「それにしても、外で用事があったなら先に私に声をかけてくれればよかったのに」
オペラハウスでの一件が終わり、みんなで屋台のラーメンを食べて。そのまま現地解散……という「ふり」をして、カヨコは真夜中のシャーレで先生と密会していた。
これはふたりが恋人となってからよく使っている逢引きの流れで──実際のところ、行き来う熱っぽい視線や杜撰なアリバイ工作があまりにもバレバレなため半ば公然の秘密ではあるけれど──少なくとも周囲から表立ってその関係を揶揄われることはなかった。
そりゃまあいつかは何らかの形でふたりの関係を公表するのかもしれないが、だとしても18歳の鬼方カヨコにとって「今から恋人の家に泊まってきます」と親しい友人たちに面と向かって宣言するのは中々に躊躇われたのだ。というか言われる方だって反応に困るだろう。実質形だけの偽装工作とはいえ、ある程度は妥当な落とし所だった。
そんな習慣があったからだろうか。なんとなくではあったけれど、先生としてはもう少し甘い用事で呼び出されたものとばかり思っていたのだ。
うーん、いい大人がちゃんとした理由で生徒に怒られるのって割と堪えるんだよね。月明りを背負い、大きな窓に寄りかかった姿勢でマグカップを傾けて淹れたての珈琲を味わうカヨコの咎めるような眼差しを受け止めた先生は苦笑を浮かべて頬を掻いた。
「あはは……まあ、今回は私の請け負った仕事だしね。最近忙しそうだったし、あまりカヨコを付き合わせるのも悪いかと思って」
「でも、それで実際危ない場所だった訳でしょ。別に何でもかんでも一緒に付いて行かせろとは言わないよ、だけど事前に聞いてさえいればそこが先生ひとりで行って大丈夫かどうかアドバイスくらいは出来るんだから……なに?なんで笑ってるの?」
「……っ、くく……いや、ごめんごめん」
私いま真面目な話してるんですけど?と若干の怒気を孕んだ表情を浮かべたカヨコに、先生は笑ったまま「ほんとごめんね」と手を合わせる。
「いやあ、てっきりだいぶ怒ってるのかなと思ったけど、いざ口を開いたら私を心配する言葉ばっかり飛び出してきたものだから。カヨコが可愛くてついね」
「なっ……!」
そうなのだ。カヨコの不機嫌そうな表情はすれ違う不良たちが思わず道を譲るほどの迫力があったけれど、彼にとってはやっぱり可愛い恋人の癇癪に過ぎなかったのだ。だからその謝罪はどうしても誠実さより親しみが前面に出て、気難しい猫の機嫌を取るように声は柔らかいものになる。
そしてカヨコは自分の見た目が他人からどう思われているかを嫌というほど自覚しているから、そうやって甘えられると何も言えなくなってしまう。先生の声や言葉、表情から「あなたのことが怖くないよ」という態度の欠片を見つけると、胸の奥がぽかぽかと暖かくなってとてもじゃないが叱るに叱れなくなってしまうのだ。
カヨコの心を覆う孤独という鎧は、先生の前だといつも春の雪のように頼りなかった。
「カヨコ。ここ、座ってくれる?」
「ん……」
ソファーに腰掛けた先生は目の前に立つカヨコの手を引いて隣に座らせ、恋人の小指に自分の小指を絡めた。
先生はいつも忙しいひとだけど、カヨコと何か約束事をするときは必ずこうして指切りをしてくれる。大した内容でもない約束でも必ず書類を脇に置き、業務を中断して恋人とのささやかな時間を作るひとなのだ。ながらでいいのに、とカヨコはその度に思うけれど、大事にされていると分かるのはやっぱり嬉しい。我ながらちょっと単純だ。でも愛情ってきっとそういうものだ。大切にされているから大切にしたいし、真実その積み重ねこそが肝要で。
ありふれていても分かりやすい愛情の方がずっといいなと、カヨコは常々そう思っている。
「いやね、私って大事にされてるんだなぁと改めて思ってね。うん、これからはちゃんとカヨコにも相談します。約束するよ」
「……そういうの、なんかズルい……」
「大人だからね」
だから目の前で恋人が絡めた小指を上下に振れば、少女の心のうち8割くらいは「全く仕方がないなぁ」という方向にあっさりと傾いてしまっていたのだ。
だって先生は約束を守ってくれる。嘘じゃないと他でもないこれまでの彼が証明しているから。それでもとせめてと負け惜しみを呟くカヨコと真正面から目を合わせて、先生はいたずらっぽく微笑う。
……なんだかな。全部分かってやってるのかな。いや、どうせ分かってないんだろうなあ。
なんというか、先生ってそういう小細工の出来るひとじゃないのだ。好かれようとして好かれるんじゃなくて、結果として好かれるひと。相手の心にするりと踏み込んで、それでいて不快な気持ちにさせないひと。それってもの凄い才能なんじゃないだろうか、と凡そほとんどのひとに怯えられるカヨコは心底思う。
好意って立派な財産だ。それもかなり貴重な部類の。作戦立案を担当しているとしばしば痛感することだけど、何があっても裏切らない味方は万金に値する。時として不可能だって可能にしてしまうかもしれない。
特に先生に関しては冷静沈着なカヨコをして驚くような相手からモモトークが届いているのを時たま見かけることがあるし、きっと自分が知らないところでその才能を活かして多くの信頼関係を築いているのだろう。それは素晴らしいことだと、カヨコは心の底からそう思う。
──そういえば、先生ってあの錠前サオリとも仲良いんだね。
そんなことを考えていたからだろうか。ほとんど無意識のまま口を衝いて出たカヨコの言葉に、先生は少しばかり呆気に取られたようだった。
「……ん?えっと、まあね。色々と放っておけない子でさ、偶に勉強を見たりしてるよ」
そっか、勉強を。
じゃあここにも来てるのかな。
「あーいや、偶に彼女たちが拠点にしてる廃墟で合流してね。もう少し遠慮しなくてもいいよとは言ってるんだけど、中々どうして」
ふうん。ふたりっきりで?
「んー、まあ一応。あんまり居場所が広がると困るみたいだし」
ドレスも綺麗だったね。
「ああ、やっぱり同性から見てもそう思うんだ?女の子ってお化粧や服装であんなに雰囲気が変わるんだから凄いよねぇ……カヨコ、これってもしかして誘導尋問?」
「あ、バレた?」
「えー……」
えー。
先生は口を半開きにして瞠目したあと、やや演技がかった仕草で「心外だな」と肩を竦めた。今日の彼は服装こそいつものスーツ姿だけれども髪型だけはばっちりとワックスでキメていて、まるで舞台の上の役者のようだった。
「えなに。もしかして私、浮気とか疑われてる?」
「別にそういうのじゃないよ。ただ、先生の知り合いって綺麗な子が多いなってちょっと思っただけ」
「カヨコとか?」
「そういう茶化され方は嫌。じゃなくて、本当にただ思っただけだから気にしないで」
…………いやごめん、なんかめんどくさいね、いまの私。
自省しているのだろう。渋面を浮かべ頭を抱えるカヨコの肩を抱き寄せて、先生はくつくつと喉を鳴らす。恋って不思議だ。あの思慮深いカヨコが言葉を口に出してから後悔しているし、生徒を教え導くべき自分がその失態をぶっちゃけ面白がっている。有り体に言ってバグってるのだ。それなりに自分というものを知っている筈の、いい大人の先生でさえも。
本当の自分って一体なんなんだろうねー。まるで思春期のような独り言を漏らしつつ恋人のうなじに唇を落とすと、カヨコは「ひゃっ」と可愛らしい声を上げて肩を跳ね上げた。先生を見上げる視線はどこか恨めしげだったものの、しかしスキンシップそのものを嫌がっている素振りはない。獣欲が鎌首をもたげるのが分かった。
……よくないよくない。生徒に手を出しておいて今更だけど、せめて節度は持たないと。先生は目立たないよう深く息を吸い、小さくかぶりを振る。
性を知ったばかりの少女の肉体は新雪を踏むように瑞々しく、雄として何も知らない彼女に自らを刻み込む快楽は確かに他の何にも代え難いけれど。一生を左右しかねないセックスとの距離感を教えるのも大人の大事な役割のはずだ。
求められたら強く断らない、求められることそのものに喜びを見出している節があるカヨコの危うさを正しく認識しているからこそ、先生は時折そうして自己を律していた。というか、そうしなければ超えてはならない一線を易々と超えてしまいそうだった。どこまでもどこまでも溺れてしまいそうだったのだ。率直に言って、鬼方カヨコはそういう魔性を秘めた少女だった。
「もう、急にやめてよ……」
「あはは。カヨコのかわいいところが見たくなったから、つい。それよりさ、カヨコってオペラは好きな方だったりする?」
「オペラ?いや、私はあんまり……」
映画なら多少は見るけど、それも家でってタイプだし。あんまり考えたこともないかな。カヨコはそう言って自嘲気味に笑った。
カヨコは人混みが苦手だ。我慢出来ないほどじゃないけど、決して心が休まらないのだ。面と向かって尋ねたことはなかったけれど、浅からぬ付き合いの先生としてはその理由もなんとなく見当がつく。理由もなく周囲から警戒されてきたカヨコにとって、余人の耳目とは心底から鬱陶しいものなのだろう。それがいつの間にか習慣化して、彼女はいつしか他人がひしめく空間そのものを避けるようになったのだ。
先生はそういう厭世的なカヨコの一面を見る度に、言葉にならない憤りを感じずにはいられなかった。
だってカヨコは何も悪くない。彼女はただそこにいるだけで、誓って誰も傷つけたりしていないのだ。当たり前のように世界から排斥されてきた彼女の抱える孤独はあまりにも理不尽で、それ以上になんだかやるせなかった。
もしも、もしもだ。誰かひとりでも周囲の大人がカヨコを偏見なく見ることが出来たのなら、彼女は今ほど人混みが嫌いではなかったかもしれない。映画をスクリーンで見る楽しさをもっと知っていたかもしれない。一生の宝物になるであろう青春の思い出が、もう少しだけ多かったのかもしれない。カヨコは少しぶっきらぼうなきらいこそあるけれど概ね普通の女の子で、そして人一倍優しい子だからこそ先生は強くそう思う。本来彼女が手に入れるべきだったきらきらと輝く幸せな思い出を、ほんの僅かでも与えてあげたいのだ。
ねえカヨコ、私も偶には映画館デートとかしたいんだけどさ。カップルシートならどう?
先生が緩く首を傾げてそう訊ねると、カヨコはどうにも怪訝な表情を浮かべる。
「え、なに?カップル……シート……?」
「あれ、そもそも存在を知らない感じ?」
マジかあ。でも映画館自体に馴染みがないならそんなものなのかな。
先生は手元のスマホで画像を表示しながら、カヨコにとてもリラックスしながら映画を鑑賞出来る座席の存在を説明した。でっかいソファに他人の目を気にせずに足を投げ出して寝転がって、恋人と思う存分イチャつけるシートがあるんだよーと。
カヨコはへえ、と呆れたようなちょっとだけ興味を引かれたような顔で相槌を打って、「でも、なんかちょっと変な感じ」と笑った。
「そんなにその、いちゃいちゃしたいならさ。最初から家ですればいいじゃん。不思議なシステムだね」
「それはまあ……映画を大画面で楽しみながらイチャつきたいひと向きなんでしょ。ほら、巷で流行ってる恋愛映画とか?」
「ふぅん。でも私も先生もそういうのはあんまり見ないよね。お互いお気に入りはアクションとかサスペンスばっかりだし、そもそも先生が好きなのは古い映画ばっかりだし」
それに先生のチョイスって基本ハズレがないけどさ、ちょっとエッチな場面が中盤で入ってる確率高いよね。渋い大人の映画あるあるっていうか。ああいうの社長はタイトルとかBDのパッケージだけ見て「ハードボイルドだわ」ってはしゃいで見たがるんだけど、いざそういうシーンに出くわすとほんと気まずいんだからね。
そう言うカヨコは咎めるような言葉尻とは裏腹に楽しそうで、口元は柔らかく緩んでいる。
無論、先生とて普段であれば歳の離れた少女相手に性的な要素の含まれた娯楽作品を勧めたりはしない。例えそれがある年代の洋画におけるお約束だったとしても、だ。誰に聞くまでもなく常識である。
けれども先生は、カヨコに限ってはそういった方面の気遣いはしない節があった。家デートで一緒に映画を見ていても「まあそりゃベッドシーンくらいあるでしょ」と至って平然とした顔をしている。それはカヨコの趣味嗜好が大人びているところも大いにあったけれど、恐らくは何度も身体を重ねた恋人への、いわば身内への遠慮のなさと似ていた。
カヨコは先生が無自覚に引くラインの内側に自分がいるという事実、それそのものがひどく嬉しかったのだ。このひとにちょっと雑に扱われてみたい。そういう願望がカヨコにはあった。
「あ、でも最近見たあれは良かったな。「ノッキンオンヘブンズドア」って前に先生が勧めてくれたやつ」
「あー、あれ見てくれたんだ。私も昔見てさ、今でも見返すくらい大好きなんだよね〜」
「セリフ回しがおしゃれだったね。翻訳のセンスもあるんだろうけど、ああいう会話ってちょっと憧れるかも」
ノッキンオンヘブンズドア。
病魔に侵され余命僅かとなった男ふたり組が海を見るために共謀して病院を抜け出すのだが、その際に移動手段として盗んだ車がギャングの裏金を乗せた車だった──というところから始まるアクション映画だ。殺伐としているようで登場人物にはみなどこか愛嬌があって、感動的でありながら鑑賞後はどこかもの寂しい気持ちになってしまう。今なお色褪せない不朽の名作である。
私はベタだけど「天国じゃみんな海の話をするんだぜ」ってセリフが好きだなー。先生が何かを噛み締めるように視線を上に向けながらそう言うと、カヨコはその横顔をながめながら「だと思った」と微笑んだ。
「先生って、割とロマンチストだよね」
「えー、キザってこと?自覚ないなあ」
「キザとかそういうのじゃなくて、なんだろ。……あまり優しくないお話の、それでも優しい部分が好き、みたいなところがあるよねって思って」
違った?とカヨコが問えば先生は少し驚いたように目を丸くして、それから感心した様子で「確かにそうかもねぇ」と深く頷いた。
劇中でふたりの重病人に課された運命は結局覆らなかった。けれど彼らには「その後」があるのだという考え方は、うん、やっぱり素敵だなと思うのだ。頑張ったひとにはせめて何か少しでも報いがあって欲しいなと、主役のふたりが本当に天国で海の話をしていたらいいなと。先生はあの映画を通して、確かにそんな感想を抱いていた。
だけど、それを自分よりずっと年下の子に見透かされるのってなんだか妙な気分だった。あ、映画見ただけでそんなことまで分かるんだ、みたいな。そんなことまで分かってくれるんだ、みたいな。
先生もいい大人だから、実を言うとそれなりの恋愛経験はある。異性の好みはどちらかといえばセクシーなお姉さん系で、初めて出来た彼女も学生時代のバイト先の先輩だった。けれどこんな風に自分のことを何を言わずとも理解してもらえる、有り体にあって満たされる時間があることを、先生はカヨコに出会うまで知らなかった。
まめに連絡を取り合って、忙しくても顔を合わせる時間を作って、身体が休息を求めている筈の休日にわざわざデートプランを練って、それなりにファッションの流行を抑えて、相手の嗜好やセックスにおいてどこまで許してくれるかをそれとなく把握して。別に苦痛とまでは言わないけれど、先生にとって恋愛とはある種の契約に似ていたのだ。それ相応のコストを支払ってやっと維持出来る関係だったのだ。
一方でカヨコとの間に流れる空気はひどく居心地がよくて、彼女から向けられる信頼や愛情を重荷に感じることなど一度たりともなかった。なんだか呼吸がしやすかった。こういう相手となら老後までやっていけるのかもしれないな、なんてぼんやりと将来のことまで考えてしまっていた。
……どうしよう。結婚とか子供ならまだしも、老後のビジョンとか言い出すのって普通に考えたらちょっと重たい。
先生は大人としてどちらかといえば冷静なつもりでいたけれど、もう既にどうしようもないくらい目の前の恋人に入れ込んでしまっているのかもしれなかった。あーもう、恥ずかしいな私。いい年こいて舞い上がり過ぎだろ。嬉しいようで落ち着かない、どこか胸の裏をくすぐられたような気持ちを誤魔化そうと先生はカヨコの頭を撫で回した。
「もう、ちょっと先生……」
「ふふ、ごめんごめん。重ね重ねになっちゃうけど、本当に愛されてるんだなーと思ってね」
月の光を浴びて淡く輝くカヨコの髪は軽くてサラサラで、梳いた指の隙間からすり抜けるように溢れていく。まるで上質な絹のような手触りだ。先生が無言のままその感触を楽しんでいると、ドレス姿の恋人はふいに「練習、してみたいかも」と小さく呟いた。
「先生が映画デートに行きたいなら、それは私も叶えてあげたい。……でも、その。いきなり公衆の面前というか、外で堂々といちゃいちゃするっていうのは結構恥ずかしいから。だから、まずは練習させて欲しいな」
駄目かな。
薄くルージュの引かれた唇がいやに艶かしく歪み、「な」の形に開かれた口の奥にはまるで内臓のように小さくて暖かそうで真っ赤な舌がちらりと覗いている。見上げる形で己に注がれる視線は疑問系でこそあったものの、隠し切れない興奮と期待に満ちていて。
その意味が分からない先生ではなかったけれど、考えてみればこうもかわいらしいおねだりを断れる道理など最初からなかったのだ。
やっぱり溺れてるの、どう考えても私の方だよなあ。そんな諦観とも自嘲ともつかない感慨を覚えながら、やがて先生は首を縦に振ったのだった。
◇
映画館の独特の空気の正体ってさあ、実際のところワクワク感が殆どだと思うんだよね。あの長ったらしい予告を見ている間の「一体いつになったら本編が始まるんだろう」ってそわそわする感じ。だからまあ、環境の再現だけなら実際はそこまで難しくないんだよ。
そんな聞く人が聞けばキレそうな暴論をブチ上げた先生が仮眠室のベッドの上に「人をダメにする」と評判のビーズクッションを置いてカーテンを閉め切り、衝立に予備のカーテンをかけて即席の仕切りを作るとそれでベッドを囲み、授業用のプロジェクターを設置し、アルミのフライパンで作るタイプのポップコーンとわざわざプラスチックの使い捨てカップに注いだコーラを用意すればまぁ確かに、最低限の雰囲気だけは確保出来たようだった。ちなみに床にルームライトを置き、足元だけ仄かに明るくするのがコツである。
だが残念ながら、肝心の恋人たちは最初からあまり映画に集中出来てはいなかった。
カヨコはすらりと伸びた足をシーツに投げ出し、先生の肩に頭を預けながら正面のスクリーンへ視線を注いでいる。映画のチョイスは先生によるもので、幼い子供を持つシングルマザーが引っ越し先のマンションで怪現象に悩まされる有名な作品だ。カヨコはホラー耐性が高く、あくまで冷静に作品を批評するから感想の語りがいがあるのだ。しかしその掌はまるで頭を擦り付けてマーキングする猫のように、先生の骨ばった手の甲へと頻りに擦り付けられていた。
時折互いの指を恋人繋ぎのように絡めたり、はたまた先生の掌の下に手を潜り込ませてぎゅっと握り締めてみたり。液晶から漏れ出す光に淡く照らされるカヨコの頬はほんのりと赤く染まっており、もはや映画の内容よりもそちらの感覚にばかり集中しているのは火を見るより明らかだ。
「ん……♡」
そして先生はといえば、こちらも同じようにカヨコの手の柔らかな感触にじわじわと興奮を煽られていた。なにせたかが掌といえど、されど十代女子の瑞々しく張りのある掌なのである。
求めれば大抵のプレイには付き合ってくれるため、望まれるままに甲斐甲斐しく手コキだってしてくれたことのある恋人の手。それを占有権を主張するかの如くベタベタと擦り付けられては先生とて劣情を催すのも無理はないという話で、愚息はとっくに半勃ちに移行していた。というかぶっちゃけると最近は忙しくてそちらの処理などほぼほぼ出来ておらず、既にだいぶムラついていた。
音も無くそろりと伸びた大きな掌が、カヨコの乳房をドレス越しにまさぐる。控え目な膨らみはしかし触れてみれば間違いなく女性的な柔らかさがあり、壊れ物を扱うように優しく揉めば紅色の唇からは熱っぽい吐息が溢れた。
すっと細められた怜悧な双眸は一見不機嫌そうなものの、しかし先生はその奥に情欲の光が宿っていることを知っている。じゃれ合うようなキスを落とせば、カヨコはくすぐったそうに笑った。
「ちょっと先生、なんか、触り方いつもよりやらしいんだけど……♡」
「いやね、可愛い彼女がこんなエロい格好してて興奮しない方が無理だって。むしろ失礼まであるよ」
「え、エロいって……♡先生、ドレス似合うって言ってくれたのに本当はそんな目で見てたんだ?♡♡」
カヨコは今更ながらに自分がオスからどんな類の視線を注がれていたのか知って恥じらうが、先生から言わせればその魅力に欠片ほどの自覚も伴っていなかったことの方が遥かに驚きである。
細く引き締まったボディラインを魅せつけるかのように肌へ張り付く薄い布地に、思わず目が吸い寄せられてしまうほどタイトなスカート。一方で大き目のカーディガンを羽織ることで全体のシルエットとしてはむしろ緩めに纏まっており、シックなモノトーン調も相俟って肌を見せつつも決して下品な印象を与えないというのがミソなのだ。鬼方カヨコという大人と子供の中間に立つ少女が持つ儚げな魅力を、正に十全に引き出していると言えるだろう。控え目に言って惚れ直すほど綺麗だった。
先生がそう力説すると、カヨコは「いや綺麗って……エロいって自分で言ったばっかりじゃん」と呆れたように笑った。言ってることめちゃくちゃじゃん。
すると先生はきょとんとした表情で「え、そうかな?」と緩く首を傾げる。え、これってめちゃくちゃなのかな。その辺りはどちらかといえば感覚的な話なので、そういえばあまり真面目に考えたことがなかったのだ。
「んー……なんて言えばいいのかな。結局男の言う「綺麗」はほぼイコールで「エロい」ってことなんだよね。そこは別に矛盾しないんだよ。好きな子が着飾ってるの見たらね、男はもう悲しいくらいあっさりと興奮しちゃう生き物なの。なりふり構わず抱き締めたくなるんだよ。だってバカだから」
「そっか、先生もバカなんだ。頼れる立派な大人なのに、それでもバカなんだ。ふふ、先生ってやっぱり面白いね……ん、あ……っ♡それ……っ♡」
ぶるり、とカヨコが震えた。
談笑していた先生の手があっという間にビスチェのホックを外してドレスの胸元に侵入し、するりと下着の中へと潜り込んだのだ。
まだ先生しか知らないカヨコの乳房の感触は、いつ触っても感動で目が覚めるほどに素晴らしいものだ。ふにふにと指先が沈み込むほどに柔らかい感覚を楽しみつつ、新しい玩具で遊ぶ子供のような手付きで先生は恋人のしっとりとした生乳を入念に揉みしだく。
カヨコはといえば彼女は先生と付き合うまでオナニーすら碌にしたこともないほど純粋無垢であったから、そうして自らのおっぱいをおもちゃにされても決して怒らない。どんなセックスが正しいのか知らないから、先生の与える全てを従順に受け入れるのだ。
そんな彼女にあれこれと指示を出して性技に挑戦させるのは、実のところどうしようもなく先生のオスとしての欲望を満たす時間だった。メスを自分の色に染め上げている、という確かな実感が得られるのだ。この場合溺れているのは果たしてどちらなのか、それは先生にも判別が付かなかった。
そんなカヨコの雪肌には徐々に汗が滲み出し、口元から漏れる声にも次第に艶やかな色が乗りはじめる。声は我慢しなくていいからね、という先生の教えを守っているのだ。だが彼女は何か言いたげに先生に熱っぽい視線を送ったら、時折身を捩らせたりとどこか物足りなさそうでもある。
そうしている内にさわさわ♡と指先で円を描くように薄桃色の乳輪をなぞられ、カヨコは遂に白旗を上げてしまった。先生は明らかにある一箇所を触るのを避けていたのだ。
人体における性感帯のうちのひとつ、かわいらしくつんと尖った乳首である。
「あ、ん……♡先生、ちょっと……♡ちくび、これ以上焦らさないでよ……っ♡♡」
「うんうん、ごめんねカヨコ。もうちょっとだけだからさ、ここでいっぱい身体の感度を高めておこうね」
「そんな勝手な……あっ♡やっ♡♡」
しかし、スイッチの入った先生はそう易々とは恋人の降伏宣言を聞き入れない。
くすぐるように乳輪をそっと撫でたかと思えば、乳房全体をきゅっ♡と軽く絞るように揉みしだく。
まるで血液を先端にばかり集めるかのような動きの甲斐もあり、待ちぼうけを喰らっている肉の芽はますます「早く触ってほしい」という自己主張を強めていく。もはや先生の鼻息が僅かにかかるだけでも気持ちがいいのだ。
もしも先生の指先が、そんな敏感な部位を思い切りつまんで捻って引っ張ってしまったら。カヨコはその想像だけで股が湿るのを感じていた。
「ふぅっ……♡♡ふぅっ……♡♡♡ふーっ、ふーっ……♡♡♡」
目を血走らせ、鼻息を荒くして、眦の淵に涙まで浮かべて。もういっそ自分で弄ってしまえばいいのに、それでもカヨコは律儀に先生の合図を待っている。
あーもう、なんか信じられないくらいかわいいな。私の言うこと、この子は本当になんでも聞いちゃうんだろうな。
ぞくぞく、と背徳感にも似た感触が背筋を這い上がる。先生は目の前の女の子がどれだけ自分に心を預けているかを改めて思い知り、その上で彼女が涙を流して許しを乞うほど乱れた姿を見てみたいという邪な衝動を抱いているのだ。敢えて言うなら、そう。好きな子に意地悪したくなる感覚に、それは少しだけ似ていた。
だから先生はふと、そんな彼女を動揺させるための「いたずら」を思い付く。
もちろん罪悪感はあった。けれど「たぶん受け入れてくれるだろうけど、あとで怒られるんだろうなー」という朧げな直感はあったし、何よりこれでも普段は大人として我慢しているのだ。自分を信頼しきっているカヨコの無防備な姿にどれだけ思うところがあっても、いつもいつも節度ある男女交際を心掛けているのだ。女性だらけのキヴォトスで緩み切った彼女に下着やらなにやらを無意識に見せつけられても、本当の本当に我慢してきたのだ!
先生はキヴォトスで「先生」になって暫く経つとはいえ、生命の危機には未だに慣れない。というか慣れてはいけないだろう。どれだけ指揮が上達したところで、根本的に銃弾で撃たれれば死ぬのは変わらないのだから。
鉄火場に立ったことでアドレナリンが分泌され、本人も自覚していないまま昂った精神は倫理観の均衡を容易に崩す。呆気なく欲望へと傾いた先生は意地の悪い笑みを浮かべると恋人の耳元へ口を寄せた。
「ね、カヨコ。想像してみてよ。ここが本当にカップルシートだったらさ、すぐ後ろに他のひとがいるんだよ」
「は、な、なにを……♡♡」
「だからさあ、こうやっていちゃいちゃしてるのがキヴォトス中のみんなにバレちゃうねってこと。ああでも、そうしたらカヨコが本当はかわいい女の子だってことをもっと分かってもらえるかな?」
ほら、想像してみて。
最前で一列に並んだカップルシートはそれぞれに仕切りと天井があるから後ろや隣からは覗けないけれど、前からは丸見え。誰かがトイレに立ったら、こうして大人のオスにいいように嬲られてるカヨコの目の前を通っちゃうんだよ。びっくりした様子の誰かと目が合って、最悪写真まで撮られてモモトークで拡散されちゃうかも。涙で潤んだ瞳も、耳まで真っ赤になった顔も、男に腕を突っ込まれた姿じゃ言い訳のひとつも出来ないね。……ね、ドキドキしてこない?
耳元で大人の男性の低い声に囁かれ、カヨコの心臓はどきりと飛び跳ねる。我知らず腕が持ち上がり、庇うように乳首を隠してしまう。
……大丈夫、大丈夫。ここはシャーレの休憩室で、他には誰もいない。いないけれど、妙に本気の先生がセッティングしたお陰で雰囲気だけは無駄にたっぷりと出ているのだ。まるで子供が暗闇からおばけが現れると怯えるように、そんなこと有り得ないとは理解しているにも関わらず目の前を誰かが通りそうな気がしてしまう。
それに現実的な話をすれば、他の生徒がサプライズで押しかけてくることだってあるだろう。シャーレのセキュリティは万全だが、そもそもミレニアムの連中にかかれば大抵の電子ロックは意味を為さないとも聞く。どれだけ低かろうとも、言われてみればいまのカヨコが他人の耳目に晒されてしまう可能性は決してゼロじゃないのだ。
ならば、やはり空想に没入するだけの条件は既に揃っていたのだろう。
快楽の波に理性を削られつつあるカヨコは、次第に目の前の現実の輪郭が曖昧になりはじめるのを感じていた。
「声、もう少し抑えて。周りにバレちゃうよ」
「ふ……っ♡ん、ぅ……♡♡ぁ……♡」
「……いいね。その調子その調子。お利口だよ、カヨコ」
ああ、うん、どうやら自分もノってきたらしい。半分程度は冗談のつもりだったのだけれど、常識人の恋人が意外にも乗り気な姿を見せたことで先生は下唇を舐める。
普通のイチャイチャもいいけど、こういうちょっと特殊なプレイっていざオーケーされると心を許されてる感じがしてテンションが上がるのだ。シチュに興奮するのとはまた別で、ちゃんと愛されてるんだなと実感出来る。
先生は己の下半身に血流が集まるのを自覚しながら、追い打ちをかけるかのようにカヨコの耳元で囁き続けた。
「ほら、ドレスの上だけ脱がせるよ。肩紐外すから……そう、いい子だね」
幸いなことに、カヨコの身体を包むドレスは想像よりもずっと簡素な構造をしていた。先生はあまり手間取ることもなく、されるがままの恋人をちょうど胸だけ露出する形ではだけさせる。元々緩かった肩紐はあっさりと腕を通して降ろされ、ドレスと同じ黒いビスチェはベッドの下へと放り投げられてしまったのだ。
やっぱり半脱ぎっていい。特にこういう上品な雰囲気の服は、大事な部分だけ露出してるとなおさらエロく見える。
内心でガッツポーズを浮かべた先生は、ガチガチに勃起した乳首を触るのだけはしっかりと避けたまま、いつ拝んでも美しいカヨコの乳房を改めて掌で弄んだ。
「おっぱいが全部出ちゃったね。映画館の中は大抵空調が利いてるから、これでもまだ熱いかな?カヨコの肌もじっとり汗ばんでるし……よし、それじゃ少し冷ましてあげよっか」
先生はそう囁いて、カヨコの乳房に顔を寄せた。
カヨコは直感で彼が何をするつもりなのか理解したけれど、トラブルだらけの便利屋で揉まれたことで非常に順応の早い彼女は「大声を出してはいけない」というルールに無意識のまま従ってしまう。だめ、と唇が音も無くわななくも当然のように間に合わず。
先生は唇を尖らせて輪っかを作り、鼻から息を吸い込む。そして「ふうー」とカヨコの胸の先端へと冷たい息を吹きかけた。
たったそれだけのことで、カヨコはすぐさま目の前が真っ白に染まるほどの快楽に呑み込まれたのだ。
「……っ♡♡♡ぅ、っ、ぃ……っ♡♡♡♡♡」
押し殺した嬌声が上がり、カヨコの肩がびくりと跳ね上がった。腕と足はぴん♡と爪先まで伸び、快感が全身を余すところなく駆け巡っているのが見て取れる。少しは肩の力を抜いた方が甘い痺れを逃がせるのだろうが、今の彼女はそれすら頭に浮かばないようだった。
それに、ずっと待ち望んでいた乳首への刺激だ。だからこそ深イキの余韻もそう簡単には消えない。じくじくと熱を持って疼くように快楽を発し続ける胸の先端を、先生は更に唾液塗れの舌で容赦なく舐め上げた。
「っ……!?♡♡♡あ……っ♡♡♡やっ♡♡それ、ほんとむり……だからっ……♡♡♡♡♡」
気持ち良過ぎてこわい、というのがカヨコの正直な感想だった。
先生は唾液を塗りたくるように舐め回し、音を立てないように緩く吸い、硬く膨れた乳頭を舌先でぐりぐりと押し込み、そして上下で挟み込むように軽く歯を立てる。いっそ乳首が溶けてなくなるんじゃないかとすら思うほどの快感を刻まれ、そしてその喘ぎ声がまた先生の獣欲を煽るのだ。
そうして本気になってしまった大人のオスを相手に、よもや抵抗など出来る筈もなく。お預けにされた分だけ敏感になっていた性感帯は与えられる全ての刺激に驚くほど反応し、カヨコは濁流に呑まれた小舟のように何度も何度も快楽の渦に叩き込まれた。
「ん゛っ♡♡♡んっ♡♡ぐうぅっ♡♡♡♡い゛っぐぅっ♡♡♡♡♡せんせぇっ♡♡♡♡んぉっ♡♡♡♡またいぐっ♡♡あ゛っ♡♡だめっ♡♡♡せんせっ♡♡♡♡♡」
──ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡♡
極上のメスを前にした先生の攻勢は留まるところを知らず。じっくりと時間をかけて行われた乳首への攻めとは根本からして全く異なる、嵐のように激しく容赦のない手マンが更に間断なくカヨコを襲う。
二本の指で膣壁を前後に引っ掻きつつ、動きとしてはぐるぐると円を描くように。先生は太く逞しいオスの指で粘着質な水音を盛大に響かせながらおまんこを激しくかき混ぜ、白濁とした本気汁のカクテルを蜜壺内に作り上げていく。
愛しいオスを求めてひくつく雌穴は、あまねく侵入者を全ておまんこ奉仕で歓迎しようとする。指先に媚肉がねっとりと絡み付くその感触からしてその具合が良いことは火を見るより明らかというもので、ここにちんぽを捩じ込んだなら果たしてどれだけの快楽が得られるのだろう。
最高級のらぶらぶ恋人オナホを前にして、世界で唯一それを堪能する権利を持つ先生は咄嗟に生唾を呑み込んでしまった。
(でも、もう普通に喘いじゃってるなあ……)
自分の思うがままに矯正を上げるカヨコの姿はオスとしての征服感が満たされるものではあったけれど、声を我慢するというプレイからは既に大きく逸脱してしまっている気がする。
ちょっとだけ残念だな、と思考を巡らせた先生はやがて何かを思いついた様子で上着のポケットからスマホを取り出した。
「せん、せ……?♡♡なに、してるの……?♡♡♡」
「んー、ちょっとね。これをこうして……っと」
快感で芒洋としているカヨコから手元を隠しつつ、ニコニコと笑顔を浮かべた先生はスマホを素早く操作する。やがて「これでオッケー」と呟いた彼が縦長の機械を手放すと、不意に聞き慣れた声がカヨコの耳朶を打った。
『はい、こちら便利屋68の社長、陸八魔アルよ。悪いけど、依頼の方は折り返すか事務所にかけてちょうだい。伝言ならピーという音が流れるから、その後に──』
「ばっ……!」
一瞬で頭が冷えた。
馬鹿なんじゃないの!?
そうカヨコが言い終わる前に、先生は膣肉の天井を擦りながら奥底まで突き入れていた指を勢いよく引き抜く。全身を貫く落雷のような感覚に抗うことなど出来ず、Gスポごと引っ掻かれたカヨコはイキ潮を撒き散らして数秒間気絶した。
「〜〜〜ッッ♡♡♡ッ!♡♡♡♡ぃ、っ♡♡♡♡♡♡ ん゛ッ♡♡♡♡ォっ♡♡♡♡ァ゛ッ♡♡♡ィ ♡♡♡ォ゛ッ♡♡♡ッ゛〜〜〜ッッ♡♡♡」
絶頂の衝撃に、意識がほとんど塗り潰される。狂おしいまでの快楽に頭の芯まで侵されそうになったものの、辛うじて踏みとどまることで思考を手放すのだけは避ける。そう、この遣り取りも既に録音されているのだ。それも友人の留守番電話に。
視界が明滅するカヨコは歯を食い縛って絶頂の余韻に耐え、口の端から涎を垂れ流しながらもあからさまな嬌声だけは上げまいと必死に抗う。おまんこから迸る甘い快楽は脳髄まで溶かすようで、カヨコの鉄の意思を持ってしてもそれは無限にも等しい時間を耐えるようにすら思えた。
そんな健気な恋人の耳元へと口を寄せ、先生は悪戯が成功した子供のように笑う。指先はカヨコのおまんこと濡れて光る愛液の糸で繋がっており、彼はそれをカヨコ本人の口に含ませた。すると彼女の瞳には若干の理性が戻ったようだった。
「派手にイったみたいだね。いやあ、どうせならもっとスリルが欲しくなっちゃってさ。つい電話かけちゃったんだよね、アルのスマホに」
「さいっ、あく……♡♡♡いくらなんでもっ♡♡♡♡やっていいことと悪いことがあるでしょ……!?♡♡♡♡」
「ごめんごめん。それよりさ、そうやって大きな声出してると色々聞かれちゃうけどいいの?」
カヨコははっとしてベッドの隅、自分の足の向こうにある先生のスマホを見る。
アレがあそこにある限り、自分の声は筒抜けになる。もちろん、声以外の衣擦れやベッドの軋む音、リップ音に粘ついた水音だってそうだ。ありとあらゆる恥ずかしい音が聞かれてしまうのだ。
──今すぐにでもやめさせないと。
いっそ聞かせてしまえと開き直るほどの豪胆さは18歳の彼女にはまだ備わっていない。頭から冷水を浴びせられたような心地になったカヨコはすぐさま起き上がり、先生を押し退けるとスマホを強引にでも奪おう動き出す。
恋人の望みは可能な限り叶えてあげたいが、それにも限度がある。身内にバレるリスクを背負ってのセックスなど、どう考えても度を越していた。
だが、いつの間にかズボンを脱いでいた先生はそんなカヨコの腰を後ろから掴むと下着をずらして自らのおちんぽの先端、真っ赤に充血した亀頭を膣口に宛がった。カヨコはベッド端まで這って移動しようとしていたため、ちょうど後背位の体勢である。
じっとりと濡れた膣は既にその入り口からして洪水もかくやと言った有様になっており、くちゅり♡と粘ついた水音が部屋に響いた。
「やめっ─────♡♡♡♡♡♡」
カヨコの上げた静止の声も虚しく、熱せられた鉄のような雄杭は膣壁を掻き分けておまんこに侵入し、情け容赦なく最奥へと突き刺さった。
──ずぷずぷずぷっ♡♡♡
「〜〜〜〜〜っっっっっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
カヨコは声にならない声を上げ、更に潮を撒き散らしながらイく。
こんなことをしている場合じゃないのに。すぐにでもスマホを奪わないといけないのに。気を失いかけるほどの快楽に呑まれかけている理性がそう訴えても、メスとしては既に成熟したその躰が意に反してオスを受け入れてしまう。ふかふかの媚肉はおちんぽに絡み付き、たっぷりと蜜壺に溜め込んだ愛液ローションを使ったおまんこフェラチオを始めてしまうのだ。
これには流石の先生も堪えかねたようで、カヨコの桃尻を跡が残るほどぎゅっと握り締めて天を仰いだ。びゅるっ、と熱い精液が膣内に僅かに溢れたが、ややあってから彼は長い息を吐くと緩やかに腰を振りはじめた。
「ふぅっ、ふぅっ、カヨコ、ナカきつ過ぎだって……!どんだけ興奮してるの……!」
「興奮なんてしてないから!♡♡というか本当にやめて……!♡♡♡」
小声で叱るという地味に器用な芸当をこなすカヨコだが、勿論興奮していない筈がない。
互いに声を出してはいけないという暗黙の了解のせいで、部屋に満ちるのはふたりの息遣いと粘ついた水音、そして腰肉を打ち付けるぱちゅっ♡ぱちゅっ♡という音のみ。だからこそ神経は余計に研ぎ澄まされ、接合部が訴える快感はいつも以上に鮮明なものになる。
ぱちぱち、と目の前で星が弾けて全身から力が抜ける。お尻だけを突き上げた格好のまま、柔らかなベッドの感触に身体が沈んでしまう。脳が焼き切れてしまうのではないかと思うほどの凄まじい快楽が、瞬く間にカヨコから抵抗する気力を奪っていった。
──ずちゅ♡♡ずちゅ♡♡ずちゅ♡♡
「っ、ふ……っ♡♡♡ぅ、く……っ♡♡♡ん……っっ♡♡♡♡」
少しでも違和感を与えるような音を減らすため、きゅっと唇を結んだままくぐもった声を漏らすカヨコの荒い鼻息が部屋に響く。
鉄のように硬く反り返ったおちんぽはメス膣の天井を削り取るようにゆっくりと引き抜かれ、そしてまたゆっくりと根元まで挿入される。激しく動けばベッドは軋むし腰も勢いよくぶつかるため、先生とてそうしたゆったりとした長いストロークで抽挿せざるを得ないのだ。
先生は愛しいつがいの生殖器を引き留めようとする肉ヒダの感触を楽しみつつ、ぞりゅぞりゅぅっっ♡♡♡とメスを嬲るようないやらしいピストンでカヨコの快感を煽る。シーツに埋まった顔は見えないが、カヨコのお尻から引き抜かれた雄杭には必ずドロドロの本気汁がべったりとまとわりついていやらしく光っているし、真っ赤になった耳や時折激しく痙攣するメス穴は何よりも雄弁に彼女の声を代弁しているようだった。
サディスティックな欲望に導かれるまま、先生はカヨコのしっとりと濡れた尻を揉みながら呟いた。
「カヨコってさ、前から思ってたけどマゾ気質だよね。今もほら、こんなに濡れてるんだし。恋人としてはちょっと心配だなぁ」
「そんな、こと……っ♡♡♡」
「えー、本当かな?そら、っと」
先生は腰を深く突き出したまま身体を倒し、カヨコに覆いかぶさる。
そして今までとは打って変わっておまんこの奥だけを狙い撃ちにし、おちんぽをずっぽりと挿入したまま腰を緩くゆする、甘えたような動きに切り替えると共にカヨコの胸元へと手を這わせた。
「ぉ゛っ……♡♡♡おく、ぐりぐりするのだめ……っ♡♡♡♡♡」
「あー、最高に気持ちいい……カヨコのナカ、ほんと極楽だよ」
肉杭を引き抜くときのぬるぬるした肉ヒダと擦れる感触も堪らないが、トロトロに解れたおまんこの奥深くに亀頭を埋め、まるでちんぽケースのようにそのまま入れっぱなしにするというのもなかなか乙なものだ。
温泉に浸かっているような心地良い温度に加え、オスを癒そうとする粒だった膣肉に360度から全自動愛撫される快楽。しかもカヨコは無意識の内に先生の腰へ腰を押し付けており、もはや恥骨同士がぴっとりとくっついて離れないほど密着している有様なのだ。このまま一生繋がっていたいとすら思える極楽浄土だった。
先生は腰を溶かすようなじわじわと昇ってくる射精欲を抑えつつ、手持ち無沙汰に任せてカヨコの硬く勃ち上がった乳首を指で挟んで弄ぶ。そしてその度に膣がみっちりと締まるものだから、もはや先生としてはこの恋人まんこはどこまでオスに奉仕すれば気が済むのかと驚かざるを得なかった。
更に先生はカヨコの耳にキスの雨を降らせ、まるで子宮口をこじ開けるように逞しい雄肉を奥へ奥へとねじ込む。カヨコはいやいやと首を横に振り、耳元で反響するリップ音を拒もうと試みたが、それは結果としてオスの嗜虐心にますます油を注ぐだけに終わったのだった。
「せんせっ♡♡♡それ♡♡♡耳やめて♡♡おかしくなるっ♡♡♡♡」
「ふーん……ねえほら、それよりスマホ切らなくていいの?カヨコが気持ちよさそうによがってる声、このままじゃアルに全部バレちゃうよ?」
「どの、口が……っ♡♡♡」
シーツを千切れるほど強く握り締め、カヨコは必死に己を奮い立たせた。
狂うほどの快楽を教え込まれてもなお陥落しない、己に残された冷静な部分が必死に叫んでいた。もうそろそろ、ここらでなんとしても歯止めをかけないといけない。今はまだ理性を手放さずに済んでいるけれど、もうじきそれも決壊してしまうだろう、と。
一応だが、手立てはあった。望んで手に入れたわけではないけれど、鬼方カヨコの持つ唯一無二の才能とも言うべき手段が。
……先生には、あんまり怖がられたくないんだけどな。
女の子としてのささやかな葛藤を押し殺し、後ろを振り返ったカヨコはぐっと歯を食い縛って眉間に皺を寄せる。プロの兵隊ですら思わず背を向けて逃げ出すその顔で、自分を犯す先生を睨み付けた。
「先生……っ♡♡もう、そういうのほんといいから……っ!♡♡♡♡そろそろ怒る、よ゛ッッッッ!?♡♡♡♡♡♡」
カヨコの膣がぎゅちっ♡♡♡とひときわ強く締まり、全身が電流を流されたようにびくりと跳ねる。
クリトリスを摘まみ上げられたのだ、と理解したときにはもう遅かった。
「っ~~~~♡♡♡♡♡♡」
じょわっ、と黄金色の小水が漏れた。
狂ったようにナカは痙攣し、快楽で呼吸すらままならなくなったカヨコは餌をねだる金魚のように口をぱくぱくと開閉させる。
気持ちいいこと以外、もう何も分からない。留守電のことも既に意識の外へと追いやられてしまった。ただぷっつりと、最後に残った理性の糸が焼き切れてしまったような感覚だけがあった。
先生はそんなカヨコの真っ白いうなじにそっとキスを落とすと、「ごめんね、もう我慢できない」と呟く。腰を大きく引き、勢いを付けて亀頭を子宮口へ叩き付けたことで肉のぶつかる音が盛大に響いた。
「お゛ッ」とけだもののような声がカヨコの口元から短く漏れ、それが彼女の我慢の限界だった。今まで抑えていた分だけ、彼女は獣のようによがり狂う。
「あ……ッ……!!♡♡♡せんせ……っ……せんせっ!♡♡♡もぉっ♡ぁッ♡きもち、いのい゛ら゛な゛い゛ぃッッ♡♡♡ふぁ、あ゛あっ♡♡や゛らあぁッ♡♡キて、る゛う゛ッ……ッ♡♡おあ゛ッ、ああ゛ぁ♡♡すごいのきてる、きてるからッ……!♡♡♡♡♡♡」
──ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡
それは今までの腰振りが全てお遊びだったとすら思えるような、男としての本気のピストン。大人と子供という仮初の線引きを取り払い、倒れ伏して赦しを乞う女を貪り喰らうためのセックス。
硬く膨れ上がったカリでメスの媚肉を荒々しく耕し、子宮の入り口が何度も何度も乱暴にノックされて。女の子の一番大切な場所に無理矢理押し入ろうとする乱暴者を、しかしメスは拒むことが出来ない。むしろその男らしさにますます惚れ込んで「もっとあなたを刻み込んで下さい♡♡♡」と濡れそぼった甘イキ膣肉を絡め、ねっとりフェラチオご奉仕で射精感を高めてしまう始末だ。
結局のところ、どれだけ綺麗に着飾ったとしても、どれだけすまし顔で取り繕ったとしても、女の子は大好きな男性に力強く組み伏せられたならただのガチ恋性処理マゾまんこになってしまうのだと。カヨコは雌の本能でそう理解せざるを得なかったのだ。
それでも、カヨコは結合部から愛液をシャワーのように撒き散らしながらいやいやとかぶりを振った。もう何も理解出来ないけれど、こんな風に喘いでしまうのは自分が自分じゃないみたいで怖かった。
先生はそんなカヨコの頬を伝う涙を指先で拭い、まるで生徒の成長を祝うように薄っすらと微笑んだ。
「怖がらなくても大丈夫。イってる顔もかわいいよ、カヨコ」
「ん゛っ♡んっ♡ぐうぅっ♡♡ひっぐぅっ♡せんせぇっ♡んぉっ♡それだめっ♡♡♡♡またいぐっ♡♡おまんこいぐっ♡♡♡いぐいぐいぐっ♡♡♡♡♡あ゛ぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡♡♡」
「あーあ、そんな呆気なくイっちゃって。すっかり情けないマゾ穴になっちゃったカヨコにはお仕置きだよ……!」
先生はカヨコの体を圧し潰すように体重を乗せて掌を繋ぎ、いよいよ腰の動きを限界まで早める。
もうペースもへったくれもないその動きは、オスとしての限界がやってくることを否応なく予感させるものだ。カヨコのおまんこは歓喜するようにその締め付けを強め、子宮は愛するオスの子種を一滴も逃すまいと鈴口に媚びるようなキスを降らせる。このひとの繁殖欲の受け皿になりたい、と全身で叫ぶカヨコの躰はやがてぶるりと震え、快楽の頂へと上り詰めた。
「せんせ♡♡♡♡♡せんせっ♡♡♡♡イく♡♡♡♡♡おまんこイくっっ♡♡♡♡ おまんこイっちゃうっっ♡♡♡♡あ゛♡♡♡♡もうだめっ♡♡♡♡♡だめだめだめ♡♡♡♡っ♡♡♡♡だして♡♡♡♡せんせ♡♡♡♡♡いっ♡♡♡ぁ♡♡♡っ♡♡♡ あ゛っ♡♡♡やっ♡♡♡♡♡♡あっ♡♡♡♡♡♡♡♡ぉ゛おっ♡♡♡♡ぉっ♡♡♡♡ぉ♡♡♡♡ぉ♡♡♡♡お゛♡♡♡♡お゛♡♡♡♡んお゛っ♡♡♡♡イきゅっ♡♡♡♡あっだめ♡♡♡もうほんとにイっ♡♡♡♡♡イ、くっっっ♡♡♡♡~~~────────っ♡♡♡♡♡♡♡」
「っ!ぅ……!~~~~っ!!」
限界を迎えようとしている亀頭を膣道の最奥に叩き付けた瞬間、ちんぽごと下半身が溶けてなくなってしまうんじゃないかと錯覚ほどの快楽が先生を貫く。
それはそのままオスの射精欲を頂点へと導き、子宮の中には堰を切ったように子種が撒き散らされた。膣内射精を受け止めたカヨコは暴力的なまでの快感に言葉を失い、ただきもちいいことは幸せなことなのだと本能で理解する。
やがてちんぽが最後の一滴までザーメンを出し切り、完全に射精が止まってもなおカヨコのよわよわまんこは余韻だけで甘イキを繰り返していた。
「ぐっ、ふぅーっ……はぁー、やばいくらい出たなこれ……」
先生は長い息を吐き、柔らかくなった雄肉を膣から引き摺り出す。
彼の言った通り、注ぎ込まれた精液の量は尋常ではなく。ぱっくりと開いたおまんこから逆流し、溢れた白濁はまるでひとつの塊のようになってぼとりとシーツへと落ちた。
そうして先生とカヨコは折り重なったまましばし放心したように余韻に浸っていたが、やがて目を合わせるとどちらともなく唇を重ねる。それはお互いを労るような、どこか動物の毛繕いにも似たキスだった。
「あー……先生、どうせ留守電なんて嘘なんでしょ?」
「……え嘘。なに、敢えてノってくれてた感じ?私、正直かなりノリノリだったんだけど……」
「いや、そうじゃなくて。先生は私が本気で嫌がることとかしないでしょ」
違う?と吐息さえ交わるような距離で横たわるカヨコが微笑む。
汗やら涙やらその他の体液やらで汚れた彼女だったが、先生はその美しさに思わず言葉を失いかけてしまう。なんというか、たぶんこれはあれだ。惚れた方の負けなのだ。
先生はくしゃりと顔を歪めて苦笑いを浮かべ、「いやまあその通りだけどさあ」と頬を掻いた。
「カヨコの言う通り、マイクはずっとミュートにしてたから。アルの留守電には数十分くらいの無言電話が入っちゃうけど……まあ、それは後で私から謝っておくよ。アルならもう寝てるだろうし」
生活リズムとかかなり規則正しいからねえ、あの子。
先生がそう呟くと、カヨコはくすりと笑った。確かにそうだ。寝つきが良くて夜更かしが苦手なものだから、真夜中の依頼に臨む際は事前に昼寝が必要だったりする。
なんだか毒気を抜かれてしまったカヨコは先生の胸板に頭を預け、長い長い溜息を吐く。まあ、かなり際どい悪戯をされたような気がするけども。やっぱりカヨコは先生が好きで、そんな先生が他の子にはしないような悪戯をしたのだと思えば怒るに怒らなかったのだ。
いつの間にか外では小雨が降り出しているようで、さあさあと降り注ぐ水滴がシャーレの窓を軽く叩く音が聞こえている。耳を澄ませば何故か安心するその音楽は、どことなく恋人の心臓の音に似ていた。
さっきの嘘は忘れてあげるからさ、もう少しだけこうしていようよ。今だけはふたりで、もう少しだけ。
心地よい疲労に微睡むカヨコは呟き、頬を撫でる先生の掌の感触に安心して目を閉じたのだった。なんとなくだけど、今日はいい夢が見れる気がした。
読了ありがとうございました。
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