 ゴッドイーターNOUKAなる職業がどんな物かはよく分からんが(俺はハンターゴッドイーターモノノフアラガミその他だし)、とりあえずオンステージ…の前に、アラガミを鬼ノ目で見て霊脈を確認。

 …やっぱり、霊力を使うようになったからか、流れがよく分かるな。

 急所がよく見える。

 

 

 よーく狙って、霊力を篭めて…3発。

 そんでもって霊力で感応波(仮)を打ち消した。

 

 

「お取り込み中失礼!

 これで多分神機は動くぞ」

 

「む…」

 

「おう、無事だったか。

 お前も大概訳がわからん奴だな」

 

 

 のっけから酷い事言われている気がする。

 

 銃弾を受けた支部長は、体の動きを止めて話しかけてきた。

 …霊脈を撃たれた事で、体に違和感が出ているのかもしれない。

 それを把握する為の時間稼ぎかな。

 

 …リンドウさん達も神機の動きを確認しなきゃならんし、乗ってやるか。

 

 

『君か。

 成程、君なら確かにこの力に対抗できてもおかしくない。

 しかし、いいのかね?

 ここで本当に戦うならば、君はどう転んでも真っ当な人生を歩めなくなるだろう』

 

「大丈夫でしょ。

 ここに居るメンバーは信頼できる人ばかりだし、そもそもシオを匿ってた時点で真っ当な人生も何もない。

 そもそも農園だって、アンタが居なくなって誰かが支部長に任命されれば、余計な欲を掻いてチョッカイ出してくるに決まってるんだ」

 

『ふむ、確かにな。

 だからこそ、新たな世界に共に旅立ってほしかったのだ。

 …尤も、君の正体を考えると、それも不可能であったがな』

 

 

 横目でリンドウさんとソーマの様子を確認する。

 神機の操作は問題ないようだ。

 同時に、アルダノーヴァの体も元通り動くようになったらしい。

 思ったより復帰が早い。

 溢れ出る霊力の成せる業か。

 

 

「さて、インターミッションはこの辺にして…。

 ああ、そうだ。

 この際だからリンドウさんとソーマに一言」

 

「なんぞ?

 ホピ酒くれるってんなら喜んでもらうが」

 

「……」

 

「…もし俺がアラガミでも、友達でいてくれますか」

 

 

「……は?」

 

「友達と言った事なんざ無いぞ」

 

「ソーマ、お前さんもうちょっと空気をよぉ…」」

 

『…父親面して言うが、それはどうかと思うぞ息子よ』

 

「と言うかお前友達居るのか」

 

「………エ、エリック…いや俺に友達なんざいらない!」

 

 

 拗れた厨二病にしか聞こえんな。

 ま、それは置いといて…。

 

 

「余計な茶々が入ったが…本邦初公開!

 

 

 仮面ライダー!

 

 

   アラガミッ!

 

 

    変 ・ 身 ッ  !!」

 

 

 特に意味も無く閃光玉と煙玉!

 そして変身終了後に小タル爆弾の爆風で煙を散らす!

 

 そして、姿の変わった俺を見た第一声は。

 

 

「マ、マスク・ド・オウガ!?」

 

「仮面ライダーアラガミだって行ってんだろオラァ!」

 

「ぬぐぉ!」

 

 

 ソーマに大剣切り上げでフライアウェイ。

 俺を友達扱いしないのはいいとして、空気を読まずにネタを潰した罰である。

 

 

 

「…な、なんとまぁ…只者じゃないと思ってたが…まて、姉上は」

 

「あー、ついさっきネタ晴らししたけど、平然としてたから大丈夫だろ」

 

「…ならいいか…」

 

 

 後方支援組みも、流石に唖然としているようだ。

 ……いや、アリサが平然としているのはどういう事か。

 これはNOUKAとは関係ないぞオイ。

 

 

『…とまぁ、こういう訳だ。

 私も初めて見た時は目を疑ったよ。

 元々アラガミ化している為、腕輪が無くても神機を平然と操れる。

 人間として進化したアラガミではなく、アラガミとして進化した人間…なのかもしれんな。

 特異点ではない事が残念なくらいだ。

 その辺りのメカニズムを是非とも解明してみたいものだが………』

 

 

「スゴイスゴイスゴイ!」

「チョッ、ハカセアブナイデス!」

「タダデサエコンランシテルノニ、アナタマデランニュウシタラテガツケラレマセン!」

 

 

『…そこはあっちで興奮しているペイラーに任せておこう。

 それと…万一私に勝ったら、ペイラーに捕まる前にさっさと逃げたまえ』

 

「言われなくても、人体実験は御免蒙る。

 おいソーマいつまで寝てんだ、ドンパチ始めるぞ」

 

「…絶対ェ叩き斬ってやる、テメェ…」

 

 

 緊張感が無い事この上ないが、GE無印における最終戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 上から目線で語るが、支部長はよく戦ったと思う。

 だが、状況が悪すぎた。

 

 如何に霊力という新しい力を身につけたと言っても、その性質も操り方も殆ど分からず、対処法を熟知している俺が敵に居た。

 GE2の感応種のように何らかの形で力を応用できていれば、また結果も変わったかもしれないが…今の支部長に出来るのは霊力を闇雲に放出し、神機の動作を阻害するくらいの事しかできない。

 そして、それを使えば使う程、アラガミの体であっても生命力は消費される。

 新たな攻撃手段を得たと思ったら、それは自分の命を削る術だった。

 しかも直接的な威力はなく、状態異常攻撃…ただしその異常を無効化できる俺が居る。

 

 支部長にしてみれば、踏んだり蹴ったりな事だろう…今回のループの計画の乱れ具合も含めて。

 いや本当に、支部長には悪い事をしたと思ってますハイ…。

 

 

 

 …それはともかく、支部長は新たな力を得たものの、それを無効化され。

 4対1で、動きを見切られて圧されていた所に、更に俺が追加され。

 今までの傷も癒えていない。

 

 どう考えても逆転不可である。

 唯一不安要素があるとしたら、長時間変身・戦闘行為による変身リミットの短縮…要するに時間切れだが、二度も三度も同じ徹を踏む気は無い。

 一気に決める。

 

 

 程なくして、アルダノーヴァは男神・女神共に打ち砕かれた。

 

 

 

 

 

神変月アリサ視点日

 

 

 なんか色々と衝撃的な情報が出てきましたが、とりあえず支部長が乗り込んだアラガミを撃破しました。

 ついでに榊博士も撃破しました…だって構ってると援護なんかできないんですもの…。

 鳩尾に躊躇い無く一発入れて気絶させた時、サクヤさんが何か戦慄するような目を向けてきたのが気になります。

 

 

 ってそれどころじゃありません。

 シオ!

 マスター!

 

 神機を動かなくする赤い波も消えたので、用心しながら近付きます。

 マスターも既に変身を解いて…或いは人間に変身して…戦闘体制を解除しているようです。

 

 

『バカな…この私が…。

 人の業からも目を背ける、こんな愚か者どもに、破れるなど…』

 

「…相変わらず、業がどうの、未来がどうのと、難しい話が好きだね…。

 業だろうと罪だろうと、やらなきゃならんからやるだけさ。

 小難しい議論は他で語れ」

 

『……成程…無頼を相手に、業も何もなかったか…』

 

 

 小さく何かを呟いて、アラガミは倒れ伏しました。

 

 …完全に動けなくなっているようです。

 勝った、んですね…。

 

 

「シオ!」

 

 

 倒れたままのシオに駆け寄りましたが、相変わらず全く動かない…。

 …?

 なんですか、コレ?

 シオの体から、ノヴァに繋がっている触手のような何かが…。

 

 

「アリサ、それに触るな!

 多分、シオの意識やコアを摘出した通路だ。

 それが千切れたら、シオとノヴァの繋がりが完全に経たれて、戻せなくなる」

 

 

 触れようとした手を、慌てて引っ込めます。

 

 ……でも触手は揺れ続けて…違います、島全体が揺れている…。

 

 

「チッ、ノヴァが全然止まりやしないぞ!」

 

「支部長を倒しても、このデカブツは別って事か…しかし、これだけデカいと倒しようが…」

 

 

『…無駄だ…。

 覚醒したノヴァは、止まらない…』

 

「この私が珍しく断言する…不可能です…」

 

 

 ! 支部長!

 …と、頭から血を流している榊博士…。

 

 …わ、私、頭は殴ってないですよね?

 

 

「アイタタ…揺れのおかげで、岩が直撃しちゃってね…何とか目が覚めたよ…。

 それはともかく、溢れ出る泉は…ノヴァが止まる事は、ない…。

 アラガミの行き着く先、星の再生…やはりこのシステムに抗う事はできないようだ…」

 

「ふざけるな!

 そんな事…認められるか!」

 

『…そう、それでいいのだ…。

 ソーマ…お前達は、早く、…箱舟に…ッ!』

 

 

 ビクンと大きく震えるアラガミ。

 明らかに、命が消えかけている…。

 

 

「支部長、あなたは…」

 

『…余計な心配は無用だ…。

 もとより、あの舟に私の席は無い…』

 

「なに…?」

 

『フフ…世界にこれだけの犠牲を強い…愛する妻を実験台にし…息子を過酷な運命に突き落とした…。

 私の席があるとすれば、新世界ではなく地獄以外にはなかろうよ…。

 ああ…もう一つ罪があったな…。

 後の事を…お前達に押し付ける……適任だが…フフ、無責任だろう…?』

 

「親父…。

 クッ…おい博士、本当にどうにもできねぇのか!

 俺は、俺は…!」

 

 

 …博士にくってかかる、ソーマの表情が見えません。

 きっと、自分でも見られたいとは思っていないでしょうけど…。 

 

 

 

「…アイーシャ、すまない…。

 私達は、結局こんな争いの先にしか答えを探せなかった…。

 私達は、君に償えたと言えるのだろうか…。

 他に、方法は無かったのだろうか……。

 

 もしも可能性があるとすれば…」

 

 

 榊博士にの目に釣られて、皆がマスターを見る。

 

 

「私達のあらゆる常識を超えて見せた、彼ならば…。

 神頼みよりも、ずっと儚い希望だし、個人的には絶対にとりたくない手段だけどね」

 

「マスター…」

 

「…………まぁ、心当たりは無いでは無い」

 

 

 …マジで?

 

 

「償い云々はさておいて、ノヴァを止めるだけなら、なんとかなるかもしれん。

 初の試みなんで、なんとも言えないが…」

 

「それでもいい!

 何でもいいからやってくれ!

 親父を、親父に……勝ち逃げなんざ許さねえし、まだ殴ってもいねぇ、言いたい事も山ほどあんだよ!

 このままじゃ、エリックだって死んじまう!

 親父にダチを殺させるなんざ、冗談じゃねえんだよ!」

 

 

 …ソーマがこんなに感情を露にしているのを初めて見ました…。

 もしもまだ意識があったなら、支部長はどう思うでしょうか。

 …もう、完全に事切れてしまっているようですが。

 

 

「…分かった。

 どうなるか分からんが、やってみよう」

 

「というかさっさとやらないと、揺れが酷くなってんだけど!?

 あと…ん~、何か手伝える事ないか!?」

 

「邪魔が入らないようにしておくのと、逃げる準備だけしておいてくれ。

 多分俺は暫く動けなくなると思うんで、最悪の場合は俺とノヴァ、シオをおいてでも逃げる事。

 異論は認めん、いいな!

 アリサ、これは師匠としての命令だ」

 

「ぐ…」

 

 

 ここまで来て、シオを置いて…?

 例えマスターの命令と言えど…でも、このままじゃシオを連れ帰ったとしても、意識の無い…言わば呼吸をする死骸にしかならない…。

 

 

「…分かりました…ですがしっかり帰ってきてくださいね!

 万一逃げたら、マスク・ド・オウガの正体と知られているデータを全て世界中に流します!」

 

「…絶対帰ります」

 

 

 明らかにゲンナリさせてしまいましたが、マスターは再びマスク・ド・オウガ状態になり、ノヴァの元に飛び上がりました。

 その辺の鉄骨を支えとし、額と額(サイズが物凄く違いますが)をくっつけます。

 

 …マスターの体が、僅かに光り始めました。

 あれは霊力の光ですね。

 …霊力を流し込んでいるんでしょうか?

 

 私達とアレする時に使ってた力なんですよね…。

 …という事は、何ですか?

 一見するとそういう行為に見えないだけで、マスターとシオは今現在あそこでPI-していると?

 

 …ドン引きです。

 

 と言うか、さっきから振動が酷くなってるんですが!?

 まさかこれ、ピストンの振動……いや、幾らなんでも今のはシモネタすぎる…。

 

 

 

「…シオ、起きろ。

 シオ、起きろ…起きろ、朝だぞ…。

 

 …? ん、これって……いや、後回しだ。

 起きろ、シオ…」

 

 

 囁くように呟き続けるマスター。

 …む?

 ノヴァの額の色が変わる…。

 

 

『……ん…おはよぅ…』

 

 

 シオ!?

 いえ、ノヴァ…の体から、シオの声…。

 

 

「博士、これは!?」

 

「まさか…ノヴァの特異点となっても、人の意識が…残っているなんて…。

 いや、彼が呼び覚ましたのか?」

 

 

 ふぅ…なにがなんだか分かりませんが、これで一段落でしょうか?

 後は、シオを元の体に戻す事さえできれば…。

 

 

 …あれ?

 

 

 

「ノヴァが…上昇してる?」

 

「シオ!?

 何を…マスター、これどうなってるんですか!?」

 

「榊博士!?」

 

「わからない!

 私にも全然分からん!」

 

「シオ、止まれ、止まれ…必要ない、止まるんだ…!」

 

 

 

『おそら の むこう』

 

『あの まぁるいの』

 

『えへへ あっちのほうが おもちみたいで おいしそうだから』

 

「まさか…ノヴァごと…月へ…持って行くつもりか!」

 

 

 更に上昇を続けるノヴァ。

 マスターの呼びかけにも、シオは寝惚けているような、独白しているような声で、ちゃんと返事をしない。

 

 

「というかアナタ、偏食でお餅なんて食べられないでしょうに!」

 

『えへへ だから たべてみたいの』

 

 

 クッ、突っ込みにだけは反応するとか!

 

 

「おいシオ、何で上がっていくんだ!

 まだ喰いたいもの、沢山あるだろ!

 俺の酒も、ちょっとくらいなら分けてやるから!」

 

 

『 わかるから 』

 

『 いろんなひとに おしえてもらった 』

 

『 いろんな いのちの かたち 』

 

『 たべることも 』

 

『 だれかといっしょに あそぶことも 』

 

『 だれかと おはなしすることも 』

 

『 とっても きもちいいことも 』

 

『 なにかを そだてることも 』

 

『 それが どんなかたちをしてても 』

 

『 みんな みんな いきている 』

 

 

「シオ!

 いいから、戻ってきなさい!

 アナタだって生きてるじゃない、縁起でもない事はやめて!

 戻ってくるのよ!」

 

 

 サクヤさん…。

 

 

 

『 シオも みんなといっしょに いきたいから 』

 

『 だから きょうは さよならするね 』

 

 

「必要ない、必要ない!

 シオ、止まれ!

 行くな!」

 

 

『 みんなのいのち すきだから 』

 

『 えらい? 』

 

 

「え、えらくなんか…ない!

 家出なんて…やめて…」

 

 

『 へへへ そっか ごめんなさい 』

 

『 もう い なきゃ 

 

 

 ああ ノヴァが また上が ていく

 

 

 涙が まらな 。

 抱 かかえ  たシオの体 、光 なって散ってい 。

 

  イジス島 、昇っていく光 包ま ている。

 

 

 

『  から おきにいり った ど 』

 

  そこの 「 わかれ たが ない」 』

 

『 じ  の「かたち」を』

 

『 た   

 

 

 

 

 揺 が酷く る。

 光に包ま  。

 

 

 

 

『     … おいしくなかったら ごめん 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が覚えているのは、そこまででした。

 気がつけば、私達は廃墟と化したエイジス島で横たわり、ノヴァの姿はおろか、シオの体さえ見つからず。

 終末捕食が発生したのかと思いきや、それも無し。

 後日、とある場所から偶然エイジス島が写された映像が見つかったのですが、天井を突き破った巨大アラガミ…ノヴァが忽然と消失した瞬間しか写されていませんでした。

 何故消えたのかも不明です。

 映像自体は、単なるイタズラ・または記録機器のバグとして処理され、秘密裏に葬られました。

 

 エイジス島近辺で抗争状態だったゴッドイーターも、気付けば全員倒れており、戦いは有耶無耶のうちにお流れ。

 アーク計画はと言うと、終末捕食が発生しなかったので、本当に単なる宇宙旅行にしかならなかったそうです。

 

 

 そしてマスターはと言うと…無事なのは確定なのですが、現在行方不明です。

 いえ…逃げたんじゃないと言いますか、逃げたと言いますか…。

 榊博士が目を広げて実験協力要請を延々と続けていたのに耐えかねたと言いますか…。

 

 私としても色々と言いたい事はありますが、それはこの場では語らなくてもいいでしょう。

 ツバキさんとマスターについてのアレコレも多少はありましたが、それより先に極東を統率しなければいけません。

 支部長も居なくなり、アーク計画の是非について争ったゴッドイーター達は表面上は矛を収めましたが火種は燻っています。

 アーク計画・エイジス計画が頓挫した以上、その責任者だった支部長に色々と追及があるでしょうが、そこは死者になっている為、後任となった榊博士が対応しているようです。

 

 まぁ、要するに前途多難だという事です。

 

 

 結局、シオがどうなってしまったのか…私には分かりません。

 死んでなんかいないと思いたい、また会えると思いたい。

 ですが、何故か私はシオが消え去ってしまった事を確信しています。

 

 生きていると、希望を信じる事さえできない程に…。

 

 

 …ああ、そう言えば…あれは夢だったんでしょうか?

 消えていくシオとノヴァ、倒れていく私達の視界の端で、変身したマスターが…突然現れたアラガミに向かっていったのは…。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。