※この作品はR-18です。

【リク作品】私、メカになっちゃった!   作:愛鋼熊

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第1話

「ようし、後はコアを作れば完成だぞぉ!」

 ボルトを締め付け、メガネをかけた子供が満足そうな笑みを浮かべています。

 一見彼はただの小学生なのですが……その正体は、超天才発明家!

「えへへ、かっこいいしすごいし便利だし、これならパパもママも大助かりだぞ!」

 ティラノサウルスのような、それでいて怪獣のようなデザインのメカ。

「材質は3Dプリンタで出力したボディだから軽くて丈夫だし、しっかりと耐熱加工もしたし。後は便利機能も色々……」

 誰に説明するわけでもなく、ドヤ顔で機能の説明を始めた時でした。

「航〜、一緒にゲームしようぜー!」

 窓の外から友人の呼ぶ声が。

「あ、そっかそっか! 今日はあのゲームの新作が出たんだっけ! いっけない、これ作るのに夢中で忘れてたー!」

 天才でも凄くても、小学生は小学生。

「ママー、遊んできまーす!」

 大きな声で母親に呼びかけた後、元気よく外に飛び出していき。

「はいはい、気をつけてねー……って、もう行っちゃった。よし、また怒られちゃうかもしれないけど、今のうち航の部屋のお掃除しましょ!」

 どこに何があるかがわからなくなるからやめろ、と言われるものの埃が溜まっているのを見ると気になってしまうようで。

「軽く掃除機かけるくらいなら、まあ怒られないでしょ」

 ハンディー掃除機を手に取り、息子の部屋へ。

「わ、また大きいもの作ったわねぇ……んもう、こんな怪獣作るならお願いしてた掃除機作ってくれたっていいのに! ……って、ダメよねー。いくら息子が優秀だからって、なんでもお願いしちゃおうっていうのは虫が良すぎるわよね」

 コードレス掃除機の電源を入れ、お掃除スタート。

 今日は珍しく工具が散らかっていないため、スイスイお掃除できた……のですが。

「ううん、ちょっとこれ、動かしたいわね。多分裏に埃とか溜まってそうだし」

 主婦の勘が、大きな怪獣メカに隠れた汚れを察知します。

「動け! って言って動いてくれたらいいけど、いくらあの子でもそんなの作るのは無理かしらねー」

 ボディをペシペシと叩きつつ、なんとかできないかとうんうん唸り。

 持ち上げるには重く、車輪がついているわけでもなく。

 少しずつ動かしてずらす作戦に出たのか、ゆさゆさとメカの全身が揺れ始め。

 と、その時。

 怪獣メカの手が机にぶつかり、乗っていた工具が一つ落ちる。

 それが偶然跳ね、怪獣メカの背中に直撃し。

『キドウ カイシ』

「えっ、なになに!?」

『エラー コア ブソク』

「コアって、何かしら……?」

 突然メッセージを流し始めたメカに、母親はびっくり。

 思わず、光っているパーツに手を触れてしまいます。

『コアパーツ カクニン』

「え? 別に私……」

 その次の瞬間。

 激しい光に包まれると同時に、母親はメカの中に一瞬で吸い込まれてしまったのです!

『え、なに、これ、どうなってるの!?』

 機械的な音声はそのままに、喋り方が流暢なものになり。

 怪獣メカが手足を動かし、自由に動き始めました。

『え、え、私、これ、航の作った、メカになってるの!?』

 大きな顎を上下させ、表情の出ないメカの顔で目をチカチカさせ。

『う、嘘でしょ、なんで私が、こんなことに!?』

 大声で騒いでも、どうしようもありません。

 今分かる事と言えば、なぜかこの体を自由に動かせるという事だけ。

 2m近いボディが部屋を動き、ドスドスと音を立てて。

「んもー、健二の奴、コントローラーいるんなら言えよなー!」

 運よく、そこに航くんが帰ってきたのです。

『わ、航、これ、どういう事なの〜!?』

 メカになったママは大慌てで息子に近寄ります。

「えっ、なんで動いてるの!? まだAIコアは作ってないのに」

『AIコア? そういえばさっき、コアがないとか言っていた気がするけど……』

「待って、待って? なんでママみたいな喋り方してるの?」

『だって、ママだもの』

「そっかぁ、ママなら仕方ないかぁ」

 一瞬の沈黙。

「いやいやいやいや、待って待って待って!? ママ、そのメカのコアになっちゃったの!?」

『そ、そういう事なのこれ? なんでもいいから、早く戻して欲しいんだけど……』

「ま、ママ、ありえないんだよそんなこと、僕そんな機能付けてないんだけどなぁ……」

『え? じゃあなんで、こうなっちゃったの?』

「わ、わかんないや……わかんないから、すぐに戻すのは難しいっていうか、ママ、ごめんなさい!」

『ま、ママも勝手にお掃除しようとしたのが悪いのよ。こ、困ったわねぇ、今日はそのままって感じかしらね……』

 ガシャンガシャンと音を立て、キッチンへ向かい。

『とりあえずパパが帰ってくる前に、ご飯は作らなくちゃ。ええっと……あー……どうしよう……』

 視界に映っているのは、いつもの華奢な手ではなく……いかにもおもちゃのような手。

 頑丈ではありそうですが、包丁を持つことすら難しそうで。

『と、とりあえず、お野菜を、わ、わ、掴むのも大変だわ……』

 急に体が大きくなっただけではなく、構造もまるっきり変化している状態。

 いくら毎日やっている事でも、途端に困難になってしまいます。

 さっきから尻尾がガンガンあちこちにぶつかり、それも気になってしまい。

「ママ、大丈夫?」

『あんまり大丈夫じゃないわ……このままじゃ夕ご飯、作れないわね』

「今日は何作るの、ママ?」

『ハンバーグの予定よ』

「あ、なら、簡単だよママ!」

『簡単って、どうするの? 航はお料理できないでしょ?』

「違うよ、ママ! ママが作っちゃうんだよ!」

『ちょっとちょっと、それができないんだってば!』

 息子のよくわからない発言に、声は少し不機嫌そう。

「えへへ、ちょっと待ってね! クッキングモード!」

『え? 了解! クッキングシステム、起動! クッキングシステム!?』

「すごいでしょー、このメカはね、ママやパパのお手伝い機能がいっぱい入ってるんだよ!」

『な、なんか、お腹の中が、変な感じ……』

「実はね、今のママのお腹はウルトラクッキングマシーンになってるんだ! 作りたいお料理の材料を入れたら、すぐにできちゃうんだ!」

『皮とかどうすればいいの?』

「そのままでいいよ!」

『付け合わせのニンジンのグラッセは?』

「ええっとね、刻む用の人参と分けてくれたらいいや」

『ご飯も炊かないといけないんだけど』

「ご飯はね、ママのお口からお米と水を飲んじゃって!」

『え、えぇ……!?』

 どう考えてもからかわれている気がしてならないのですが、今は息子を信じるしかありません。

 お米を二合分口に入れ、水で流し込み。

 息子の操作で開いた胴体部分に、ハンバーグなどの素材を放り込んで。

「じゃあ、ママ。ハンバーグのいつもの作り方、想像してみて?」

『わ、分かったわ。ええっと……』

 作業工程を想像した、その瞬間。

 お腹の中で色んな音がして、色んな事が起こっている感覚がして。

「ママ、ママ!」

『えっ、あっ、航!?』

 声をかけられ、ふと気づくと……

「ほら、ママのお腹からお料理が出てきたよ!」

 いつの間にか皿に盛られたハンバーグと付け合わせ。

 その横には、ほかほか炊き立てご飯だって並んでいます。

 時計を見ると……わずか十分ほど。

『わ、私、どうなってたの? 記憶が無くて』

「あれ、そうなの? ちゃんと作業進行度とか、ずっと喋っていたけど……初めてだから、メモリがうまく機能しなかったのかな?」

『それに、できちゃったのはいいけどパパはまだ帰ってこないわよ。冷めちゃうわ』

「大丈夫! ウルトラクッキングマシーンなら、温め直すのも簡単だよ!」

『ええっと、電子レンジ?』

「うん、みたいなもの」

『わ、私の中に?』

「うん、ママの中に」

 とんでもない存在になってしまったと、母親は頭を抱えてしまうのでした。

 

「ほら見て、ホカホカになったでしょ!」

「す、すごいな、確かに……」

『わ、私の中で、ハンバーグがあったまっちゃった……』

 帰宅した夫の目の前で、温め直し機能を実演。

 確かにすごいのですが、自分の中に料理を入れられてそれを出すのを見られるのはとても変な気持ちで。

「でも、英理、大丈夫なのか?」

『何がどうだったら大丈夫なのか分からないけど、変な気分だけど、まあ……大丈夫、かも』

「ママも味覚センサーあるから、ご飯食べられるよ!」

『でも、私ってメカなんでしょ? 食べていいの?』

「うん、エネルギーに変換されるからね」

「航、本当になんでも作れる天才なんだな……」

 呆れるやら感心するやら。

 親子仲良く食事をする、のですが母親は怪獣メカになっていて。

 どこか妙な雰囲気の中、夕食が始まるのでした。

『あら、結構美味しいわね』

「でしょ? だって、コアがママだからね! ママの味になるんだよ」

「航、じゃあ元々どうするつもりだったんだ?」

「えっとね、ママの料理を見学させて学習させる予定だったの」

『あら、それじゃ手間が省けたわけね』

「お、おいおい、ずっとそのままでいるつもりか!?」

『冗談よ冗談、うふふ!』

 メカティラノ顔で豪快に笑い、食事を終えて。

『航、食器洗いってできるの?』

「うん、できるよ! その代わり、洗うためのお水は飲んでもらわないといけないけど」

『洗剤は?』

「うーんと、いらないはずだけど……気になるなら一緒に飲んで!」

『え、えっと、じゃあ、いいわ……』

「ようし、ウォッシュシステムだ!」

『あっ、お腹の中、動いちゃうっ』

 自分の体内で家事が完結する感覚に、どこか慣れないまま夜になり。

『ええっとぉ……私、どうしようかしら』

「どうした? 一緒に寝ないのか?」

『ほ、ほら、私、おっきくなっちゃったし』

「まあまあ、一回試してみようって」

『そ、そう?』

 ダブルベッドが軋み、大きなメカがゴロンと横になり。

「ちょっと狭い」

『やっぱり? どうする?』

「いいっていいって。で、眠れるのかその体?」

『ど、どうなんだろ』

「たとえば、スリープモードとか……」

『リョウカイ ログインパスワードヲ ニュウリョクスルマデ スリープシマス』

「あ、お、おい、大丈夫か!?」

『パスワードガ チガイマス』

「えっ、いや、そんなんじゃなくて、くそ、航ももう寝てるだろうし、しょうがないな……」

 迂闊な一言で機能休止してしまった妻に、夫は困り果ててしまうのでした。

 

「ママ、起きて、起きてー!?」

『あら、私、寝てたの?』

「寝てたんじゃなくて、スリープモードだったの! そ、それより大変、寝坊しちゃった!」

『え、えぇえええ!?』

 いつもならそんな時、しっかりと英理さんが起こしてあげるのですが……

 肝心の英理さんも、スリープモードでぐっすり。

 旦那さんも仕方なく、そのままで出勤したようで。

「ママ、ごめんなさい! ママを戻す方法色々調べていたら、夜の11時まで起きちゃったんだ……」

『ま、まあ、仕方ないわ! それより、学校行かなきゃ! って、まず朝ごはんよね!?』

「あ、パパがトースト作ってくれてたから食べたよ」

『あ、そうなの? じゃあ、ママが自転車で送ってあげ……られないわね、これ。ママ、怪獣だし……』

 今の英理さんでは、自転車を破壊しかねません。

「ね、ね、ママ、もう一つごめんなさいなんだけど、お願い聞いてくれる?」

『どうしたの? 私にできる事なら、協力するけど』

「えっと、ママ、ライオンチェンジ!」

『え、了解! チェーンジ、ダッシュ・ライオンモード!?』

 急に自分の体が展開し、目を白黒させる英理さん。

 そのままティラノ顔が格納され、四つん這いになり、パーツがどんどん変形し。

『ガァオオオオオオオオ!!! ガオ、ガォオオオ!?』

「ママ、ごめんね! このまま、学校まで連れて行って!」

 息子が背中に飛び乗り、英理さんは言われるがままに窓から発進!

 車を追い越し、信号を大ジャンプで無視し、ジグザグ走りで人を掻き分け。

 たちまちにして、英理さんは航くんを乗せたまま学校に到着!

 幸い、まだ始業のベルはなっていないようです。

『も、もう、航! こ、こんな事になるなら、説明してよ!?』

 流石に英理さんもちょっとおかんむり。

「ママ、ごめんって! 説明してる時間も無かったんだもん!」

『まあ、遅刻しそうだからしょうがなかったけど……そもそも私、どんな機能があるの?』

「あ、そうだ、それは作っておいたんだった! はい、これマニュアル!」

『あ、うん、ありがと……』

「じゃ、じゃあ、行ってきまーす!」

『はーい、行ってらっしゃい!』

 手を振る息子に手を振り返し、マニュアルの目次に目を通し。

『へぇ、こんなに機能があるのね……あ』

 と、ここで我に返ります。

 学校の前、つまり家の外でティラノメカの姿の自分。

 周りが全員、こっちを見ているのに気がついてしまい……

『と、とにかく、帰りましょ!!!』

 いてもたってもいられず、帰宅を始める英理さん。

 もしかすると、早く移動できる機能があるのかもしれませんが……それを探す時間すら、我慢できないほどに恥ずかしいのでした。

 

『はい、お洗濯終わり!』

 英理さんの胴体ハッチが開き、折り畳まれた洗濯物が飛び出します。

『すごいわね、アイロンがけしたみたい……してるのかしら?』

 家でゆっくりマニュアルを読みながら、自分の機能を試していって。

 掃除もして、お洗濯もして、料理の仕込みもして。

 普段ならとても大変なのに、この体なら最も簡単にできてしまいます。

『変形も色々あるのねぇ、こんなにあって使いこなせるかしら私』

 本来は専用AIのためのボディだったのですが、今は英理さんのもの。

『まぁ、必要な時に使ってみればいいでしょ、うんうん』

 意外と悪くない肉体に満足しつつ、英理さんはマニュアルをテーブルの上に置くのでした。

 しばらくして、航くんが帰ってくるのですが……

「わぁ、すっげー! 本当におばちゃんがメカになってる!」

『はーい、おばちゃんですよー! いらっしゃい!』

「ごめんねママ、朝見ちゃったから、どうしても見たいって」

『いいのいいの、ささ、上がりなさい!』

「じゃあ僕、ちょっとランドセル置いてくるね」

「お邪魔しまーす」

 航くんのお友達がリビングに移動。

 その後ろから英理さんがついていき、ジュースの用意を始めます。

「あれ、なんだこれ?」

 お友達が見つけたのは……なんと、テーブルに置きっぱなしのマニュアル。

「えーっと、どれどれ? 計算ドリルモード起動?」

 何気なく、マニュアルに書かれた文字を読んだ時でした。

『了解! 計算ドリルモード開始。 1+5はいくつでしょう?』

「あれ、おばちゃんどうしたの?」

『違います。1+5はいくつでしょう?』

「あ、もしかして、本当に計算ドリルになったんだ!」

『違います。1+5はいくつでしょう?』

「わあ、おもしろーい! じゃあ、漢字ドリルモード!」

『了解! 今からモニタに表示する漢字を読んでみましょう!』

「じゃあじゃあ、面白い話モード!」

『了解! この前、お買い物に行った時なんだけど。旦那がお財布を忘れて……』

「えーっと、天気予報モード!」

『了解! 明日の天気は晴れのち曇り。折り畳み傘を持ってお出かけしたほうがいいでしょう』

「秘密のお話モードになって!」

『了解! 最近、旦那とご無沙汰で。しかもこうなっちゃったでしょ、ますますご無沙汰になっちゃいそうでムラム……』

「おみくじモード!」

『了解! じゃじゃーん! 大吉!』

「あっ、何してるんだよ!?」

『何事も慎重さが大事です』

「あはは、航のおばちゃん、面白いな!」

「お、おもちゃじゃないんだぞ!?」

『やるべきことをしっかりとやれば、道は開けるでしょう!』

「いいじゃんいいじゃん、もっと遊ばせろよ!」

「ダメだって、僕のママなんだぞ!」

『ラッキーアイテムはマニュアル、おすすめスポットは友達の家』

「あはは、ずっとおみくじ言ってら」

「あー、そっか、ママがAIの代わりになってるから、こういう機能はオフにしないとダメなんだぁ!」

『スタミナが出る食べ物を食べて、ラッキーカラーのブルーがある服を着るといいでしょう!』

「ま、ママ、通常起動モード!」

『了解! って、あら? 私、何してたのかしら?』

「おばちゃん、スロットモード!」

「あ、ダメだってば!」

『了解! レバーを動かし、数字を揃えよう!』

 想定外の運用により発生した問題。

 この後もお友達のせいで、英理さんは自分の意思とは関係なくいろんなモードに切り替わってしまうのでした。

「よ、よし、これでオッケー……!」

 くたくたになった航くんが、英理さんのスリープモードを解除しました。

『あ、ううん、どうなったの、私?』

「えーっとね、モード切り替えをママの意思以外でできないようにしたんだ! 後、それだとスリープモードは危ないからオフにしておいたよ!」

『じゃあ、勝手に変な機能を起動されることはないわけ?』

「うん、今のママは変形機能とか家事機能だけ使えるんだ! そうしないと、お勉強モードになったら大変だし」

『ありがとう! でも、お友達来てたはずなのにほとんど覚えてないのよね。どうしたのかしら?』

「ええっとぉー……」

 散々おもちゃにされていたとは言い出せず、航くんが困り果て。

 と、その時英理さんのスマホに着信が。

『あら、電車が事故で遅れちゃってるのね。どうしよう、帰るの遅くなっちゃうわね』

「あ、じゃあママ、迎えに行ってあげたら?」

『うーん、学校までとは訳が違うわよ。パパの会社の最寄り駅、結構かかるし』

「ほら、たとえばファルコンモードとか」

『え、私飛べるの?』

「ジャイロ機能に異常がなければ、墜落しようとしない限り墜落はしないと思うよ。でも……」

『でも?』

「慣れないと、かなり揺れちゃうかも」

『そっかあ……』

「でも、速いんだ! パパのいる所までなら、5分くらいで行けちゃうよ!」

『よし、よし! せっかくなら、使ってみましょう! チェンジ、フライングファルコンモード!』

 掛け声と共に変形し、たちまち大きな鷹のような姿に。

「ママ、パパをコクピットに乗せられるからね!」

『おう、任せとけぇ! 俺様にかかれば、大人一人ぐらいあっという間に連れて帰ってきてやるぜぇ!』

「あ、あれ、そっか、変形すると人格も変形する機能、切るの忘れていたや」

『さあ、いっくぜぇ〜! おっ、とと、へへへ、初めてだから、ちょっと難しいな、くっそ〜!』

 フライングファルコンになってイケイケどんどんの英理さんは、元気よく空へと飛び出していくのでした。

 

 

 

『はい、お掃除終わり!』

 下半身の変形を戻し、いつもの姿に戻る英理さん。

 あれから一週間がたち、なんだかんだで慣れてきて。

 今では平然と変形し、あらゆる家事を楽々こなしています。

『でも、お掃除機能の吸い込みってすごいわよねぇ……あーあ、あの人のもこんな感じで思いっきり、あっ、ダメダメ、私、またエッチなこと考えちゃった』

 最近のお悩み、ズバリ性欲。

 英理さんがそのままコアになったため、人間としての欲求はそのまま残ってしまっているのです。

 とはいえ、旦那さんにエッチしてくれと頼むわけにもいかず、小学生が作ったのもあるのかエッチなモードはないようで。

 オナニーすらできず、悶々とした日が続いている状態。

『と言っても、作ってとは言えないわよねぇ。親の方からそんなこと……』

 ぼんやりしている間にも、しっかりと家事パターンを覚えたボディは作業を続けています。

『あーあ、困ったなぁ』

 今度は夕食の調理を開始しつつ、英理さんはため息をつくのでした。

「あ、そうだ。たまには英理の体も拭いておこうか?」

『え、いいわよ、別にそんな』

 旦那さんが気を利かせ、使い捨てのクリーナーを取り出し。

「いいからいいから、ほら」

 頭を磨かれ、首、肩、手。

 そんなに興味なかったものの、いざされてみるとなかなかいい気持ち。

 英理さんはうっとりして、旦那さんに身を任せ。

「さて、と」

 しゃがんだ旦那さんが、股間を拭いた時でした。

『〜〜〜〜〜〜〜!?!?』

 カイロがオーバーヒートしてしまいそうな刺激が体を走り、声にならない声をあげ。

「だ、大丈夫か!?」

『あ、あ、あ、あぁ♡』

「ど、どうした、航呼んでくるか!?」

『ち、違うの、ちょ、ちょっと、気持ちよくなっちゃってぇ♡』

「き、気持ちいい?」

『だ、だってぇ、私、中身は私だから、人間なんだもん、でも、この体、そ、そういうの、できなくって……』

「ん? じゃあ、おかしくないか?」

『何が?』

「今、気持ちよかったんだろ? 機能がないなら、そうならないはずじゃないか?」

『あ、それもそうね。でも、子供が作ったメカよ?』

「もしかすると、英理が入ったから何か変わってるのかもしれないぞ?」

 再び、手が股間に伸びて。

『あ、あっ、そこ、そこっ♡』

「ううん、特に何もないような見た目なんだけどなぁ」

『で、でも、こんなに、すごいのにぃ♡』

「あー、そうだ。家事をイメージしたら、その通りに機能が動くんだよな? こう、ほら、その……」

『え、エッチなイメージ、えっと、こう、こう……』

 旦那さんに言われるがまま、英理さんは妄想を膨らませます。

「あ、あ、なんか、開いてきたぞ!?」

『ひ、開いたって、あぁああああああん♡♡♡』

 なんと、無機質なメカのはずなのですが……割れ目ができ、メカの入り口の様なものができていたのです!

 その中に指を入れられ、思わず少し飛び上がり。

「あ、大丈夫か!?」

『ね、ねぇ、あなた、そこ、そこ、気持ちよく、してぇ♡』

「よし、じゃあ、こうやって……」

 温かく濡れたものが、なぞっていく感覚。

『あんっ、んっ、あっ、あっ、あっ♡』

「い、いきなり挿れるのもどうかと思って、舐めてみたんだが……どうだ?」

『う、うまいのね、あなた、こ、こういうの、おんっ♡♡♡』

「じ、実を言うとさ、クンニって好きなんだけど、なかなか言い出せなくって……」

『いい、いいわぁ、あなた、好きにして、好きにしてぇ♡』

 食べんばかりに口を大きく開き、愛を叫び。

 こうしてエッチなシステムが追加された英理さんは、やっと心ゆくまで旦那さんとお楽しみができるのでした。

 

『ええっと、つまり?』

「おかしいんだよ、ボディになんかパーツが増えてるし、そのパーツのせいでママの心がボディと結合しちゃってて」

 息子のデータと図を見せられながら、英理さんが説明を受けています。

『じゃあ……戻れないってこと?』

「うん、なんか強いショックとかでこうなったのかもしれないんだけど……ママ、心当たりない?」

『え、ええっと、ない、ないわね、うん、ない!』

 あれからというもの、毎日のようにオナニーをしてしまうように。

 その度になんだか、体をうまく動かせる感覚が強くなっていて……

(あれって気のせいじゃなくて、本当に私が体に馴染んでいってたんだぁ……)

「だから、戻る方法を見つけたんだけど……もう、戻せないみたい。ごめんなさいママ、もっと早く見つけられたら戻せたのに!」

『いいのいいの、私はこの体、気に入っちゃったんだもの! 別に問題ないわよ!』

「ほ、ほんと?」

『うん、うん! 変形もできるし家事もできるし、私はこの体だーい好き! ええっと、そうね、私は今日から、エリザウルスなのよ、ぎゃおーん!!!』

 息子を元気づけようと、わざとカッコをつけてみて。

「ええっと、ママ」

『な、なあに?』

「ザウルス、じゃなくてサウルス、だよ」

『あ、えっと、そ、そうなのね!?』

 呆れながらも笑ってくれた息子の顔を見て、エリサウルスは安堵したようにまた吠えるのでした。

 

 

 おしまい

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