愉悦転生!神の遊戯場、俺はこんな世界に産まれたく無いだ(T . T) 作:rapas
早く成長したい〜
ご飯が恋しいです!
〜 メイ 〜
家族が居なくなり村が滅んでから、2年が経ったの。
私は10歳になり、御領主様の館で下働きのメイドとして働いているの。
凶作は5年も続き、年々食べ物が少なくなっているの・・・空飛ぶ鳥も庭の小動物も、姿が消えていったの。
館で働けば最低限の食事は貰えるけど、毎日毎夜の生贄のように、若い娘が殺されていく、此処は地獄のようなの。
もちろん野心に溢れた役人も、才気溢れる官僚も、毎年毎月と処刑が続くの・・・
兵隊ですら顔と名前を覚える間も無く居なくなるの。
変わっていないのは、御領主様と若様だけなの・・・きっと私も暫くしたら、この世から居なくなるの・・・死にたく無いなぁ。
今日も朝一番は重い水瓶での水汲みから1日が始まるの。
まだ子供にはキツイでしょう?って手伝ってくれた、元気な農家のお姉さんは、館へ来た6日目に変わり果てた姿でゴミ溜めにいたの。
高飛車で偉そうだった貴族のお姉さんは、見張り塔から落ちて柘榴のように砕けたの。
家族に少しでも仕送りするために来たって話してくれた、元商家のお姉さんは焦点の合わない眼で、笑い続けるだけになったのが、気持ち悪いって首を切り落とされたの。
誰も代わりに働いてくれないし、働かないとご飯が食べれないの。
苦しくて辛いけど、私を助けようと頑張ったママに、また会ったら胸を張って褒めて貰うために、精一杯生きるの。
きっとそんなに遠い日じゃないの・・・
そんな日々の中で、遠乗りに出ていた御領主様が、一台の大きな4頭だての馬車と、見慣れない制服を着た兵士を連れて帰って来たの。
この世界で初めて見た、統一した兵装に身を包んだ兵士はカッコよくて、何処か余裕が感じられて、今まで見慣れた欲に塗れた目をしていなかったの。
馬車からは、私と同じぐらいの歳の女の子が、降りて来たの。
「この地を治めるアークジガー・オーホウで御座います。 本日は我が館への訪来頂き、大変喜ばしく伯爵家一同を上げて歓待させて頂きます。」
御領主様が低姿勢で恭しく挨拶してるの!大変貴重な奇行を見たの!明日はきっと槍でも降るの!
「丁寧なご挨拶を頂き、ありがとうですわ。 バンドウの地を治めるウージ・ハールー・オーダー王が1の姫、ペド・ローリー子爵の妻、コマ・オーダー・ローリーですわ。 噂に名高いオーホウ伯とお会いできて、感激しておりますのよ。 父王へ挨拶の道中ですので長居は致しませぬが、暫しお世話になりますわ。」
ほぇーーー!王様のお姫様なの! 若様なんかより、仕草に気品があって、身形も良いなって思ったけど納得なの!
でも、あの歳で結婚はちょっと大変かもなの。隣のメイドさんが抱いている赤ちゃんは、子供とか言わないよね?
「こちらは息子で王孫、ローリー子爵家の後継になる、タンクですわ。 タンクちゃんもご挨拶ですわ♪」
「ばぅ〜〜〜」
「これはこれは、タンク様のご挨拶に痛み入ります。」
丁度よく赤ちゃんが、声を出したら、猿芝居なの。お貴族様は色々と常識が違って大変なの・・・
そんなやり取りを遠目に眺めて居ると、陰険無謀執事のヤンナオがコチラへ来たの。出来れば話しかけないで欲しいの・・・
「メイくん、賓客が長逗留するから、即座に客間を用意してくれたまえ。」
「何処の客間で御座いますか?」
殆どの部屋が、物置きや兵士の溜まり場になって居るから、客を迎える部屋なんて無いの。
「高貴な身分の賓客だぞ、新館奥の最も大きな部屋に決まって居るだろうが!」
あー、あの物置き・・・マットレスが壊れてシーツも破れたベッドしか無いし、数も足りないの。 他から運び込むの? 統一感を出す為に、探し廻り全部入れ替えるの?
「ヒトが足りないです。 ヤンナオさんのお名前で兵士の方々に協力させて頂けますか? それとベッドも足りないので他の部屋から集める事も必要ですので許可を下さい。 シーツも足りないので、新品のシーツが必要ですが、手に入れる方法がありません。」
「はぁ! テメエは最古参のメイドだろ!なんで、これしきの事が一人で出来ねんだよ!」
私は10歳で、勤続2年の若輩なの。・・・本当にこの家は終わってると思うの。
「私に部下も仲間も居ませんので、ベッドの移動は勿論の事、あの部屋に有る重いゴミを運び出せません。 もう昼に成りますが、今から今夜のお客様が宿泊する部屋の準備とか、掃除も間に合いません。 お客様のご一行は30人程と見うけしますが、それぞれをどのお部屋に割り振るのでしょうか?」
「それを考えるのもメイドの役目だよ! 御領主様の意向だぞ!」
「私に権限なんか有りません! 具体的な指示を下さい!」
「ッチ! 人手はコックのボッショスへ頼め!ベッドは他の客間から集めろ!シーツの購入は御領主様へ許可を貰え、部屋の割り振りは姫様とご夫人が客間、兵士どもは館外の空き地に野営させれば充分だ!」
コレだからダメ執事なの・・・コックから人手を奪って夕食はどうするのかな?
「全部ヤンナオさんからの指示で、私が御領主様を始め、皆さんに許可を頂きに伺うのですね? シーツの購入には7日かかりますよ。 それと購入するなら使いにヤンナオさんから現金を渡して下さい。」
「なんで7日もかかるんだよ! 今夜から使うんだぞ!」
「徳政令で潰れたから領内に商人なんか居ませんよ? 必要な物は、現金を持ってローリー領まで買い出しです。」
貴族位を持った商人の借金まで踏み倒すとか、もう何処からも購入出来ないの。 現金持っていけば売ってくれる寛大な商人が残ってるだけ幸運だと思うの。 コレで相対的に裕福だから現実は辛いの。
「そうだ!領内の民衆から緊急徴収すれば良い!」
・・・こんな奴しか居ないの。 新品のシーツ持ってるほど裕福だと、家宰とか兵団長しか居ないと思うの。
「徴収するなら、ますます兵士が必要かと。」
「御領主様のお名前で徴収するのだぞ! 断られるなどあり得ん!」
・・・御領主様への報告も指示に入ってるの。きっと首が飛ぶの。
「承りました、それでは指示に従って、まずは御裁可を得て参ります。」
「うむ、頼んだぞ。」
遠目に御領主様が、姫様から離れたので、まずはシーツの件から許可を貰うの。
ヤンナオの指示をデデン家宰とボー兵団長の前で、御領主様に御裁可を頂いたの。
シーツの徴収先の心当たりに、家宰も兵団長も互いの館を上げて、どんどん雰囲気が険悪になってたの。
御領主様の前でなければキット拳が出ていたの。
それとヤンナオとは翌日から会わなくなったの。 深くは考えない事にしてるの。
ボッショスさんの部下達と一緒に客間の片付けなの。
ボッショスさんは荷物を纏めるのに忙しくて手伝ってくれないの。
最後の別れにって、こっそりアメちゃん貰ったから奪われる前に食べたの♪
ゴミ溜めでは、昨日入ってきた新人メイドのお姉さんとご対面したの。
若いコック見習いが、勿体なくもリバースしてたけど、この程度でメンタルやられてたら、料理なんか出来ないの。
お姉さんが人の形をして無くても、ちゃんと埋め直してあげるの。
粗大ゴミが処分されて、ベッドが持ち込まれる前に大急ぎで蜘蛛の巣を払うの。
コレをやらないと、折角の新品シーツに埃が降って来ちゃうの。
窓枠の埃とか高い所から順番にーーーって時間が足りないのーーー。
壁の塗り直しとかも必要だけど、やれない事は放置して、少しでも手早く過ごし易いお部屋に、汚部屋をリメイクなの。
目の回るほど忙しい中で、晩餐の給仕係に呼び出されたの。
料理が決まらない? 手順が分からない? ボッショスさんに聞けなの!・・・もう逃げたの。
料理を運ぶだけなら誰でも出来るの!・・・所作を知らない? ・・・高飛車だったお姉さん!砕けても、あの世から帰って来いなの。
もう晩餐は始まってるから、切るだけで食べれる物と飲み物を出すの! 私に持っていけと?マジ役立たずしかいないの。
「お飲み物をお持ち致しました。」
晩餐のテーブルでは、御領主様がホスト席、若様や家宰に兵団長達が座る対面の客席には、お姫様様とお年を召したご夫人が席に着き、赤ちゃんを抱えたメイドさんと姫様の執事さんが、その後ろに控えて立って居るの。
マナーとして高位の客人から給士をしていくの。
「ご苦労様ですわ。」
意外な事に姫様から労いの言葉を頂いたの。 貴族は給士なんか、物扱いすると思ってたの。
「昨今の凶作により、贅を凝らした晩餐では無く、申し訳ございませんが、何卒お許しください。」
給士が進むと御領主様が乾杯の挨拶を始めるけど、誰が悪いと思ってるの!
ちゃんと準備時間が在ってコックが作れば、もっと良い物出せたの!
次の料理を運ぶ為に晩餐の席を下がると、もう1人居た姫様付きのメイドさんに、声をかけられたの。
「姫様のー、休憩の準備にー、部屋へ案内して欲しいのだけどー・・・分かるかなー? 誰に尋ねてもー、お茶を濁すからー、もう手当たり次第なのー、迷惑ならごめんねー。」
うん、物置きを準備して部屋を用意してます。って理解してる使用人は、殆ど居ないの。
「申し訳ありません。 お部屋はまだ準備中でして、晩餐会が終わるまでには、なんとか御準備いたします。」
「あらー、まさか何かトラブルー? 給士の貴方が客間の準備もしているのー?」
言葉を間違えたの? 何か嫌な予感がするけど、誤魔化しても実現できそうに無いの。
「申し訳ございません。 晩餐会までに部屋の御準備が終わらず、平行して私が対応しています。」
「あらあらー、それはダメねー、掃除で服を汚したらー、給士も困るでしょうー? 部屋を教えて貰えたらー、私がお掃除もしておくはー。」
非常に魅力的な提案なの。 でもそれは歓待する側としてはメーなの。
「非常にありがたい、お申し出なのですが・・・」
「ちゃんと内緒にするからー、私も奥様をー、準備不足の部屋にー、迎えたく無いのー。」
・・・バレなきゃ、それがベストかもなの。 こうして私はメイドさんを部屋に案内してしまったの。 掃除用具は好きに使ってなの。
食材はそれなりでも、下準備不足のメインディッシュは残念な代物、自分の自慢話ばかりで、接待のイロハも不勉強な御領主と若様が相手では、姫様もご苦労様しているようだったの・・・スッゴイ帰りたいオーラが出てたの。
晩餐が終わり、私はお役御免と思ったら、そのまま客間への案内を申し付けられたの。
この館には人材って、もう居ないの?
「貴方は、まだ幼いのに、この館では所作も礼儀も、しっかりしていますね。 今日は教育役のハウスメイドや、侍女の方は不在ですか?」
「申し訳ございません。 私では、そのご質問には答えられません。」
ご夫人が嫌な質問してきたの。 あの歓待では、御立腹も当然なの。
「こちらで、ございます。」
さっさと客間に案内して、下がりたいの・・・確認するために、席を外す時間が無かったから、この客間を見せるのはちょっと恐怖なの・・・今夜が私の命日かもなの。
「ネーナ、こちらに居ましたのね! お茶の準備もあってとても嬉しいですわ♪」
ドアを開けたその先は、何処だココ?だったの。 諦めた壁の修繕が綺麗にされて、剥がれていた場所もわからないの。 寝具はシーツやマットレスどころか、ベッドごと変わってるの!・・・何処から持ってきたの?
品の良いテーブルセットに、美味しそうなパイが、何種類も焼立ての湯気を上げて待ってるの!
思わずグーって鳴いた、私のお腹の虫に罪は無いと思うの。
「クスクス、ご一緒に如何かしら、頑張って下さっていたから、ワタクシからのご褒美ですわ♪ オーホウ伯には内緒ですわね。」
内輪って事だろうか? 姫様に促されて、ご夫人に執事さんも席に着き、メイドさんの給士を受けるの・・・所作が綺麗なの。 給士が終わったメイドさんも席に着くと姫様の合図で食事が始まったの。 ヤバイ!ボッショスさんのパイと比べて、激ヤバで美味しいの。 これと手抜きメインディッシュを比べちゃメーなの! この味ってもしかして、砂糖にシナモン?貴重な甘味と色々な香辛料を全部に、ふんだんに使ってるの!? このテーブルに出てるだけで館の食費一月分を上回る費用なの・・・
「ご馳走様でしたわ♪ ネーナ、護衛隊の皆さんには振る舞いましたの?」
「申し訳ありませが、晩餐会があまりに遅かったので、先に配らせて頂きました。」
「ナイス判断ですわ♪ ワタクシのために働いて下さっている皆さんに、ひもじい思いをさせてはいけませんわ。」
姫様・・・御領主様と若様の前で言って欲しいの。
隣の芝生は青く見えるってことなの?・・・仕える家を変えたいの。
こうして姫様を賓客に迎えた最初の夜が過ぎていったの。
〜 fin 〜
・・・・・・あ!寝てた・・・誰か不幸にならんか?