愉悦転生!神の遊戯場、俺はこんな世界に産まれたく無いだ(T . T) 作:rapas
オバ暦3年 〜ルルーン・ゴート〜
疲労で倒れたボクが、目醒めたのはガタゴトと煩い馬車の中だった。 ぼんやりとした意識の中で妹との逃避行の道中だった事を思い出し、瞬間で青ざめた。
馬車に拾われたのは良い、妹も拾われているのか?真っ先に確認しなければならない。 役立たずとして見捨てられていたらと考えると心臓が止まりそうだ。
「ナナリン! どこだ!?」
「ルル姉様、お呼びですか?」
直ぐに返ってきた返事に振り向けば、天使が居た。
蒼く澄んだ瞳は、大きくパッチリと開き、白くシミひとつ無い肌で作られた愛らしい顔が小首を傾げている。
7年振りに見た妹の素顔には、火傷で付いたケロイドの肌も濁った瞳も見当たらない・・・、・・・、・・・これはそう言う事か・・・
「不甲斐ない姉で済まないナナリン・・・天国に着いたら今度こそ幸せになろうね。」
ボクは、身体の水分を全て流そうと、声を上げて涙した。
「何かお一人で納得して泣き出してしまわれました?・・・どうしましょう?(^^;; ルル姉様も干し肉を如何ですか? 美味しいですよ。」
わんわんと子供のように泣き続けつつも、ナナリンから差し出された干し肉を喰み、チーズを堪能して、ワインで流し込み。デザートのドライフルーツに舌鼓を打っていると男性から問い掛けられた。
「もう落ち着いたかね?」
今まで気配を絶っていたのか? 気が付けば正面には恰幅の良い初老の紳士、髪は存外寂しそうだ。
「これは死神殿、あの世までの道中に最後の晩餐を馳走頂き痛み要ります。 どうかボクは如何様になっても構いませんので、不幸なまま人生が終わってしまった哀れな妹に御慈悲をお願い致します。」
ボクは精一杯の気持ちと感謝を死後の案内人に伝える。 もうそんな事しかしてあげられる事は無いから。
死神殿は妹と暫く視線を合わせる。 ・・・オイ!目と目で語るんじゃ無いぞ!このロリコンめ!
「なに、仲良し姉妹を引き離すような真似はせぬし、天国を味合わせて見せよう。 せっかく助けたのだし、ワシのために役立って頂こう。」
「御配慮頂きありがとうございま・・・、・・・、・・・、助けた?」
自分でも、さぞかし間抜けな顔をしていたと思う。
しかし、状況を信じられなかったのだ。 行き倒れたボクとナナリンを拾ってくれたまでは理解出来る。 でもどんな医者も薬師も司祭も見放したナナリンの傷を治す術は・・・、・・・、・・・伝説のひとつだけか・・・
「申し訳ございません。死神殿、いえ ペド・ローリー子爵閣下。 お助け頂いたのみならず、伝説の竜神の血をご使用頂いた御恩はどのような代償をご要望でもお受け致します。」
3年前、万病の秘薬を手に入れる為に国を上げて行われた竜神討伐とその成功者の噂は有名だ。
ナナリンを癒すためには、この秘薬を使ったとしか思えない。 万の命を費やして、なお失敗したと有名な竜神討伐である。 その価値たるや比肩するものは無い。
「お望みで有れば、ボクの全てを捧げさせて頂きます。」
希望すら見失っていた望みを叶えて貰ったのだ!何も臆する事は無い!ボクはペド子爵の目を真っ直ぐ見て答えを待った。
「姉妹丼・・・」
ぽつりと溢された言葉にボクの思考は瞬間沸騰! そういや、この変態は齢7つの姫様を妻に迎えたんだった。
「hpkhyっっdfgt6rd5え67!! )んhg#どぉ0097tfg%6!&$5#dtvr!」
自分でも何を口走っていたのか理解できない罵詈雑言のオンパレードは、日が暮れる迄続いていた。
陛下への納税と献上を終えて、馬車はローリー領の領都へ帰還した。 道中にてエロ子爵は、毎晩遠慮なくボクを貪ったが、治療の礼にボクの全てを捧げると言った手前もあり異存は無い。
「絶壁萌え〜♪」
とか言いやがったのは、許せなかったので渾身の力で急所を踏み付けておいた・・・変態子爵が恍惚の顔して白濁が出て来ちゃったのは困った。
子爵の子種は全部ボクの身に納める約束をしていたから、どうやって処理しよう・・・変態はワクワクした顔でこっちを見てやがる。 なんか無性に腹が立った。
領主館に到着すると、ボクは新しい妾だと変態子爵に臆面もなく紹介された、大丈夫か?と思ったがなんか同じ年頃のメイド二人に折檻され始めた・・・暫くするとより年下のメイドも参加して大折檻大会になっていた。 その横で正妻である姫様が歳の近いナナリンと仲良くお喋りを始めていたので、これがココの日常なのかと飲み込む事にした。
妾として、何処か離れ小屋にでも押し込まれるのか?と思ったが、館にナナリン共々部屋が与えられた。 隠さなくて良いのか?と思ったが、家宰に「会長が仕事をサボる時間が増えるので、とっとと果てさせて仕事に戻させる事。」と手早く済ませろと念を押された。排便でもあるまいに情緖が無い。
それなら、肉便器として部屋に待機しているのか?と思えば、ナナリンと一緒に領民学校へ通えと言われた。
卒業後は自由に職業を選んで良いと言われたのには驚いた。 てっきり妾として生涯過ごす事になると思っていたからだ、なお妾は仕事じゃ無いと言われた・・・ここは意外と厳しいらしい。
ボクは領民学校を即日卒業できたが、元盲目だったナナリンは文字を覚えるのに苦労している。
じっくり2年かけて卒業するように言い付けると、ボクは自分の仕事を探すようにした。
ボクが妾をするのは、ナナリンの治療の礼だから食と住に最低限の消耗品は保証しても、嗜好品や小遣いなどは自身で稼げと家宰が念を推してきた。 他の妾も同じらしく、自分で見つけられないなら適性を見て紹介して貰えるらしい。
頭の回転には自信があったので、家宰に仕事を紹介して貰う事にした。 一月もすると領主の執務室で何故か決算書類をバンバン処理するハメになっていた。 館に住んでいる事を良い事に、変態子爵に家宰とボクで朝を迎える事が多くなった。 もう書類は見たく無い・・・おかしい、同じ館に住んでいるのにナナリンの顔を見ない日が5日続いたよ(T . T)
その日は、ストレスで狂いそうだったので、仕事を放棄して久々にナナリンと夕食を共にした・・・ああ癒される♪
だけど深夜に二人とも嘔吐してしまった。 食べ合わせが悪かったのかと思い医者を呼び診察して貰った。
「おめでとうございます。 お二人とも御懐妊です。」
「わあ! 嬉しいです。 一緒ですねルル姉様♪」
・・・、・・・、・・・、そうかそうか、ネーナ殿にガガミン殿へ伝えて、仕事はストライキ決定だな!
ゆ・る・さ・ん!
館中のメイドによる大折檻大会パート2により本日は仕事にならなかったと家宰に嘆かれたが知らんがな#
懐妊の御褒美として館の離れに住居を頂いたが、正直言って離れた街に引越したかった。 しかし出産後の赤ん坊の世話と妾の義務(ふざけんな)があるので、我慢した。 徹夜残業も妊婦にやらせるな!と言って下さったガガミン殿の言葉は大変頼りになった。 姫様は懐妊を祝って下さったが分かってらっしゃるのだろうか?
ローリー領に来て半年が過ぎた、ボクのお腹は順調に膨れ育っている。 有能だからと仕事を回す家宰どのに、即決で許可を出す変態子爵は妊婦への配慮がマジ足りないと思う# 「流れたらどうする気だ!?」と問いかけたら不思議なものを見る目で見られた・・・これだから男はダメだ#
仕事の成果と懐妊の褒美に地位も順調に上がり、ボクの階梯は加護レベル5となった。 石を握り潰せる筋力とかわけ分からん!
領内での地位は極一部の上澄となり、国内最大商会の集めた情報も制限無しの閲覧許可がある。
ゴート領とは桁外れな情報収集力により、この国の危機的状況とローリー領の異常さがハッキリと理解出来た。
正直な感想は、「この国もう終わってね?」である。 恒例ですよ!と絶えず続く大凶作は国内平均で作況指数30、もはや大凶作って言葉すら生温い、いくら大穀倉地帯のバンドウと言えど、これでは輸出どころか国民を支えられない。だから飢餓地獄が各地で起こっていた。昨年はローリー領の余剰作物を王家に献上して国家崩壊を防いでいたが、餓死・農民の離散・貴族領主間の奪い合いによって国民は半減以下、指導者が現れれば内紛状態も待ったなしになりそうだ。
そして、内紛が起ころうが、王家が打倒されようが、何も状況は改善されずに滅亡まっしぐらになるだろう。
だって原因は食糧の不足であり、王家の対応が不味い訳では無いから、それどころか援助を受けて経済を回そうとしている王家がコケたら、更に人口が半減しそうだ、更に国外でも西・北と関係なく全方面で凶作である・・・地獄かな?、飢餓地獄だった。
そんな中でローリー領は作況指数40を叩き出している。 もちろん、この数字だって大凶作以上に悪い、70で全滅、80で大凶作、90で凶作、95で不作なんだ。 ローリー領の異常さは人口1万人に満たない領地が20万人分以上の収穫を上げている事だった。 領民全員が加護を授かっている事実を知らなければとても信じられない。
冬に行われた工事では都市計画用に作られた領地模型に、現実を近付けていた。 水路程度かと思えば造山とか地形その物を短期で変更している。 脳が理解を拒んでいた。
秋になり、ナナリンと共に出産を迎えると、家族として可愛い娘が二人増えた。 変態子爵も娘の可愛さに通い詰めて来るし、ベッドにボクを引きずり込もうとするので、育児優先ってぶん殴っておいた。 翌日はしかっりストライキで仕事を休んだので、家宰が変態子爵の残り少ない髪を毟りながら謝罪に来た。 謝罪より休みが欲しい(T . T)
娘の名前はそれぞれ【カレン】と【コーネリア】とした女性らしく、可憐でお淑やかに育てると決意している。
今年の収穫を徹夜で集計し、王家への納税と献上を済ませると徳政令の話が出た。かなりマズイ、余剰がありまくるローリー商会としては、引き換えに名誉を得るでも問題は無い。 だが国内の状況から、それだけでは済まないだろう。 この後の顛末は予想が着く、崩壊する経済の再編と混乱に紛れて邪魔者の排除準備を始めた。 まずは旧ゴート家のツテで各地に手紙を出す、家宰に商会のツテもフル活用する許可を貰う。 ボクが守るべき者たちは此処にしか居ないから・・・
冬を越え、春が過ぎ、夏の熱気が遠のいた秋の日。
完徹7日を乗り越えて地獄の収穫集計が完了すると領主館は祝福で騒しくなった。領主一族全員が呼ばれ、ボクも7日降りに顔を見るナナリン、カレン、コーネリアと4人で部屋へ通された。 ガガミン殿に抱かれて御披露目されるのは、昨日に姫様がお産まれになった男の子、子爵家の嫡男で王孫たるタンク様。「一族皆さんの祝福を頂きたいですわ♪」との言葉に、妾まで一族扱いする姫様の感覚に世間ズレを感じながら娘達の将来に少し安堵を感じていた。
姫様は嫉妬深く無いし、一般的なクズ貴族と違って、妾や愛人の子が冷遇される事が、この家では無い。変態子爵は全ての子に甘く、序列こそあるが、家中では全員領主の子として扱われている。 カレンもコーネリアもボクより加護レベルが高いから反抗期とかちょっと心配なぐらいだ。 たぶん腕力では勝てない。
今年の収穫に合わせて計画されていた一掃作戦は、色々な思惑により狂いが積み重なり始めていた。
変態子爵はあくまで国を救おうと大陸中を駆け回る決意をして、同行するターレンは困ったような嬉しいような表情。
変態子爵に変わる戦力の当てにオバ様を出すわけにもいかず、コンジョウもナオエも前線から呼び戻せず、困った中で姫様が王城へ行くとなった。戦力としてヒムラが当てに出来る反面で、タンク様の安全確保が難題となった。
殲滅戦であればガガミン殿やネーナ殿が御一人でも過剰ではあるのだが、戦場に出たことも無い少女に頼める事では無い。
家宰殿の口癖では無いが「働け!ヒムラ!」は口走りそうになる。
正直に言って計画を一年延期したい、だが死にかけでも経済が回っていた昨年と違って今年は延命が出来ない。
詰んだ!神々の力を借りてもこのていたらく、もう頭を抱えて最悪の状況にならないように祈ることしか出来なかった。
晩秋に姫様がご帰還した。 それはバンドウ王国が滅んだ年、幾つものミスマッチにより落城までに姫様一行は王城へ辿り着けなかった。ヤンヤ殿が同行していなければ、アホ伯爵が無駄に引き留め無ければ、包囲されてしまっても城内から陛下を連れての脱出は容易だったろうし、僅か100名でナウリーバ3万を殲滅し尽くした兵の中から選別した護衛隊ならどうにでも出来た筈だった。
姫様の嘆きの中に邪魔者であったルーメン正教会主力は王都と共に消滅し、アホ伯爵のように地方覇者になりかけていた有力者は、コンジョウとナオエより派遣させた部隊によって反乱軍として滅ぼした。
元の計画では、保護した陛下の号令の下でバンドウを再統一してしまう予定であったが霞の如く消え去った。
変態子爵にはその気が無く、姫様もそんな性格では無い。 重臣一同の見解では、タンク様が御成長されて意思を示さなけれ現状維持って、国に住む者達を見放す決定をしていた。 オバ様には眷属以外を愛でる気が無く、領主一族以外が領土欲を示せば、領民不適切としてシステムが追放する。 神々の力を授けれらながら、謙虚な器を作ってしまった変態子爵の大失態とも言えた。
春となり、読み書きは赤点ギリギリながら領民学校を卒業したナナリンが、自立した女性を目指すと言い出した。 館でメイドが嫌なら、花屋とか喫茶店の看板娘とか可愛いナナリンならなんでも似合うだろう。
「私は身体を動かすのが大好きだから、兵士をやってみたいです♪」
おい、待て、ナナリン!何故そのチョイス!? 確かに3歳までのナナリンも怪我が治った後のナナリンも亡き母を思い出すぐらいパワフルだが、それは違うんじゃないかい。
「ルル姉様も応援して頂けますわよね?」
有無を言わさぬ押しの強いまっすぐな笑顔にボクは首を縦に振ってしまった。
新兵訓練は週に6日、土曜の夜に帰宅して日曜は休日だ、つまりナナリンの顔を見ない生活が5日も続く・・・拷問かな?
結局は耐え切れずに土曜の朝に訓練所の見学予定を仕事に組み込んだ。
死よりも辛いって謳い文句の新兵訓練にか弱いナナリンが根を上げると思ってもいた。
訓練所に足を踏み入れた当初はそんな余裕もあったが進むうちに焦燥に変わっていた。
壁面に丁寧に並べられているのは、手足が首が落ちた酷い遺体ばかり骨折ぐらいとか想像していた惨さと次元が違った。
臭気に当てられ朦朧となってボクの顔は青ざめていただろう、でも確かめずにはいられなかった。
ナナリンがココに並んでいない事を今日の晩にはお疲れ、お帰りって声をかけるんだって・・・
そんな中で、手足4本を並べられた女の子の横に、可愛く座って自分の生首を抱えるナナリンの姿を見てボクの意識は遠のいた。
目が覚めたのは自宅だった。 子供達の世話を兼ねてメイドさんが夕飯の準備をしてくれていた。
ボクの目覚めを確認すると帰宅の挨拶をして帰っていった。
テーブルにはボクとナナリン二人分の準備がされていた。 空っぽのままボクはもう帰ってこない人を待つ様に席に着く、今にも「ただいまー!」って元気よく挨拶して「何かルル姉様お疲れですか?」と心配げに覗き込んでくるナナリンが帰って来た・・・、・・・、・・・
「えっと、お帰り・・・?」
「ハイ!ただいまルル姉様。」
「カレンもコーネリアもただいま♪」
・・・、・・・、・・・どうやら激務に倒れて悪夢を見たようだ、変態子爵と家宰に抗議して仕事を減らそう!
「本当にお疲れではありませんか?」
「いや、ひどい悪夢を見ただけさ。 ナナリンが首を落とされて死んでしまうやつでね。」
苦笑しながら、笑い話にのように答える。
「あっ!本日は偉い人が見学に来るって聞きましたがルル姉様でしたか!? 始めてだとショッキングな光景でしたでしょう?」
オイ、マテ。
「今日も天国でお父様とお話ししましたが、もう魂がかなり薄れて崩れて何を言いたいかわかりませんでした。 残念ながらお母様は溶け切ってもう見つけられませんでした。」
え・・・なんか聞きたくないなぁ。
「甦えればいいからって、教官達は毎回毎回遠慮なく、首を刎ねる、胴体寸断する、お腹を裂いて中身をぶち撒けるとか、ホントーにお洗濯に困ります。 抗議しても弱いのが悪い!でしてよ# ルル姉様もっと聞いて下さい!」
うん、あのね、ナナリン・・・死ぬのに慣れちゃダメだと思うよ。
〜fin〜