カラオケパーティーは恙無く終わった。自分が居るという事で一瞬葉鍵が嫌そうな顔をしたが友達の手前あまり表には出さなかった。まあ態度では丸分かりで、自分を避けるように行動してたが。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。3/100→4/100】
でも最低限の会話が出来たので良し。一歩づつだが上がってはいるからな。
『あ』
今日は本当に偶々、葉鍵と対面した。此方としてもビックリだったので素っ頓狂な声が出た。暫く見つめ合う。珍しい。嫌そうな顔をして直ぐに去ると思っていたのだが。
「あんたもしかしてストーカー?」
「いや、違うけど…」
そうですとは口が裂けても言えない。なのでサラリと嘘をつく。だが葉鍵は自分の言葉を全く信じてはいないようだった。
「まあでも葉鍵と会えるのは嬉しいかな」
「きっしょ」
酷い…
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。4/100→5/100】
今日はクラス合同の授業。運が良いことに葉鍵のクラスと同じであった。相変わらずの嫌そうな表情である。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。5/100→6/100】
ふと思った事がある。いっそのこと一度告白するのも手ではなかろうか?断られるのは自明の理だが、偶然会う体で行くのも何時かはボロが出るだろう。ならば好意を寄せてるから少し話したいみたいな感じで行ってみるのはどうか。
「嫌」
「ですよね」
一刀両断。まあここは予想通り。
「私アンタの事嫌いだし、ていうかやっぱりストーキングしてたんじゃない!?」
「いや、それは本当に偶然」
「本当かしら…」
ストーキングしてますなんて言えば直ぐに通報されそうな雰囲気だ。これは正直には言えない。さて断られるのは分かっていたが、本命はここからである。
「うーん。せめて友達からとか…」
「嫌」
「少しの会話だけでも…」
「嫌、アンタの顔は見たくない」
取り付く島がないとはこの事か。
「一ヶ月…一ヶ月の間だけ、毎日一言だけでもいいから会話して欲しい。諦めがつかないんだ…」
「嫌、私に何のメリットもないし」
「それを過ぎたらもう二度と顔を見せないし、話し掛けようともしないようにする」
「…はぁ何でそこまでするのかしらね」
「好きだから」
「どのへんが好きなわけ?」
「顔と体と声」
「アンタ最低ね」
葉鍵は嫌悪感を隠そうともしない。しかし変に着飾った言葉を吐くよりかは正直に言った方が良いと思ったのだ。多分それっぽい言葉を言っても葉鍵は信用しないだろうから。
「はぁ………一言、一分以内なら呑んであげなくもないわよ」
「え、マジで?」
「いや、逆にそうした方が良さそうな気がしてきたからよ。何時会うか気を揉むよりも1日一言なら…って妥協出来るし」
「そこまで俺嫌い?」
「嫌い」
何とか毎日話せそうな雰囲気は出せた。それはそれとして一ヶ月経ったら関わるなともキツく言われたが。結果的には良しだろう。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。6/100→7/100】
次の日。葉鍵は此方を見つけると話し掛けてきた。早速ノルマを達成しようという心つもりだろう。と、思ったのだが。
「この文面を喋って」
葉鍵は此方に長々と書かれた紙を渡した。ギッシリと書かれた文字の紙が2枚ある。その内容をざっと読むと自分はこの契約を果たしたら一ヶ月後に関わらないと誓いますみたいな内容であった。
「はい、宣誓」
「用意周到っすね」
「約束守るか分かんないでしょ、アンタ」
ボイスレコーダーを手にこの文章を一言一句間違えずに読めと命じてくる葉鍵。警戒心が強く、しっかりした子である。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。7/100→8/100】
「おはよう」
「おはよう」
その言葉を告げるとさっさと葉鍵はその場を後にした。確かに一言とは言ったけどさ…。もう少し会話しようとかない?ないよなぁ…これで殊勝に話してくれるならここまで苦労はしてないしな。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。8/100→9/100】
「マジでこのまま挨拶だけで終わる感じか…?」
一応は好感度が上がってはいる筈なのだが、まるで態度が変わらない葉鍵の様子に少し不安になってくる。
「お前も頑張るな〜」
「もう完全に他人事だな」
樹はカラオケの時に会った葉鍵の様子を見て、「これは無理」と早々に諦めたらしい。お前手伝ってくれる感じだったよな?とは言ったが相手している自分もこれ本当にイケるのかな…と自信が無くなってきた。
「はぁ…」
「次はどんな女の子にする?」
「損切りが早過ぎ」
一応は自分に彼女作らせようと気は回してくれているのだ。なので余り邪険には出来なかった。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。9/100→10/100】
「おはよう…」
「…おはよう」
今日も今日とて挨拶で始まり挨拶で終わる。その未来が簡単に想像出来たため、自分は少し落ち込み気味に挨拶をしたのだが。
「…アンタって…何か好きな物とかあるの?」
「え?」
どうせ直ぐに踵を返して去っていくと思っていたので、いきなり振られた話題に困惑する。
「いや、やっぱ何でもないわ。じゃ」
「あ!………行っちゃったな」
かと思うと直ぐに話題を打ち切る。そしてスタスタと自分の前から消えていった。挨拶しかしなかった今までとは違う行動。少しずつだが変化が起きているのかも知れない。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。10/100→11/100】
「そういやアンタって部活入ってないのね」
「何かしっくり来るのが無くてな」
「ふーん、そう」
少しの会話。だが前の挨拶だけの関係よりかは随分と先に進んだ方だろう。葉鍵も前のように全く自分に興味が無いという様子では無くなってきた。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。11/100→12/100】
「えぇ、葉鍵と話せてるのかお前?」
「俺もビックリ」
「意外とお前口が上手いのか…?」
「意外は余計なんだよなぁ…」
ちょっぴり、ちょっぴりとだが葉鍵と話す長さが増えていく。能力のお陰ではあるけれど何処かそれが嬉しかった。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。12/100→13/100】
「運動神経は悪く無さそうなんだけどねアンタ」
「そうなん?」
「いや、体育の時とか結構動けてるじゃない」
「へえ〜」
「何で他人事なのよ…」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。13/100→14/100】
「質問良いですか?」
「内容によるわね」
「好きな人とか─」
「却下」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。14/100→15/100】
今日は部活で忙しいらしく挨拶しか出来なかった。その時、葉鍵が少し話したそうに見えたのは自分の思い違いなのだろうか。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。15/100→16/100】
期間限定で連絡するのを許すとの葉鍵の言葉により、連絡先を教えて貰った。一ヶ月後には消すようにと釘は刺されたが。しかしスマホで女の子と通話って…何か良いよね。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。17/100→18/100】
「好きな飲み物は何でしょうか!」
「スポーツドリンク」
「陸上部だから?」
「単純に好きだからよ」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。18/100→19/100】
「何で陸上始めたの?」
「アンタに関係ある?」
偶に踏み込むと鋭く切り捨てられる時がある。難しいね。男女の距離って。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。19/100→20/100】
「お前本当に何やったんだ…?」
「?何がだよ」
「いや、葉鍵明らかにお前と話す時だけ少し雰囲気柔らかいじゃん…」
「……何でなんだろうな…」
能力があるとはいえ、前の触れる者みんな傷付けそうな葉鍵とは違う今の少し温和な葉鍵には自分も時に困惑する時がある。でも…
「葉鍵って、あんなに優しい顔とかする事あるんだな」
「ごめん。俺はそれ見たことないから分からないわ…」
「だろうな」
一回だけだが、自分の話が受けた時があった。その時の葉鍵の笑い顔は今でも脳裏に焼きついている。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。20/100→21/100】
私には最近男の知り合いが出来た。最初はいきなりぶつかって来て、そしてジロジロと私の体を見てたから嫌な男と思ってた。
でももう会う事もないし、別に直ぐ忘れれば良いと思ってた。だけどアイツは毎日のように私と顔を合わせる。その度に最初に感じた不快感が呼び起こされて嫌な気持ちになった。
それからもアイツとは良く顔を合わせた。そのあまりの遭遇頻度にストーキングしてんじゃないのかと疑ったが、アイツは否定した。本当だか。
まあそれは置いておくとして、ある日アイツから告白された。勿論答えはNO。だって嫌いだしアイツ。だけどアイツは諦め切れないから一ヶ月だけチャンスをくれとかほざき出したのだ。
面倒、ウザい、関わらないで欲しい。そうは思ったのだが、一日に一言でいいと言ったので、まあ少し我慢すれば視界から永遠に消えてくれるので渋々良しとした。でもちゃんと証拠は取らせて貰ったけど。だって約束守る保証ないし。それから始まったアイツとの一言会話の日々。一言なら別に挨拶だけで良いでしょ?とそれで終わらせようとしてたらあら不思議。意外とアイツ、そのまま引き下がったわ。もっと話さないか、とか言ってくると思ったのに。
でもこれは私にとっては僥倖。挨拶だけ一ヶ月毎日すればアイツとの縁が切れるんだからね。そんな訳で悲しそうにするアイツの事なんて無視して挨拶だけで済ませようと思ってたんだけど……何か気になる。どうしてかは分からないけど、アイツがどんな奴なのか少しづつ日を追うごとに気になっていく。だから質問何かしちゃってさ。そしたらアイツ嬉しそうな顔をするんだもんね。馬鹿みたい、少し気になっただけなのに。それからは何となくだけどアイツと話す会話が長くなった気がする。ていうか増えてる。何でかは分からない。でも何か気になる。まあ一時の気の迷いとかでしょ。そうに決まってる。はー早く終わらないかなアイツとの関係。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。21/100→22/100】
「葉鍵って綺麗だよな」
「キモいからそれ辞めてくれる?」
「褒め言葉なんだけどなぁ…」
「好きでもない奴に言われても嬉しくないのよ」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。22/100→23/100】
「葉鍵はさ、何で陸上部に?」
「走るの好きだからだけど」
「シンプル」
「逆にそれ以外あるの?」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。23/100→24/100】
「ていうか本当に好きなわけ?私のこと」
「好き」
「顔が?」
「うん」
「やっぱサイテーだわアンタ」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。25/100→26/100】
「もう少し…か」
後数日。それでアイツと私が会話をすることは無くなる。清々するわね。本当に。これでアイツと話すのも…終わり。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。27/100→28/100】
「葉鍵のこと好きだ」
「何今更?」
「最後かもしれないからな。改めて言っておこうかなって」
「…約束は─」
「ちゃんと守るよ」
「そう。なら良いわよ…」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。28/100→29/100】
「今日が最後かぁ…」
「そうね。やっとだわ」
「気持ちは─」
「変わらないわよ。アンタが恋人なんて怖気がする…」
「酷くね?」
「だってキモいじゃんアンタ」
「言い返せないんだよなぁ…」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。29/100→30/100】
恋人になんてなる訳ないじゃない。あんな気持ち悪い奴。だから私が異性としてアンタを好きになるなんてあり得ないし。明日それをハッキリと言ってやるわよ。私はアンタの恋人になんか絶対にならないってね。
「今日で終わり。結果は分かってると思うけど言っとくわ」
「・・・」
「私はアンタが嫌い。だから絶対に恋人になんかならない」
「まぁ、そうなるか…」
落ち込むアンタを見て、私は更に言葉を紡いでいく。
「だから明日からは話し掛けないでよ」
「………分かった。約束、だからな」
「それじゃあね」
踵を返す。追っては来ない。声も掛けてこない。…本当にアンタ。約束守るつもり?
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。30/100→31/100】
約束通りアイツは私に声を掛けて来なかった。一ヶ月話してはいたから、私の居る場所が分かるのか。会わないように気を遣ってるみたい。変なとこで律儀ね。
「……はぁ」
私がアイツを異性として見る事はない。だけど…アイツと過ごした少しの一ヶ月。それはとても楽しかった。恋人にはならない。絶対に。でも…
「アンタの友達くらいならなってやるわよ」
友達。そんな関係をアンタと紡ぐのは別に良いかもね。
「いきなり過ぎない?」
「一応は約束守ったからねアンタ。他の男よりかはマシだから、友達にならなっても良いわよ?」
「うーん、上から目線」
「で?答えはどうなの?」
「まぁ、改めて宜しく頼むよ。葉鍵」
「ふん、でも少しでもエロい事しようとしたら絶交するから!」
「はいはい、気を付けますよ」
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。31/100→32/100】
エロが遠いね。
追記
誤字報告有難うございました。