私は、新見遥佳。幼馴染の前田一也君と一緒のクラス。彼が憧れている学園のヒロインよ。クラスの男女問わず人気を誇り、勉強がよく出来て、成績はいつも上位にいる。また、テニスが得意ね。何でもやりこなしてしまう一方で、先陣を切るようなタイプでは決してないわ。小さい頃から比べるとずいぶんと綺麗になってしまったが為に、彼から「釣り合わねぇな。」と感じられてしまい、距離ができてしまった。
彼が私の事を「新見さん」としか呼ばなくなったことや、必要最低限しか私と話してくれなくなってしまったこと。極めつけは、素っ気無い態度しか取らなくなった事。そういった事はたまに遊びにやってくる彼の妹さんの果音ちゃんから、聞く事が多くなった。何故、そこまでにして、私の事を距離置こうとするの……?確かに、学校では友達と楽しく話してるけど、家に帰れば兄妹がいる訳でも無いから、本当に独りなんだよ?そんなに綺麗になっちゃいけなかったのかなぁ?
今日は4月中旬の土曜日。テニス部の練習や試合がある訳でもないので、自由に時間を過ごせる。それこそ、前田家に訪問しても良し、宿題に打ち込むのも良し、読書をするのも良し。さて、私は何して過ごそうか。
前田家に行くのは良いけど、彼がまた素っ気無い態度を取って、距離を置いてきたらどうしよう。かと言って、前田君を知らんぷりにする事は、私の性格を考慮しても、それは無理な事。
一眼レフカメラを通じて、写真を撮ることに興味を持ち、没頭する彼に面会を求めに行っても、必ずしも良い結果になるとは到底思えなくなってきた。当然、周りの友達の声からも、「前田君と新見さんは不釣り合いだから、付き合わない方がいい」と言う嫉妬から来る声からも多数寄せられたり、上学年の男先輩からも「付き合おうよ」と言った声に応えては、やんわりと断りの意を示して諦めてもらっている始末。
この八方塞がりの難課題を、どう解決していけばいいのか。友達の声に応えて前田君を「何も見なかった事にしている。」という立場を取るべきなのか、それとも……。小さい頃からの想いを友達などに、一切口外せず秘めたまま、彼と少しずつでも関わっていく立場を取るべきなのか。
そんな事を苦慮していると、玄関の呼び出しベルが鳴る。
ピンポーン……。
遥佳「はーい、誰?」
??「俺だよ、前田一也だ。」
遥佳「えっ!?まっ、前田君!?!?」
一也「とりあえず、開けてくれ。新見さん。話したいことがある。」
遥佳「わ、解った!今、開けるよー!」
ギギィ~~~ッ……。
意外な人物の訪問で、驚いた私。まさかの前田君本人の訪問だとは思いもしなかった。私も、ちょうど前田君と話したいことが多々あったので、玄関のドアをゆっくり開けて、彼を招き入れる。
一也「…………。新見さんの家を訪問するのは何年ぶりだろうな。凄く久しぶりだよ。」
遥佳「私もね……。小さい頃の髪を短くしていた時は、よく前田君は遊びに来てくれてたもん。それが、髪を長くして、お洒落をして、綺麗になった今では、全然遊びに来てくれなくなった。正直、寂しかったかな。まぁ、私の部屋に来て。」
一也「あぁ……。」
彼を連れて、私の部屋へとあがらせる。整理整頓されている部屋を見て、彼は「やっぱりな」という感じで溜め息をつきながらこう言った。
一也「新見さんは、やっぱり普段からしっかりしてるからなー。勉強だけじゃなくて、プライベートな所までもしっかりしてるから、他人はお前に付いてくるんだなぁ……。」
遥佳「そんな事ないよー。そんな目で私を見ないで……。」
彼は伏し目になりながら、「やはり新見さんとは不似合いだよ」という視線を時々私にチラチラと送る。
遥佳「それで……。話したいことって……何……?」
私は恐る恐る彼に尋ねる。彼も、きっと私が小さい頃から比べてあまりにも綺麗になって、しっかり者になったから、劣等感を覚えて、苦しんでいるに違いない。
一也「新見さん……。俺は、父から一眼レフカメラを譲り受けて興味を持ち、没頭するようになってから、光河学園で写真部に入部したのは知ってるよな……。」
遥佳「う、うん……。知ってるよ……。」
一也「そんな俺を新見さんは、小さい頃から相変わらずに、話しかけてくれるのは本当にありがたい……。けど、話していくうちに、周りからのやっかみや嫉妬が凄くてな……。成績優秀で、なんでも出来るお前と、平凡で何も目立たないような俺とじゃ、不釣り合いであること……。新見さんには俺じゃなくて、もっと他にいい男子がいるのに何故、そっちと話さないんだということの趣旨の話があっちこっちで出ているんだ。それでもう、俺は新見さんとは不釣り合いなんだなと思ってな……。」
遥佳「そ、そんな事が前田君の身の回りに起きていたなんて……。だから、学校で会っても私に対して、素っ気無い態度を取っていたりしていた訳なのね……。」
彼が周りのやっかみや嫉妬から来る声を聞いて、空虚感を味わった事。私と距離を置く事で気を紛らわそうとしたことを聞かされた。ど、どうしてそんなことを……。
一也「恐らくは、お前の友達関係が俺に聞こえるように言ったんだとは思う。こんな俺とは付き合わないで、他のもっとハイスペックな男子と話したり、付き合った方が新見さんの為だろうと、彼らは考えたんだろうな。」
遥佳「ねぇ……。前田君は、私の事が嫌いなの?私の友達がそんなことを言った事は、貴方からして私が小さい頃からと比較をして、こんなに綺麗になった責任の一つだとは思う。その責任はこれからも負っていくつもり。でも、私はずっとずっと小さい頃から貴方にしか好きだという気持ちを持った事がないのよ?むしろ、これからもその想いを変えようとは思わないし、変えるつもりもない……。貴方まで居なくなったら、私は独りなんだよ……?」
私は彼の身にそんな心無い事が起きていた事に、流涕をした。学校でよく友達と話すけど、裏でその友達の一部が彼にそんな事を言っていたなんて、思いもしなかったから。
一也「俺は、お前の事を本当に好きだという気持ちにまだ現段階では、定めがつかないし、もっと言えば自信が無い。だから、大分だけど時間をくれないか?それまでには、決断ができるような器量と自信を持って新見さんの元に帰ってくるからさ。だから、明日以降は話しかけてきても良いけど、周りのことを考慮してあっさりとしか受け答えしない。勉強の事も、部活の事も精一杯、ガチンコ勝負させて頂くし、上位に上り詰めて、新見さんを追い抜かす気でいるから。」
彼からそんな事を言われて、ただただ涙する私。彼が悪いのではなく、私が「光河学園きってのヒロイン」と言われるようになってから、彼との距離が出来てしまった。それは部活や、周りの友達の事ばかりしか気にせず、彼の事を今まで気にしてこなかった私の責任でもある。でも、「髪を伸ばして女の子らしくなれ。」と言ってくれたのは前田君なのよ?こんな事で必要最低限しか話してくれなくなっちゃうだなんて、私はただただ悲しい。彼から「新見さん」と呼ばれる度に、胸が痛くなる。これから先、本当にどうしたらいいんだろうか。きっと、友達と彼との間で、私は人知れず、葛藤をし続けるんだろう。そう思った私がいたのでありました。
Fin.