アスク王国から離れた場所にあるヨトゥン王国。ここは巨人族の国と呼ばれており王族は皆普通の人間よりも大柄で高身長である事が特徴である。
「はぁッ ! ふん ! どっせぇーい ! 」
ヨトゥンの城から少し離れた場所にある森で大きな斧を振り回す一人の女性がいた。名をダグといい、ヨトゥン王国の第二王女である。大柄で筋肉質、短い銀髪、腹を出しているが女性特有の丸みを帯びた可愛らしい物ではなく男勝りの鋼のように硬い筋肉で覆われていた。
彼女が振るう斧はスキンファクシといい大の男が数人がかりでなければ持ち上げる事すらかなわない程の重量である。
そんな斧をぶんぶん振り回すダグは現在鍛錬……とは名ばかりの憂さ晴らしをしていた。
きっかけは先日母であるヨトゥンの女王から言われた一言が原因だ。
『姉妹のうち、優れた方をヨトゥンの次期女王とする』
ダグにはノートという姉がおり、戦闘力、知性は文句のつけようがなく、男を見る目が無いという王族として致命的な欠点を除けば非常に優秀な女性である。そんな姉と競い合わされる事になったのだ。
「まったく ! 姉ちゃんでいいじゃん ! あたしなんかより ! 出来がいいんだからさ ! 」
斧の素振り中も母から言われた事を思い出す。優れているなら姉が女王でよいではないか、そう言ったダグに対し、それを決めるのは私ではないと……わけがわからずダグは城を飛び出て現在に至るというわけだ。
「ふぅ……ん ? 」
わからない事があったら取り敢えず身体を動かそうというなんとも男らしい王女様であったが、そんな時ふと近くを一人の魔道士が奔ってくるのが見えた。手にはボロボロの魔導書があり、どこかから盗んできたようである。
「あの男は確か城下でお尋ね者だったレッドマージ ? それにあいつが持ってるのって……城の宝物庫にあった魔道書じゃん。まさかあいつ泥棒に入ったの ! ? 待てーッ ! 」
「ヒィッ、ヒィッ、ここまでくれば……でぇぇッ ! ? なんだあの大女は ! 」
実際に魔道士の正体は賊でありヨトゥンの城へ忍び込んで宝物を盗んだのである。手配書に記された賊は2名だったがここにいるのはその片割れである。その賊が手に持つのは魔道書一冊のみ。
(ちくしょう ! 城で金目の物を盗もうと思ったらこんなボロボロの本1冊しか盗めねえなんて、なんて不運なんだ俺はよ~ ! )
ダッシュで逃げようとする盗賊だが後ろから凄まじい地響きを立て、信じられない速度で追いかけてくるダグのプレッシャーに早くも小便をちびりそうな盗賊の男。ダグはその身に宿すスキルにより時々足が速くなる。賊にもスキルはあるがダグに比べたら大したことはないスキルである。
「いよぉしッ捕まえた ! 」
「だあッ ! くそ、放せこの漢女 ! 」
おまけに身体のサイズ差があるので賊はダグの片手でつかみあげられた。まさにサイズだけで言えば大人と子どもである。さすがの漢女発言にはカチンときたのか、ダグは近くの木に向かって賊をぶん投げた。
「ぐえッ ! ? 」
「ふふ~ん、女の子に向かって酷い発言する男はオシオキが必要だよね~ ? 」
自らの手をコキコキと鳴らしながら向かってくるダグは賊からしたら鬼にしか見えないだろう。あえて言うなら銀の鬼といったところだろうか ?
「ちくしょう ! こうなったらやってやグエェッ ! ! 」
「遅いよバ~カ」
賊の魔法詠唱が始まる前にダグの渾身の一撃が賊に直撃する。スキンファクシの強烈な一撃は賊に重症を負わせた。ダグにとっては自分の家に入った泥棒に過ぎないので手加減する理由は無い。なんならここで始末してもいいくらいである。
「さ~て、こいつひょっとしたら隠れ家に盗品を隠してるかもしれないね。吐かせて盗品奪い返しますかね☆」
ダグにしたらよく考えた方であろう。確かにそれも一理ある考えだ……だがダグは相手が大したことないと思い込み慢心してしまっていた。これは致命的なミスと言える。
「………………」
「ん…… ? こいつ、まさかまだ ! ? 」
この世界に生きる者達には必ず相性というものがある。賊はレッドマージという魔道士で、ダグに対して相性有利なのだ。だが実力差がありすぎて相性有利にもかかわらず賊は手も足も出ない……が、賊は相性の差をより強力にするスキルを持っていた。これにより、本来ならダグは一撃で倒せた筈の賊を倒しきれなかったのである。
「な……なんだ、これ……意識が……ヤバ……(油断した……)」
賊が使った盗品の魔道書の残り使用回数はあと2回のみ、今回の使用により魔道書の文字は薄くなり表紙の色も褪せてしまった、だが、状況を打破するには十分だった。
バランスを崩しかけたダグは勢いよく片足を地面に叩きつけ転倒を防ぐ、力強いその足による衝撃は大地を揺らし木々からは鳥が驚いて飛び立っていった。
* * *
「……へっへっへ、この書は本当にお宝だったみたいだな。まさか相手と身体を入れ替える闇の魔道書だったなんてよぉ ! 」
「……う~ん……え、ええッ ! ? なんであたしが目の前に……ぎええッ ! なんであたしがこんな小さくなってんの ! ? 」
一目では戦況の優位は変わらないだろう、だが女言葉を使うようになった賊と様子が変わったダグ、ここに形勢は逆転した。レッドマージは炎の魔道書の他に闇の魔道書も使える。そして炎の紋章がある別の異世界にはまだこの世界に生きる者達にとって未知の魔道書もある。例えば命中するだけで相手の身体を石化させるものがある……ならば身体を入れ替える魔道書があってもおかしくはない。
「さて、形勢逆転だなぁ……さっきはよくもやってくれたな、この漢女が ! 」
「ぐああ ! ? 油断しちゃ……だめだね……やっぱり……」
ダグの拳が賊の鳩尾に命中し、賊の身体はそのままの勢いで先ほどダグが叩きつけた木に命中する。先ほどの仕返しとなったわけだ。
「さすが巨人族、すげえ力だな。元の身体なんて比べものになんねえわ」
ダグが賊の頭を掴み持ち上げ、顔を自分の正面に持ってくる。
「いやあ、城に入って宝物をと思ったらまさかこんな強い身体を手に入れられるなんてな……今日から俺は王女様、お前は薄汚い盗人だ、これからずっとな」
ぎゃははとダグらしからぬ下品な大笑いが森に響き渡る。
「へ、へへ……あんたがあたしの真似したって……姉ちゃんや母ちゃんがすぐ見破って……元に戻してくれるよ……ざまあみろ……」
賊のか細い言葉がかろうじてダグの耳に届く。だがダグのニヤニヤという気味の悪い笑いは止まらない。
「そうか ? 本当にそう思うか ? 見破ってくれるって思うか ? 」
賊には何故ダグがそこまで強気なのかわからない。だが胸の内には得体の知れない不安が支配していたのだ。
* * *
ダグと賊の身体が入れ替わってから数日後、賊は城の牢屋に入れられ裁きの時を待っていた。巨人族の牢屋は賊にとってはとても広く幸か不幸か存外快適であった。それはダグの計らいであると見張りに言われた時には握った拳から血がしたたり落ちていた。
(大丈夫……絶対姉ちゃんか母ちゃんが助けに来てくれる……大丈夫、大丈夫……)
牢屋の中から自分が本物のダグだと何度訴えても誰一人信じてくれるものはいなかった。身体を交換する魔道の存在など誰も知らないので、これで見張りの兵士を責めるのは酷であろう。
賊が屈辱に耐えていたある日、牢屋の出口から聞き覚えのある声が響いてきた。
「これはノート様 ! 何故このような場所に ! ? 」
(姉ちゃん ! ? )
賊がガバッと顔を上げる。それは自分が待ち望んでいた人の訪問であった。
「ここに先日妹……ダグが捕らえた賊がいると聞いてね……少しお話をしてみたくなったの」
「は ! 了解しました ! 」
見張りの兵士は声を大きくし答えた。ノートはダグの姉であり、髪が金の長髪である事意外はダグそっくりな容姿をしている。かつてダグが自分よりも政治能力は上だと言った通り、ノートはがさつなダグに比べて女性らしく、城の兵士からの評判も非常に高かった。
「それと人払いを、これから話す事はとても大事な話だから」
「は……ハッ ! 」
兵士は一瞬悩んだもののノートがそういうのだからよほどの機密事項なのだと判断し地下牢から出ていく。これで牢屋にいるのは賊とノートのみ、彼女は賊の牢屋前に来ると鍵を開け迷わず中へ入って来た。
「姉ちゃん ! 私だよ、こんな身体になっちゃったけどダグだよ ! 変な魔道書で賊の男と身体を入れ替えられちゃったんだ ! 信じて ! 」
賊からの必死な弁明に対しノートは椅子に腰かけ足を組み賊を見下ろしていた。
「ふぅん…… ? あなたが私の妹のダグだと……証拠はある ? あなたが本物のダグだと、ヨトゥン王国第二王女ダグだという証拠は ? 」
「そ、そんな事急に言われても……」
「ならこうしましょう。私達の思い出話でもしてごらんなさい。他にも王族しか知らない事とか」
それならばと賊は色んな事を話した。子ども頃の思い出、ダグとノートのこれまでの人生経験、母である女王から言われた次期女王の話し、隣国ニザヴェリルから昔贈られた魔剣グラムの存在。
一息で話しきった賊は息切れを起こし、ノートは紙に賊が話した事を次々と書き留めていった。
「はあ、はあ……ど、どう、信じてくれた姉ちゃん ? 」
ノートはペンを置き賊の前にしゃがみ込む、先ほどとは違う、見下すようにではなく視線を合わせるように……。
「……ええ、信じるわ……あなたは私の妹のダグ……ヨトゥン第二王女ダグよ…… ! 」
「ああ……信じてくれたんだね、姉ちゃん ! 」
ノートの豊かな胸の中に飛び込む賊、姉の優しくも力強い身体に安心感を覚えた彼は見上げると姉の優しき顔を見た。
「そうと決まればダグちゃん、一刻も早くここから出ましょう。お母さま……ヨトゥン女王にお目通りし、あのダグが偽物だとお知らせしなければ」
「そうだよね姉ちゃん、あいつひょっとしたらこの国を乗っ取るつもりかも ! 」
「ダグちゃん、まだあなたの潔白は証明されていないわ。兵士に見つかったら面倒よ、私から離れないようにね」
「わかったよ姉ちゃん」
ノートのマントに隠れるように賊は牢を脱獄、ノートが上手く兵士を言いくるめてくれたおかげで城内を難なく進むことができた。
そして二人は目的地である玉座の間に到着したのである。
ノートが玉座の間へ通じる大きな扉を開けると、荘厳な部屋が二人の目に入る。その玉座には二人の話題になっていた女、ダグが玉座に座り果物を頬張っていた。
「な、なんであいつが玉座に…… ? 」
「ダグちゃん……実はお母さまは病床についていて、もう長くないと……だからもう時間が無いのよ。今決着をつけなければ潔白を証明できないわ」
ヨトゥン女王が次期女王の話を切り出した理由はそこにあった。もう我が身が長くないと判断し娘たちの成長を願い愛する娘たちにヨトゥンの未来を託そうとしたのだ。
「許せない、あいつだけは ! 」
ノートのマントから飛び出し賊はダグの前に飛び出した。
「おい ! その玉座はお前の物じゃない ! ヨトゥン女王のものだ、すぐそこから退け ! 」
賊の腹の底から出た怒りの声にダグは口から果物の種をプッと噴き出した。カツンと種が床に落ちる音が微かに響いた。
「あんたは確かこの前あたしが捕まえた薄汚い賊 ? なんでここに……」
「姉ちゃんが……ヨトゥンの次期女王があたしを助けてくれたんだ。母ちゃんが味方に付いてくれればお前なんてお終いだ。あたしは身体を取り戻せるし、お前を処罰できるんだ ! 」
賊の勝利宣言を聞いたダグは玉座から飛び上がり、ノートの方を見据えた。
「ノート……姉ちゃんが俺……あたしを裏切ったのか…… ! ? 」
「へん ! あんたは自分の呼び方も知らないんだろうね。そんなんで姉ちゃんを騙そうたってそうはいかないよ ! ☆」
賊の調子が元に戻りつつある、やはり自分の尊敬している姉が近くにいて信じてくれるという事実が力を与えてくれるのだろう。
「そう……か……く、ふふふ……」
「…… ? 何がおかしいの ! ? きゃあッ ! ? 」
突然何かに耐えられなくなったダグが嗤いだす、不思議に思った賊が振り向こうとした途端賊が背後から何者かに蹴られる。手加減が無かったのか賊は前方に転がってしまった。
「だ、誰 ! ? ……ね、姉ちゃん ? 」
賊が後ろを振り向くと、そこでは脚を振り上げたままニヤニヤ嗤うノートの姿があった。思わずノートから遠ざかる賊だったがさらにその背後からはダグが近付いてくる。賊は嗤いながら近寄ってくるダグとノートに挟まれる形になり逃げ場が無くなってしまう。
「おバカなダグちゃん……油断して、その強くて美しい身体を奪われて、そんなみすぼらしい身体になっちゃうなんて……ざまあないわねぇ ! 」
ノートの嘲笑う声が玉座の間に響き渡り賊は事態を察した……察してしまった。
「さすがにおバカなあなたでもわかるわよね……その通り ! 」
ノートが片足を綺麗に上げ、クルクル回りながらダグのそばへ近寄っていく。その様はまるで一流のバレエダンサーのようでもあった。
「先日までの私は名もない盗賊の一人、しかぁし ! 今の私はヨトゥン第一王女ノート ! そして愛するアニキの子分ですわ ! 」
背後にババァンと効果音でも付きかねない勢いで本性を表したノートが大げさなポーズを取り賊へ宣言した。
わかった……わかってしまった。
もう本物のダグが待ち望んだ、本物のノートはこの城にはいないのだと……
「あんた姉ちゃんを……本物の姉ちゃんをどこへやったんだよ ! ? 」
「ああ……この身体の持ち主でしたら、先日アニキの魔道書で身体を入れ替えたら、と~っても働き者の兵士の皆さんに退治して頂きましたわぁ ! 」
「見ものだったぜ……『助けてダグちゃん ! 私が本物のノートなの、変な魔道書で身体を入れ替えられたの ! 』って何度も訴えてたな……でも俺が『そんな事信じれるわけないじゃん。みんな、こいつは例の盗賊の子分だから思う存分やっちゃって☆』って言って嬲り殺しにしてあげたよん。あの女のせいで商売あがったりだったからさ、いい気味だったよなぁ……ノート ? 」
「本当ですわよね、ダグ様……嬉しくて私、喜びのポーズを取っちゃいますわ ! 」
ゲラゲラ嗤いながら本物のノートを侮辱するダグと、大股開きでダブルピースをするノート。この姿を見たら誰しもが正気を疑うだろう。だが玉座の間は固く閉ざされており、外からは誰も入る事が許されない。
賊の拳が怒りで震える……姉と母と、国を奪われた怒り、そして……この事態を招いてしまった己に対する怒りで…… !
「許さない……たとえ勝てなくても、お前らだけはあたしの手で倒す ! 」
賊はレッドマージ、武器は無い。あるのは自身の肉体のみ。自身の身体は小柄で相手は巨人族の王女二人……それでも立ち向かわないわけにはいかないのだ。立ち向かわなければ、賊は……ダグは自分が許せない。
「あらダグちゃん、そんな身体でかかってくるの ? いいわ、大好きなお姉ちゃんが相手してあ・げ・る」
「黙れ ! お前なんかが、姉ちゃんの真似を、その身体でふざけた真似をするなあッ ! 」
ダグよりも手前にいたノートがダブルピースと大股開きをしたまま賊を迎え撃つ。賊が接近し至近距離に入った時……。
「……なぁんちゃって ♪ 」
「なッ ! ? 」
ノートは突然その場で構えを解きブリッジのポーズを取る。賊の拳は空振りに終わりバランスが崩れる。
「お前の相手はあたしだよ~ん☆」
ダグがノートの真上を飛翔する。だがその姿は両足を大開脚しVの字の形をしたまま飛んでくるというものだが……。
「どっか~ん☆ ! 」
「うぷッ ! ? 」
ダグの股間が賊の顔面に命中し後方に吹っ飛ばされる、自分の身体、しかも股間に飛ばされるなど考えたくも無いやられ方であった。
「ほいっと ! ノート、来なッ ! 」
「は~いアニキ♡ ! 」
ダグはふざけたポーズを取っていたにも関わらず綺麗に着地、前屈姿勢を取り股の間からノートに指示を出す。鈴のなるようなきれいな声で返事をするとダッシュしダグのお尻を跳び箱代わりにしてジャンプ、そのままの勢いで賊に飛び移り絡み合うようにぶつかり床に押し倒した。
「くそ ! こんなふざけた攻撃なのに、なんで手も足も出ないんだよぉ……」
「決まってるじゃない、そんなの……」
「あたしたちの方が、お前らの身体を使いこなしてるからに決まってんじゃ~ん☆」
天躯の道という力がある。ヨトゥンの姉妹が使用できる自身の身体を通り道にして移動を補助するというものだが、今の攻防でダグとノートは天躯の道を使い賊に接近し攻撃を仕掛けた。一見すると攻撃方法はふざけていたものの互いの特殊な力を十全に使いこなし賊を倒した事になる。
互いに協力し助け合う……まさに比翼……それはヨトゥンの女王がダグとノートに求めた物であったのだが、入れ替えられる前の本物の姉妹は使いこなせず、身体を奪い取った盗賊の方が使いこなしているのは皮肉と言うほかない。
「ちくしょう……返せよ……姉ちゃんを……あたしの身体返せよぉ……」
「我儘言っちゃだめよダグちゃん、そもそもあなたがアニキに歯向かって返り討ちにあったからこうなったんだもの。自分のした事には責任を取らなきゃね」
「まあまあノート、このまま兵士に突き出しちゃ可哀そうだろ。最後にあたしたちで極楽を味わわせてやろうぜ」
賊の身体はノートにがっちりと拘束されている。胸の上にノートのお尻が乗っかり上半身をロック、ダグは賊のズボンを下ろし膨らんだペニスを自身の大きな胸で挟み込む。
「な、なにすんのさ ! ? 」
「あたしはこれから触りまくり揉みまくりのデカパイだけどあんたは今日でお別れだろ ? だから今だけ元自分の身体で楽しませてやろうと思ってさ。たっぷり味わいなよ……あたしの身体をさ」
「まあ ! なんて優しいのダグ様 ! 素敵、抱いて ! 」
上半身はノート、下半身はダグに弄ばれる形となった賊。
「フーッ ! フーッ ! 」
賊の口元がちょうどノートの股間にある為鼻息や吐息はノートの股間に当たる。
「興奮しているようですわね ? 熱い鼻息が私のマンコに伝わってきますわぁッ ! 」
賊の視線の先ではノートの身体を我が物顔で使う盗賊が悶える姿が見える。目を反らす事はできず、目を閉じようとするとノートによって無理矢理目を開かせられる。
「ダメよダグちゃん、ちゃ~んとお姉ちゃんの身体を目に焼き付けなくちゃ」
「お~い、あたしも忘れるなよ。アンタのムスコはあたしが相手してやってんだからさ」
賊のペニスにダグの涎がタラリと落ちる、涎は潤滑油の役割を果たしペニスと豊かな胸の摩擦を減らし、オッパイの上下運動を滑らかにした。
グニュグニュとペニスが扱かれどんどん赤黒く膨張していく。
(な、なんだコレ……気持ちいい……って違う。こんなのダメだ ! あれはあたしの身体なんだ、あたしのオッパイなんだ ! あ、あたしの……)
賊の心は必死に抗おうとするが身体は正直。極上の美女二人が自分にご奉仕している、この事実は心はまだ女でも肉体は男となった本物のダグの精神を快楽に塗り潰していく。ノートの尻に敷かれた顔は次第にふやけてしまっていくのだった。
「随分情けない顔ね、これが本当にヨトゥンの王女の姿なのかしら ? 」
ノートの侮蔑が賊の耳に入る、先日まで聞いていた大好きな姉の声、それは自分を認める事は二度と無い。ノートの指が賊の首筋をなぞる、頼もしくも白磁のような白い指は自分の手を握るためではなく弄ぶためになぞられる。
ノートの吐息が賊の顔にかかる。幼少時に子守唄を歌ってくれた優しき声は聴くに堪えない侮蔑の声へと変化した。
「うは ! めっちゃデカくなってんね~、元はあたしの身体だから……ここが弱いんだよねぇ。この裏筋を刺激してやると……あはは、もっとデカくなった ! 気持ちいいよね~ ? 身体の弱点を刺激されて、おまけに自分の本当の身体に滅茶苦茶にされてんだからさ」
「フ~ッ ! プハッ ! やめて、やめてくれよ ! 助けて姉ちゃん ! 母ちゃん ! このままじゃ ! なにか出ちゃうよォッ ! ? 」
「弱い弱いザコザコダグちゃん、チンコもクソザコなのね。やっぱりあなたはその身体がお似合い……チビで、弱くて、お姉ちゃんがいなければ何もできないクソザコダグちゃん。あなたは私の恥、この国の恥、アニキが身体を使った方がヨトゥンの為ですわ ! 」
「やめろ、やめてくれ ! 姉ちゃんの声で、身体で、そんな事言わないで ! 」
自身が尊敬していた姉からの罵倒、侮辱、それは耐えられるわけがない苦痛であった。たとえその身体の中身が別人だったとしても……。
「苦しいか ? 苦しいよね、こんなにチンコガチガチにしてんだからさ……出しなよ、その臭いチンコから、思う存分出しちまいなよ。お前はもう男なんだ、二度と王女には戻れない、その弱い身体で生きていくしかないんだよ……」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ ! 嫌だァッ ! カエシテ、返してくれェッ ! 」
「ダメだね、イケ……男としてイッちまいな ! 」
ダグの指と爪がペニスの擦り、刺さり、弱点である裏の筋をなぞり、ふ~っと息が吹きかけられる。それらの全てが賊にとっては快感の刺激であった。
「い……い、ク……イクゥゥッ ! ? 」
ダグから与えられる耐えられない快感と程よい刺激、ノートから浴びせられる心無い言葉、飴と鞭、二重の責めが賊へのトドメとなり、ついにペニスからおびただしい量の精液が放出される。
「止めらんない ! 出ちゃう、まだ出ちゃう ! 気持ちいい……え、えへへ、き、気持ちイイ……」
完全に熱にのぼせたような表情となった賊には最早反抗する力も気力も無かった。あるのは男として味わってしまった絶頂と快感。そして二度と女の身体に戻れない絶望と不安だった。
「うふふ……堕ちちゃったわねぇダグちゃぁん……いいわぁそのお顔、喜びと悲しみが入り混じった素敵な顔……今のあなたはとても魅力的よダグちゃん……」
ノートのダグに勝るとも劣らない豊かな胸が賊の顔に押し付けられる。
「だけど今日でお別れ、これからこの国と身体は俺たち……あたしたちの物さ。さて……」
ダグは懐から一冊の本を取り出した。それは今回の発端となった魔道書であり、使用回数が無くなりすっかり文字が消えてしまっていた。
「これはもう必要ないね、ほい、ぐしゃぐしゃッと」
ダグは賊の横に魔道書を落とし、自らの脚で踏み付け何度もすりつぶした。ボロボロになった魔道書は最早修復不可能、紙切れは風に乗り消えていった……。
「あ……ああ……」
「ははは、これでもう元には戻れないっと。あたしはダグ、子分はノート、あんたはチンケなコソ泥。新しい人生を過ごそうね☆」
「あいあいさ~ ! 」
絶望に震える賊、わざとらしい宣言をかますダグ、ハイテンションなノリで拳を天井に掲げるノート。
「では……兵士よ ! この賊は我らに襲撃をかけてきた。すぐさま痛めつけ国から追い出しなさい ! 」
「二度とあたしたちの前に出て来れないよう徹底的にお願いね☆」
玉座の間を開けたノートから発せられた命令に慌ただしく動く兵士達、彼らは床で放心状態の賊を捕縛し連行していった。
彼らは仕事をしたにすぎない。しかし彼らは知らぬとはいえ本来仕えるべき主君らを痛めつけてしまったのである。
ここにヨトゥン王国の未来は本来の道筋から大きくねじ曲がっていった……。
「王族にしか知りえない情報や二人の思い出話まで教えてくれるなんて、これで誰が怪しんできたとしても今の話をすれば誤魔化せるわ……お~ほっほ ! 」
近い将来、ヨトゥン王国はアスク王国とニザヴェリルの戦争に巻き込まれていく。そこには毅然とした態度でアスク王国に協力するダグ女王率いるヨトゥン王国の姿があった。
アスク王国に力を貸しニザヴェリルに勝利し、ダグとノートが健在のヨトゥン王国。そこにはかつて以上に繁栄した国の姿があった。民はニザヴェリルを統合し富をもたらす新女王ダグを称え続けた。
遠い丘の上からヨトゥン王国を見下ろす一人の賊、身体中痣だらけの彼は一筋の涙を流し去っていくのだった……。
お読みいただきありがとうございました。