※この作品はR-18です。

(仮)僕と彼女が契約を結んで冒険する話。   作:Marchhatter

8 / 27
(前回のあらすじ)
 僕は叔母にもらった首輪を叔母に着け、通電機能を実験してみる。
 電圧を上げると、一族の優れた肉体を持つ叔母にも相当のダメージがあったようだった。
 翌日、残りの機能を試してみることにして、僕は叔母と別れた。



8 叔母との休日

 翌日の午前10時。僕はおずおずと、叔母の家を訪れた。

 叔母の家は、それなりに大きな商業建築物兼マンションだ。基本的には5階までがオフィスフロアで、6階以上が居住エリア、だけど叔母の家ほか2、3戸だけ、オフィスエリアになってるはずの5階にある。

 まわりはビジネス用途のテナントばっかりなので、夜は静かだし、近所付き合いも楽だと言っていた。

 もっとも、叔母はなんでも如才なくやるから、その手のお付き合いも大丈夫なんだろうけどな。

 地震のときは電気が止まり、ちょっぴり不便だったと笑っていたが、今は対策もされてるし、セキュリティもしっかりしているらしい。

 

 ロビーのインターホンを押し、ロックを解除してもらって上がり、ドアの前に立つと再度インターホンを押さずに、扉が開いた。

 

「景ちゃん、おはよう。どうぞ?」

 

 叔母は私服。質素だが清楚な、長めのフレアの黒いワンピース。

 膝下の裾10㎝くらいは、カトレアかなにかの透かし織になって、透けてる。

 白い素足とふくらはぎを、僕はぬすみ見た。

 

「お茶飲む?大丈夫?」

 

「あー、いただきます。」

 

 のどが渇いてるというよりも、緊張をごまかしたくて、僕はそう答えた。

 

 ♪~、という感じで上機嫌な叔母は、くるくるとお茶の用意をして、数分後には僕の前にあたたかな湯気を立てる紅茶があった。叔母の前にも。

 

 僕は、ごくりと唾を飲んだ。

 昨日の続き、っていうからには。あんなことやこんなこと、叔母にできたりするんだろうか。

 というか、狂ったようにカキまくってしまったんだけどな。匂いとか、まさかまさか残ってないよな。目がいやらしいのはもともとだから大丈夫。

 

「昨日は私、疲れてシャワー浴びたら眠っちゃって。」

 

 シャワー。シャワーを浴びたのか。この体に。

 僕は目のすみで、叔母の体を盗みみた。

 叔母は、今日は晴れたわね、お散歩してもよさそう、とのんきに窓から外をみてる。

 

「なぜかわからないけど、すごく起きたら頭がすっきりしてた。」

 

 景ちゃんのおかげかしら、と楽しそうに言っているが、たぶん通電のせいじゃないかな。

 ほら、精神病治療のひとつで、通電するやつってあったよね。

 

「それで今朝、早起きできたからまた調べてみたの。すごいのね。

 電池、あれだけ通電機能を使っても、あまり減ってないわ。」

 

「そうなんだ。」

 

「ええ、ちょっとやる気が出てきたわよ?

 いろいろ応用が利きそうよね。」

 

 叔母の専門分野について、僕はあまり知らない。

 理科系か文科系か、すら実はよく知らない。叔母曰く、いろんな分野をちょっぴりずつかじって、それらを組み合わせていろいろする分野だと言っていた。たしか学部は理科系だったが、民俗学とかの話をしてることもある。学際系の一つなのだろう。

 

「昨日やり残した、レベル5の5秒間と10秒間、30秒間も興味あるところよね。

 でも、ちょっとあれを30秒されて何もない自信があまりないから。

 今日は、ほかの機能を試そうかしら。」

 

 そういうことになった。

 

 ──────

 

 叔母は、マンションの奥まった一室に僕を案内する。

 外壁に接してる部屋なんだと思うけど、窓が小さい。縦長のが、1つあるくらい。

 床はクッションフロア、壁も防音ボードとクッションフロア、あと大きめの鏡が貼ってある。

 天井にもバー。これは、懸垂用らしい。

 ものは、ほとんど置いてない(これは、他の部屋の多くもそうだ)。

 

 叔母曰く、これの部屋は運動してもいい部屋だそうだ。

 フロア下は機械室エリアで、多少の物音も大丈夫だとも。

 叔母はそれなりにお金があるから、ここでバレエを自宅練習していたらしい。すごい。

 

「よかったら、それ用の服装に着替えましょうか?」

 

「いや、いいっす。」

 

 反射的に答えたが、しまった!とほぞを噛む。

 それ用って。それはつまり、レオタードのことだったのだろうか。

 痛恨だ。

 身体に悪影響がないか観察したいとか言って、着てもらえばよかった。

 

 だが、叔母は特に気にした様子もなく。

 さあ、はじめるわよ。と言い、そして僕を見た。

 

「また、固定したほうがいい?それとも、普通の状態で?」

 

 通電機能の場合は、固定した方がよかった。

 ただ、今度チェックするのは。

 

「首絞めの機能ね。これは、うーん、固定しなくてもいいかしら。」

 

 たしかに、固定するほどのことはない。口もふさがなくていいだろう、ということになる。

 試してみよう。これも、5段階になってるな。

 

 首輪を付けるのは、実は自動化されてる。首に巻いて端と端の差込み口を挿し込み、アプリで指示すれば、自動的に最適なきつさに縮んで固定される。つけるときに、首の太さも自動検出してアプリに記録している。

 だから、首絞め機能のこの5段階のレベルも、首の太さに応じてアジャストされているのだろう。多分首の太い人にとってはレベル1ですら失神する、みたいなことにはなってないと思う。

 

 首輪は金に糸目をつけず開発されただけあり、訳のわからない機能もたくさんある。歩数や活動量、睡眠時間や呼吸数、血中酸素濃度などスマートウォッチを思わせる測定項目もあり、健康状態もがっちり把握。

 

 ちなみにこの首輪、つけるのは簡単だけど、つけるとロックがかかる。

 これが簡単には外れない。アプリでパスワードを入力して解除ボタンを押し、2段階認証してはじめて外せる。パスワードを忘れてもリセット機能はあるらしいが。

 

「実験、スタート。」

 

 1段階は、きゅうっと締まるが、気管もふさがない。

 ただ血流が止まるか少なくなるかで、軽くくらっとする、と叔母は言っている。

 あまり長時間は使わなかったし、僕たちは脳貧血にも比較的耐えられるから(といっても限度があるよ。締め続ければ死ぬだろう)、そんな程度で済んでいるが、でも。

 

「普通の人なら、これ、すぐ落(・)ち(・)る(・)んじゃないかしら。

 それに私も、これでずっと止められたら、多分、意識失くすわね。」

 

 それに「締めてそこで止める」以外に、「締め続ける」つまり首を絞め潰すまで首輪の輪っかを小さくし続けることもできるようだ。さすがにこれは試さなかった。

 

 2段階は、気管が締まる。

 叔母に言われて、とりあえず30秒と1分とを試す。

 

「私たちなら2分いけると思うけど。これでも十分、人を殺せるんじゃないかしら。」

 

 首輪の形がぐにゅっと変形して、血管は止めず、気管だけ絞めるようになってる。性格が悪い、というのが叔母の談。

 ただ、1分だと僕らはまだまだ大丈夫、という程度しかわからなかった。一般の人は、そのくらいでヤバくなるのかな。

 

 この際、限界を試しておきたい。

 そう、叔母に頼まれ、タップしたら緩めるという条件で無制限に締めてみた。悪条件での状況を試すため、息を吐ききった状態から締め始める。

 

 1分。変化なし。楽しそう。

 

 2分。ちょっと真顔になる。

 

 3分。苦しそうな表情。床に倒れこむ。心配したが、止めるかと聞くと、床に突っ伏した体勢のまま首を振る。

 その叔母の姿に、勃ってくる。

 

 4分。首輪を両手でつかむ。吉川線ができそうな勢い。でも止めるか、と聞くと首を振る。顔が赤く鬱血してきてる。秀麗な額に、汗で濡れた髪。

 

 5分。頭を床にこすりつけ、悶える。止めるか、と聞くと絶望的に首を振る。大丈夫かよ。

 正直、がくがくとわななく華奢な体と、まくれ上がったワンピースのせいで露出した脚が、胸にずきっ、と。

 

 6分。タップが来て、止める。しばらくは、すごく荒い息。目が充血。

 

「酸素、美味しいのね。」

 

 本人曰く、もう少しいけそうだが。

 色々緩んで、失禁しそうになってきて。

 何よりお尻の穴に自信がなくなってきたので、乙女の尊厳を守るためにやめたそうだ。

 

「窒息死、結構苦しいのね。

 よくわからないけど、普通の人は1分もかなりきついかも。」

 

 叔母が半目になって言っている。

 少し顔に窒息しかけの斑点が出てるし目も充血してるが、僕たちならたぶん1日もしないでちゃんと消える。逆に言えば、それくらいはかかる。

(ちなみに僕たちは、普通の人たちなら再生しないような器官・内臓まで再生する。栄養をちゃんと取っていれば、結構すごい速さで。

 たとえば、歯なんてちゃんと栄養に気を付けていれば、抜歯したり折ったりみたいなことがあっても、ちゃんと1か月くらいで生えてくる。僕たちが腕のいい気に入った歯医者さんでも、行きつけにできずときどき変えないといけなくなる理由の一つだ。)

 

 3段階。拷問に使うのだろうか。押すと内側に痛そうなグリグリが出てきた。

 1・2段階と違って、締まるわけじゃない。

 

「ワンちゃんのしつけに、こういうのがあるわよね。」

 

 僕は首輪の内側の痛そうな尖りを気にしている、叔母をみる。

 この美しい叔母に首輪を嵌め、リードを持ち。

 道々を散歩させ、ほら、しっこしなさい、と言って電柱に──

 そんな妄想が動き出す。

 

「少し、引っ張ってみてくれない?」

 

 叔母をひざまずかせて、首を上とか横とかにぐいっと引っ張らせてもらった。

 最後に、引きずってみる。叔母は、なんか痛がりながらも、恍惚とした表情。

 僕も、満足。

 

 4段階。これも、内側に何かが出てきたが──。

 

「!」

 

 途中で血相を変えた叔母がタップし、僕はすぐに解除した。

 さっきのに近いが、刺さるくらいに鋭利な棘が出てきてる。

 首輪の厚さからはちょっと意外なくらいに伸びて、刺さっていきそうだったという。

 

「首輪の厚さより長い。しなやかな鋼線が、首輪にまきつくみたいに仕込んであるのかな。

 どこまで刺さっていくかわからない。表面だけかもしれない。

 でも、脊髄に刺さると、普通の人なら致命傷よ?」

 

 私たちでも、何日か寝込むことになるかもね、と。

 

 5段階。説明書を読むと、「着用者の首がcut offされる」と書いてある。

 ちなみに、さっきの4段階目もそうだが、この恐ろしい器具のアプリに珍しく、セーフティ機能として2段階認証になっている。

 

「これ、試さなくてよさそうね。」

 

「ええ。」

 

 いったん、実験を休止。

 あとは、GPS機能とか、通話機能とかかな。

 GPSは、アプリのロケーション機能みたいなので確認できる。問題ない。

 通話機能を離れた部屋で試してみる。トランシーバーみたいで結構楽しかった。

 

 ほかにいくつかの機能を試し。

 僕は叔母の白い首から、首輪をとりはずした。

 なんとなく残念だ。下司いけど、──美里さんに、もっといろいろしたい。

 でもな、僕は叔母離れするんだ。うん。目白さんで。

 そうだ、目白さんにも電撃や絞めを味わってもらおう。そうしよう。

 

 その後、僕はお昼に叔母の手料理(叔母はちゃんと料理もできるし美味しい。血がつながってなかったらパーフェクトなのにな)をいただく。

 

 さらに軽く近所の公園に散歩に行き(叔母の顔の鬱血と首を絞めた痕が、薄れはじめてはいてもまだわかるくらい残ってて、気にした叔母は念入りに化粧をしていた)。

 桜のつぼみの状況をたしかめる。

 満開になるのは、やっぱり3月末かな。

 

「景ちゃん。その子の借金の支払いのことも、相談しておこうか。」

 

 歩きながら、思いついたことを意見交換。家に帰り、覚え書きにしておく。

 あの首輪の体験レポートを兼ねて僕の父(彼女の異母兄)に話すことがあるから、人手も借りられるように話を通しておいてくれるそうだ。

 結局、叔母にいろいろ頼ることになってしまいそうだな。

 

 仲のいい姉弟みたいな、休日をすごしていて。

 僕の携帯電話に目白さんからのSNS通話の着信が入ってきたのは、そんな午後の昼下がりだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。