悪女わからせ~悪徳エルフ女王は勇者の☓☓☓で成敗される~ 作:千吹つぐ
(……なんということじゃ)
翌日、オフィーリアは執務室にて、女王としての責務に就いていた。
報告を聞き、陳情を処理する。今日のエルスタッドには魔王討伐の祝賀によって各国の要人が集まっているため、オフィーリアはこの期を逃さず、彼らと裏の密談に勤しむはずだった。
(うう、まだ股ぐらに違和感が……)
だというのに、オフィーリアはまったく集中できなかった。尻の傷はすでに治癒魔法で癒やしたが、あまり効いている様子もなく、股関節がキリキリと痛んだ。
(くっ! なぜ妾がこんな目に……)
あの後、オフィーリアは目が覚めると、ぐっすりと眠るジンに腕枕をされていた。
今思えば、あれは暗殺の機会だったのではとも思うが……オフィーリアはとてもそんな気分にはなれず、ほうほうの体で逃げ出した。
そのあとのことは思い出したくもなかった。不得意な治癒魔法で必死に自分の尻を治し、孕み避けの魔法を掛け、そうしてようやく気絶するように眠ったのだ。
「痛っ! おい! なにをしている! もそっと優しく治療せんか!」
そのとき、座っていた尻に鈍痛が走った。
「も、もうしわけありません陛下!」
「ちっ! 手を止めるな! はようせい!」
「は! はい!」
(ああもう! そこではない! まったく気の利かぬグズどもめ!)
八つ当たりして、オフィーリアは苛立ちをつのらせていく。
治癒術師のエルフは顔を真っ青にしながら、肩や背中など、見当違いの場所に魔法を使う。だがこれも仕方がないだろう。オフィーリアは傷の原因が『尻を打たれたせいだ』などと、恥ずかしくて一言もいっていないのだから。
(くそくそくそ! 言われたことしか出来ないゴミどもめ。少しは自分の頭で考えて動いたらどうだ! 昨日も誰も助けにこなかったくせに……)
オフィーリアは歯ぎしりをする。だがそれは酷《こく》というものだろう。従順で意志薄弱なものばかりを重用したのは、そもそも彼女だ。その命令に逆らえるものなど、この部屋にはひとりもいない。
不機嫌な火竜と、そんな竜に八つ当たりされる生贄たち。執務室には、そんな気配に包まれていた。
そして、新たな生贄がまたひとり。
「姫様! お控えください! 姫様!」
「なぜですか! いいからお母様に合わせてください!」
そのとき、扉の外から喧騒が聞こえてきた。
(あの愚娘が……)
「陛下、サーシャ姫様がお成りになりました……」
「聞こえている。よい、通せ」
扉が開かれる。エルフの娘が現れる。
「お母様!」
そこにいたのは、オフィーリアによく似た娘だった。金髪に、緑の瞳、歳は百七十歳ほどと若い、典型的なエルフの少女だ。
「こ、これはどういうことなのですか! 説明してください!」
たゆん、と、そこだけは平均的なエルフより大きい、張りのある巨乳を弾ませてサーシャ・マナ・ノルニスは声を張り上げた。
彼女は勇者パーティの『聖女』であり、その名が示す通りオフィーリアの末の娘だ。
(まったく、この愚娘め……)
だがオフィーリアのなかで、サーシャの評価はあくまで低い。巷では『癒やしの聖女』だなんだと祭り上げられているが、記憶のなかの彼女は回復魔法しか取り柄がなく、常に母親の顔色をうかがっておどおどしている娘だった。
むしろ、だからこそ勇者パーティなどという捨て駒に投入したのだ。汎人類最高の戦力と言えば聞こえはいいが、その実態は二の矢のない決死行だ。オフィーリアは思い出す。ほとんど『死ね』と言っているような命令に、彼女は恐怖して、しかし逆らうことも出来ずに唯唯諾諾と従った。
(それが本当に魔王を討伐し、妾に意見するまでになるとはな。……ふむ、多少の警戒はいるか……)
オフィーリアは眉をしかめる。旅で少しは成長したのか、サーシャは震えながらも、母親に食って掛かっていた。
「おちつけサーシャ。説明とはなんのことだ」
「ですから! どうしてお母様が勇者ジンと結婚するのですか!」
若いエルフが、屈辱と怒りにふるえている。
「お、おかげで私は大恥です! パーティメンバーには慰められて……あの『魔女』には笑われて……わ、私、もうウエディングドレスだって仕立てていたのに……」
「サーシャ」
「こ、このような屈辱、む、娘の男を取るだなんて! お母様でもひどすぎます! ジンと結婚したくなったのなら、最初からそう言えば良かったではないですか!」
「サ ア シャ」
オフィーリアは微笑んで。大人が子供に言い含めるように、やさしく呼んだ。
「あ……」
しかし、その一言で、むしろサーシャは凍りついた。
「やれやれ、どうも勘違いしているようじゃが……つまり、お主が言いたいのはこういうことか? 『偉大なるエルフの女王は、下等な人間に横恋慕し、策を講じて娘から寝取った淫売だ』……と」
「あ、いえ……そ、そこまでは……」
サーシャの瞳から、怒りがみるみるうちに消えていき、オフィーリアのよく知る娘に戻っていく。
「ほっほっほ、どうやら我が娘はずいぶんとあの人間が気に入ったようじゃな。外の世界は、楽しかったかえ? その髪型も格好も、よく似合っているぞ」
サーシャが、はっとしたように青ざめて「い、いえ、これは……」と体を隠そうとした。エルフらしからぬ短く切った髪、そして治癒術師のようなケープ姿も、どちらも人間界での流行りだった。
「まあよい。……聞け娘よ。そもそも、今回のことは妾の策ではないのだ」
「え?」
「このようなこと、妾も予想しておらんかった。……つまりあれは勇者ジン個人の考えなのだ。お主はなサーシャ、単純に、振られたのじゃ」
「……っ!」
サーシャが、新たな屈辱に顔を歪ませる。オフィーリアは微笑む。
「ところでサーシャ、そなたは妾に、こう報告していたな。『勇者ジンは自分に惚れている』と」
「そ、それは!」
「『パーティの中で、自分が一番親しくなった。あの男はまちがいなく自分に求婚するだろう』とな……。妾は
「お、お母様……」
「それなのに、妾はかなしい…………」
部屋に、濃密な魔力が満ちていく。耐性の低い側近が泡を吹いて倒れていく。
オフィーリアは立ち上がった。サーシャがカタカタと震えていく。
「結局、そんなものはバカ娘の思い上がりだったわけだ。そのうえ……当の本人は原因を母親の淫売だと決めつけた……」
「お、おゆるしください! お母様!」
サーシャは、救国の英雄は、聖女は、もうすっかり幼女に戻ってしまい、母親の足元にひざまずいた。
「お、おゆるしを! サーシャが間違っておりました! お許しを!」
無視して、調度品が飾られた壁から、唯一の実用品を手に取る。
娘の顔が恐怖にゆがむ。
「お母様! サーシャが愚かでした! ですからどうか……ひぃっ!」
びしぃ! オフィーリアは愛用の鞭で、床をしたたかに打ち据えた。サーシャの顔に恐怖が浮かぶ。幼い頃のトラウマを刺激されて、心が幼児に戻っていく。
「サーシャ。お仕置きじゃ」
「お母様……」
「立ち上がって、準備なさい」
「お、おゆるしください! お慈悲を! ――ひぃ!」
ばしぃ!
「はようせい。それとも口上すら忘れたか?」
「…………」
のろのろとサーシャが立ち上がり、旅装のケープに手をかけた。
人で言えば十七程度の少女になるだろう、若い躰があらわになっていく。
ケープが落ち、内鎧が落ち、シャツのボタンがプツン、プツンと外されていく。その所作のすべてが恥辱に染まっており、髪飾りのひとつすら惜しむようであった。
「ううう……ううううう……」
極大の恥。だがそれを上回る恐怖にかられて『聖女』が服を脱いでいく。
若く、貼った乳房がプルンっと飛び出し、ほっそりとした下腹が、ぴったりと閉じた性器がさらされる。
剥きあげたばかりの果実のような、赤く染まった肌をむき出しにして、サーシャは直立不動で立ち尽くした。
「わ、わたくし、サーシャ・マナ・オルニスは、罪を犯しました……」
秘部を隠すことすら許されず、両手が腰の横で握られている。固く張った巨乳がふるふると震えている。
口だけがすらすらと動き、幼い頃に叩き込まれた口上が吐き出されていく。
「つ、つきましては罰を……お母様の罰をいただきとうございます……どうかこの愚かな娘に、お母様の偉大さを、今一度思い出させてくださいまし……」
そう言って、サーシャは壁に手をついて、真っ白な尻を突き出した。
ほっそりとした腰の、何もかもがさらされる。色素のうすい肛門も、線のように細い性器も、無毛の丘も、なにもかも。
「……う……うう……ううう」
あとはもう言葉もなく、サーシャは太ももをぷるぷると揺らしてすすり泣いていた。
「よかろう……」
オフィーリアは笑みを浮かべて、鞭を大きく振りかぶった。
「ひっく、ふぐっ、ぅぅぅぅ……!」
なにをされるのか躰が思い出して、サーシャはきゅっと股を絞めた。
「ふん!」
びしぃ! 真っ白な尻に、鞭の一撃が刻まれる。
「ひいいぃぃぃぃぃ!」
悲鳴が上がる。
「ひぃぃ! ひぃぃぃぃぃ!」
「どうしたサーシャ、まだたった一振りではないか。ふん!」
「ひぃぃ! いたぁぁぁあぁいぃぃ!」
びしぃ! びしぃ! さらなる鞭が尻を責め立てて、赤いミミズ腫れを残していく。
「ひぎぃ! 痛っ! いたい! いだいいい!」
「ふん! ふん!」
「きゃあ! ああああぁぁぁ!!!」
悲鳴を上げて、サーシャは懇願する。
「も! もうしわけありませんお母様! どうか! おゆるしを! おゆるしを!」
「だまりゃ!」
(こやつのせいで妾は! 妾は!)
昨夜、ジンにぶたれたことを思い出す。あの原因が目の前の娘にあると思うと、もはや手加減は出来なかった。
「ひ……ひぃ……ひぃぃ…………」
やがてサーシャは、エルフの姫でも、魔王を倒した英雄でもなくなっていった。
「ごめんなさい、おかあさま……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
柱に抱きついて尻をさらし、涙を流して懇願するその姿は、オフィーリアが見慣れた馬鹿娘の本当の姿だ。
「ふむ、そろそろ頃合いか。のうサーシャ……サーシャ、返事をせい」
「……は、はい……おかあさま……」
サーシャが背を伸ばす。赤黒く腫れた尻を見せながら、涙にぬれた顔で振り返る。
「そなたにチャンスをやろう」
「……チャンス、ですか?」
「そうだ、あの男の言葉を撤回させよ。花嫁は妾ではなく、そなただとな」
サーシャの顔に光が指す。
「……は! はい! お母様!」
「方法は何でも構わん。薬でも、魔法でも、お主の思うもっとも確実な方法で、奴の真心を手に入れよ」
ぱぁぁ、と、オフィーリアが下手な治癒魔術を発動させる。尻の傷がゆっくりと癒えていき……その裏で、膨大な魔力を流し込む。
「さすれば、お主をゆるしてやろう。……それどころか、国を上げた盛大な結婚式を開いてやるぞ」
「は! はいお母様! お任せください! このサーシャ、かならずや! お母様の期待に答えてみせます!」
「うむ、たのんだぞ、……我が自慢の、愛娘よ」
オフィーリアは満面の笑顔でうなずいた。