西城君が穂乃果とは絶交をしたのは良いけども、ことりから聞いた話で、穂乃果が「私の事は放っておいて。」と言っては、教室の窓に向かってただ一人、ぼんやりと寂しそうに眺めていたりだとか、屋上に行っては、寝そべっていたりと言ったような普段の穂乃果らしくない行動をしていると聞き、私は、このままでは、スクールアイドルフェスティバルμ'sの空中分解及び、存亡の危機と捉え、何か自分に出来ることが無いかと考えるようになったところまでが前回の話の簡単なアブストラクトである。
【今回の話・西木野真姫side】
今日は、週の真ん中に当たる水曜日。昼休みに、私は絵里がいるクラスへと訪問し、絵里を呼び出す。友人の希は不在ね。要件と言えば、今回の私の「恋煩い事件」のせいで穂乃果と西城君との対立が決定的となり、絶縁をした事。それ以降は、穂乃果は学校には来ているけども、一人で居ることが多くなった事。教室の窓を見て、溜め息をつくようになった事を詳しく説明しないと。
絵里「真姫、どうしたの?私を呼び出すなんて。」
真姫「絵里。今回の「恋煩い事件」を知ってるわよね?」
絵里「えぇ。その事なら、希から聞いてるけど、事の詳細が解らないわ。取り敢えずは、希の席に座って。その話の顛末を詳しく聞かせてちょうだい。」
真姫「今から2週間前の話になるわ。ミーティングの後の自主練習でライブに向けての課題曲を練習していたんだけど。穂乃果が入ってきた時には、私はピアノの鍵盤に突っ伏す形でだらけていたの……。彼女曰く、「普段火照ることの無い真姫ちゃんが、こんなにだらけるのは何かある。」と思ったらしくて、私にその理由を突き止めようと、根掘り葉掘り聞いてきた。更に、西城君がタイミング悪く音楽室に入ってきた事もあって、穂乃果の感情がヒートアップして彼に矛先が向いちゃったの。彼女が大声で彼に詰め寄った結果、彼も激高して、お互いが言い合いの応酬。たまたま音楽室付近を歩いていた海未が音楽室から聞こえる騒ぎを聞きつけ、勢いよく入ってきたの。両者の間に割って入る形で介入するも、あえなく失敗。結果、彼と穂乃果は絶縁をする事になった。これが、事の顛末ね。あれは忘れようとしても、忘れられない怖い出来事だったわ……。」
絵里「…………。そ、そんな事があったの……。それは、大変だったわね。確かに、練習中や皆で集まるミーティングでの最中にだらけるのはまずいわよ。恋事情でだらけて練習に支障をきたすような事があれば、スクールアイドルフェスティバルとして、いえ、アイドルとして失格ね。ただ、プライベートの部分で言わせて貰えば、穂乃果がやっている事は先入観から来る一方的な意見で、彼を大声で詰め寄るのはいけないわ。彼女からして、真姫がそんなにだらける要因を作ったのは西城君であり、許せない気持ちは解るけどね。でも、穂乃果も穂乃果でやり過ぎ。それで、 西城君とはどんな話をつけて和解したのかしら?」
真姫「西城君とは、スクールアイドルフェスティバルの練習中には、プライベートの事は一切、頭の端っこに置いておく事や、私に寂しい思いをさせないという事で和解したわ。」
絵里「そうね。練習中や、ミーティングの時は優先して取り組んで欲しい。プライベートをスクールアイドルフェスティバルとしての行動中には原則、持ち込まないようにね。」
真姫「絵里にも迷惑をかけたわ。謝らせて欲しい。」
私は、絵里に事の顛末を詳しく話した上で、頭を下げて謝罪した。
絵里「もう過ぎてしまったことなんだから、仕方ないわ。私も、もし西城君みたいなカッコイイ男子がいたら、それはそれはときめいちゃうわよ。〇〇様~って(笑)」
真姫「フフっ、私の気持ちが解る人がいて、良かった。(笑)」
しかし、大事な事を忘れてはいけない。問題は、μ'sの存亡危機に見舞われているという事。誰か一人でも欠ければ、それはそれは一大事。スクールアイドルフェスティバルとしての活動意義が問われることにもなるだろうし。傷がまだ浅いうちに、何とかしないと取り返しのつかない大事へと発展する恐れがあるから。
真姫「それでね、西城君と穂乃果との対立の影響で、穂乃果がμ'sの活動に参加しなくなっちゃったの。ことりが彼女に対して説得をしたんだけど、「私の事など放っておいて。」という返事の一方だと海未から聞いてるわ。」
絵里「発起人の穂乃果が参加しなくなる状態がこれ以上長引けば、メンバー全員の士気も当然落ちる。士気が落ちるに落ちた状態が続けば、挙句の果てに、「μ's、志半ばにて内部分裂により、瓦解。」だなんて学校の新聞で取り上げられる事にも大いに有り得るわ。一刻も早く、説得していかないと。」
真姫「それは同感ね。メンバー全員が初めて揃ってこそ、スクールアイドルフェスティバルμ'sとしてのアイドル活動が成立するわよね。」
絵里とそんな話をしていると……。私の後方から希が……。
希「せやなぁ。ウチも穂乃果ちゃんがいないμ'sだなんて、考えられへん。ましてや、発起人やで。西城君との対立は知ってたけど、そこまで落ち込んでるだなんて思いもしなかった。」
振り返れば、すぐ彼女の顔があり、笑顔を向けている。
真姫「わっ!?!?の、希ぃー!?!?」
希「真姫ちゃんやん。どうしたの?ウチらのクラスに来るだなんて珍しいやん。」
真姫「全く、どっから降って湧いて来たのよ。今、絵里に今回の事件の顛末をひと通り全部話しに来たの。ついでに言うなら、穂乃果の現況も話したわよ。」
希「ごめんって、真姫ちゃん。それって、西城君と穂乃果ちゃんとの対立の話やろ?」
真姫「そうね。その影響で穂乃果は自暴自棄になってしまった挙げ句、μ'sの活動に来なくなっちゃった。そういう話よ。」
絵里「……。これはμ'sに緊急事態宣言発令よ。今日の放課後、穂乃果を除く全員でミーティングを開く。そこで、どんな対応をとるのか協議していくわよ。あと、西城君も呼んでね。」
希「了解やでー。早速、西城君にこの事を、伝えておくわ。」
という訳で、今日の放課後にμ'sのミーティングが開かれることが決定。穂乃果をどのようにして説得し、帰り咲かせるか。知能と采配が鍵を握ると言えよう。
…………。
………。
……。
時は過ぎ、夕日に学校全体が照らされる放課後の時間になっていた。絵里の号令のもと、部室に集められた私達。勿論、この場には私の彼氏、西城君も出席している。
海未が早速、教壇付近に立って要点をホワイトボードに「発起人の穂乃果不在!μ'sに緊急事態宣言が発令!」という題目を書き込んでいる。
海未「それでは、緊急事態宣言が出されたμ'sスクールアイドルフェスティバルの存亡危機を打開する為に、必要だなと思う策を挙げて頂きたいです。勿論、何でも構いません。まずは、3年生組から挙手をお願いします。」
まず、希が手を挙げた。
希「ウチとしては、発起人の穂乃果ちゃんがいなければ、このスクールアイドルフェスティバルμ'sとしての活動が成り立たないと思うんよ。策としては、いつもよりも、穂乃果ちゃんの傍にいてあげる事やろ。誰か一人でも彼女の傍にいれば心身的にも落ち着くと思うんや。あとは、自分の存在も肯定する事になるし、必ずやプラスだと思う。」
海未「そばにいる時間を普段よりもずっと増やす。という事でいいですね?」
希「せやで。」
海未がホワイトボードに「そばにいる時間を増やす」というキーワードを書いた後、私の彼氏、西城君がゆっくりと手を挙げた。
海未「はい、西城君。」
西城「うーん、穂乃果と仲の良いメンバーと、日帰りで旅行をしてみてはどうだろうか?普段行かない所の景色を見ることで、気持ちが落ち着くと思うんだけど。」
何と、旅行案を提案してきた。
絵里「ただそばに居るだけじゃなくて、日帰り旅行をしながら、穂乃果の落ち込んでいる気持ちを気分転換させるという案ね?」
西城「そういう事。楽しい思い出を作りながら、乱れた気持ちを楽しい気持ちに切り替えさせて、メンタル的に立て直させる。一石二鳥かなとは俺は、思うけどね。」
希「日帰り旅行案を提案するとは、流石やね。ウチには、全然考えられへんかった。」
海未「他にありますか?」
次に手を挙げたのは、ことりね。
ことり「うーん、私は穂乃果ちゃん自身が今、自暴自棄で自分の存在意義を見失っていると考察できるから、それを矯正していく為に、穂乃果ちゃんがμ'sにとって、必要な存在なんだよという事を私達が優しく諭すような感じで、言ってあげる事かな。」
海未「まだ他に何かありますか?」
今度は珍しく、ニコが手を挙げた。
矢澤「それを言うなら、やましい気持ちを穂乃果本人に断捨離させるのよ。他人の力だけじゃ限界があって、中々落ちなさそうだからね。仮に落とせたとしてもかなりの時間がかかって、やり切れないわ。」
まぁ、その意見も一理ある。ただ、どこまで穂乃果自身が気持ちを断捨離できるのかが焦点となるだろう。
絵里「これで、大体の意見が揃った。私たちが現に実現出来そうな案は、西城君の「日帰り旅行案」と、ことりの「不在だったことを責めず、優しく諭すような形で言ってあげる案」ね。その中で、私が一番効果的だなと思う案が西城君の言う「日帰り旅行案」よ。普段見ることが無い風景を見ながら、楽しくお喋りをする。いい案だと思うわよ。そう思わない?」
ニコを除く、他のメンバー全員がうんうんと首を縦に振る。
矢澤「全く仕方がないわねぇ。この宇宙一可愛いNo.1アイドルのにこにーもついていってあげようじゃないの!それで、誰が穂乃果を誘き寄せる先鋒役としてやるのよ?」
このニコの質問に西城君が手を挙げた。
西城「だから、その宇宙一可愛いとかのセリフは要らねえってば。穂乃果を誘き寄せる為に、上手い口実を作ってくるよ。その先鋒として、ここは俺にお任せを頂きたいと思う。」
何と、西城君が穂乃果を誘き寄せる先鋒役として自ら、買って出たのだ。きっと、感情任せで絶縁と言ってしまった責任もあるのだろう。
絵里「じゃぁ、西城君。上手く口実を作って、穂乃果を誘き出してちょうだい。それまでには日帰り旅行のプランを考えておくから。」
という訳で、穂乃果を引き寄せる大役を絵里に任された西城君。勿論、その補佐として頼まれたのが私と希になった。まぁ、彼と一緒にいられるならいいけどね。いかにして、穂乃果を誘き寄せるか?まずはそこ にかかっているようだ。
Fin.