長い戦いが終わった。葉鍵と話す為とはいえかなりの労力を削られた気がする。特に精神的な何かが。まあ精神力をすり減らしたお陰で成績が上がったし。何か親には褒められたし。葉鍵の好感度上げられたし…良いこと多いな…?いやでもキツイから勉強漬けは勘弁してくれないっすかね……。学生の本文は勉強だけど遊ぶのも学生の特権だと思うんだ。という訳で。
「〜♪」
「前は気にしなかったけど…結構歌上手いじゃない、アンタ…さ」
カラオケでストレス発散!しかも誘ったら葉鍵もOKしてくれたしやったぜ!十八番のナンバーなので自信はあったが、好きな人に褒められると更に幸福度アップ!!
(まだ恋人じゃないけど、何か良いなこういうの)
女の子と2人でカラオケデートとか数ヶ月前の自分では考えられないわ。しかも努力した結果だからな喜びも一塩だぜ。
「ほい、次な」
「任せなさいってね」
一回歌ってバトンタッチ。大勢で行くカラオケとは違い2人だと自分の番が早いこと早いこと。カラオケボックス専用のタブレットを弄くりながら葉鍵の歌声に耳を傾ける。
「意外と情熱的な曲歌うよなぁ…」
「〜♪」
葉鍵の歌声にかき消され自分の呟きは彼女には届かなかったようだ。愛した男に縋り付く歌とか…もしかして結構葉鍵って…愛が重い?何か気持ち籠もってる気もするし…
「はい、次ね」
「あいあい」
まあそんな事は置いておき、今はこの時間を楽しむ事にするか。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。50/100→51/100】
「そ、それにしてもさ?!」
「うおっ!変な声出してどうした?」
「…い、いややっぱ何でもない…うん何でも…」
「?」
上ずった声を上げたかと思うと何でもないと言う。顔が赤いが何か恥ずかしい事でも聞こうとしたのだろうか。うーむ、気にはなるが…
「がっつき過ぎるなよ」
との言葉が頭を過ったので追及はしないでおいた。サンキュー外付け回路、樹裕信よ。お前の言葉を俺は忘れはしないぞ。
(自分で振っておいて、好きな子とかいるの?とか…図々し過ぎる……)
気にはなる。しかし過去の自分の行いにより言動が縛られているのが今の葉鍵莉々菜だ。彼女は今、初めて自分の過去の行動を後悔していた。後悔先に立たず。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。51/100→52/100】
「そういやお前って何で葉鍵好きなの?」
「顔、体、声」
「まあそうだろうな。でないと─」
「でも最近は葉鍵自体も好きだなー」
「え?あんなキツイのにか?」
前よりかは態度が和らいだらしいが、今でも自分以外の男性への当たりは強いとの事。最近は柔らかい表情しか見てなかったからそういえばそうだったな、と不思議な懐古心が自分の内にある。地味にだが葉鍵の心の奥に触れているのかもな。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。52/100→53/100】
「気ーにーなーるー!!!」
(ヤバいマジで気になる…!!アイツまだ私の事好き…なのかな…?……でもなー!!)
自分の部屋でバタバタ。一度付けた仮面は中々変えられないもので。未だに少し強い言葉を獅子田哲己に投げかける事がある。その度に今ので嫌われてないかな…とか自己嫌悪に苛まれる事もしばしば。何より気になるのは、
「私とアイ…獅子田君は…どういう関係なのかな…」
友達なのは分かっている。しかしこの関係の始まりは獅子田哲己が葉鍵莉々菜へと告白した所から始まっている。なので少々他の友人関係とは異なるのだ。一度振って、その後に友達から始めないかという提案も蹴って。でもそれとは別に友達になるのは悪くないかな、ってなって。そして…
(少し気になる…)
そんな想いが芽生え始めて。でも今更どんな顔で彼に接すれば良いというのか。
どうすれば良い?芽生え始めたこの蕾を無視したまま、彼と接していく自信はない。かといってまた自分中心に動くにはそんなに開き直れない。つまりはどん詰まりである。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。53/100→54/100】
「アイツの交友関係?」
「そ。何かずーっと私に構ってくるからさ、他の友達とか居ないのって、気になったわけ」
「ふーん」
それっぽい理由を付けて、コソコソ調べるなんてらしくない。そんな事は分かっている。けれども私にはこんな方法しか思い浮かばなかったし、取れなかった。
「交友関係…ねぇ…」
「さっさと答えて欲しいんだけど」
やっぱり他の男は苦手。今も早く話を切り上げたくて仕方ないと思ってる。でも我慢しなきゃ。私が今取れる行動はこれしかないんだから。すると獅子田君と仲が良いらしい目の前の男が口を開いた。
「男友達はまぁまぁ居る」
「……他は?」
「居ねぇな。少なくとも俺の知る限りではな。葉鍵さんくらいじゃねぇかな?女子の知り合いって」
「そう」
良し!セーフ!まだ私しか……私しか居ないんだ……ふーん……とと、それはさておき。必要な情報は手に入れたし、さっさと戻ろう戻ろう。
「……素直じゃないね~」
ボソリと呟かれた言葉は去っていく葉鍵には聞こえなかったようだ。よくあんな面倒な娘、口説く気になったなぁ…と獅子田の友人はボヤくのだった。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。54/100→55/100】
「アンタって私服どんなの着てるの?」
「うーん特にこだわりは…」
「気になるから写真送って」
「えー…」
「えーじゃない」
という訳でいきなり始まった葉鍵先生によるファッションチェックのお時間である。一着着たらもう一着送れとの要望がどんどんと来たので結局は全ての私服を見せる事になった。…自撮りをしている息子はそんなに変か?両親よ。さて、葉鍵先生の判定がいくつかというと、
「…良くもないし、悪くもない…コメントに困るわね…」
「悪くはないなら良いのでは?」
「こう…!何か嫌!」
「また理不尽な感じ?」
葉鍵先生による採点は真ん中であった。その後葉鍵が色々と言っていたが、何時もの事なので軽く流しておく。葉鍵の扱いも慣れてきたなぁとは自分自身でも実感するところである。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。55/100→56/100】
「うん、悪くない…いや、良いわね。意外と似合うじゃない」
「昨日で終わったのでは?」
「んな訳ないじゃない。ほら次はコレ。早く着て」
「ファッションショーの始まりか……」
葉鍵先生の採点の後は葉鍵先生によるファッションショーが行われた。まあ似合う服選んでくれる女の子、とかいうシチュエーション自体が嬉しいからこれはこれで良いんだけどさ。
(……ふーん)
偶に葉鍵の目の色が変わる時があったが、着せ替え人形になった哲己にそれを気にする余裕は無かった。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。56/100→57/100】
「獅子田君って、結構格好良い…?」
送られた私服の時は余り気にならなかったが、前日に行った
「うん…うん……やっぱり格好良い…かも…」
スマホの中に保存された写真をスライドさせていく。どれも自分が選んだだけあり、好みど真ん中である。
「ッ!?ヤバい!これは封印しなくちゃいけないわ!!!」
いつの間にか時間がかなり過ぎていた。どうやら夢中になって哲己の写真を見ていたらしい。これはいけないと思った葉鍵はこの写真を見ない事を誓うのだった。まあ時折見るのだが。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。57/100→58/100】
「結局アンタって部活とか入らないの?」
「うーん、余り興味のあるものがなぁ…」
「情けないわね~学生なら部活くらい─!!─いや!まあそれも自由よね!」
「どっちだよ…」
「…別に、ただアンタは部活入っても直ぐに音を上げそうとか思っただけよ」
「評価が低い…」
「日頃の行いのせいよ」
(あ、危なかった!!なに交友関係広めそうな事してんのよ私は!!いや!別に関係は…無い…けど…)
自分の行動が自分の首を締める事に気づいた葉鍵は、部活には入らないように話を逸らした。自分以外と仲良くなる哲己の姿を想像したら、とても嫌だったのだ。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。58/100→59/100】
いい加減向き合う時が来たのかもしれない。葉鍵莉々菜は自分自身に対してそう問いかけた。始まりは褒められたものではなかったが自分の中で日に日に彼の存在が大きくなっているのは実感している。今まで気にも留めなかった男が今では頭の中の大多数を占めているのだ。最早認めない訳にはいかないだろう。とは言っても、
「どうすればー!!!」
恋愛経験0。葉鍵莉々菜には分からなかった。これからどう行動すれば良いのかが。故に自分が彼を気にしている事は認められても、特になにがしかの行動に移れなかった。怖いのだ。自分の行動が正解に繋がるかが、間違えた行動を取るのではという不安が。なので…
「明日…明日良い案が浮かぶ筈だから…!!」
ヘタレ&未来の自分へのぶん投げ。無責任なパスを未来の自分へと渡し、葉鍵莉々菜は眠りにつくのだった。
【葉鍵莉々菜の好感度が上がりました。59/100→60/100】
まあそんな事をしても未来の自分は応えてくれる訳がなく。
「お、お、おはよう…?!」
「あっ、うんおはよう」
「いい天気ね!!」
「言うほどか?」
雨は降っていないが曇り空。晴れ間は出ていない。なので別段いい天気とは言えないだろう。
(あからさまに態度変わるな…)
流石に此処まで態度に出れば恋愛経験のない自分にも分かる。葉鍵莉々菜は自分へと関心を向けていると。しかし、
(攻めるのは今で良いのか?確かに最初に比べれば格段に高いが…)
告白をしても今ならかなり成功率は高いだろう。だが葉鍵はまだ完全には素直になってない節もみえる。此処は攻めるべきか、それとも待つべきか。考える。そして出た結論は。
(馬鹿の考え休むに似たり…だったかな?)
自分は元々そんなに器用な事は出来ない。ただ出来るのは真っ直ぐ進むだけ。これまでも直球で葉鍵莉々菜に関わってきたのだ。今更迷う必要もあるまい。そうと決まれば後は簡単だ。
「葉鍵」
「な、なに!?」
「俺は今でもお前の事が好きだよ。勿論異性としてな」
「──ッ!?」
「まあ言いたいのはそれだけだ。応えてくれたら嬉しいけど、無理強いはしない。じゃあな」
「あ、ちょっ!ま………」
葉鍵にも考える時間が必要だろう。そう思った俺は校舎の中へと足早に消えて行った。途中呼び止めようとする葉鍵の声が聞こえた気がしたが、その声は小さかったため立ち止まる事はしなかった。
【葉鍵莉々菜の好感度?が上がりました。60/100→61/100】
ズルいズルいズルいじゃん。私が先に言おうかなって思った事を先に言うってさ。しかも相変わらず本気の目でさ。…前の私はよくあの瞳を一蹴出来たなぁ…今の私じゃ無理だよ。あんなに真っ直ぐ見つめられてあんな事言われたら、断れないじゃん。でも無理に応えなくても良いとか…何なのよ…
「好き…好きだよ…でもあんなに酷い事言ってたのに虫が良すぎるよ……」
一歩踏み出せないのは過去の自分が居るから。好きになったからってそんなに簡単に過去の出来事を無かった事にしても良いの?駄目だよ…そんなんじゃ彼が許してくれても私自身が……
「…そっか。ハハ、何でこんな簡単な事忘れてたんだろ」
ごめんなさい。悪い事をしたら、罪悪感を持っていたなら、先ずは謝る事から始めるんだよね。あんまりにも昔に教えられた事だからすっかり忘れてたよ。本当に馬鹿ね、私って。
「ウジウジ悩むのは終わり!先ずは獅子田君に謝らなくちゃね」
それからもし、あなたが許してくれたなら…私は……
【葉鍵莉々菜の好感度?が上がりました。61/100→62/100】
晴天。今日は晴れやかで風も心地よい。そんな今日この頃に自分は葉鍵に呼び出された。場所は初めて葉鍵に告白した場所だ。
「来てくれたね、獅子田君」
「しし!?」
笑顔を浮かべて、軟らかな雰囲気を纏う葉鍵。其処にも驚いたが一番に驚いたのは名前を呼ばれた事だ。何時もアンタとしか呼ばれていなかったから違和感が凄い。そんな俺の様子を見た後、葉鍵は此方に頭を下げた。
「ど、どうした!?急に!!」
「謝っておきたいんだ」
それは今までの横柄な態度と言動の謝罪であった。どうも先程から調子が狂う…まるで別人と入れ替わったかのような程に性格が違う。
「まあ変な絡み方してたから、こっちも強くは言えないんだけど…」
「それでも謝っておきたかったから、あなたの気持ちに応える前に」
心臓がドクンと脈を打つ。葉鍵は自分の告白に対して本気で応えようとしてくれているのが、言葉にせずとも伝わってきた。これから葉鍵が言う言葉は
「私は」
待つ。葉鍵莉々菜の口から紡がれる言葉を。
「あなたのことが」
祈る。この想いが成就することを。
「大好きです。だから改めて、これからは宜しくね。獅子田君!」
【葉鍵莉々菜の好感度が変化を起こしました。好感度からあなたへの愛情へと変わります】
【葉鍵莉々菜のあなたへの愛情が上がりました。62/100→63/100】
もう少しもう少しで…エロ!