※この作品はR-18です。

あんまりブルーではないかもしれない性癖アーカイブ   作:目脳

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寝取られマゾ性癖持ちだけど独占欲の強い先生のことが大大大好きな恋人の明星ヒマリがいちゃらぶ嘘NTR報告をしてくれるお話

「そういえば、先生はいわゆる寝取られものがお好きなのですか?」

「……!?!?!?!?!?」

 

 それはここ最近の喧騒が嘘のように凪いだ、ごく穏やかな日。強いて言えば抜けるような青空が目に痛いほど眩しいくらいの、何でもないある日の午後でした。

 そんな日だからこそ、今やトラブル対処の達人として名を知らしめる先生もまた油断していたのでしょう。ミレニアムが誇る超天才清楚系病弱美少女ハッカーこと私、明星ヒマリがふと以前から気になっていた疑問を投げかけると、とてもリラックスした様子でソファーに腰掛けていた先生は突如としてその口に含んでいたコーラを勢いよく噴き出したのです。

 

 たくさん買い置きしておけばうっかりエイミの分を飲んじゃって怒られることもなくなるんじゃない? 

 そんな先生の提案で今となってはダース単位で我が隠れ家の冷蔵庫にストックされるようになった茶褐色の炭酸飲料は彼が咄嗟に顔を上げたため空中でアーチを描くようにして落下し、ソファー正面のローテーブルは瞬く間に洪水もかくやといった有様となってしまいました。ジャンクな味わいに相応しく大量の砂糖が含まれていることもあり、むわ、と甘ったるい匂いが部屋中に広がります。

 

 広げていたお菓子や私のコップは別にいいとして……あら、先生が持ち込まれた書類にまで少しかかっていますね。ちょっと待っていて下さい、なにか拭くものをお持ちしますから。

 

「う、うん。ご、ごめんね……?」

「ふふ、別に構いませんよ。先生と私は、そう。互いの全てを余すところなく見せ合い、あらゆる苦難を共有すると誓い合った比翼の翼……つまりは相思相愛の恋人なのですから。迷惑なんてことは何ひとつありませんとも」

 

 私は先生がどうしてもと仰るなら借金の連帯保証人にだってなれますし、先生のお好きなアクション映画でおなじみの時限爆弾のコードを切る場面にだって立ち会えます。なんなら全知の学位すら授かったこの優秀な頭脳で、あらゆる面倒事を解決してご覧に入れましょう。

 胸を張って私がそう宣言すれば、先生は呆れたような嬉しいような顔でヒマリの中の私ってどうなってるのかな、と呟きました。いやですね、そんなの手当たり次第厄介ごとに首を突っ込んではみるみる泥沼に嵌っていくお人好しに決まっているじゃないですか。そういうところも好きなのですが。

 

 私は車椅子を操作して移動し、壁際の戸棚の奥から白い雑巾を取り出します。

 この部屋は定期的にロボットに清掃させていますが、それでも飲食物の類を持ち込んでいれば突発的に床や家具が汚れてしまうことはあります。足の不自由な私でも十全に扱えるよう、雑巾を取り付ける用のワイパーも完備しているのですがこちらは先生には必要ありませんね。

 ふふ、それにしてもいま思えば先生とお付き合いを始める前の私も炭酸を暴発させたり通話中に飲み物をこぼしたりと……おや、気のせいでしょうか。なんだかびしょ濡れになってばかりですね。

 それはともかく(閑話休題)、過去の失敗からきちんと学習出来るのがこの私です。拭くものは常に多めに常備していたこともあり、私は先生との奇妙な縁を感じつつも新品の雑巾を渡しました。

 先生は「ごめんね」と申し訳なさそうにそれを受け取り、早速コーラで汚してしまった辺りを拭き取り始めます。

 

 丁寧に丁寧に、僅かな水滴すら見逃さぬとばかりに真剣な面持ちの先生は無言のまま床やテーブルを拭いていきます。彼は大雑把なようでいて一定の清潔感はある方なので(そうでなければそもそも多くの女生徒に慕われることもないのでしょうが)、掃除に関してはいつも意外なほど真面目に取り組まれるのです。

 恋愛感情というものはどれだけ人を単純にしてしまうのでしょうか。そんな何気ないギャップにすら胸の高鳴りを感じた私はあくまで冷静であろうと努めましたが、しかし一度意識してしまうとどうにも座りが悪くなります。頬に生まれた熱を誤魔化すかのように、思わず身じろぎさえしてしまいました。

 

(……ふむ。確かこういうときは……萌え、と最近の若者は言うのでしたか。ふふ、先生萌え。実に悪くない響きですね)

 

 身体の大きな先生が、窓から差し込む光の中でそうして縮こまって細かな作業に集中している姿。まるで巨人が針仕事をしているようなちぐはぐでありふれたワンシーンが、なんだか無性におかしくて、あたたかくて、それでいて愛おしくて。

 敢えて詩的な言い回しを用いるとしたら、それはまるで鞄の中で温くなって溶けてしまったチョコレートのような甘い幸せでした。

 

 思えば、生まれて初めて獲得した恋という感情はいつ爆発するともしれない爆弾にも似ていました。ともすれば心臓が破裂してしまうのではないかと思うほどの胸の高鳴りを気紛れに、そしてこちらの事情などお構いなしに私へ与えるのです。

 どんな話題が好きか。どんな食べ物が好きか。どんな服が、どんな時間の過ごし方が、どんな異性が好きか。

 先生の何気ない情報を逐一入手しては一喜一憂していた日々はどこまでも輝かしく、全知の学位を持つ私ですら到底把握出来ないものがあるという事実は正に青天の霹靂と言う他ありませんでした。

 

 しかし、想いを成就させたことによって得た愛という感情の在り方は私にとって対極に位置するものでした。既に見慣れた筈の先生の些細な癖や仕草を日常の中で見つけたとき、「明星ヒマリは恋人としてそれらを見慣れているという事実をこの上ない幸せだと感じていること」に改めて気付かされたのです。

 まるで日向の中で微睡みながら、同じページの同じ文章を何度も何度も指先で繰り返しなぞるような。そんな穏やかな停滞にも似た居心地の良さこそが、どうやら私の愛の本質のようでした。

 

 つまるところ、未知にときめくのが恋であるとするならば、既知を慈しむのが愛なのです。完成された美しい数字の羅列、謂わば円周率にも通じるものがありますね。正に神秘です。

 もう慣れ親しんだ筈の恋人の真剣な横顔にときめいた私はつらつらとそんなことを考えていましたが、しかし先生のその寡黙な態度が目の前のトラブルに集中している「ふり」であるなどとっくに分かっています。大方、先程の質問についてこれ以上追求されたくないのでしょう。

 あらゆる謎を解き明かしてしまうこの眼の前では、下手な猿芝居など通用しないのです。

 

「……こほん」

 

 どのような理由であれ、私からの問いかけを既読スルーとはいただけませんね。恋人の倦怠期はいつだってコミュニケーション不足から始まると雑誌にも書いてありましたから。

 まぁ、私ほどの超絶可憐な美少女に身も心も捧げられて飽きる道理などありませんが……それはそれ。私は大胆不敵にして勇敢な心の持ち主ですが、同時に石橋を叩いて渡る堅実さも併せ持つのです。

 

 先生、と私は仕切り直しを兼ねて甘い声で彼を呼びます。

 ところで、先程の質問についてなのですが。あわよくばそのまま聞き流したかったであろう話題を蒸し返され、先生は分かりやすく肩を跳ね上げました。

 

「あ、あは。あはははは……いやあ、一体なんのことだか……?」

「ふふっ。惚けなくても結構ですよ、先生」

 

 証拠はもう揃っているのですから。

 気分はさながら犯人の前で颯爽と種明かしをする探偵のようです。悠然と微笑む私は手元のタブレットをついついと操作し、とあるアプリを起動しました。

 すると液晶にはまるで一糸乱れぬ隊列を披露する兵士たちの如く、登録された日付順にソートされた数字と文字列がずらりと一列に並びます。

 

 銃弾や破損した備品の修理費、交通費、接待費……つまりはシャーレが連邦生徒会に計上した、先月の経費の詳細。そう、このアプリは先生からの依頼を受けて私が開発した、スマホで撮影したレシートの画像や取り込んだデータ群から必要な情報だけをAIが収集し、電子上でお手軽に稟議書を作成出来るという優れものなのです。

 先生の業務を補佐するためだけに最適化されたそれを拵えるという大役は並の生徒であれば些か荷が重かったでしょうが、ミレニアムの至宝と呼ぶに相応しいこの頭脳の前では朝飯前……いえ、それどころか昨晩の夕飯前と言っても過言ではありません。

 ただし先生専用ということで少々突貫工事、もとい癖のある独特なプログラムを組んでしまったため、製作者である私による定期的なメンテナンスが必要なアプリでもあります。いえ、先生に定期的にお会いする口実などではありませんよ? 本当に。

 そんな献身的な恋人である私が先生の性的嗜好に疑問を持つに至ったのは、そのメンテナンスの最中にとあるサイトからの請求内容が視界に入ってしまったことが切っ掛けでした。

 

 私はアプリをスクロールさせ、だらだらと大粒の脂汗を浮かべる先生にあるデータを突きつけます。

 

「先生。稟議書作成アプリに先日取り込まれていたこちらのデータですが、念のため何か誤りがないか確認していただけますか?」

「…………えーっと……」

 

 すると先生の目はたちまち哀れなほどざっばんざっばんと泳ぎはじめ、眸にはどこか怯えのような色が混ざります。キヴォトスに在籍する多くの学生から信頼の眼差しを向けられるシャーレの先生が、その精悍な顔をひどく青褪めさせているのです。仮にゴシップにすっぱ抜かれたなら一面間違いなしと言えるでしょう。

 

 とはいえ、それも無理のない話です。

 恐らくは何らかの手違いで誤ってアプリに追加されてしまったデータとは即ち──アダルトサイトからの請求書。

 それも怪しげな架空請求ではなく、れっきとした企業によって運営されており、日々多数の新作アダルトコンテンツが覇を競うように販売されているという大手サイトからの正当な代金の請求だったのです。

 

 私は頬に手を当てながら、敢えて悩まし気に聞こえるよう大袈裟な溜息を吐きました。当然演技なのですが、そんなことにも気付けない先生はいよいよこの世の終わりのような絶望的な表情を浮かべてしまいます。

 そのままゆったりと勿体ぶるようにデータの詳細を読み上げれば、私の清楚で控え目な胸の奥はまるで小さな火が灯ったかのようにじわじわと熱を持ち、小鳥の囀りにも喩えられる美声にはもはや隠し切れない艶が浮かび上がっていました。

 

「『隣で聞こえる彼女の深イキアへ声おまんこ』、『腐れ縁の女友達は彼氏運が悪いらしい』、『男を知らない無垢なソフィー姫~ホームレス奉仕プログラム実行中~』、『流されやすい清純巨乳彼女からのNTR報告』……ふむふむ。僭越ながら、タイトルを見ただけではこれらをどうシャーレで使用するのか皆目見当も付きませんね。この一を聞いて十を知るミレニアムの知の象徴である私ですら容易に全容を推察出来ないとは、流石は先生といったところでしょうか?」

「……っ、う、あ、あの、ヒマリ、これはそのっ、ち、違くて……!」

「うふふ。これだけ決定的な証拠を抑えられておきながら、一体何が違うと仰るんですか?」

 

 さて。

 実のところ、先生は私とのお付き合いが始まるまで異性との交際経験が皆無だったそうです。告白したことはあれどいずれも玉砕に終わり、異性とは手を繋いだこともないという初心な大人。それが先生という男性でした。

 

 恋人となって初めてのデートの日、「気の合う友人はいても、異性として誰かに好かれたのは生まれて初めてなんだ」と語る先生の照れ臭そうな様子は大変可愛らしく、また私が彼の心の新雪に思う存分足跡を残せることに女として格別の歓びを感じなかったと言えばそれはやはり嘘になるのでしょう。

 昔の恋人が何人いようとも全て私色で塗り替える覚悟はしていましたが、私にとっての先生が特別であるように、先生にとって私もまた特別な存在であって欲しかったのです。

 

 だからこそ私と先生は、お互い初めて成就させた恋を大切に育て上げました。多くの時間を共にし、価値観を共有し、更には一生に一度しかない純潔を捧げたのです。いつか永遠の愛を誓いたい、と左手の薬指を眺めながら夢想すらしました。

 そんな相手を愛しいが故に大切にしたいと考えるのは言ってみれば致し方無いことで、嫌われたくない、見放されたくないと思考するのはもっと当然のことでした。なにせ人は一度幸せの味を知ってしまえばそれを失うまいとどこまでも足掻く生き物であり、それはこの天才的な頭脳を持つ私ですら逃れようのないサガなのですから。 

 

 故に、自らの秘すべき性的嗜好を、よりにもよって最愛の恋人に暴かれてしまった男性の受ける心的ショックとはいかほどのものなのでしょうか。ましてや大人として、頼れる男性として接したことで私から好意を寄せられた先生の胸の裡には「ヒマリに嫌われてしまうかもしれない」という恐怖が過った筈ですが、それは果たして堪えきれるものなのでしょうか。

 

 その疑問に答えを示すかのように、先生の眦には薄っすらと涙すら浮かびはじめ、私は罪悪感と高揚感で軽い立ち眩みのような錯覚すら抱いてしまいます。

 心の恥部を曝け出した羞恥で赤く染まりながら、同時に恐怖で青褪めてもいる不思議な表情。私の、私だけの先生。

 想いを通じ合わせた恋人である彼のそんな一面を前にした私は思わず車椅子から大きく身を乗り出し、彫像のように固まってしまった先生の頬を指先で撫でます。彼の肌の触感は私や周囲の生徒のものともまた違い、少し乾燥してがさついていますが、その触り心地こそがどうしてか無性に愛おしいのです。

 

「大丈夫です……♡ 安心して下さい♡ こんなことで嫌いになんてなりませんよ、先生……♡」

 

 囁きかける私の声に、多分に滲むのは情欲の色。

 弾かれたように顔を上げた先生はやはり鈍感で、目の前のけだものが既に腹を空かせていることには気付いていないようでした。彼は喉を震わせ、まるで救い主に縋りつくような声色で「ヒマリ」と私の名を呼び、こちらの耳朶を震わせます。私はそんな哀れな先生の手に手を重ね、包み込むように指を絡めました。

 

 手袋越しに触れる先生の手は軽く汗ばんでおり、互いの指を擦り合わせるとぬるりと滑りました。それは固く節くれだった男性の指の感触と相俟ってひどく煽情的で、倒錯的で。私はますます妙な気分になってしまいます。

 

「ヒマリ……えっと、その、私としては女の子が不快に思っても仕方のないものを見せてしまったとは思うんだけど。本当に……?」

「ええ、本当です♡ 先生がどんな他人には言えない性癖を持っていようと、どんな倒錯的な願望を秘めていようと……私だけは許します♡ いえ、それどころか先生の止め処ない欲望を完璧に受け止め、この類稀な頭脳で必ずやご満足させてみせますとも……♡♡」

「……あの……ひ、ヒマリ……?」

 

 そこで先生は何か違和感を覚えたのでしょう。

 額に一滴の汗を浮かべながら、じり、と後ろへ下がろうとします。ですが、先生。私は知っているんですよ? あなたはいつだって、自分の目の前に迫っている危機よりも生徒を優先してしまうひとなんだ、って。

 私は車椅子から大きく身を乗り出した姿勢からわざと前へと倒れ、身体を宙に放り投げます。一瞬の浮遊感の後に重力に引かれ、硬いタイルの床が私の花のかんばせへと徐々に迫り──しかし先生は一瞬で血相を変え、激突寸前の私を力強く抱き留めたのです。ほら、あっという間に捕まえてしまいました。

 

 私はすかさず両腕を先生の背中に回し、自分よりも大きくがっしりとした彼の身体を固く抱擁します。

 血の通ったいきものの温もりと、脈打つ鼓動。そして年若い少女にはない大人びた体臭に魂ごと包まれてしまう安心感を抱きながら、まるで誰にも聞かせてはならない甘い秘め事を口にするように、私は彼の耳元へそっと口を寄せたのです。

 

「ご安心下さい♡ 先生の大人としてあるまじき恥ずかし〜~い変態寝取られマゾ性癖は、この超天才病弱美少女ハッカーが恋人として責任を持って満たして差し上げますので……♡♡」

 

 その代わり、ちゃんと私以外では絶対に射精出来ない、正真正銘私専用のおちんちんになって下さりますよね?♡先生♡

 そう囁いた私がふう、と軽く耳に息を吹きかければ、先生の身体はまるで全身で喜びを表現するかのように跳ね上がったのでした。

 

◇

 

「とはいえ、私も先生以外の男性には指一本触れられたくありませんので。先生の購入されていた作品のように、適当な男性に声を掛けて……というシチュエーションは真っ先に除外させていただきました。先生もそれでよろしいですよね?」

「あ、当たり前でしょ!? そりゃNTRは私の魂の性癖だけど、あくまで創作は創作! 恋人のヒマリにまでそうして欲しいなんて、私はそんなの考えたこともないよ!?」

 

 ベッドに並んで腰掛けた先生は、あらぬ濡れ衣を力強く否定するように大仰な身振り手振りを交えて答えます。誰がどう見ても疑いようがないほど必死なその姿は、万が一にでも私に「先生は恋人の心情よりも自身の性欲を優先する」などと誤解されてしまっては困ると言わんばかりのものでした。

 もちろん、私としてもそうまで言われて嬉しくない訳がありません。口角は緩み、胸はぽかぽかと暖かい気持ちで満ちるようです。

 

「ふふ……それは良かったです。ミレニアムに通う生徒たちの憧れの的、全知の学位を持つこの私とお付き合いをしているのですから、宝石を扱うように大切にするのは当然といえば当然なのですけれどもね?」

 

 私がいつものように微笑みながら自信満々に胸を張れば、先生はあからさまに安堵した様子で相好を崩しました。嫌われることもそうでしょうが、私が暴走して他の男に触れられるようなことにならず安心した、と顔に書いてあります。

 そうです。実のところ、先生はパートナーへの独占欲が非常に強いタイプなのです。

 

 断言こそ出来ませんが、恐らくは私と交際を始めるまで女性経験が皆無であったことが潜在的なコンプレックスとなり、ご自分の男性的な魅力についてはあくまで懐疑的なのではないでしょうか。その証拠に先生は私の心がご自分から離れることを非常に危惧しているようで、あからさまな束縛こそ今のところありませんが、交際を始めてからというもの時折私の顔色を伺うような言動をされることが見受けられたのです。

 

 ですので、先生のこの反応ははじめから予想出来たものではありました。いくらご自分の性的嗜好のためとはいえ、恋人である私が他の男性と一晩を過ごすなど独占欲の強い先生には到底許容出来るはずもなかったのです。

 でも、と私は先生の胸に芽生えた筈の疑問を代弁するように人差し指をぴんと立てました。

 

「そうなると私の寝取られ性癖をどうやって満足させるつもりなんだろう……? とでも言いたげな顔をされていますね。ええ、ええ、当然の疑問です。これはこの私の極めて優秀な頭脳でなければ解決出来ない、正に矛盾を絵に描いたような命題なのですから……♪」

 

 ですからここはひとつ、こんなものをご用意しました。

 

 私はタブレットを操作し、保存しておいたとある動画ファイルを選択します。

 先生用①と銘打たれたそれのサムネイル──場所はどこかのホテルの一室。時刻は夕方で、締め切ったカーテンから茜色の日差しが漏れています。パステルピンクの壁紙にこびり付く黒いしみがいかにも安っぽく、退廃的なラブホテルの風情を醸し出していました──脂ぎった中年男性がベッドに腰掛けて「私」の肩に手を回している様子を見た先生の顔から、表情が消えました。

 ぴり、と室内に漂う殺気にも似た刺々しい気配に肌が刺され、私の鼓動は浅ましくも高鳴ります。

 

 そうです。先生はいま、怒っているのです。それも他人のためではなく自分自身の所有物、己の雌に無遠慮に触れられたことに対しての怒りです。それはいつでもどこでも生徒のために身を粉にして働く大人の男性には決して似つかわしくない、コールタールのように黒く粘ついた執着でした。

 仄暗い独占欲を向けられる、女としての悦楽は甘い痺れにも似ています。背筋にぞくぞくとしたものが走るのを感じながら、私は「大丈夫ですよ」と何事かを告げようとして開きかけていた先生の唇に人差し指を押し当てました。

 

「先生は、ディープフェイクをご存知ですか?」

 

 ディープフェイク。

 それは大まかに言えば人工知能の学習機能を応用し、複数のデータを継ぎ接ぎすることで画像や動画を生成する技術、ないしは生成物全般を指す概念です。例えばあるニュースキャスターの音声のみを差し替えることで、実際には存在しないニュースをあたかも公共の電波で読み上げているような動画を作ることも、また顔を差し替えて実在しないキャスターが実際のニュースを読み上げる動画を作ることも出来てしまうのです。

 更にはAIの発達と共にそのクオリティも上がり続けており、中には一目見るだけではフェイクか否かの判別が非常に困難なものすらあります。広く拡散され、あまりにも多くの人が信じてしまったケースに至っては実際に製作者が起訴されていますしね。

 

 そのような説明を粗方終えると先生は得心がいったとばかりに頷き、そしてすぐさま脱力して天を仰ぎながら溜め息を吐きました。とはいえ、それは拒絶ではありません。先生の眉間を揉みほぐす仕草は悩んでいるとき、即ち心の天秤が揺れ動いているサインです。

 ならばここは畳み掛けるべきタイミングというものでしょう。私が「もしかして……お気に召しませんでしたか?」と緩く首を傾げれば、先生は困ったようにはにかみました。

 

「いやね、流石にびっくりしちゃって。要するに……ヒマリが、あーその、他の男に寝取られるディープフェイク動画を作ってくれた……ってことでいいのかな?」

「はい。先生のコレクションを参考にするなら寝取られ報告……とでも言うべきなのでしょうか。本日はこちらの動画を視聴していただきながら、副音声として私がその模様を実況するといった趣向のプレイをご用意しております。もちろん、それらは全て真っ赤な嘘なのですが」

 

 ほら、こんな風に。

 先生が静止する間もなく私の指がごく自然に動画の再生ボタンを押すと、画面の中では堰き止められていた時間が緩やかに流れ出します。

 

 服を着たままの「私」と違い、男は既に一糸まとわぬ姿でした。細身でありながら逞しい、野生動物にも似たしなやかさを持つ先生の身体とは違う、でっぷりと肥えた直視に堪えない腹部が否応にも目を引きます。

 碌に手入れされていない髪や眉からはどうしても不衛生な印象を受けてしまい、恐らく日常であれば会話すら躊躇われるような風貌を持つ中年男性は露出した男性器を隠す素振りも見せずに「あー、テステス。これってもう撮れてる?」と軽薄な口調で画面に向かって語り掛けました。

 

『……撮影用ドローンはもう起動済みです。そのためだけにこんな場所にいるのですから、当然でしょう』

『おーおー、もう何でもいいからさっさと帰りたいってツラだなぁ。ひひっ、そりゃそうだよな。別にエンコーやってる訳でもない女の子が、彼氏の頼みで俺みたいなおっさんに今からたっぷりと抱かれるんだもんなぁ? お友達とか後輩の子にバラしてやったら、一体どんな顔するんだろうな?』

『っ……いい加減にして下さい。私としては先生が喜んで下さるなら相手なんてどなたでもいいんです。今すぐにでもこのホテルからチェックアウトする手続きを致しましょうか?』

『あーはいはい。悪かった悪かった。そんなカリカリすんなって。……んじゃまあ場も温まったことだし、ヤることヤるかあ♡』

 

 ほら、ここ触れ。男は下卑た笑みを浮かべ、少女の小さな手を自らの股間に誘導します。画面の中の「私」は暫く逡巡していましたが、やがて苦虫を噛み潰したような顔で男性器を撫で擦りはじめました。

 

 男の大きな手で上から押さえつけられた「私」の五指が、弛緩した男性器の表面のみをぞんざいに撫でさすります。愛しい人のものであれば兎も角、見ず知らずの男性の、ましてや陰毛が茂みの如く生え放題になっているような陰部です。根元へと指を這わせる度に伝わるざりざりとした毛の感触に、「私」は嫌悪感を隠しもせず顔を顰めました。

 ただ触れて、上下に撫でる。それは傍から見てもやる気のないおざなりな愛撫でしたが男は満足そうに頷き、半袖のカッターシャツから伸びるその毛むくじゃらの腕で画面の中の私を抱き寄せます。そして何も告げずに「私」の長い耳をしゃぶるように舐め上げました。

 

 舌での愛撫は私としても好むところではありますが、それは愛しい先生が相手の場合に限った話です。

 ざらついた舌の動きはひどく緩慢で、まるでナメクジが這うかのようなヌルヌルとした感触に小さな悲鳴が漏れました。男は恐怖で硬くなった「私」の体を抱き締めながら匂いを嗅ぎ、明星ヒマリというメスに付けられた他のオスのマーキングを上書きするかのように涎をたっぷりと塗りたくっていきます。

 

 完全に油断していたタイミングで、突然そんな卑猥な動画の再生が始まったからでしょう。先生は脱力した姿勢のまま、鳩が豆鉄砲を食ったかの如く驚愕した様子で目を見開きました。

 画面の中という決して手の届かない場所で、すぐそばにいる恋人が穢されようとしている。「いやぁ」と画面の中の「私」が弱々しくかぶりを振って拒絶するのも虚しく、貪るように無遠慮な手付きで胸元をまさぐられている。首筋を緩やかに伝う汗が夕日を浴びて艶かしく光っている中で、大切な少女が半ばレイプされているのです。それはさぞ悪魔のようなのでしょう。

 

 無論、AIが作ったものですから粗はあります。

 まず光の反射具合やシーツの皺、ほくろや出来物の位置までは現在のAIでは再現しきれません。ましてや監修した私もその道のプロではないため、じっくりと細部に至るまで観察すればその違和感に気付き、所詮作りものだからとやがて冷静さを取り戻すでしょう。

 ですが画面の中に映し出されたそれのインパクトは些か強烈過ぎました。虚構と現実の境目を溶かして侵してぐちゃぐちゃにしてしまうほど背徳的で、全くの他人事として俯瞰に徹するには刺激的過ぎる情景だったのです。

 先生の目は既に血走り、そこには興奮と混乱と悲しみが渾然一体となって渦巻いています。

 

 それでも、逡巡の果てに勝ったのは欲望ではなく常識のようでした。

 もうやめよう、こんなことは──息を吸った先生がそう口にする直前。「や」の形を描く唇目掛けて、私はキスの雨を降らせました。唇と唇を触れ合わせるだけの、淡くて柔らかいキス。

 そして全く同じタイミングで、画面の中の「私」もまた蹂躙するように男に唇を貪られていました。驚く先生と目が合った私は柔らかな微笑みを浮かべながら、その厚い胸板へそっと手を這わせました。

 

 とくん、とくん、とくん。激しくとまでは言えませんが、その鼓動は既に下り坂を転がり落ちるかの如く緩やかな加速を始めています。大人としてこんなもので興奮してはいけないという先生の自制心は、脆くも砂上の楼閣のように崩れ去ってしまう目前のようでした。

 

「ふふっ。気付かれていましたか? 実はこの男性、ちゃんと先生がモデルなんですよ。以前測らせていただいた身長や筋肉のデータを参考に、仮に先生が肥満体型だった場合はどのような容姿になるのかをシミュレートしてみたんです。ほら、お顔も贅肉こそ付いてますが、目元や鼻筋のあたりが同じでしょう?」

 

 だからほら。もっとよく、じっくりと見て下さい。

 私は耳元でそう囁き、そっと画面を指差します。元より揺らいでいた先生は私に誘導されるまま画面を食い入るように見詰めはじめ、汗ばんだ大きな掌がズボンを強く握り締めます。

 

 獰猛な海の狩人であるシャチには獲物をいたぶる習性があり、その理由もまた諸説存在していますが、その中には生き物を傷付けるための、つまり狩りの練習であるという説があります。

 画面の中の男が繰り広げる愛撫は、正にそんなシャチの習性を思い出させるかのようなねちっこさでした。嫌悪から眦に涙まで浮かべた少女の敏感な舌を執拗なまでに味わい、虐めながらその反応を冷徹に観察しているのです。

 

『おい。もっと舌出せよ』

『……はい』

 

 男の指示に従い、「私」は唾液に塗れてぬらぬらと光る小さな舌を恐る恐る突き出しました。男はそれと自分の舌を押し付けるようにねっとりと絡めあい、しゃぶり、しゃぶられ、そしてその中で徐々に舌同士のもつれ合いは徐々に熱を帯びていきます。

 

 それは恋人である先生と交わすキスとは全くの別物といっていい、いわば舌のレイプ。いやいやと逃げようとする「私」の舌はしかし狭い口内ではあったという間に捕まり、その度にベロキスで組み伏せられては激しく犯されてしまいます。

 そうしてひたすら唇と舌を蹂躙され、大きく開けっ放しにされている「私」の口元からはいつしか白く濁った唾液が溢れて顎を伝っていきます。

 

 そしてそんな動画をじっと見詰めている先生の生唾を飲み込んだ音が、タブレットから聞こえる卑猥な水音に負けじと部屋に響きます。

 

「あら……♡ 先生ってば、まさかもう興奮してらっしゃるのですか……?♡」

「ヒ、マリ……っ」

 

 硬くなりはじめた先生の股間をズボン越しに掌で撫で擦り、唇はシャツ越しに胸板へと押し付けます。そのままもどかしさだけを感じる程度に軽く表面を撫で、乳首を啄めば、先生は熱っぽく切なそうな声で私の名を呼びました。

 ですが、それは火に油というものです。愛しい人の切羽詰まった声に興奮した私は先生の身体にしなだれかかるように密着し、愛撫を少しだけ激しくしてしまいました。

 

 ──カリをこすこす♡♡こすこす♡♡乳首にバードキスをちゅっちゅっ♡♡ちゅっちゅっ♡♡

 

「う、あぁっ……!?」

 

 先生は互いの顔を見詰め合いながらのスキンシップがお好みのようですが、特に対面座位の体勢で乳首を撫でられた際の反応が最も顕著でした。撫でたりしゃぶったり、はたまた指で摘まむのもお好きなようでしたが、軽く押し込めばいつも分かり易く身体を震わせます。

 私は既に半分ほど硬くなっている乳首をふにふに♡と指の腹で軽く圧し、逆の乳首を服越しに軽く吸い上げました。

 男性の乳首は女性のそれと違い授乳などの役割を持たない純粋な性感帯ですが、特に先生のものはこうして刺激を与えればすぐにぷっくりと勃起する敏感な乳首なのです。そのため左右どちらもあっという間に硬くなり、私は思わずくすりと笑ってしまいました。

 

「ほら、いやらしい乳首をお持ちの先生?♡ 次はどうして欲しいのか、ちゃんと声に出していただかなければ分かりませんよ……♡」

「っ、だ、駄目だよヒマリ……! こんなプレイ、私は別に望んでなんか……っ!」

「嘘♡ ですよね♡」

 

 私は一瞬で金具を外してズボンを下ろし、先生の下着と対面します。

 今までにも何度か見かけたことのある、黒い無地のボクサーパンツ。その大きく盛り上がった前面には既に透明なシミが出来ており、生臭いにおいが鼻を刺します。更に指先で突けばねちゃり、と粘ついた感触がしました。

 本当に触れる程度のボディタッチしかしていなかったにも関わらず、先生のおちんぽからは既に精子をたっぷりと含んだ先走り汁が溢れているのです。

 そんなえっちな膨らみの先端を、私はパンツの生地ごと有無を言わせず口に含みました。

 

「〜〜っ!! ちょっ、待っ、」

「待ちません♡ 先生が正直になるまで、はむっ♡ こうして、はむっ♡ えっちな意地悪をし続けますから……♡」

 

 それは側から見ればフェラチオのようでしたが、実態としてはサウナのようなものでした。

 あくまでも唇の柔らかい感触と、女の子のお口の中の生温い熱気で布越しの亀頭へと淡い刺激を与えるに留めるだけ。射精には至らない程度の微温湯のような快楽で、ぷっくりと膨らんだ亀頭を甘やかし続けるのです。

 ですがそんなもどかしさこそが余計に先生の興奮を煽ってしまったようで、我慢汁は私の想定を超えて更に漏れ出し、口から鼻へと突き抜ける強烈な性臭はますます濃くなっていきます。

 

「ん……っ♡♡ ふぅ……っ♡♡」

 

 そしてそんな卑猥な臭いを余すところなく嗅いでしまった私もまた、自らの身体が熱っぽく火照るのを自覚します。子宮の奥が緩く疼く感覚に思考を焼かれ、逞しいオスの臭いに何処までも溺れていくように深呼吸を繰り返しました。

 

「すぅーっ……♡♡はぁーっ……♡♡すぅーっ……♡♡はぁーっ……♡♡ふぅ、ふぅ……っ♡全く、全知の学位を持つこの私をここまで病みつきにしてしまうとは、なんて罪深いおちんぽなのでしょうか……♡♡♡」

「ヒマリ、それっ、口に咥えながら深呼吸するの、ヤバい……ッ」

「ふふっ♡ 分かっていますよ、先生♡ 亀頭を包む口の中の生暖かい空気と、鼻から深く吐き出されてオチンポの根元に当たる冷たい空気がまるで互いを引き立てるようで……はむっ♡ 射精感がとっても煽られるんですよね♡♡♡」

「分かってる、なら、止めてよ……っ!」

「だーめ♡♡♡ です♡♡♡」

 

 まな板の上の鯉、といったところでしょうか。

 性癖を抉るオカズと、弱点の殆どを知り尽くした恋人によるいちゃいちゃ責めの挟み撃ち。脳髄まで溶かすような責めを受けた先生はもはやされるがままです。金玉でぐつぐつと煮込まれた精子は早くここから出せと男性器の中で暴れ出し、今ごろは射精欲が先生の頭を埋め尽くしていることでしょう。

 ですが妙な意地を張っているのか、肝心の「それ以上」を望むセリフは中々言ってくれそうにありません。

 とはいえ、この後の段取りもあります。本当は先生の口からおねだりを引き出したかったのですが……残念ながらこれ以上は私も我慢が出来そうにありませんでした。もういっそ、このまま勢い任せに次のステップへと向かってしまいましょうか。

 

『プハーッ……ハァ、ハァ……あー、ヒマリちゃんだったっけ? あんまりいい反応するからよぉ、久し振りに息すんのも忘れるくらい長ぇキスしちまったなぁ♡』

『そ、れは……ハァ、ハァ……ど、どうも……』

 

 精液の臭いでいよいよ頭の茹っている私がそんな風に考えていると、まるで見計らったかのようなタイミングで動画の中に動きがありました。男と「私」の、まるで肺の中の空気を全て交換するかの如く長い長いキスが終わったのです。

 浅く息を切らした男は馴れ馴れしく「私」の腰を掴んで抱き寄せ、そのまま華奢なボディラインを確かめるように腰を撫でると清楚な病弱美少女に相応しい控え目なお尻を鷲掴みにします。そして画面越しの先生を挑発するようにカメラと目を合わせたまま、くつくつと喉を鳴らして笑いました。

 作り物だと頭の片隅で分かっていてもなお心を抉るような汚らしい嘲笑に、先生はどこか狼狽えたように息を呑みます。

 

『それにしてもシャーレの先生も奇特な方だよなぁ……こーんな具合のいい女を、ホイホイ他人に貸し出しちまうんだから。なあ、ヒマリちゃんはどうなんだ? 他の男と寝てこいって大好きな恋人に言われて、いまどんな気分なんだ? うん?』

『どう、なんて……そんなこと、見れば分かるでしょう。最低のきぶんう゛っ!?♡♡♡」

『ギャハハ! そうだなあ♡ ヒマリちゃんの洪水みてぇになってるクソ雑魚マゾマンコ見りゃ、確かに一発で分かるわなぁ♡』

『あッぁ゛♡ あぁあ♡ ああぁああ♡♡♡ それやめっ♡♡ それやめてくらはぃぃぃっっ♡♡♡♡』

 

 女の子の大事な場所だから、といつもじっくりと時間をかけて優しくほぐして下さる先生とは違う、どこまでも自分勝手な愛撫。男が太く節くれだった指でぷっくりと膨らんだクリトリスを力一杯摘み上げると、画面の中の「私」は堪らずひどく汚らしい嬌声を上げてしまいます。

 

 男はそれがよほどおかしかったのでしょう。ゲラゲラと笑いながら強引に「私」の衣服を剥ぎ取り、ぷしっ♡ ぷしっ♡ と軽イキを繰り返すおまんこを繰り返しビンタします。いじめられたばかりで敏感なクリトリスが何度も何度も叩かれて圧し潰され、「私」は狂ったようにマゾイキしては潮を撒き散らしました。

 

『やっぱりなぁ! お前、さっき俺にベロキスレイプされてたときも感じてただろ! 部屋ん中がずっとメス臭ぇんだよ!』

『ちがっ♡ 私、あんなので感じてなんか♡♡ んひぃ゛っっっ♡♡♡』

 

 目は口程に物を言うと言いますが、画面の中の「私」の場合はそれに加えておまんこも随分と素直なようでした。

 じゅぷじゅぷ、と私の蜜壺からはしたくなく響く水音はひどく粘着質で、間違っても尿のそれではありません。ぽろぽろと涙を流し、頬を赤く染めた煽情的な表情も相俟って説得力など皆無です。

 

 そして、そんな見え見えの嘘は男の嗜虐心に薪をくべるだけでした。

 

『へえー……じゃあ、そうだな。愛しの先生に「確認」でもしてもらうか?』

 

 にたりと笑った男が「私」を力任せに押し倒し、下半身をカメラに向けさせると天才美少女ハッカーのすらりと伸びた美足を無理矢理大きく広げさせます。

 

 それは俗にM字開脚と呼ばれる姿勢でした。

 当然ながら仰向けに寝転んでいるため顔は見えず、カメラには私の脚とおまんこだけがばっちりと映っています。ぬらぬらと濡れた小陰唇も、ぱくぱくと餌をねだる鯉のように開く膣口も、充血してぷっくりと半勃ちになってしまっている陰核も。その一切を余すところなく、「私」の痴態の全てを物言わぬドローンに記録されているのです。

 

 女として、果たしてこれ以上の辱めがあるでしょうか。

 羞恥のあまり声にならない声で抗議していますが、ミレニアムの至宝とすら称えられる頭脳を持つ「私」であっても己の脚ばかりは思うように動かすことが出来ません。露わになった女性器を隠そうとしても上手く隠せず、そのまま何度も何度もドローンの前でイかされ続けてしまいました。

 

『ひっ♡あっ♡ああああっ!♡だめっ♡いくのとまっれ♡とまらなっ♡ひぅっ♡♡きもぢよくてっ♡またきもぢっ♡んくぅぅうっっ♡♡やっ♡あっ!♡♡あっ!♡♡あっ!?♡♡んひぃぃ♡まだいぐ♡またいぐっ♡ひど♡ひどいっ♡♡おんなのこをなんだとおもってるんですかぁ♡♡せんせいとぜんぜんちがうのにしゅごいのっ♡とまりゃないぃぃ♡♡もうむりっ♡めのまえがちかちかしてましゅっ♡ぎもぢいいの♡♡もうむりですからぁぁぁ♡♡♡』

 

 オスに奉仕するための甘い蜜を滴らせて絡み付く媚肉を、男は肉付きの良い太い指で削るように擦り上げ続けます。

 今ここでこのマンコが壊れても知ったことか。それどころかがっぱりと開いて元に戻らなくなったオナホールを恋人の元へ突き返してやると言わんばかりの、ただひたすらに乱暴で自分勝手な愛撫です。

 高い嬌声を上げたクソマゾの「私」は咄嗟に腰を浮かせて快感を逃がそうとしましたが、男は「逃げるな」と低い声で短く制止し、空いた手で腹の上からメスの下半身を抑えつけました。快楽を逃がすどころか子宮を外側から力強く圧迫されてしまいメスの本能を刺激された「私」は、いよいよ激しい痙攣と共に噴水のようなイキ潮をカメラに向かって吹き散らかしてしまいます。

 

 時たま太い指を引き戻せば白濁の愛液が堰を切ったように膣口から溢れますが、男はその度にそれを全て中へ戻すように指を挿入します。

 ──ずりゅずりゅずりゅぅっ♡♡♡♡

 男はまるで一滴も零すことは許さんとばかりに蜜壺へどろどろの本気汁を溜め、カクテルのように膣の中でかき混ぜているのです。ぐちゃ♡♡ぐちゃ♡♡とひどく粘ついた水音を響かせながら甘露なメス汁はおまんこを一部の隙もなく満たし、やがて恋人でもない男を誘惑する極上のメスオナホが完成しました。

 

 人間が暗闇の中に潜む居もしない怪物を恐れるように、見えないという状況は時に想像力を働かせる一助となり得ます。

 快楽地獄に叩き落されて許しを乞う「私」の顔は嬲られ続けるおまんこの陰に隠れて映像に映っていませんでしたが、だからこそその表情が気になるのでしょう。

 先生は一秒も見逃すまいとばかりにタブレットの画面にかぶりつき、「今すぐにでもこの部屋に飛び込んで何もかもめちゃくちゃにしてやりたい」と言わんばかりの鬼気迫る表情で映像を見守っています。

 

 よく出来た映画やドラマがそうであるように、観客は主人公とシンクロすればするほど物語に深く感情移入します。

 今の先生もまたそうであり、私という恋人を起点に偽物の寝取られ動画に強く心を揺さぶられているのです。

 

 手の届かない液晶の向こうで恋人が見ず知らずの男にいいように喘がされていることへの戸惑いや衝撃、そして深い悲しみと怒り。

 女性経験の乏しさに起因する劣等感。

 自分の方が愛しているのに、自分はここまで恋人を乱れさせることが出来ないことへのずるい、羨ましい、自分が情けないといった負の感情。

 そんな男性としての複雑な思いをスパイスに、先生の精巣はいよいよマグマを幻視するほどぐつぐつと煮立っているようでした。

 

 私がパンツ越しにずっしりと重い金玉に軽くキスをすると、いよいよ軽い射精のような勢いの先走りがぴゅっ♡ぴゅっ♡と溢れ出します。

 

『んごっ♡♡ ごぼ、がっ、んう゛う゛っ♡♡♡』

『オラッ、もっと喉締めろマゾ! 天才だかなんだか知らねぇが、今は男悦ばせるしか脳のないバカなんだからもっと気合い入れろや!』

『ごっ、ごぼっ……♡♡ ぢぬ♡♡ ごぎゅ、出来なっ……♡♡♡』

 

 とある心理学の実験によれば、人は特定の条件下において自らの役割と人格の区別が付かなくなる生き物であるといいます。自分よりも美しく、頭脳明晰で、未来ある子供を好き放題に犯す──そんな倒錯的な状況に、男もまた酔っているのかもしれません。

 

 画面の中の「私」は頭を掴まれ、まるで安物のオナホールのように雑な手付きで上下に揺さぶられては男性のペニスをしゃぶっていました。

 喉奥深くに異物が侵入し、生理的な反応から私が涙を溢せば男はそれを大喜びでなじり、お前はメスとして赤点だと、これは指導なんだと鬼の首を取ったように嗤います。「私」はそんな謂れのない辱めに赤面しながら、しかし男に媚びを売るように必死に男性器に舌を絡めています。愛する先生のお願いだから、どんな目に遭っても最後までこの男性に抱かれなければならないのです。

 先生はそんな悍ましいほどに背徳的な映像を見詰めながら、「ヒマリ」と呆然した様子で初(・)め(・)て(・)画面の向こうの私をそう呼びました。

 

 ──ああ。どうやらうまくいったようですね。

 

「先生」

 

 私は先生と視線を交わし、彼が徐に頷くや否や下着を引き摺り下ろしてペニスにむしゃぶりつきました。

 

「っ、ごめんヒマリ、もうイク……っ!」

「ふぁい、どうぞ♡♡♡」

 

 もうとっくに限界だったのでしょう。ガチガチに勃起した肉棒の先端、散々焦らされたことに怒り心頭の亀頭が舌先に触れた瞬間待ち侘びたかのようにぶるりと震えたかと思うと、たちまち口内には呼吸すらままならなくなるほどの子種汁が溢れ出します。

 その量と勢い、そしてたっぷりと熟成されたが故の重厚さたるや凄まじく、あっという間に私の嗅覚は先生の逞しいオスの臭いで征服されてしまいました。びゅーっ♡びゅーっ♡と水鉄砲のような勢いの射精を喉奥でなんとか受け止め、鼻いっぱいに男性的な生臭さを吸い込めば、下腹部から迸る軽い絶頂の感覚に身震いすらしてしまいます。

 

 ああ、素敵です。生娘でもないので精液の量イコール快楽の質とまでは言いませんが、それでもよほど昂っていなければここまでの射精は出来ない筈です。つまりはあの先生をここまで興奮させたのは他の誰でもない私なのだと、メスとして誇らしく思う気持ちを一体誰が咎められるのでしょうか。

 私は丹念に竿を掌でしごきつつ窄めた唇を鈴口へ宛がい、ちゅー……っ♡♡と残りの精液を尿道から丁寧に吸い上げます。

 蕩けた顔の先生がぶるりと身体を震わせると、締まらなくなった蛇口のようにちょろちょろと漏れ出し続けていた精液は徐々にようやく止まってくれました。

 

「はぁーっ……はぁーっ……あっ。ご、ごめん、ヒマリ。いま、ティッシュを」

「……ふぁいひょうふゅひぇふ♡♡♡ ひふようあひあへん♡♡♡♡」

 

 絶頂の快楽から我に返り、ティッシュを取りに行こうと席を立とうとした先生の腕を私は掴み、はしたないと理解しながらも口を大きく開きます。

 

 むわっ、と生臭い子種のにおいがたちまち周囲に立ち込めました。少しでも俯けば零れてしまうほど口内に溜まった精液は金玉袋でじっくりと煮込まれたため沸騰したお湯のように熱く、ここが冬の野外であれば湯気すら立っていたことでしょう。

 私は見せつけるようにピンク色の舌をゆっくりと動かし、先生が吐き出したばかりの子種の海の中で泳ぐ姿をアピールしました。

 

「ふぇんふぇい……♡♡いっはいへまひはね……♡♡♡♡♡」

「……っ!」

 

 ぐちゅ、ぐちゅ♡♡ぐちゅ、ぐちゅ♡♡ごっっっ……くん……♡♡♡♡

 

 首に手を回して抱き着き、耳元へと口を寄せ、更にわざとらしく音を立てながらうがいと精飲。

 それから「御馳走さまでした♡」と消え入るような声で囁けば、いよいよ理性の糸が切れてしまったのでしょう。先生はベッドを大きく軋ませながら、私をいつになく乱暴に押し倒してしまいました。

 

 荒い息を吐く先生はもうほとんどキスしてしまいそうな距離にまで私と顔を近付け、泣きそうな顔で私の名前を呼びます。

 こんなに煽られてもなお律儀に私へ同意を求めようとする彼はきっと画面の中の男のようにはなれませんが、だからこそ私はこのひとの全てが愛おしくて堪りませんでした。

 

「ヒマリ、ヒマリ……ッ! もう、私……!」

「ええ。いいですよ、先生♡♡♡ 大好きな恋人が寝取られる最低な嘘動画を、胸を掻き毟りたくなるような苦い気持ちをオカズにして、本物の私のことをオナホみたいに抱きつぶしちゃいましょう……?♡♡♡♡♡」

「っ、この、本当にきみは……っ!!」

 

 私は上から覆い被さるように抱きすくめられ、そのまま唇を押し付けられました。精液を受け止めたばかりの口に対して微塵の嫌悪も躊躇いもない、メスを自分のモノにするためだけのキス。気持ちばかりが先走っている、まるで初めて唇を重ねた日のようにがむしゃらなその舌遣いに私はすっかり圧倒され、改めて虜にされてしまいます。

 先生はその逞しい体つきと同じ、太くて長い舌を使って私の口内を丁寧に舐め回しました。

 私の小さな舌を伝って根元までしゃぶり上げ、更には歯茎の裏側や頬の内側に至るまで。偽物の動画であることは承知の筈なのに、まるで恋人を奪い返すかのように舌先で丁寧になぞります。

 

 タブレットから響く肉を打ち付ける音をBGMに、私たちは一心不乱に互いの唇を重ね続けました。

 

「んぅ……んっ、んっ……ふぅーっ……♡♡ ちゅ、ちゅ……ちゅ、ぷっ……♡ ちゅ、んちゅ、ちゅ……ぢゅる、くちゅ、ちゅ……れる、ぁ……♡♡ ふぁ…、はぁ…。ふふ、情熱的な先生のキス、大好きです……♡♡♡」

「うん……! 私も、ヒマリの一生懸命に舌を絡めてくれるところが好きだよ……!」

 

 赤らんだ顔でだから、と続けた先生は真剣な表情で私の下腹部を撫でました。だから、もう抱いてもいいよね。もう、女の子の一番大切な場所に私のチンポを挿れてもいいよね。

 シャーレにいると必然的に他の生徒に出くわす可能性があるため、私たちの逢瀬はいつも決まってこの隠れ家でした。そのためいつしかベッド脇に常備されるようになったコンドームへと伸ばされた先生の手をそっと止め、私は花の咲くような微笑みを浮かべます。

 

 大らかで優しい、のんびりとした大人の先生。

 生徒の輪の中にいるときの心の底から楽しそうな表情も、青春を謳歌する生徒を見守るときの慈しむような眼差しも、少し子供っぽい感性も含めて慕われている、みんなの頼れる先生。私たち未成年の少女とは全く異なる体つきの、穏やかな気性に見合わない逞しい男性の先生。

 

 ──このひとに恋をしている生徒は、きっと私だけではないのでしょう。

 

 浮気を疑っている訳ではありません。ですが当番の中にはパーソナルスペースが異様に狭い生徒もおり、そんな彼女らとのスキンシップ事情もある程度は把握しているつもりです。なのでこうして抱き合うと薄く香る整髪料の匂いや、少しぱさついた黒髪の感触を知っている生徒も私だけではないと理解しています。

 

 それに私と先生がお付き合いをしている事実は特に隠していませんから、シャーレで擦れ違う女生徒には時々凄まじく情念の籠った視線を向けられることもあります。

 あまりいい気分ではありませんが、多くの利権やしがらみが渦巻くこのキヴォトスにおいて先生のように何の見返りもなしに行動する大人は滅多にいません。砂漠でようやくオアシスを見付けた旅人のように、その抱擁感に恋焦がれることは何ら不思議ではないのでしょう。

 

 ですが、それはあくまで「恋」のお話です。

 

 愛しい人と想いを通い合わせたその先にある感情。どこまでも穏やかな、ただひたすらに恋人の幸せを祈る気持ち。宇宙をはじめるに足る熱量。

 自身が与えることの出来る全てを与えたいとまで思える、溺れるような[[rb:愛 > 蜜]]の味を知っているのは、そう。このキヴォトスにただひとり。

 

 タイツは股間を覆う部分だけ切り取られ、下着は先生が訪ねてくる前に既に脱いでありました。私は自らのスカートをまくり上げ、剥(・)き(・)出(・)し(・)となっているおまんこを指で開いて先生に見せつけます。

 おちんぽをねだってひくつく蜜穴からはとろりと透明な涎が股の間を滴り落ち、ベッドの上に小さなシミを作りました。

 

「──先生♡♡♡ どうかこのミレニアムが誇る超天才病弱美少女ハッカーに、ゴム無し♡ 生ハメ♡ 生中出しセックスの授業をしていただけますか……?♡♡♡♡」

 

 画面の中の「私」は今や誰に憚ることもなく大きな嬌声を上げ、何処の馬の骨とも知らない男と当然のようにゴム無しで交尾していました。無遠慮に抽挿される淫水焼けした赤黒い生殖器が、汗をびっしょりとかいて艶かしく光る雪のように白い肌とグロテスクなコントラストを放っています。

 これが一番膣が締まるから、という身勝手極まりない理由で寝バックで犯されている「私」はその表情こそカメラに映っていませんでしたが、既に枕を千切れるほど必死に抱き締めて顔を埋め、獣のような嬌声を上げています。ミレニアムの誇る白百合のような美貌が酷い有様となっていることはもはや疑いようもありません。

 触れれば折れてしまいそうなほどに華奢な身体に肥満体がずっしりと圧し掛かって腰を振る姿は、正に自身の性欲を解消することしか頭にない身勝手なオスの見本のようでした。

 

 先生はそんな動画を横目で見た後、私をきつく抱き締めたままこくりと首肯しました。

 手加減は出来ないからね、と拗ねたように呟く声があまりにも愛おしくて。私は思わずその頬に触れるような口づけを落としてしまったのでした。

 

◇

 

 しかし手加減出来ない、と仰ったのはどうやら噓偽りではないようで。先生は前戯もそこそこに私の蜜口へと肉欲に滾る肉棒を宛がいました。くちゅり♡と淫らな水音が響き、私は思わず「ん……っ♡」と甘い声を漏らしてしまいます。

 先ほどの意趣返しでしょうか。射精を経て少し落ち着かれた様子の先生はくすりと笑い、そのまま私のクリトリスを亀頭でぐりぐりと圧し潰しはじめました。

 甘美な電流が走り、私は思わず腰を跳ね上げます。ですがそうすれば自ずとクリトリスと体液塗れの亀頭がぬるりと擦れ合い、私はますます募る快感に身震いしてしまいました。

 

「あん……♡」

 

 ぐちぐち♡♡ぐちぐち♡♡

 先生がじっとこちらを見下ろして微動だにしないのをいいことに、私はそのまま腹筋を使って腰を緩く上下に揺らします。膣口から溢れるどろどろの本気汁を潤滑油に、あろうことか先生の硬く反り返った雄肉を使ったクリオナをはじめたのです。

 

「んん……っ♡」

 

 時に陰唇をぱっくりと広げるように左右へ、時にクリトリスと先生の亀頭をキスさせるようにぎゅーっと押し付け。かくかく♡かくかく♡と傍から見ればさぞ情けないであろうへこついた腰振りは、まるでオスに「どうぞ犯してください♡」とおちんぽ様をねだる卑猥極まりないダンスのようでした。

 

 そうこうしていると先生はやがて深く息を吐き、私の腰をその大きな掌でがっしりと掴みました。

 犯される。そう確信した次の瞬間、ぱんぱんに膨れ上がった先生の雄槍の先端が膣口にずっぷりと侵入します。

 

 にゅるぅぅぅぅぅ……っ♡♡♡

 

「~~~~~っっっっ♡♡♡♡」

 

 ちかちか、と暴力的なまでの快楽に視界が明滅しました。

 恋人の分身を体内に迎え入れた、ただそれだけのことで肉体が受容した快感は一瞬にしてその許容量を超えてしまい、まるで脳が処理落ちを起こしているかのようです。目の前の現実は白昼夢の如く遠くなり、膣に収まった肉杭の熱と輪郭だけがやけに鮮明でした。

 

 しかし気を失いかけるほどの快感に支配された私の膣はそれでもオスを手厚く歓迎するかのようにぎゅちっっ♡といやらしく締まり、先生は歯を食い縛って苦悶の声を漏らしました。

 ぴゅるっ、と熱い粘液をふかふかの膣壁に吐き出された感覚があり、ほんの少しだけ絶頂されたのだと朧げに分かります。

 我慢などなさらずともいいのに、という言葉は声にならず、半開きになった私の口からはただ喘ぎ声が漏れるばかりでした。

 

 先生はそれから少しばかり挿入したまま動きを止めていましたが、私の掌とご自身の掌をぎゅっ♡♡♡と固く恋人繋ぎしたあと、いよいよ腰を深く押し出しておちんぽの抽挿を開始しました。

 

「ヒマリっ……! このっ、一体どこで覚えたの、あんなにいやらしい腰振りっ! 大人を誘惑なんかしてっ!」

「あんっ♡♡ んっ♡♡ あっ♡ あっ ♡あっ♡ ごめんなさいっ♡ せんせいがっ、きっとよろこぶとおもったのでっ♡♡♡ せんせいのこれくしょんから「よしゅう」しておきましたっ♡♡♡」

「予習って……! ああもう、さっきはああ言ってたくせに、しっかり私の買ったやつを聞いてたんじゃないか! 今日はたっぷりお仕置きだよ、ヒマリ!」

「あっ♡ やっ♡♡ おしおきやっ♡♡♡ せんせっ、はげしっ♡♡ はげしすぎますっ♡♡♡」

 

 どちゅ♡どちゅ♡とふたりの体液が混じった汁を飛び散らせながら、鼻息荒く興奮した先生は激しく腰を振ります。

 大人と子供という仮初の線引きを捨て去った、オスとしての本気のセックス。目の前のメスの弱点を知り尽くしたそのピストンはいつになく執拗に弱点を攻め立て、更には一心不乱と形容するに相応しいほどがむしゃらです。

 ほっそりとした腰を力強くホールドしたまま甘く震える乙女の媚肉を掻き分け、この女の生殖器を自分専用の形にしてしまおうとばかりに捩じ込まれたカリ首が膣のヒダヒダを押し広げようとする求愛行動はとても原始的で、いっそ強引ですらあるでしょう。

 

「ん゛っ♡ んっ♡ ぐうぅっ♡♡ いっぐぅっ♡ せんせぇっ♡ んぉっ♡ またいぐっ♡♡ あ゛っ♡ だめっ♡」

 

 しかし全力で所有権を主張された私の蜜穴は束縛を嫌がるどころかむしろ甘イキを繰り返し、「嬉しいですっ♡もっと刻み付けて下さい♡」と言わんばかりにオスちんぽをじっとりと濡れそぼった膣肉でしゃぶり上げ、ねっとりフェラチオで射精感を高めるご奉仕まではじめる始末。

 ですがそれも致し方ないことでしょう。喩え全知の学位を持つ眉目秀麗な天才であってもその例に洩れず、女の子のおまんこは大好きな男性とのあまあまえっちの前ではどうしようもないマゾ穴になってしまうものなのです。

 

 今や私は与えられる快楽の波濤にただひたすら翻弄され続ける笹船で、ぎゅっ♡と固く握り締めた先生の大きな掌だけが溺れそうな意識の命綱でした。

 

 ──ぞりゅっっっ♡♡

 

「あ゛……っ♡」

 

 やがて女の子のいちばん弱いところ、粒だった膣壁の天井を先生の熱い肉杭が勢いよく擦り上げました。弾けるようなその快感は瞬く間に脳髄を駆け巡り、ひときわ白んだ視界をちかちかと銀色の星が舞います。

 私の躰は勝手に腰をぐりぐりと押し付け、貪欲にその快楽を味わおうとします。

 

「あっ♡♡ せんせっ♡ そこっ♡ そのうえっかわのとこ♡♡ もっとおちんちんでひっかいてください♡♡ わたしのゆびじゃとどかないところ、せんせいのおちんちんだけがとどくところ♡いっぱいきもちよくしてくださいっ♡♡♡♡」

 

「うぁっ!? ヒマリ、それは流石に締めすぎっ……!」

 

 弱みを見せるという行為はある種の信頼の証でもあります。そしてそれは差し出す弱みの重さに比例すると言っても過言ではありません。

 Gスポットというメスとして最も弱い部位を曝け出してしまった私のおまんこもまた、先生のおちんちんを生涯をかけて尽くすご主人様として認識したのでしょう。ぎゅっぎゅっぎゅーっ♡♡とこれまでとは比べ物にならない強さでおちんぽの根元までとろとろの媚肉を絡めてメス媚びディープフェラをはじめ、途方もない快楽に晒された先生は低く呻きながら腰の動きを更に激しくします。

 

 ──ぱんぱんぱんっ♡♡♡ぱんぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡

 

 快楽を貪る男女の間に会話はなく、荒い呼吸音と動物的な喘ぎ声、そして汗の滴る肉がぶつかる音だけが響きます。

 リズムもへったくれもなく股間をぶつける腰の動きは、そう遠くない内に限界が訪れることを確信させるほどにがむしゃらで。既に先生の先走りを一滴残らず飲み干し、愛するオスの繁殖欲の受け皿になる準備を整えている膣は抽挿のたびに引き抜かれる剛直を留めようとヒダをねっとり絡ませます。

 先生は荒い息を吐きながら私の掌を痛いほど握り締め、やがて亀頭がおまんこの最も奥深くに突き刺さった瞬間、その身体がぶるりと震えました。

 

「ヒマリっ、もうイクよ……っ!」

「はいっ♡♡ なかに♡♡♡ いっぱいなかにだしてくださいっ♡♡ せんせいっ♡♡♡」

 

 ──びゅるっ♡♡

 

 産まれて初めて膣内射精を受け止めた私がまず最初に感じたのは、お腹の奥が熱い、という感覚でした。

 それから子宮の内側を染め上げる白濁の重さを感じ、更に終わりの見えない快楽の渦に叩き込まれたことでようやく私は自らが絶頂を迎えていることを自覚します。

 目の前で光が弾けたようでした。きもちいいことは即ちしあわせなことなのだと、メスとしてこれ以上ない暴力的なまでの多幸感をオスによって刻み込まれたのです。それは生き物としてのある種の本懐とも言えるものを感じる瞬間でもありましたが、既に私はそれを冷静に把握出来るような状態ではありませんでした。

 

 ──びゅーっ♡びゅくるるるるるっ♡♡♡びゅるるるーっ♡♡びゅるる♡♡♡びゅるるる♡♡♡びゅるるるーっ♡♡♡

 

「っ、う、あぁっ……! 本当に射精、止まらな……っ!」

 

(あつぅっ♡ あついですっ♡♡ しきゅうあついっ♡♡♡♡ これまらい゛ぎゅっっっっ♡♡♡♡♡ いきましゅっ♡♡♡♡♡♡ い、くぅっっっ♡♡♡♡♡♡♡)

 

 本来、内臓である子宮の感度は掌や口内のそれよりも劣っているはずですが、そこは「なんのために存在する器官なのか」という存在意義の為せる業なのでしょう。掌では光の暖かさを感じても色は識別出来ないように、きっと子宮の内膜だけが愛する男性の子種の本当の価値を理解出来るのです。

 

 その証拠に、私は先ほど喉と舌で受け止めたときよりも遥かに鮮明に先生の精液を感じていました。

 どろどろのゼリーのようなボリューム感や指で触れたなら糸を引く粘っこさ。舌先で舐めただけでメスを酩酊させる逞しいオスの性臭。そして陰嚢の中にて嫉妬と興奮でじっくりと煮込まれた精子の、触れれば火傷してしまいそうな熱までもがありありと伝わりました。

 

 更には──これこそ膣内射精でなければ決して味わえない感覚なのですが──あるべきものがそこにあると言わんばかりのメスとしての充足感が身体を満たし、私はその余韻だけで更にイってしまいます。

 もはや先生が何をせずともアクメをキメ散らかすその姿は、大好きな男性のおちんぽ様には絶対に勝てないよわよわマゾまんこのお手本のようでした。

 

 ──びゅ……るっ♡♡びゅ……っ♡びゅ……っ♡♡びゅーっ……♡

 

「っ♡♡っ♡♡っ~~!!!♡♡♡」

 

 永遠とも思われた私の膣の痙攣が収まるにつれ、先生の射精はようやく終わりを迎えます。

 絶対にこのメスを孕ませる。濁流の如く吐き出されたそんな白濁の欲望は既に膣道を溢れて逆流しており、かつてなく激しく擦り合わせた性器はドロドロの蜜壺の中でひとつに溶け合ってしまったかのように感覚が曖昧でした。

 私たちは荒い呼吸のまま未だ肉欲に濡れた眸の奥を見つめ合い、やがて先生は私に覆いかぶさるようにして私の唇を奪います。

 

「じゅぷ♡ れろ♡ れろ♡ んむ♡ ちゅ♡ ちゅ♡ ちゅ♡ んちゅ、んむ、れろ……♡♡♡」

 

 結局のところ、愛し合う恋人同士の「ひとつになりたい」という欲望は決して尽きることがないのです。

 私達は汗まみれの身体でぴたりと密着するように抱き合い、首や背中に腕を回し、互いの口元が唾液塗れになることも厭わず深くまで舌を絡め合いました。

 それは先ほどの貪るようなものとはまた違う、愛情の深さをじっくりと確かめ合うためのキスです。どこか動物の毛づくろいにも似た互いを労る甘い時間の中で、私と先生は湿った水音を立てながら互いの唾液を攪拌させて淫らなカクテルを作り上げていきます。

 

 すると度重なる絶頂によってすっかり蕩けきった媚肉もまたそれに倣うようにオスを優しく愛撫しはじめ、とろとろのおまんこ肉がきゅっ♡と柔らかく締まります。射精したばかりで敏感になっている性器を緩く刺激され、おまんこの中に収まっている肉棒が徐々にその硬度を取り戻していくのがはっきりと分かりました。

 

 では、ここで更にもう一押しと参りましょうか。

 私は濡れて光る糸を引きつつ唇を放し、いつの間にかベッドの隅へと追いやられていたタブレットを手に取ります。そして仰向けの姿勢で先生を見上げたまま自らの頭のすぐそばにそれを置けば、液晶から溢れる光が彼の顔を淡く照らしました。

 

「ぷ、はっ……♡ ほら、先生?♡ 私を気持ちよくしていただけるのは嬉しいのですが、ミレニアムが誇る至高の頭脳の持ち主であるこの私が折角先生のために極上のオカズを用意して差し上げたのです。もっとこちらもご覧になって下さい……♡♡♡」

 

 私は「私」が犯され、穢されているひどく背徳的な映像のすぐ隣で陶然とした笑みを浮かべます。

 見知らぬ男に抱かれる「私」と目の前の私。獣じみた喘ぎ声を上げる「私」と目の前の私。すぐ隣に並べておけば、ますます容易く虚構と現実の境界が霞んで歪むようです。

 先生の肉棒がますますその硬さを取り戻し、みちっ♡と膣が圧迫されたのが分かりました。

 

『ひぎッ……お゛ぉ゛ぉッ!? お゛ッ♡ お゛ッ♡ お゛んッ♡ お゛ぉ゛ぉぉぉ♡♡ あひぃッ♡ イグイグイ゛ッぎゅぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ッッ♡♡♡ しぬっ♡ いぎしんじゃいますっっっ♡♡』

「あーあ♡♡ 白目を剥いてみっともないアへ顔を晒して……1000年にひとりの美貌も、こうなってしまえば台無しですね♡♡♡」

 

 

 ──どちゅどちゅどちゅどちゅっ♡♡♡♡♡

 

 画面の中の「私」はいま正に種付けプレスをされている真っ最中で、男は仰向けになっている「私」の頭の横に肘ついて上から下へと叩き付けるように大きく腰を振っています。

 粘ついた水音を響かせるそれは間違っても愛し合うことを目的としたセックスでなく、一滴でも多くのザーメンをコキ捨てるためだけの動き。目の前のメスとそのおまんこを体のいい使い捨てザーメン便所としか思っていないその体位はしかし、どうしようもなくマゾメスの本能を刺激してしまいます。

 長い性器を使った大きなストロークはぞりゅー……っ♡とカリでヒダ肉を抉りつつドロドロの本気汁を奥から掻きだし、その度に甘イキをすることで湧き出す新しい雌蜜が膣内を潤す様は無限ループのそれです。

 

 涙と鼻水で花のかんばせをぐちゃぐちゃにした「私」は、いよいよ髪を振り乱しながら自分を他人に抱かせた恋人に助けを求めています。「イキ過ぎて怖いです」「先生、もう嫌です、助けて下さい」と呂律の回っていない舌で叫ぶ「私」でしたが、当然ながらその程度の醜態で一度火の点いたオスの性欲が止まる筈もありません。

 それどころか男はますます嗜虐心を刺激された様子で獰猛に笑い、亀頭をぐりぐりと膣深くに押し付けたまま親子ほどの歳の差がある少女の首へと手をかけました。

 天才の称号を欲しいままにする頭脳を持つ私ですが、その肉体はキヴォトスでも一二を争うほど虚弱です。他の生徒であれば意にも介さないであろう握力しか持たない五指が「私」の白く細い喉に食い込み、やがては酸欠に喘ぐ金魚のように開閉する口元から苦悶に満ちた声が漏れはじめます。

 

『オラ、バカ言ってねぇで現実見ろよ! その先生がお前をこんな冴えないおっさんに貸し出してるんだろうが!』

『あ゛っ、がっ……♡♡ごぎゅ、できな……っ♡♡♡』

『首絞められて悦んでんじゃねえぞマゾ豚っ! ほらイケっ! 酸欠になりながら性懲りもなくマゾアクメしろっ!』

『~~~っ!!! ♡♡♡♡♡♡♡♡』

 

 男は「私」の首を絞めたまま空いた手を伸ばし、いかにも苛めて欲しそうにぷっくりと勃起したクリトリスを一切の加減なく抓り上げました。

 電流が流れたように「私」は背筋を逸らして声にならない声を上げ、ひと際締まった結合部からは透明なイキ潮が勢いよく溢れ出します。男はその感覚を楽しむように何度も何度もクリを捻り、「私」のおまんこはまるで壊れた蛇口のようにシーツを汚し続けるのです。

 

 私はそっと先生の手を掴み、現実の私のクリトリスへと誘導しました。

 

「先生♡……動画と同じこと、してみたくありませんか? ♡♡♡」

「……っ!」

 

 ごくり、と先生は生唾を呑み、硬い指を陰唇に這わせ──しかしながら、と(・)て(・)も(・)優(・)し(・)く(・)膨れ上がった雌芯を撫で擦りました。

 

「あん……っ♡♡♡ あの、せ、先生……?♡♡♡」

 

 これはどうしたことでしょうか。

 じわじわと心臓の裏を期待で焦がすような触り方は寧ろいつも以上に繊細で、言わずとも伝わるほどの暖かな愛情に満ちています。とてもではありませんが、獣欲を一方的に煽られ暴走している指遣いとは思えません。

 私は予想だにしていなかった快楽を与えられたことで思わず甘い嬌声を漏らし、咄嗟に口元を抑えてしまいます。

 微笑む先生はそんな私の頬を愛おしそうに撫で、「ごめんね」と謝罪の言葉を口にしました。

 

「もう大丈夫だよ、ヒマリ」

「な、なにを……♡♡」

「きっと、不安にさせちゃってたんだよね。私のどうしようもない性癖を知って、ヒマリなりにどうにか満足させようと頑張ってくれたのが「これ」なんでしょ?」

 

 ──それは。

 

 我知らず、私は瞠目してしまいます。

 畢竟、どれだけ栄誉ある輝かしい称号も、万物を智の下に解体する頭脳すらもこのひとの前では何の意味も持たないのかもしれません。どれだけ難解で回りくどい方程式(愛情表現)を用いたとしてもその解は唯一であり絶対、故に思考を巡らすまでもなく明白なのですから、結局は恋人同士の陳腐ながらも微笑ましい喜劇にしかならないのです。

私は先生の前ではあらゆる肩書を脱ぎ捨て、ただの明星ヒマリになってしまうようでした。

 

 感慨で胸がいっぱいになり何も言えなくなってしまった私を軽々と抱き上げ、先生はあぐらを掻いてその上にこちらを座らせました。もちろん性器は繋がったままですので、体位としては対面座位の形になります。

 私はその全て包み込むような眼差しがどうにも気恥ずかしくなり、赤く染まった頬を隠すように先生の逞しい胸板へと頭を預けました。

 指先で私の髪を梳く恋人の息差しはとても穏やかで、「いつから気付いていたのですか」と私の唇がわななけば、先生は「たったいまだよ」と笑いました。

 

「やけに動画と同じプレイを私に勧めてくるな、と思って。そういえばナマでいいよって言ってくれたのも動画がそうだったからだし、それにさっき思わずヒマリの名前を呼んじゃったときもずいぶん嬉しそうだったじゃない? だから、うん。もしかするとこの子は私に疑似体験をプレゼントしたいのかな、って」

「……むう。私ともあろうものが、どうやら感情を表に出し過ぎたようですね」

「いやぁ、ヒマリは相当顔に出やすい方だと思うけど……」

 

 先生は苦笑いを浮かべながらも私の腰を掴んで前後に揺らし、逞しく反り返った肉竿が私の膣壁を緩やかに押し擦ります。にゅぢっ♡にゅぢっ♡と恥骨同士が粘ついた糸を引きながら離れては触れ合い、先程までの濁流の如く押し寄せる性の快感とはまた異なる仄かな刺激が私を襲いました。

 

 更に先生は小柄な私をゆさゆさと揺らしながらも腰に回していた手を下へと降ろし、天才美少女ハッカーの清楚な尻肉を揉みしだきはじめます。そう大きなサイズでこそありませんが、年若い少女の肌が持つ柔らかな弾力と張りを備えた桃尻です。その感触を堪能しようとする先生の手つきは優しい眼差しとは裏腹にいかにも好色で、愛しい人から性的欲求の対象にされているというメスの悦びが甘く子宮に響きます。

 おまんこからしとどに溢れる愛蜜の量が俄かに増えだし、私の朝を告げるような美声にも次第に艶やかな色が乗りはじめました。

 

「んっ♡♡ そんなことはっ、あんっ♡ ありませんっ♡♡ 先生が、目敏いだけでしょうっ♡」

「そうかな。まあ、だとしても当然だよね。恋人なんだから……ううん、ヒマリのことがこんなに好きなんだから、さ」

 

 先生は片方の腕で私を抱き締め直して座高を微調節し、お互いの勃起した固い乳首同士をちゅっ♡とキスでもさせるかのように触れ合わせました。

 すると蜜口をおちんぽが出たり入ったりする傍らで汗塗れになった乳頭同士は滑って擦れ合い、ぐにぐに♡と動物がじゃれ合うようにお互いを押し倒し合います。まるで小さな電流が走るような、どこかもどかしさの伴う気持ちよさでしたが故にこそ些細な快楽でも見逃すまいと神経は鋭敏になり、桜色の蕾は次第にふっくらとした硬さを帯びていきます。

 もっと直で触って欲しい。摘まんで引っ張って、甘噛みしてほしい。そんな欲求が鎌首をもたげ、私は媚びるように先生を見上げました。

 

「あ……っ♡♡ 先生、だめですっ♡これっ、なんだかもどかしいです……っ♡♡」

「だーめ、さっきのお返しだよ。私だって散々焦らされたんだから」

 

 恐らくは、前戯の段階での亀頭攻めのことを引き合いに出されているのでしょう。揶揄うように笑って、先生は私の耳元へ長いキスを落とします。

 

 ちゅー……っ♡♡♡ちゅっ♡♡ちゅっ♡♡ちゅぱっ♡♡♡ちゅぱっ♡♡♡

 

 生々しいリップ音が耳朶を反響し、快楽を刻み付けられた耳が痛いほど敏感になります。ぬるま湯に浸かるようなゆったりとした刺激を延々と与え続けられているおまんこはいよいよ箍が緩み、溢れる雌蜜によって部屋中に響く淫らな水音はますます大きくなりました。

 

 ──先生の隠された性癖を知ったとき、私の胸に去来したのは希望でした。

 

 明星ヒマリという少女が頭脳明晰にして薄幸の美少女、才色兼備の高嶺の花であることは誰であっても認める事実ですが、それでも人である以上は多少の得意不得意があります。夜空に瞬く星の数ほどの美点を持つこの私ですが、それでも生まれつき両足が不自由という明確な欠点があるのです。

 無論、先生がそれを受け入れた上で私を選んで下さったのは重々承知しています。ですがどれだけ綺麗事を並べたところで不便なものは不便であり、パートナーである先生に日頃から多少の我慢を強いているという事実に変わりはありません。

 どれだけ軽くとも片方の皿に何かを乗せ続けた場合、天秤は必ず覆ります。いつか積み重なった不満が愛情に勝ってしまうときが来るのではないかと、そんな漠然とした不安が私には影のように付き纏っていたのです。

 

(だから、私はこう考えました。今日は昨日よりも更に愛してもらおうと。自ら先生の色に染まることで、染まる前よりも更に愛してもらおうと。……先生の人に言えない性癖は、そんな私にとって福音でした)

 

 他の誰も知らない、誰にも明かせない秘密を受け入れ、あまつさえ理解を示してくれる存在。それが先生にとってどれほどの価値を持つのか、そんなことは例え全知の学位を持つ私でなくとも想像に難くないでしょう。

 故に私は早速リサーチを開始し、恋人のおもちもよらない一面を垣間見たことで狼狽しつつもディープフェイク動画の製作を進めました。

 こんなことまでしてくれる恋人は他にいないのだと、私だけが先生の欲求を満たせるのだと言葉ではなく行動で証明するために。快楽で思考を乱し、映像の中の「私」を私と思わせることで先生の寝取られ性癖の中に明星ヒマリという存在を刷り込ませ、刻み込むために。

 

 ──つまるところ私は、今よりもっと先生の「特別」になりたかったのです。

 

「ヒマリ。愛してるよ」

 

 そんな幼い願いを優しく叶えるかのように、先生は私の目を見てきっぱりとそう言いました。

 掌はいつの間にかお尻から脚へと移動しており、その手付きもどこか労るように穏やかで優しいものになっています。生まれつき思うように動かせず、感覚も極めて鈍い筈の腿のあたりが何故か火の灯ったようにぽかぽかと暖かくなり、気が付けば私は吐息すら交わってどちらのものか分からなくなってしまう距離で先生と見詰め合っていました。

 

「んっ……♡」

 

 好きです。

 大好きです。

 こんな気持ちは初めてです。

 泣きたくなるほど特別なのです。

 毎朝目覚めて最初に先生のことを考えます。

 先生とお会いできる日は世界がずっと色鮮やかに見えます。

 寝床に入るといつも先生の声が聞きたくなって、通話ボタンを押しそうになってからようやく踏み留まるのです。

 ただどうしようもなく、あなたを愛しているのです。

 

 後頭部を優しく抱きかかえられたまま落とされた、触れ合うだけのキス。まるで掌を繋ぐように重ねた唇は、しかしどんな言葉や文字よりも雄弁に私の気持ちを先生に伝え、また先生の気持ちを私へと伝えるようでした。

 気が付けば、子宮の奥がひどく熱を持って甘く疼いています。私たちはもはや言葉もなく唇を重ね、より深い場所にて存在を刻み込む/受け入れるためのセックスを再開しました。

 

 私の脚が不自由なため、対面座位ではあまり大きなストロークは出来ません。それでも、いえ、だからこそ甘えた頬ずりをするようにずちゅ♡♡ずちゅ♡♡と小刻みに膣壁を擦るオスの輪郭と存在感が、その細部に至るまで如実に伝わります。

 まるで張り子の型を取るように、私のおまんこが先生のおちんぽの形になろうとぴったり張り付いているのです。

 

 性感帯を刺激されただけでは得られない、私のおまんこはもうこのひと専用なんだという充足感は麻薬のようでした。恋人を欲しがってひくひくと蠢く膣穴に留まらず己の心すら先生に埋められていくのが分かり、論理立った思考はもう意味を為しません。

 今日のためにたくさん勉強してきた筈の異性を誘惑する手練手管はどこかへ行ってしまい、頭の真っ白になった私はひたすら無我夢中で自身の身体を恋人に押し付けます。

 

 すぐ真上の先生の顔から当たる鼻息が火傷しそうなほど熱くて、きっと私たちはもうこれ以上はないというほどに興奮しているのだろうな、とどこか他人事のように思いました。

 

「ん、ふっ……♡♡♡ あ……っ♡♡ ちゅ……♡♡ ちゅ……♡♡♡ んぅ……♡♡♡」

「っ、ぁ……! ヒマリ、なんか、ナカがすごいうねって……っ!」

 

 脚は満足に動かずとも、いつも私を気持ちよくしてくれる先生に少しでもお返しがしたい。大好きなひとの敏感なところをおもてなししたい。

 おちんぽに吸い付くトロトロに蕩け切った花肉はそう言わんばかりに蜜を滴らせながら蠢き、恋人の分身へとあらゆる角度から媚び媚びおまんこべろちゅーでご奉仕を捧げます。

 みっちりときつく締まっているのに零れるほどの愛液が潤滑油となって息苦しさを全く感じさせず、挿入しているだけで蜜壺が全自動オナホもかくやといった絶え間ない快楽を与えるその様子はまるで男性を一方的に捕食する騎乗位のよう。腰を振らずとも与えられる極上の快楽に呻く先生の口元から、やがて透明な涎が滴り落ちました。

 私が顎先を伝うそれをぺろりと舐め取って呑み込めば、興奮した様子の先生は再び重ねた唇の奥からそっと舌を突き入れてきます。

 

「れろ♡♡ れろ♡♡♡ ん、ちゅ……♡♡♡ ……ぁ、っ♡♡♡♡♡」

 

 にゅちっ♡♡にゅちっ♡♡ぐちょっ♡♡♡ぐちょっ♡♡♡──とんっ♡♡♡

 

 きた。

 膣の一番奥を突かれた感覚に、もはや言葉も持たず打ち震えます。考えてみればメスまんこがこれほどまでに全身全霊を以てオスちんぽを歓待していたのは至極当然の話であって、この後に控えるのはいよいよ子作りの本番、大好きな男性の子種を直接お迎えするために子宮がもうそこまで降りてきているのです。

 既に一度ありったけの精液を注がれているそこは当然のように敏感になっており、くぱくぱ♡♡とはしたなく口を開いて先生の亀頭へキスの雨を降らせたのが手に取るように分かりました。

 

「ぅ、ぁっ……!?」

 

 歯を食い縛って吐精の誘惑に耐えた亀頭がぷっくりと膨らみ、鉄もかくやといった硬さの肉棒はいよいよその限界まで反り返ります。ずん、と真っ赤に充血したオスちんぽの先端が子宮口にめり込み、ほとんど経験したことのない、けれどこれ以上はないと断言出るほどの快楽に思わず呼吸すら忘れそうになりました。

 本来、男性にご奉仕するのは膣であり子宮ではありません。そこは赤ちゃんを育てるための場所ですから、と我に返って健気にもおちんぽを押し返そうとする子宮口でしたが、悲しいかな。どれだけ抵抗を重ねてもつがいの全てを自分色に染め上げようとする逞しいオスの独占欲の前ではあくまでメスはメスでしかなく、一番気持ちいい射精をしてもらうためとあらば白旗を振ってその主導権を明け渡すしかないのです。

 よって子宮口は先生の亀頭をぐっぽりと咥え込み、撒き散らされる子種を全て受け入れる態勢を整えてしまいました。

 

 これでもう私の意思とは関係なく、先生のねばねばでこってりとした濃厚ザーメンからは逃げられないでしょう。卵子は逃げ場を失くし、子宮の中に吐き出された大量の精子に取り囲まれて孕むまでひたすららぶらぶ輪姦レイプをされてしまうのです。

 妊娠しちゃう。もうどれだけ嫌がっても、拒んでも、絶対に先生の赤ちゃんを孕んじゃう。

 ぞくぞくぞくっ♡♡♡とマゾヒスティックな快感の予兆が背筋を這い回り、私はいやいやと駄々を捏ねる子供のようにかぶりを振りました。

 

「あんっ♡♡♡♡ それだめ♡♡ だめですせんせいっ♡♡♡ ふかすぎますっ♡♡♡ おちんちんがはいっちゃいけないところにはいってますからっ♡♡♡♡♡ ぬいて♡♡♡ ぬいてくださっ♡♡♡ あっ♡♡♡ あんっ♡♡♡♡」

「っ、ぐっ、大丈夫、大丈夫だからっ。私がついてるから、何があっても絶対にそばにいるからっ。だから一緒にイこう、ヒマリ、ヒマリ……っ!」

「やっ♡♡♡ せんせっ♡♡♡ それずるいです♡♡♡♡ そんなふうにだきしめられてこくはくされたらっ♡♡ いいですよっていっちゃいます♡♡♡♡ ぜったいデキちゃうのに♡♡♡ はらんじゃうのに♡♡♡♡ せんせいのあかちゃんうませてくださいって♡♡♡♡♡ およめさんおまんこがかってにこたえちゃいますぅっっ♡♡♡♡♡♡」

「うん……っ! お願いだから孕んで……! 私だけのヒマリになって……っ!」

 

 先生は熱い吐息混じりの言葉と共に私の腰を掴み、思い切り自らの腰を突き上げました。

 ぷちゅっ♡♡♡♡と亀頭がひときわ強く子宮口にめり込み、これで心身ともに陥落してしまった私はいよいよ本気の絶頂を迎えます。

 

「っ──♡♡♡♡♡」

 

 押し寄せる快楽の大波を前に、混乱する意識よりも早く動き出したのは肉体に備わった本能でした。

 蠢く膣ヒダは我先にと愛しいオスちんぽへ殺到し、精巣から子種が湧き上がる動きをよりスムーズにしようと肉竿を全力のラブラブおまんこコキスパートで擦り上げます。腰と腰はまるで元からひとつのパーツであったかのように恥骨でぴたりとくっついており、あれほどに長く思えたおちんぽすら既に根元までずっぷりと呑み込まれているのですから不思議なものでした。そしてもはや避けられない絶頂を確信した私と先生は、何を考えるよりも先に互いの背中へと腕を回して無我夢中でしがみつきました。

 それは恐ろしくも胸躍る、奇妙な予感でした。

 大口を開けて待ち構える虚に身を投げ入れるように、どこまでもどこまでも快楽の渦に堕ちてしまいそうでありながらも私は「このひととならそれもいいのかもしれない」と思えたのです。

 

「すきっ♡♡♡ だいすきっ♡♡♡♡ せんせっ♡♡♡♡ ほんとにすきっ♡♡♡♡♡ すきすきすきすきっっ♡♡♡♡ あ゛♡♡♡♡ あ゛♡♡♡♡ もうだめれすっ♡♡♡♡♡ いく♡♡♡♡ いきますっ♡♡♡♡ すき♡♡♡♡ せんせい♡♡♡♡♡ おっ♡♡♡ぁ♡♡♡ ぉっ♡♡♡ はひっ♡♡♡ はひっ♡♡♡♡♡♡ あっ♡♡♡♡♡♡♡♡ ぉ゛おっ♡♡♡♡ はぁっ♡♡♡♡ はぁっ♡♡♡♡ あふ♡♡♡♡ はぁっ♡♡♡♡ あ゛♡♡♡♡ あ゛♡♡♡♡ んお゛っ♡♡♡♡ イくっ♡♡♡♡ あっだめ♡♡♡ イっ♡♡♡♡♡ イ、くっっっ♡♡♡♡~~~────────っ♡♡♡♡♡♡♡」

「っ! ぅ……!! ~~~~っ!!」

 

 私が絶頂を迎えた瞬間、先生は子宮の奥へと叩き付けるように子種を吐き出しました。

 びゅるるるるるるるるっ♡♡♡♡と堰を切ったように溢れ続ける精液は既に注ぎ込んでいた分と合わせてあっという間に子宮を溺れさせ、粘つく白濁で私のナカを染め上げます。

 繋がったままの膣口からはぼたぼたと精液とも愛液ともつかないカクテルの塊が落ちて先生の股を汚し、既にバカになっている鼻でも分かるほどの噎せ返るような性臭が立ち込めるのが分かりました。ああ、後で換気に洗濯に……などと妙に現実的なことを考えている間にも射精の勢いは衰えず、私は自分の膣に情け容赦なく熱い子種汁を注がれる感触だけで更に絶頂してしまいます。

 

 先生はそんな私の腰をオナホールのように抱え、くねらせてぐちゅぐちゅと水音を立てながら揺さぶって刺激を与えることでおちんぽの中の子種を余すところなく子宮へと撒き散らそうとします。

 ぷしっ♡♡♡と噴き出したイキ潮が切欠となって膀胱が緩み、止めるもなく漏れ出した黄金色の小水が先生の逞しいお腹にかかってしまい、私はぼんやりとした意識のまま心の中で謝罪しました。

 

 そうして、今度こそもうこれ以上はない、と女の私でも分かるほどの長さの射精が終わりました。

 オスとしてやり遂げた先生はぎゅーっ♡♡と私を抱き締めたまま長い長い息を吐き、糸が切れたようにふらりと後ろへ倒れ込みます。スプリングを大きく軋ませながら私たちは横並びにベッドに寝転び、呼吸が整うまで暫し言葉もなく見つめ合いました。

 窓の外はいつの間にかとっぷりと日が沈み、暗くなった部屋の中でふたり分の息遣いだけがこだまします。下半身が繋がったままの相手は改めて眺めれば全身汗やら何やらの体液塗れやらで、お互いに随分と乱れたものでした。

 私と先生はどちらともなくふっと微笑みを浮かべ、それからじゃれ合うようなキスを交わしました。

 

「ん、ちゅ……♡ ふふっ。先生ったら、この超天才病弱美少女ハッカーとの生ハメセックスという望外の幸運に興奮されるのは無理もないことですが、だとしても射精し過ぎです♪ ……本当にデキてるかもしれませんよ?」

「ん……まあ、責任取るって言ったのは嘘じゃないからね。あと、そう言うヒマリもかなり煽ったでしょ」

「はい、弛まぬ勉学の成果です。……その、褒めて下さっても構わないんですよ♡」

「はいはい。勉強熱心な生徒を持って幸せだよ、私は。……あー、それにしてもイキ過ぎてチンコが痛いな……」

「まあ。女性の前ではしたないですよ、先生」

「どの口……」

 

 夢見心地である、という自覚はありました。

 誰かを愛することはそれそのものが充実していますが、同じように愛していただけるならそれに勝る喜びはありません。自らの願望を他愛なく見透かされ、膣内射精という行動を以って愛を証明されて。腕枕をされたまま逞しい胸板に頬ずりをし、一糸まとわぬ姿の私は女としての幸せの絶頂を噛み締めていました。

 

 ──だから、なのでしょう。私が奇襲を成功させたのと全く同じ手口であったにも関わらず、先生が「そういえば」と何気なく投げ掛けた問いにもごくあっさりと答えてしまったのです。

 

「ヒマリの視点から見て、私のパソコンのセキュリティ対策ってどうだった?」

「んー、二段階認証は悪くなかったですがパスワードそのものに問題がありますね。ご自分の誕生日を設定しなかっただけマシですが、それにしてもふたつとも私に関連する英単語なのはどうかと……ハッ!?」

 

 恐ろしいまでに巧みな誘導尋問でした。

 私は思わず瞠目し、弾かれたように顔を上げます。先生はニコニコと笑って私の頭を撫でていますが、過去に何度もやらかした私はよく知っていました。あの目はマジです。取り敢えず誤魔化して有耶無耶にしてしまおう、という算段はこの瞬間に泡と消えました。

 

「ヒマリ。アプリに請求書が紛れ込んでたうんぬんの話、やっぱり嘘だったんだね」

 

 先生の真っ直ぐな視線に堪えかね、私はあらぬ方向へと眼を逸らします。

 まぁ、その、はい。先生との距離をより一層近付けるためとはいえ、色々とプライバシーを侵害してしまったのは事実と言いますか。アプリのメンテナンス作業をしていた折、先生のパソコンをお借りしたことでふと魔が刺してしまったと言いますか。

 悪いことをした、という自覚はあった私が消え入りそうな声で罪を認めてると、先生は眉間に皺を寄せた先生は大きく溜息を吐きました。

 

「……………………はい」

「はぁ……やっぱりね。おかしいなと思ったんだよ。三徹目あたりの意識が朦朧としてるタイミングならそれもあり得るかもしれないけど、そもそもそういうアクシデントがないように仕事用とプライベートでアカウントを分けてる筈だし」

 

 先生は軽く握り拳を作り、私の額をこつん、と小突きます。それから「駄目でしょ、ひとのパソコン勝手に見たら」と真面目なトーンで注意されたのでこくこくと首を縦に振って頷けば、どうしたことかそれ以上は追及される様子もありません。

 ……妙です。キヴォトスの名だたる問題児と向き合ってきた先生のお説教はこんなものではありません。私が恐る恐る「もうよろしいのですか」と訊ねれば、先生は肩を竦めました。

 

「まあ、先生としてはもう少し怒った方がいいのかもしれないけど。恋人が自分のことを知ろうとしてくれたのは割と嬉しいし……束縛されるのも嫌いじゃないって、やっぱり変かな」

「い、いえ! その、私も先生の他に経験がないので分かりかねますが、もしも先生が同じ手段で私を知ろうとして下さったなら……それ自体はやはり嬉しいと思います」

「そう? じゃあ私たち、似た者同士だね」

 

 先生はそう言って笑い、それから思い出したように再びベッドの隅に追いやられていたタブレットを手に取りました。

 動画の再生は既に終わっており、画面は再生ボタンを表示したまま静止状態になっています。先生は気の向くままシークバーを操作して動画を飛ばし飛ばし眺めたあと、とても興味深そうに「それにしても」と呟きました。

 

「本当によくできてるね。怖いくらいだ」

「ふふん、そうでしょうそうでしょう。なにせミレニアムが誇る頭脳明晰な美少女ハッカーが腕によりをかけて作り上げたのです。改善すべき点も見つかりましたし、次回作はもっとクオリティアップを目指しますよ。どうぞご期待下さい♪」

「あはは、次あるんだ……ま、ヒマリが積極的に技術を悪用する子じゃなくて助かったよ。うん、本当に」

 

 少なくとも、この映像だけで私は社会的に殺せるからね。

 そう呟いて乾いた笑顔を浮かべる先生ですが、実のところこの手のディープフェイクは昨今のブラックマーケットではそこそこに有り触れたジョークグッズとして扱われています。生成AIが発達すると共に真贋を判別するAIもまた普及し、昨今のキヴォトスでは過激で突拍子のない映像など誰も信じなくなったことで寧ろ陳腐化しているという訳ですね。

 先生は有名人ですから、もう既にその手の動画も裏で出回っているかもしれませんよ? 

 先生の大きくて硬い掌との恋人つなぎの感触を楽しみながらそう含み笑いを漏らすと、先生はどこか困ったように苦笑しました。

 

「需要ないでしょ、そんなの──で、そんなことよりも。ヒマリは私が他の女の子とセックスする動画も作れるんだよね」

「……えっ?」

 

 えっ?

 ぐぐっ、と掌から強い力が伝わります。見れば先生の五指が私の手に食い込み、手錠のように食らいついて離すまいと握り締めているのが分かりました。

 しまった、と私は己の失策を悟ります。清楚で病弱な私ですが、仮にも神秘を宿す身。腕全体を大きく振り回せたなら振り解くことそのものは可能でしょうが、お互い肌と肌の触れ合う密着自体はそれも叶いません。まず間違いなく先生を巻き込んでしまうからです。

 恋人である自分自身を人質にした、明星ヒマリにだけは絶対に解けない拘束──私は鎖のように巻き付かれ絡め捕られた腕と、菩薩のように笑う先生の顔を何度も見比べました。無罪が無理なら、そう。減刑なら狙えるのでは。

 

「……あの、反省文ならいくらでも書きますので。そればかりはどうか、」

「駄目。そう言ってAIの生成した文章丸コピして後半からヒマリを褒め称えるだけの反省文を提出したばかりでしょ」

「くっ……!」

 

 完全に油断しました。一度先生の「許す」という言葉を聞いてしまい、もうお仕置きはないものとばかり……! 

 しかし先生はそんな私の戦慄など素知らぬとばかりに優しい顔のまま、「大丈夫、安心して」と被りをふります。一体何が大丈夫なんでしょうか。

 

「一応言っておくけど、これはお仕置きとか怒ってる訳じゃないからね。ただ、ヒマリにもあの悔しさと情けなさでどうにかなりそうな感覚だけは理解して欲しくてさ」

「絶対に嫌ですよ!?」

 

 先生の性癖を受け入れるのは構いませんが、それに私も興奮するかは全くの別問題です。というか無理です。何が悲しくて恋人が他の女性と懇ろになっている様を見なきゃいけないんですか。もし相手がエイミとかの身近な人間だったら本気で寝込みますよ。

 しかも、それを用意するのも私なんでしょう。どう考えてもおかしいじゃないですか。例え作り物だとしても、そんなの普通に嫉妬で狂うに決まっています。え、その苦しさがそのうち癖になるし寝取られの才能がある? 全然嬉しくないですからね、いえ本気で。

 

「いや、ですから……私は本当に……!」

 

 目の笑っていない先生は理解不能な理屈を滔々と語るばかりで、嫌がって首を横に振る私の話を聞こうともしてくれません。あの、やっぱり怒ってますよね? 

 このままだと勢いで押し切られてしまいます。そしてついでに開けてはいけない新しい性癖の扉を開けてしまいかねないことを危惧した私は、結局いつものように涙ながらに先生に許しを請うたのでした。

 

 最終的に私が先生の要求を呑んだのか、そして寝取られという業の深い性癖に開眼したのかは……また別の機会に、ということで。




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