※この作品はR-18です。

悪女わからせ~悪徳エルフ女王は勇者の☓☓☓で成敗される~   作:千吹つぐ

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王女VS勇者

(どういうことなのじゃ……)

 

 夜、オフィーリアは自室で煩悶(はんもん)としていた。

 

(なぜ妾が選ばれるのじゃ……まさか、サーシャが裏切ったのか? いや、しかし自分が選ばれなかったあの娘の驚きは本物に見えたぞ……)

 

 あの時、サーシャは驚愕し、呆然としていた。あれはとても演技とは思えない。また裏切るにしてもどういった裏切りか分からない。

 

(であればなんらかのミスか? ……あの愚鈍(ぐどん)な娘のことだ、十分にありえるな。まったく、どこまでも使えぬ馬鹿娘め……)

 

 できればすぐにでも折檻(せっかん)してやりたいところだが……いまはそれどころではない。

 

「女王陛下、準備が整いました」

 

「……ん、わかった」

 

 メイドの知らせを受けて、オフィーリアは目的の部屋へ向かった。

 

「これより先は、妾のみで行く」

 

「し、しかし陛下、それは……」

 

「よい、これは命令だ。決して近寄るでないぞ」

 

 側近すら下がらせて、自ら扉を開いて部屋に入った。

 

 そこは広大な露台だった。

 

 磨き上げられた無垢の板がどこまでも広がっており、ところどころに花壇や東屋(あずまや)が立ち並んでいる。

 

 一見すると庭のようなこの露台(ろだい)は、しかし完全な屋外でもない。

 

 オフィーリアは背後を仰ぎ見る。するとそこは、一面の樹木になっていた。

 

 聖都ユグドラシル。

 

 小さな山ほどもあるその樹木こそが、エルスタッドの首都だった。エルフ族はこの樹々に取り付いて、巨大な樹上都市を作り上げたのだ。

 

(……まったく、腹立たしいことだ)

 

 その、最奥とも言えるこの場所に、異種族の男が堂々と居座っている。東屋のひとつに居を構えて、下賤な火酒を手酌でやっている。

 

「来たか」

 

 相変わらず蛮族の鎧を身に着けた勇者ジンが、手の中の酒をぐびりと呑んだ。

 

「遅かったな、ずいぶんと待たせるじゃないか」

 

「ほほほ、おなごには色々と準備があるのじゃ。わきまえてたもれ」

 

「だから待った」

 

 ぐびり、とまた一献。

 

(……この男、一体どういうつもりじゃ?)

 

 沈黙の中、オフィーリアは冷徹な頭脳を巡らせた。

 

 あのとき、ジンの願いに対して、王女は『願いを受ける』と確約した。あれほどの啖呵を切ったのだ、それ以外に答えようはなかった。

 

 かくして勇者と女王の婚約は成ったのだ。

 

 だが、それは誰にとっても困惑を招くものだった。ぽかんとするサーシャと、てっきり彼女が選べられると思っていたパーティメンバーたち、なにも知らずに喜ぶ亜人種ども、『これも女王の策なのか?』と顔を見合わせるエルフたち。

 

 その後のことは、正直なところあまり覚えていない。魔王討伐の祝賀会が開かれ、諜報を飛ばし、各国の大使と話すうちに夜になり、こうしてジンに呼び出されたのだ。

 

(この男、何を考えている? まさか本気で妾を望んでいるのか?)

 

 オフィーリアはブルリと震えて、我知らずに体を抱いた。むにゅう、とエルフ離れした巨乳が持ち上がり、冷や汗が胸の谷間に流れていった。

 

(あるいは誰かが裏にいるのか……であればやはり、妾がひとりでやるしかあるまい)

 

 娘すら信用できなくなったいま、側近の手下すら使えない、オフィーリアが単独で動くことを決めた。

 

「呑め」

 

 そのとき、ゴンと素焼きの杯が卓を打った。作法も情緒もない、獣のような親愛の発露に眉をしかめる。

 

「故郷の酒だ」

 

「蒸留酒かや。すまぬが火のマナを使う酒はエルフには不浄じゃ。遠慮しておこう」

 

「そうなのか? サーシャは好んで呑んでいたが……」

 

(……あのバカ娘。外に出たのをいいことに戒律を忘れてはしゃぎおって……)

 

 やはり折檻せねばなるまい。オフィーリアは固く誓う。

 

「ほっほっほ、妾が代わりのものを用意した。聖樹の実を醸(かも)した酒じゃ」

 

 オフィーリアは持参したギヤマン瓶を手づから注いだ。雅な椀をクンクンと犬のように嗅いでから、ジンがぺろりと一口にした。

 

「うまい。だが弱いな」

 

「さて、どうかな? エルフの酒は酔い方が違うと言うぞ?」

 

「毒でも入れたか?」

 

「ほほほ、まさかまさか。おお、かたじけない」

 

 どうやら蛮族にも返杯の礼儀はあるようで、ジンが酒を注ぎ返した。オフィーリアは、いっそ嫌味なほど古式にのっとって、礼儀正しく杯を干した。

 

「……それにしても勇者よ。お主、妾が思うよりもずいぶんと強欲だったようだな」

 

 率直に言う。これが外交官やエルフ相手ならもう少し腹芸も使うところだが、この蛮族相手にはその必要を感じなかった。

 

「強欲?」

 

「そうとも。まったく、無い知恵を絞ってよく考えたものだ。この妾が欲しいなどと」

 

 胸の下で腕を組む。薄衣に包まれた乳房がギュッと締め付けられる。

 

「妾を手にするとは、すなわちエルスタッドを手にするも同然、世界の半分が欲っするとは、これを強欲と言わずになんと呼ぶ?」

 

「勘違いするな。俺の目的はあくまでお前だ」

 

「同じことよ」

 

「同じではない。……だがそうだな、目的。目的か」

 

 野太い指が、手の中の杯を転がす。

 

「俺の目的は、強いて言うなら、お前の野望を砕くこと、だ」

 

「妾の野望だと? ほっほっほ、妙なことを言いだすのぅ。それはなんじゃ?」

 

 かつん、素焼きの杯が卓を打つ。

 

 

「人間絶滅」

 

 

 こやつ……オフィーリアは内心で舌を巻いた。

 

「すべての亜人種を滅ぼし、エルフが覇権種族に返り咲く。それがお前の野望だ」

 

「ほっほっほ、勇者様は面白いお方じゃ。いったい誰に、そのような考えを吹き込まれたのじゃ?」

 

「魔王だ」

 

 眉をしかめる。

 

「これはこれは、あのような愚昧(ぐまい)な敵の妄言を信じるのかぇ?」

 

「愚昧ではない、奴は素晴らしい強敵だった。……ただ力が及ばなかっただけだ」

 

 そのとき、ジンがスッと一粒の涙をこぼした。オフィーリアはぎょっとした。この感受性など欠片もなさそうな大男が、人前で泣くとは思わなかったのだ。

 

「……魔王の本当の目的。それはこの世で最大の邪悪である貴様を討つことだった」

 

「ほっほっほ、妾が邪悪とな? 汎人類連合を作り、亜人種に魔法を教え、魔王と戦うすべをあたえた妾のどこが邪悪だと?」

 

「それはここ百年ばかりの話だろう」

 

 だめじゃなこいつ。オフィーリアは懐柔を諦める。

 

「俺は魔王から真の歴史を教えられた。……三百年前までは、お前こそが魔王と呼ばれていたそうじゃないか」

 

「ほほほ、まさか、まさか」

 

「世界征服を望み、他種族を弾圧していたのはお前たちエルフだった。そしてそんなエルフを討つために立ち上がったのが、近隣種族であった彼ら、すなわちダークエルフだ。……だが純朴な彼らは夢にも思わなかった。まさか、敵が正義を名乗るようになるとはな……」

 

 ジンが、得体の知れない毒虫でも見るような目をする。

 

「短命種が代替わりする中で、長命種たるお前たちは歴史の生き字引として真実を書き換えていった。自らの行いをダークエルフのものに転嫁し、善と悪を逆転してみせた。……そして二百年後には、両軍ともに、その図式を信じ込むほどになっていた……」

 

「ふふふ、ふふふふふ」

 

「本当に恐ろしい、真の大魔王だよ。貴様はな」

 

「くふふふふ、くっくっく、くはーっはっはっは!」

 

 オフィーリアは大笑いして、

 

「ほんに、勇者殿はおもしろいお方じゃなぁ」

 

 完璧な鉄面皮で応える。

 

「今宵はもう休まれるがよい。そら、もう一献いかがか?」

 

「流石だ、大魔王」

 

 ジンは短く褒めた。

 

「その徹底に敬意を評し、俺も全力で行かせてもらおう」

 

 瞬間、ジンの身体が跳ね上がり、右手を縦に一閃した。なにもなかったはずの手にはいつの間にか腰の剣が握られており、大剣が空間を切り裂いた。

 

 空気が、卓が、素焼きの杯が、己が切られたことにすら気づかず両断されていく、刃はまっすぐにエルフの細首を狙い打った。

 

 たとえ完全装備の鎧であっても引き裂いたであろう一撃を、オフィーリアは意にも介さなかった。

 

 ジャギィン! 刃が寸前で阻まれる。

 

「くはははは! なんじゃ、せっかく乗り込んできたのじゃから。もっと気の利いた攻撃がくると思ったぞ」

 

 オフィーリアの首の手前で、ジンの抜き打ちが止まっていた。

 

「ふん! は! はぁ!」

 

「くはは! 無駄無駄ぁ!」

 

 さらに二の打ち、三の打ちまで、達人級の一撃が、ただ棒立ちで防がれる。

 

「とくと見るがいい。これがエルフ族の秘宝たる極大防御魔法『光のヴェール』じゃ」

 

「ぐぅぅぅぅぅ!」

 

 隆々と盛り上がる筋肉の力を、しかし光の帯が完璧に無効化している。

 

「聖樹のマナによって紡がれたこの魔法。矮小な人間ごときに破れるものではないぞ」

 

 光のヴェール。それはエルフ族の王に与えられる聖樹ユグドラシルの加護だ。その防御力を突破するには、すなわちこの巨木を打ち倒すほどの力が必要だった。

 

「むぅ!」

 

「どうした。もう終わりか? では妾も返礼といこう!」

 

 無詠唱で魔法を起動。空間に闇色の球体が現れる。

 

「くはは! とくと見よ! こちらもまた極大魔法、即死の邪眼じゃ!」

 

 通常、小隊規模で唱えるはずの極大魔法が、二重になって発動する。

 

「死ぬがよい勇者よ。――いや、旦那さまというべきか? くふふ、連れ添いの最後じゃ、遺言くらいは聞いてやろうか?」

 

「……ならばひとつだけ問おう」

 

「うむ、せいぜい気の利いた台詞をはくがいい」

 

「ではオフィーリア。貴様、実戦はいつぶりだ?」

 

「……は?」

 

 バチバチと鳴る球体を保持しながら、オフィーリアはしらけきった。

 

「ふむ、言われてみればこのようなチャンバラ遊びは数百年ぶりか。だがそれがどうした? 敗北寸前のそなたには関係あるまい」

 

 やはり冴えない男だったな。オフィーリアはため息を吐いて、手の中の呪文を無造作に放った。

 

「もうよい、死ね」

 

 黒球が、目にも留まらぬ速度で疾駆する。それは相手の魂を目標として、消滅するまで食らう即死の技だ。

 

(さて、次の策を考えねばな)

 

 必殺を確信して、オフィーリアは事後策を練り始める。なにものをも信じない彼女が唯一信じる魔法を使ったのだ。勝利を疑うことなどなかった。

 

 

「くだらん魔法だ」

 

 

 しかし、ギュルン! と弧を描いて、

 

 黒球が、勇者を外して宙で弾けた。

 

「……………………は?」

 

 目の前の、現実が信じられない。

 

「オフィーリア。貴様はたしかに優秀な魔法使いだ」

 

 キンっと剣を腰の鞘に戻して、ジンが拳をコキコキと鳴らした。

 

「だが、あまりに実戦を離れすぎたな。……お前は俺の、敵ではない」

 

「じゃ、邪眼よ!」

 

 再び即死魔法。それも複数。だがそのどれもがあらぬ方向へと飛び去って、ジンに当たることはなかった。

 

「ふん!」

 

 そうこうしている間にジンが接近、平手が大きく振りかぶられる。

 

「ひぃっ!」

 

 暴力的な男の姿に、オフィーリアは本能的な恐怖を覚えた。だが、

 

(お、おちつけ! 妾には光のヴェールがある! 素手の攻撃など恐れる事など――)

 

「ぶべらっ!」

 

 かろうじて浮かべた不敵な笑みを、平手が豪快に張り飛ばした。

 

「あ……? え……?」

 

 凄まじい衝撃が身体に走り、オフィーリアは二回転して地面に倒れた。

 

(な、なにが起きた? 妾はなぜ倒れている?)

 

 視界がグニャグニャとねじれている。感覚がようやく追いついて、頬がじんじんと痛みだす。

 

「無様だな」

 

 男がゆっくりと歩いてくる。

 

「ひっ! ひぃっ!」

 

 もはや実態を伴う恐怖に駆られて、オフィーリアは這いつくばって床を掻いた。

 

「な、なぜじゃ? 光のヴェールが! なぜ効かぬのじゃ!」

 

「なぜもなにも、こんな千年前の骨董品が、現代の戦闘に耐えるわけがないだろう。……おい、逃げるな」

 

「ひぎぃ!」

 

 ばしぃっ! と、平手が尻を打った。それはごく軽いものだったが、数百年もの間、痛みとは無縁だったオフィーリアには凄まじい衝撃だった。

 

「貴様のその光のヴェールは、殺意ある攻撃なら刃から呪いまですべてを防ぐ。だが一方で、殺意のないものには反応しない。でなければ出産や、子供の折檻にすら反応してしまうからな」

 

 べろん、と薄衣のスカートを捲りあげられる。エルフ族は下着を着けないため、それだけでむっちりとした、中年女の尻肉がむき出しになる。

 

 ばぢん! ジンはそこをしたたかに打った。

 

「ひぎぃ! な! なにをする! やめ! ひゃああ!」

 

 ばぢん! ばぢん! と尻を叩かれる。白かった皮膚はたちまち腫れ上がっていく。

 

(こ、こんな! 高貴な妾がこのような辱めを!)

 

 屈辱に頬が染まっていく。人間ごときに敗北し、子供のように尻を打たれているという事実が、ようやく心に染み付いていく。

 

「お、おのれぇ! 人間ごときが! じゃ、邪眼よ……」

 

「無駄だと言っているだろう」

 

「っ!!!」

 

 ぎゅうううう! 万力のような力が尻肉をつねる。散々痛めつけられた神経が高ぶって、激痛が全身を駆け巡った。

 

 ばちん!

 

「や、やめよ! 貴様! 妾(わらわ)を誰だと思っている! 妾こそは誇り高きエルフ族の長! 世界の支配者にして! 全霊長の主(あるじ)なるぞ!」

 

 ばちん!

 

「っっっ! げ、下賤な人間ごときが。高貴なる玉体に触るでない! ま、ましてや尻を打つなど、許されざる不敬――」

 

 ばちん!

 

「あ! だ、だから……き、貴様せめて話を……話を聞け! ええい! 聞けと言うに! あ! ああ! あああ~~!」

 

 ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! ばちん! …………………………。

 

「……ひ……ひっく……ひっく……」

 

 どれほどの時間が過ぎたのか、オフィーリアはもはや、抗議の声も、抵抗の呪文を唱えることもなかった。そんなことをしても無駄だと、身体で理解させられていた。

 

「ひぐっ!」

 

 ばぢん! また打たれる。だが尻からはもう鈍い熱しか伝わってこない。散々痛めつけられた肌は紫色にうっ血しており、ろくに痛みも感じなかっった。

 

「敗北を理解したか? オフィーリア」

 

「……っ!」

 

 屈辱的な、それこそ、これまでの尻打ちよりも過酷な言葉に、オフィーリアはワナワナと震えた。じんわりと、枯れていた涙がまた溢れた。

 

「貴様の敗因。それは魔法を極めたと驕り高ぶって研鑽を忘れ、陰謀にふけって前線を離れたことだ。オフィーリア、貴様、今の魔導戦法が欺瞞と妨害にあることすら知らんだろう? ……魔王は、貴様の百倍は手強かったぞ」

 

「……なっ!」

 

 最大の屈辱に、オフィーリアは震えた。よりによってあの宿敵と比べられるなど!

 

「ふ……ふふ……だからどうした……!」

 

 屈辱が怒りの炎に変わっていく。

 

「一度の勝利ごときでくだらないのぉ。……お主がどれだけ強くても、所詮は人の子。百年もすれば死に絶える! くはは! その後はふたたび妾の天下よ! 結局どれだけ痛めつけても、妾を殺せぬのなら意味はないのだからなぁ!」

 

「勘違いするな」

 

「んん――!」

 

 むにゅうっと、再び尻が掴まれる。だがそれはなぜか柔らかなものだった。

 

「殺意ある行動は、光のヴェールに弾かれるのだろう? 俺に、お前を殺す気はない」

 

「? 何を言っているのじゃ? それではお主は一体なにを……」

 

「やれやれ、つくづく察しの悪い『妻』だな。……今宵は初夜だぞ?」

 

 顎をぐいっと引き起こされて、巨大な顔と向き合わされる。

 

「言っただろう、俺はお前が欲しいと……」

 

 狼が獲物を食らうように、ジンがのっそりとかがみ込んだ。

 

#新婚初夜★

 

「ん……んん! んんん~~~~!!」

 

 キス。キスをされている。ジンが、噛みつくようなキスをした。

 

 野太い舌が、オフィーリアの口に割って入る。前歯が、上顎が、乱暴な肉で蹂躙されていく。

 

「ん! んん~~~~!!」

 

 口を閉じようにも顎をガッチリと掴まれてそれすら出来ず、王女はただ生娘のように力なく暴れて、男の胸をたしたしと叩いた。

 

「んん! んんんん~~! ………………ぷはぁ! はぁ! はぁ……」

 

 ようやく開放されて床に倒れる。聖樹の樹肌に横たわって、必死で呼吸を繰り返す。

 

「見ろ、オフィーリア。ずいぶんといい姿になったじゃないか」

 

 髪を掴まれて、目の前で発動した鏡面魔法を見せつけられる。

 

(な、なんという屈辱……)

 

 鏡のなかに、歳経たエルフの女がいる。薄衣のドレスをまとった高貴な女は、しかしその髪を乱暴に掴み上げられて、涙を流して震えている。

 

 尻は真っ赤に痛めつけられたその姿は、まるでオークに犯される女エルフのようだ。

 

 いや、もうまるで、ではない。

 

「ひぃ! ……お、お主、なにを」

 

 髪を離される。べしゃりと地面にうずくまる。

 

 その眼前で、ジンが服を脱いでいく。毛皮の下から竜のうろこじみた腹筋があらわになり、ズボンから楡の木のように野太い足が引き抜かれていく。

 

 そして、禍々しく天を衝く、魔神族の角のような巨大なペニスが、オフィーリアの顔に影を落とした。

 

「お、お主、なにをしている。こ、これはなんの冗談じゃ?」

 

「…………」

 

「や、やめよ! あ! ああ! なにをする!」

 

 ジンはもはや言葉もなく、ただ行動に移していった。

 

 女の身体を押し倒し、薄衣のドレスをビリビリと破る。防御魔法を掛けられた最高級の魔道具が、しかしなんの抵抗にもならずにむしり取られていく。

 

 ぶるん! 巨大な乳房がこぼれ落ちる。

 

「ふむ、エルフにしてはでかいな」

 

 乳房が、ぎゅぅぅと揉みしだかれる。大きな乳首が、べろぉと舐められる。

 

「ちゅぅ……じゅるる……ちゅぅぅぅぅ!」

 

「ひぃ! や! やめよ! 気色悪い! けがらわしい!」

 

「……うむ、乳首もでかいな。子持ちらしい、年増女の乳首だ」

 

「な! よ、よくもそのような嘲(あざけ)りを!」

 

 かっと頬が赤くなる。五百年の長きにわたって。そのような下品な嘲笑を受けたのは始めてだった。

 

「あざけりではない、褒めているのだ。これなら良い子を産むだろう」

 

「な! き、きさま! なにを! なにをしている!」

 

 ジンがオフィーリアの膝を掴み、『ぐばぁっ』と左右に押し開いた。もう数百年もそのような下品な動きをしていない関節がポキポキと鳴った。

 

「み! 見るな! ば、バカもの! 顔を近づけるな! に! 匂いを嗅ぐな! この無礼者! や! やめろ! やめろというに! ――うひぃぃぃぃ!」

 

 べろり、と股ぐらを舐められる。尻穴からクリトリスまでを、巨大な舌が丹念に舐めて、最後は膣にねじ込まれた。

 

「っ!!」

 

 まるでペニスのように野太い舌。実際それはオフィーリアが体験してきたどのエルフの夫よりも太く、また巧みだった。

 

 しかし、

 

「ふむ、濡れんな」

 

 粗野な身体に似合わぬ、繊細で巧みな前戯をしながら、しかしジンはすぐに諦めた。

 

 オフィーリアの性器は乾ききっていて、まるで濡れる気配はない。

 

「と、当然だ無礼者! 豚ごときに舐められて! 不快でしかないわ!」

 

「まあよい、今日は最初から試しのつもりだ」

 

「なにをいって……ひっ! き、きさま! なにをしている!」

 

 股の間にジンが座り込み、その屹立したペニスをあてがった。

 

「だから言っているだろう。初夜だとな」

 

「ふ! ふざけるな! 人間ごとき下等生物が、高貴なエルフを! そ、それも、女王たる妾を抱こうというのか!」

 

 背筋が冷たく凍っていく。

 

「や! やめよ! お主なんぞ……犬猫のほうがまだましじゃ! い、いやじゃ! ひ、控えおろう!」

 

「…………」

 

「わ、わかった! 妾の負けじゃ! 降参! 降参する! な? いまならそなたの罪も問わん。そ、そうだ、人間どもの国をそなたにやろう! 魔王領もじゃ!」

 

「…………」

 

「エ、エルフ女が抱きたいのか? そ! それなら二等国民から好きな女を選ぶがいい! すべてそなたにやろうではないか!」

 

「…………」

 

「だ、だから妾は助け………………あ! ああ! あああああ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」 

 

 ずぶ! ずぶずぶずぶずぶ!

 

 勇者の剣が、大魔王の体を貫いた。

 

「あ……ぁへ……あ…………」

 

 齢五百を超えて、すでに女として上がりきったゆるい性器はしかし、規格外の男根を前に処女のようにきつく閉まった。

 

 およそ二百年ぶりの、それもエルフの男とは比べものにならない怒張を受けて、オフィーリアはパクパクとえづいた。

 

(な、なぜ妾がこのような目に……)

 

 この世で最も尊い存在が、この世で最も下賤な男に犯されている。

 

「ぬう、固いな。ずいぶんと具合が悪いぞ」

 

(お、おまけにこのように罵られて……) 

 

「どれ、熱を入れてやろう」

 

「っ! な! なにをする気じゃ!」

 

「ふぅぅぅぅん……は!」

 

 ジンが気息を整える。途端にすさまじい魔力が、股間を通して流れ込んできた。

 

「!!!!」

 

 じんわりと、体が温まっていく。熱い汗が噴き出して、視界がくっきりと色づいた。

 

「な、なにをした?」

 

「陽の魔力を交合を通じて流したのだ。……こんな初歩の房中術も知らんのか?」

 

「そ、そんな淫らな魔術、エルフでは禁忌――あ、ああ!」

 

 ペニスが動き出す。無理やりだった挿入と違って、そこはもう、湿っていた。

 

「ふむ、まだきついな。お前、いつから男と寝ていないのだ? そんなにモテなかったのか?」

 

「あ、阿呆め。性欲など、長命種にとっては恥ずべきもの。エルダーともなれば閉経こそ誉れなのじゃ」

 

「くだらん。肉体の喜びを捨ててなにが生か」

 

 ずぶり、ずぶりと、陽根が腟内の具合を確かめていく。同時に陽の魔力がほとばしり、オフィーリアの体をいやおうなしに温めていく。

 

「目覚めさせてやろう」

 

 腰をがっしりと掴まれて、注挿がいよいよ激しくなる。

 

「ま、まて! まさか貴様、妾を!」

 

「孕ませてやる」

 

 最大の恐怖が、オフィーリアを襲った。

 

「ほ! 本気で言っているのか?」

 

「夫婦が褥(しとね)をともにし、まぐわうのだ。子も出来るだろう」

 

「ばかな、純血のエルフたる妾に混ざり物を、ハーフエルフを産ませる気か!」

 

「不満か?」

 

「当たり前じゃ! あ、あのような呪われた血など、汚らわしい!」

 

 エルスタッドは、公式には百年も前に差別が禁止されている。だがそれはオフィーリアにとってつい最近のことであり、それも連合を成り立たせるための方便だった。

 

「オフィーリア。おまえは娘を、俺に嫁がせるつもりじゃなかったのか?」

 

「そ、それは……」

 

「なるほど、どのみち暗殺するつもりなら、関係ないか」

 

「んん! ま、まて勇者殿! 話を! 話を聞いて……おほぉぉぉぉ!!」

 

 ぱぁん! 注挿がいよいよ激しくなる。下半身が持ちあげられて、不安定な腰を鐘のように深く突かれる。

 

「お! おごおおおおお! そ! そうだ! 娘! 娘だ! サーシャをお主にやる! あやつなら好きにしていいぞ! ハーフエルフでも豚の子でも! なんでも好きに孕ませるがいい! だから、だから妾は見逃して……あああああぁぁぁぁ!」

 

 ぱぁん! ぱぁん!

 

「へごぉぉぉぉ! んごぉ! おごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ばじん! ばじん! ジンの腰が、オフィーリアの股を打つ。亀頭が、二百年も使っていない膣壁を削る。

 

「ぎゃひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 ぎゅうううう! ジンの巨大な手が腰を包み。締まりの悪い膣を手淫のように締め付ける。

 

「行くぞ妻よ、主人の精を受けるがいい」

 

「い! いやじゃ! いやじゃぁぁぁ! ゆるして! 堪忍してぇぇぇ!!」

 

 ジンは許さない。勘弁しない。獣のように腰を振って、女の体をこじ開けていく。

 

「孕めオフィーリア。お前は俺の子を産むのだ」

 

「いやぁぁぁ! いやじゃぁぁぁ! 人の子など孕みとうない! いや! いやぁ! ああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 どぐん! どぐん! どぐん!

 

 野太いペニスがさらに膨れ上がって、大量の精液を吐き出した。バタバタと暴れる足を抱え込んで、そのすべてを子宮に叩き込んだ。

 

「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 オフィーリアの、エルスタッド女王の叡智な眼差しが、白目をむいて裏返る。軽やかな声が濁り切り、股からぷしゃあああ! と潮を噴いた。

 

 膨大な魔力が流れ込む。古びた土地に、新たな種が撒かれていく。

 

「あ……ああ……あ……」

 

 びくんびくん、オフィーリアは絶頂とも違う屈辱の高みで震えていた。

 

「ふぅぅ……」

 

 ジンが残心と共にチンポを引き抜く。すべての支えを失った体がべちゃりと落ちる。

 

「あひ……あへ…………」

 

 オフィーリアの目の前に、先程ジンが呼び出した鏡があった。

 

 鏡の中にはカエルのように大股を開いたエルフが、自分の小便に浸かっていた。

 

 それが、エルスタッドの女王である自分自身の姿などと、オフィーリアは信じたくなかった。

 

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