※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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討鬼伝のトロフィー集め中です。
人物札交換がキツすぎる…交換部屋作って放置しよう…。

GE世界から討鬼伝世界への移行が、かなり強引かつカットされてますが、ご容赦ください。


討鬼伝世界6
第96話


神変月主人公視点日

 

 

 …後味悪いねぇ…。

 と言うか悪すぎだ…。

 

 

 あのイヅチカナタのクソッタレ…千歳に留まらずシオまで喰らいやがった。

 今度は一矢報いてやったが、腹の虫が治まらん。

 

 と言うか、討鬼伝世界どころかGE世界まで出張ってきやがって…やっぱ、このループの原因はアイツか?

 

 

 

 ともあれ、ゲームで言えばシナリオクリアした事には変わりない。

 …ちょっと話を整理しようか。

 

 支部長を倒したとこまでは、まぁいいだろう。

 色々予定外の事はあったし、最後の最後で仮面ライダーアラガミをバラしてしまったが、それについての混乱・情報の流出は、今のところ無い。

 

 動き出したノヴァを止められないかと思い、霊力を流し込んだ。

 ノヴァの中に、俺の霊力を吸収して覚えたシオが居るのなら、どうにかしてコンタクトを取れるかもしれない…と思ったんだ。

 別に失敗しても、シオが勝手に目を覚ます可能性は低くは無かったしね、GK(ゲームのシナリオ的に考えて)。

 

 結果は成功…しかも予想以上の。

 シオをこちらからの呼びかけで目覚めさせる事ができた。

 その時、判明した事実が一つ。

 上手くやれば、俺が特異点の代わりになる事もできるかもしれない…って事だ。

 上手くやれば、ね。

 俺自身は特異点ではなくても、霊力とかを上手く使えば、同じ役割を果たせるって事だ。

 支部長達が俺を検査した時には、霊力なんぞ知りもしなかっただろうからなぁ……それで特異点としては使えない、と判断されたんだろう。

 細かい条件や考察は今度に回そう。

 

 

 その後、シオがノヴァと一緒に月を目指そうとしたのも……個人的には良くないが、ゲームのストーリー通りだと思えば、まぁいいだろう。

 でもな……なんだってまた、そこにイヅチカナタが出てくるんだ?

 

 アイツは討鬼伝世界のモンスターじゃないのか?

 でも、俺の記憶に無いだけで、何度も何度も遭遇している可能性はある…何せ因果を喰らう怪物だ。

 食われた結果、記憶が抹消されていてもおかしくない。

 事実、前ループで討鬼伝世界において遭遇している筈なのに、俺には記憶が残ってなかった。

 

 

 …ともあれ、アイツが出現すると同時に(俺も殆ど意識が飛んでたが)、再度変身して思いっきり捕食してやった訳だが。

 やれたのはそこまでだった。

 アラガミ化も限界に達してたし…。

 

 俺の意識はそこで途絶えた。

 気がつけば、アリサ達と一緒にエイジス島で倒れてたんだが…あの野郎、ノヴァもシオも食っていきやがったな…。

 絶対切り刻んでやる。

 

 …そういえば、アラガミは食った物の性質を取り込む事ができるんだっけ?

 正確に言うと、体の構造を変化させて、それを真似るってやり方だったが…もしも俺にその性質が備わっているなら、あの時にイヅチカナタを捕食した事で、奴と同じような力がついたかもしれない。

 流石にそれは期待しすぎだろうが、多分因果喰らいや記憶の抹消に対して、少しは耐性がついたんじゃないだろうか。

 

 しかし…ちっと分からんな。

 聞いた話では、イヅチカナタは英雄の魂を求める筈。

 何故、シオとノヴァを喰らっていったんだろうか?

 

 

 

 

 

 …色々考えてみたが、答えは出ない。

 どっちかと言うと、今考えなければいけないのは…。

 

 

①榊博士の実験協力(というかモルモットになれ)要請 をどうやって回避するか

②シオという緩衝材が居なくなった事で、激化するアリサとツバキの女の戦いをどうするか

③GE無印のストーリーが終了し、リンドウさんも無事な訳だが、GEB及びGE2までどうなるのか

 

 

 …この3点かな。

 差し当たり①は物理的に逃げ回ってるから、いいとしよう。

 もうちょっとしたら、多分ツバキが博士を抑える側に回ってくれるだろう…あの人が居るとオチオチ極東に戻れない、って愚痴っておいたから。

 

 ③が分からないんだよなぁ…。

 リンドウさんが無事でも、他の誰かが同じようにハンニバル化するだろうか?

 世界の修正力とか、あーいうのも在るには在ると思うんだが、シオが特異点としての力を使ってないと、GEBは発生しないよな…。

 

 まぁ、こればっかりは未来の事だ。

 考えたところで、予測にしかならない。

 

 それらしい事が起きるまで、榊博士と女の戦いから逃げ回りつつ、出来る事をやっていきますかね。

 今度はどこに農園作ろうかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凶星月久々に日付の内容で苦労してるよ日

 

 

 …何だかんだでデスワープ。

 うーん、今回のGE世界は長かった…。

 ストーリークリアの上、その後約1年ちょっと。

 

 一気に最長記録を更新してしまった。

 まぁ、折角だからと極東から離れてブラブラしてた時期も長かったしね。

 結局GEBは始まらず、ハンニバルも出てこなかった。

 

 と言うか、ホント極東以外は平和だった……というより極東が地獄ってマジなのね。

 海外とかあんまり遠いところには行けなかったけど、極東以上に危険な場所なんて全く無かったよホント。

 

 ゴッドイーターとして活動はしてなかったけど、殆どの支部があの練度じゃなぁ…。

 ヴァジュラどころかコンゴウでも大騒動って聞いてたけど、無理もないわ。

 

 まぁ、そーいう所に仮面ライダーアラガミとして乱入してたら、なんか広まっちゃったんだけどね。

 しかもマスク・ド・オウガの名前の方で…。

 まさかアリサが言ってたように、逃げたと判断して情報を広めたのか?と思ったが、それも違ったようだ。

 オシオキ(八つ当たり)はしたけど。

 

 で、その他は…まぁ、人体実験じゃないけど、榊博士その他の研究に協力したりもした。

 特に神機の実験に。

 何せアラガミ化の心配が無いし、ちょっとくらい無茶しても平気な体なんで、色々とツブシが効くのだ。

 おかげでポール型神機の研究が捗る捗る。

 

 コッソリと横流しもしてもらったし、データも貰った。

 代わりに使用データを渡してたけど。

 

 他にも、GE2になってから使えるようになっていた、オラクルリザーブやらステルスフィールドやら、新しい技術を一杯ゲット。

 次回ループになっても、俺一人で使う分には問題ないレベルだし、メンテだって資料があるから技術班の皆さんに任せられる。

 ただ、ブラッドアーツに触れられなかったのは残念だったな…。

 

 と言うか、むしろ何処から何を聞きつけたのか、マグノリアコンパス(GE2でジュリウス達が出身だったあそこだ)から技術指導を頼む、なんて言われたのには本気で驚いた。

 俺が使える妙な力=霊力を、血の力だと思ったんだろうか。

 

 まぁ、断ったけどさ……。

 何でって、新しく作った農園が初の収穫の時期だったから忙しくて。

 速めにGE2に触れられる、いい機会だとは思ったんだが。

 

 

 

 

 …ただ、そんな風に色々やってた日々だったんだが…どうにも捨て鉢になっていた感が捨てきれない。

 思えば、誰かが居なくなったかもしれない、という状況があっても、その後の世界を生きたのは初めてなんだよな…。

 何だかんだで、身内や恋人より先に先に死なれたのが確定した事はなかった。

 「死んだかもしれない」はあったけど、その結論を確かめる前にデスワープしていたし、

 

 千歳の事だって、もう会えないかもしれない、と言う不安はあっても、ループによってまた会える可能性は否定できない。

 それに、あの後すぐにMH世界に移動してたしな…何があったのか未だに思い出せんし。

 …それは今回も同じなんだが、このまま生き続けていれば、ループは無い…つまりシオにも会えない。

 『お別れ』の後、そのまま世界に居続けた事はない。

 

 …シオが居ない、もう会えない、何処に語りかけても何も答えない。

 農園に戻った時も、家が妙に広かった。

 ツバキやアリサと居ても、何だか大事な部分が欠けている気がする。

 

 そんな喪失感をずっと持て余して、なんだか惰性でこの1年を生きていたような気がする。

 日記も全然つけてなかったし。

 

 

 

 …で、気になる今回の死因ですが……その、オラクルリザーブにちょいと欠陥が見つかりまして。

 ストックする事はできるんですが、それを一気に打ち出すとなると、神機の方に相応の耐久力が必要なんですよ。

 で、それを充分にテストした上で、今度は俺が使ってみようって事になった訳ですな。

 

 しかも、極秘裏に、アラガミ状態で。

 

 

 思えばそれが失敗だった…。

 アラガミ状態の頑丈さを過信していた。

 

 俺がアラガミ状態で神機を使う場合、体の一部として取り込んでしまっている形になる。

 加えて、俺自身のオラクルの出力にもブーストがかかるんだわ。

 

 …オラクルリザーブでフルストックした出力に、耐えられる砲身ではあった。

 が、それに加えてブーストした、となると…。

 言ってみりゃ、腕が体内から弾け飛んだようなもんだ。

 いくらアラガミ状態でも、流石に生き残れなかった。

 

 

 ……気のせいだとは思うけど、ラケル博士や榊博士の陰謀だったりしないよな…。

 直接会ってないラケル博士はともかくとして、榊博士に至っては面と向かって「私は君が大嫌いだ」と真っ正直に言われたくらいだし。

 

 

 うん、まぁ…たった1年の間に、色々あったんだわ。

 大体がGEストーリーの余波みたいなもんで、GEBには関係なかったけど。

 アラガミ化の事について皆に追及されて逃げたり(だって自分でも説明なんぞ出来んし)、何だかよく分からない内にエイジス計画・アーク計画を頓挫させた英雄兼重罪人として手配されそうになったり、腕輪が無いのにゴッドイーターとして登録されそうになったり、ゴッドイーターになる代わりに隠密にアラガミを撃破する任務を時々頼まれたり。

 

 勿論、アリサやツバキさんや俺との人間関係ドラマもあるにはあったが……昼ドラを真っ当なドラマとして認定していいのかは疑問である。

 刃物だけは持ち出されなかった。

 銃弾は準備までされていた。

 

 ちなみに、榊博士に嫌いと言われた理由については…グウの音も出なかったよ。

 突然現れた謎の男。

 全ての謎と秘密を見透かし、特異点をその手にし、更にその本能を抑える力を持つ。

 ある時は謎のアラガミとして、ある時は時代にそぐわない農家として世界に影響力を持ち、暗躍を続けた。

 挙句、特異点の制御に失敗して終末捕食の切欠を作り、しかしそれを防いでみせる。

 

 …うん、確かにこうして並べてみると、どこの最低系オリ主だよって話になる。

 それに付き合わされる側は堪ったものじゃないだろう。

 

 全部が全部とは言わないが、アーク計画を破綻させたのは俺だし、シオを匿っていたのも、オオグルマを暗殺したのも俺。

 結果論になるが、全てが俺の手の中にあった。

 必死で計画を成功させようとしていた支部長や、アラガミと共存するという可能性を探っていた榊博士、エイジス計画を成功させる鍵だと聞いて必死で特異点を探し回っていたゴッドイーター達。

 

 それら全てを横目に、俺は全ての結果と結論を一人で出してしまう形になった。

 終わりの体現である終末捕食さえ、(実態はどうあれ)俺が防いだ形にも見えただろう。

 

 それまでのストーリーも盛り上がりも関係ない、ポッと出の新キャラが全てを片付けた。

 とんだデウス=エクス=マキナ。

 

 榊博士って、あれで人の力というか人類の力に拘っていて、「困難を乗り越えるのは、人間の知恵と意思を結集した力によるべきだ」みたいに考えている節があるんだよな…。

 その辺が、支部長に「ロマンチストすぎる」って言われる所以なんだろう。

 俺が今回やったのって、その正反対とも言える行動だったし。

 

 まぁ、だからって博士の陰謀でドカンといった、は考えすぎだろうけど。

 

 

 

 

 

凶星月さて、今回の日付はどんな趣で行こうか日

 

 さて、折角クリアしたGE世界がどうなったのか、シオを喰いやがったイヅチカナタマジブッコロスなど色々と思うところはあるものの、とりあえず現状だ。

 例によってデスワープした後、今は討鬼伝世界の異界を彷徨っている。

 普段なら瘴気が薄い方へ薄い方へと進んでいくんだが、今回ばかりは違った。

 

 前回の討鬼伝世界のループを思い出して、千歳と出合った場所にいけないかと試みていたのだ。

 …が、丸一日彷徨っても、千歳には遭遇できなかった。

 それどころか、瘴気が濃い方に進んでいた筈なのに、何時の間にやら異界から抜け出てしまっていた。

 

 …やはり、千歳にはもう会えないのだろうか?

 あの時遭遇できたのだって、天文学的確率だったんだろう。

 何度も何度も繰り返せば、気が遠くなるくらいの繰り返しの果てに、また会えるかもしれないけど…。

 

 …虚海を探した方が確実か?

 でも俺的には、虚海と千歳は別人なんだよな…性格が違いすぎる。

 

 

 

 ともあれ、ここは何処だ?

 今までも異界から抜けたら、適当な森の中や雪の中、そこから人里を探し回って現在位置を把握、そこからウタカタの里へ向かうってパターンだったが…。

 

 

 何ここ?

 廃墟?

 しかも寒いし、少しだけど雪降ってるし、あっちこっちから小鬼の気配がするし。

 どっかの里が滅んだのかな…。

 でも廃墟を見るに、ここがぶっ壊れたのは大分前のようだ。

 

 人の気配も無い。

 ……けど、足跡はある?

 3人で…揃いの具足の跡……って事は武装してるな。

 モノノフか?

 

 とりあえず追いかけてみるか…。

 

 

 

 

 足跡を追ってみる事半日程。

 あっちこっちで小鬼の掃討をしたらしく、何度も足跡を見失いそうになったが、途中で増えたあからさまに分かりやすい足跡のお蔭で追跡できた。

 うーん、半人前のモノノフか?

 でも一人で小鬼相手とは言え一人で戦ってたみたいだし、どうもミタマの力も使えるっぽい。

 精々、見込みのある新人ってトコか。

 

 ま、とりあえず追いかけますかね。

 

 

 

 

凶星月今までは呟きとか、コトワザのアレンジにしてた訳ですが日

 

 

 行けども行けども廃墟ばかり。

 あと時々沸いてくる小鬼。

 

 徒歩でモノノフ達が来てるんだから近くに里があると思ってたら、途中から馬で走っていきやがった。

 がっでむ。

 

 まぁ、幸いと言うべきか、それでも半日ばかり追跡したら、里が見えてきた。

 見えてきたんだが……なんかこう…物々しいな。

 明らかに武装している門番に、弩が据え付けられてるらしき壁に堀、篝火も炊かれていて、『いつでも出陣できますぜ』と言わんばかりの里だ。

 キカヌキの里だって閉鎖的だったが、ここは閉鎖的かつ攻撃的な印象だ。

 ……キカヌキの里のケンゴさん元気かな…。

 

 でもモノノフには違いないだろうし、いきなり拘束されたりする事はないと思うんだが…。

 

 

 

 …?

 扉が開いて、誰か出てきた。

 

 …女…だけどお偉いさんっぽいな。

 槍を持ってる。

 里長って女でもなれるのか?

 別に女性を軽視蔑視してる訳じゃないが、モノノフってそういう所は古風な風習が残ってるからなぁ。

 霊山に居た時だって、結構面倒なしきたりがあったもんだ。

 

 いや、それとも単にモノノフの部隊長格か?

 

 

 門番へ何か話しかけているが、反応を見る限り、侮られている事はないようだ。

 と言うより、むしろ敬意を払われているように見える。

 

 …お偉いさんと話せるなら、そのチャンスを逃すべきではないか。

 

 隠れていた場所から飛び出すと、すぐに気付かれて門番が身構えた。

 大した錬度だ。

 

 お偉いさんは…槍に手もかけず、自然体のまま。

 だが動揺した様子は無いし、門番からも下がれとは言われないようだ。

 腕に覚え在り、信頼在りって事ね。

 

 

 両手を挙げたまま近付いていくと、お偉いさんが一歩前に出た。

 

 …こりゃモノノフっつーより…狼の類だな。

 実力もそうだが、全身から漂う気迫が只者じゃない。

 

 

「何者だ」

 

「新入りのモノノフです。

 ウタカタの里に行く予定だったんですが、異界でデカブツと斬りあってる間に流されました。

 保護を求めたい」

 

「断る」

 

 

 

 …ハイ?

 

 

「どうやら間者の類ではないようだが、ここはシラヌイの里。

 霊山には属さぬ、独立不羈の里だ。

 そして私は、シラヌイの里長・凛音。

 私の決定だ。

 保護などせぬ」

 

「霊山に属さない…モノノフの里?」

 

 

 そんなモンあるのか?

 

 

「知らぬのか。

 まぁいい…。

 この里には霊山に従う義理は無い。

 また、シラヌイの里は実力主義だ。

 鬼と戦う内に異界で迷うような足手纏いを置いておけば、里全体が危機に晒される。

 故に貴様を置いておく事はせぬ。

 自力で生き延びてみせよ。

 モノノフなのだろう?」

 

「生き延びるだけならどうとでも。

 餓鬼やオンモラキも、やりようによっては食えるし…」

 

「ほう、喰らったのか」

 

「マズかったね、腹は膨れるけどさ。

 あと、腹の中から怨嗟の声が聞こえるようになる。

 

 …ま、入れてくれないってんなら仕方ない。

 現在地だけ教えてほしい。

 対価は…異界をウロウロしているうちに見つけた金塊くらいなら渡せる」

 

「…いいだろう。

 対価も無しに何かを得ようとしない、その姿勢は評価しよう。

 金塊は要らぬ。

 餞別にする程大した情報ではないが、ただでくれてやろう。

 ウタカタの里は、ここから遥か南だ」

 

「サンクス。

 やれやれ、また強行軍か…」

 

 

 シラヌイの里とやらで休めなかったのは結構痛いが、逆に言ってしまえばそれだけだ。

 休んだところでウタカタの里が近くなる訳でもなし、貴重な馬を貸してもらえるとは最初から思っていない。

 面倒だが、テクテク歩いていくとしますかね。

 

 

「さんく…?

 待て、『さんくす』と言ったか?」

 

「?」

 

「さんくす、と言っただろう」

 

「あー…そう言えば英語も伝わってないのか。

 アメリカ…海外の言葉で感謝する、という意味だ」

 

「貴様、霊山のモノノフだろう。

 何故そのような言葉を知っている」

 

「何故って…俺、元々モノノフじゃない一般人だったからだよ。 

 オオマガドキに巻き込まれて、異界からなんとか生き延びてきたんだ」

 

 

 …あれ、この設定だと矛盾が出るか?

 あんまりウソは言ってないが、討鬼伝ゲームの主人公が居ない以上(或いは俺がそれに当たる以上)、異界に沈んだ国からの生存者は居ない事になっているような…。

 

 

「…気が変わった」

 

「うん?」

 

「運を天に任せる気概はあるか?」

 

 

 はぁ?

 

 

「運を引き寄せる気概ならあるぞ。

 故人曰く、『ヒトニウンメイヲサユウサレルトハイシヲユズッタトイウコトダ、イシナキモノハブンカナシ、ブンカナクシテオレハナシ、オレナクシテオレジャナイノハアタリマエ!』だ」

 

「…見事な早口だが、それを全部言わなければいかんのかというおかしさはあるな。

 まぁいい。

 運を引き寄せると言うなら、見事私に勝ってみせろ」

 

 

 やる気か!?

 …と思ったら、懐から取り出したのはサイコロ二つ。

 

 …なんで俺、いきなり博打を持ちかけられてんの?

 一言も喋らない門番さん達は…「ま~た始まったよ」って顔している。

 一人顔色が悪いが…ひん剥かれた記憶でもあるんだろうか?

 

 

「丁半博打だ。

 知っているな?」

 

「偶数か奇数か、だろ?

 どっちが丁でどっちが半だったかは覚えてない。

 …あと、サイコロが丼から出たらチョンボ…だったっけ?」

 

「今回は丼は使わんがな。

 偶数が丁、奇数が半だ。

 どっちに賭ける?」

 

「…チョンボ」

 

「いいだろう。

 では行くぞ」

 

 

 ポイッと上に向かって放り投げられるサイコロ二つ。

 落下してきて…。

 

 

「…チョンボ、だな」

 

「…そのようだ」

 

 

 門番が僅かに驚きの声を漏らした。

 

 サイコロが消えた。

 やった事は大した事じゃない。

 

 理屈は簡単。

 落下してきた瞬間に、手を伸ばして掴み取っただけだ。

 そのままふくろに入れたけどね。

 …ただし、これを超高速やった。

 

 文字通り目にも留まらぬスピードでやるつもりだったが、凛音さんはしっかり反応して、弾こうと手を伸ばしてきやがった。

 思った以上に強いな…。

 が、その程度のスピードなら、アラガミ化状態のアクセラレートで慣れているッ!

 見事に凛音さんの腕を避け、サイコロを掴み取った訳だ。

 

 

「いいだろう。

 暫し里に滞在していけ。

 異論は認めん」

 

「…さっさと消えろと言っておいて、随分な掌返しじゃないか?」

 

「気が変わった、と言っただろう。

 間抜けなモノノフかと思ったが、私の前で堂々と、しかもこの手を掻い潜って小細工が出来るなら、全くの足手纏いにはなるまい。

 …こういう場合は、確かこう言うのだったか?

 

 『うえるかむ』…とな」

 

 

 …英語?

 

 

「あと、賽を返せよ」

 

 

 

凶星月正直、ネタ切れ感が否めない日

 

 

 シラヌイの里にやってきて、今日で3日目。

 

 凛音さんの一声で、俺は賓客扱いになっているらしい。

 しかしタダメシ食わせてくれる筈もなく、軽いものは雑用から、デカければ任務の付き添いまで、色々と走り回る事になっている。

 別に苦にはならないし、一宿一飯の恩義を返す事に疑問も無いが、凛音さんが何故俺を引きとめたのかは分からない。

 ついでに言えば、速めにウタカタに到着して、今回のイベントに備えたいんだが。

 

 

 …今回のループでは、ちょっと本格的にのっぺら連中と、ひいては俺の正体について考えてみるつもりだ。

 今まで何だかんだでなぁなぁで済ませてしまっていたが、GE世界で前触れも無しに発覚した事実が幾つかあった。

 一度、突き詰められるところまで考えてみてもいいだろう。

 

 その為には、ミタマの専門家である樒さんの協力を仰ぎたい。

 

 

 それはそれとして、気になる事はこの里でもある。

 霊山に属さないというのもよく分からんが、凛音さんが「ウエルカム」という言葉を知っていた事が気になる。

 どうでもいい、と言われればそれまでかもしれんが…。

 

 どうやら、彼女は英語をとある一人の住人から聞いたらしい。

 驚くべき事に、その人はオオマガドキに巻き込まれ、奇跡的に生還した一般人なのだとか。

 今は討伐の為、泊り掛けで出かけているので里には居ないが…名前は暦。

 モノノフとしては半人前(凛音さん談)の、薙刀使いの女の子、らしい。

 

 

 

 …ここへ来て生存者にカチ会うとは…。

 どうやら凛音さんは、その暦さんと俺を会わせたいらしい。

 同じ一般人出身という事で、気が合うんじゃないかと思っているようだ。

 要するに、メンタルケアの一環か。

 一般人がいきなりこんな状況に放り込まれれば、いくら気丈に振舞っていたってストレスが溜まるからな。

 

 それはいいんだが、俺としてはその暦とやらが問題に思える。

 オオマガドキに巻き込まれ、奇跡的に生還した一般人…つまり……討鬼伝本来の主人公なのではないか?という事だ。

 今の今まで、俺が主人公的立ち居地だと思ってやってきたが…。

 いや、そうと決まった訳ではないし、別に暦さんが主人公をやらなきゃならない決まりもない。

 新たなオオマガドキを防ぐ為のムスビこそ代替案を用意しなけりゃならんが、前回だって主人公の立ち居地はほぼ千歳のものだった。(そうなるようにプロデュースしたんだが)

 

 そもそも、聞いた話では暦さんは既にミタマを宿しているらしい。

 元が一般人だった事を考えると、大した才覚だ。

 それはともかく、討鬼伝ゲーム版の主人公は、最初はミタマなんぞ宿してなかったんだよな。

 そこは…まぁ、そこまで忠実である必要もないだろうし、演出の一環と割り切れない事もない。

 

 …しかし…調べてみる価値はある、か。

 暦さんとやらと、どれだけ話が出来るかはわからんけどね。

 平和だった元の世界の話にしても、俺が居た世界と何処まで同じか分からないし。

 流行とか元々サッパリだったし。

 

 

 

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