秤アツコが恋人である先生といざ性交渉に及ぼうとしたとき、彼女の前に立ちはだかった愛の力では如何ともし難い問題こそがふたりの体格差であった。
アツコは同年代の少女と比較しても小柄な方で、一方で先生は成人男性の平均身長よりも頭ひとつ分ほど背が高い。身長と男性器のサイズに有意な比例関係は見られないというのが通説ではあるけれど、そんな彼の愚息は見た目の第一印象を裏切らない実に凶暴なモノだったのだ。
当然ながら、処女の上に自慰も碌にしたこともないようなアツコの硬い膣ではいくら解そうとも熱く滾ったオスの象徴を受け止めきれず。故に結論だけ述べれば、ふたりの初夜は失敗に終わった。アツコとしては痛いのも別に平気だから、と続けようとしたが先生がストップをかけたのだ。
お酒や煙草と同じで、エッチだってそれを楽しめる身体が出来上がってからでも遅くないんじゃないかな。大丈夫、私はいつまでだって待つよ。
少女の園で人知れず獣欲を堪えていた先生にとって、そのお預けは拷問にも等しかったけれど。結局はアツコを大切にしたい気持ちが勝った彼は自分自身に言い聞かせるようにそう言ったのだ。
もちろん先生は恋人としてアツコの気持ちを可能な限り慮ってフォローしたし、アツコもまた先生のそんな気遣いを素直に受け止めたので落ち込みはしなかったが、やはりその顛末は失敗と呼ぶほかなかったのである。
花を育てる上で、ひいては農業において重要なのは試行錯誤だ。天候は誰にもコントロール出来ないからこそ、そのフィードバックが肝要となる。
アツコは即座に思考を切り替えた。座して待つなど論外である。先生の逸物を難なく受け入れられる程度には自分の膣を開発することは当然として、それまでの間は彼をどう満足させるか。あるいは、この女性としての魅力に乏しい未成熟な躰でどうやって彼の劣情を煽るのか。アツコは逃亡生活の側で常に考え続けた。
先生が、大人の男性がどれほどの性的欲求を抱えて生きているのか(偏った知識ばかり吸収している節はあったものの)アツコは知っている。そしてそれを他の娘に発散させたくなかった。はっきり言って周囲に、気取らせることすら厭だった。
無垢な彼女はその感情の正体を知らなかったけれど。彼女なりの独占欲、その兆しが確かに芽生えていたのだ。
だからアツコが先生のお尻の穴に興味があると宣言したのは彼女にとって至極当然の帰結であり、一方で先生にとっては青天の霹靂だった。
「……えっ?」
えっ?
夜の廃校舎に、不意に沈黙の帳が降りる。目を丸くした先生はじっくりと時間をかけてたったいま放たれたばかりの恋人の言葉の意味を呑み込み、それから真っ先に自分の耳がおかしくなっていることを疑った。地獄の徹夜3連勤か、それとも掟破りの妖怪マックス一気飲みがまずかったのか。なんにせよ、どうやら自分は性欲猿の中学生もかくやと言わんばかりの有り得ない空耳をしてしまったらしい。
だってあのアツコだぞ、と先生は胸中で呟く。大人である自分を揶揄う小悪魔な一面こそあるものの、基本的には純粋無垢なアツコなのだ。ハナコレベルの問題児ならともかく、先生の猛々しく反り返った肉棒を至近距離で見せつけられても恥じらいのひとつすら覚えないほど情緒の未発達なアツコなのだ。そんな彼女が、まさか、自分の尻の穴を。
あまりの衝撃に「流石に聞き間違いかなあ?」と緩く首を傾げる先生の目の前で、しかしアツコはゆっくりとかぶりをふった。
編み込まれた薄い竜胆色の髪が頭の動きに回せてふりふりと揺れ、甘い香りが辺りを漂う。逃亡生活の最中でも身嗜みにはきちんと気を遣っているあたり、やはり彼女は立派な女の子だった。
「ううん。先生のお尻の穴、えっと、アナル? に興味があるの。触らせて欲しいな」
そう言って彼女は蕾の綻ぶような、麗らかな春の日差しのようなはにかみを浮かべた。
つい先日「先生、見て。この前から育ててた花が咲いたの。先生にあげるね」と言って一輪のガーベラを差し出してくれたアツコの優しい微笑みが目の前の少女と重なる。重なるというか普通に同一人物だった。先生は泣いた。
「えーっと……うん。ちょっとだけ待ってね、こう、再起動するから…………うん、うん……何もよくはないけど、よし。ねえアツコ、何か……変な雑誌でも読んだのかな?」
「うん。変かは分からないけど、ブラックマーケットに出回ってる本とか映像とか、色々。みんなにも手伝ってもらったんだ。前に先生が調べもののやり方を教えてくれたおかげだね」
「ああ、そっか……」
頑張ったんだよ、と言わんばかりに穏やかに笑うアツコを前に、先生は思わず掌で顔を覆う。どうするんだよこれ。取り敢えずヒヨリとミサキには後で死ぬほど謝っておこう。
学生の勉強において最も大切なのは、実は知識の取得そのものよりも効率の良い学習方法を確立することなのだ、と先生は思う。
そりゃテストや試験を突破するだけならば正しい答えを詰め込めばなんとかなるだろうが、結局社会で求められるのは暗記力ではなく最終的な成果だ。氾濫する情報の海から自らに必要なものを取捨選択し、活用するための技術はいわば舟を望む方向に進ませる櫂のようなもの。身につけておけばいずれ必ず役に立つ。
そのため先生はよかれと思って有用な資料の選び方や探し方のコツを教えたことが以前あったのだが、まさかこんな形で我が身に返ってくるとは。
いや、思い返せば秤アツコというか女の子は何かと好奇心の強いタイプではあったけれど。その好奇心が性的な方向に向けられたなら、こうなるのも致し方ない話ではあるような気がするけれども。それにしたってアクセルが全開過ぎる。
子供のスマホにひっそりとフィルタリング機能を設定する、そんな親心が理解出来てしまう先生なのであった。
(えー……どうすればいいんだろう、これ。……セックスに溺れて道を踏み外すならともかく、恋人と一緒に好奇心を満たす分には誰に迷惑をかけてるわけでもないんだし。取り敢えず、それが一般的な性癖じゃないってことをやんわりと教えてあげればいいのかな……?)
眉間を揉みながら長く、静かに息を吐く。解決策と呼ぶには少々烏滸がましいが、大人として正しい対応は概ねそんなところだろう。
今晩の先生とアツコは廃校者の廊下に座り込んで取り留めのない話をしていたが、本当にここが人目につかない場所でよかった。往来でこんな話をしていたなら即刻通報されてもおかしくはないだろうし、最悪現行犯逮捕だ。少女と成人男性が並んでいるとき、世間の目はいつだって後者にばかり厳しい。
先生は慎重に言葉を選びつつ、正面からアツコの目を見て口を開いた。
「……あのね、アツコ。言いづらいんだけど、それは割と特殊な性癖なんだ。かくいう私もあまり理解はなくてね。もちろん気持ちは嬉しいけど、今回はちょっと遠慮させて欲しいかなって」
「せいへき? 特殊ってことは、普通の性癖もあるの?」
「そうだね。性癖っていうのは……えーと、そのひとが何で興奮するかってこと。例えば外見や性格、シチュエーションとか。あー、あと女の子には正直言いづらいんだけど、変わったものだと匂いとかもあるのかな」
「そっか。じゃあ、先生はお尻の穴で興奮しないひとなんだね」
嗜められた形のアツコはしかし反発する素振りも見せず、あくまでも素直に頷く。
残念。先生が嫌がるなら駄目だね。そう呟く彼女の表情はいつも通り静かに凪いでいたけれど、そっと伏せられた赤い眸がどことなく残念そうで。……なんとなく、放っておけない気がしてしまって。
馬鹿だなあと、後になって振り返ればそう思わずにはいられないかもしれない。いくらなんでも甘過ぎる。時には傷付けることを承知で指摘するのも必要だろうに、と。
けれど先生は、何があっても彼女たちの味方になると決めたから。大切な生徒であり恋人のアツコのそんな表情を見た彼は何を考えるよりも先に「でも」と続けていたのだ。
「…………でも、何事も挑戦するのが大事だからね。最初は駄目でも、続けていれば気持ち良くなるってことはあると思うから。折角アツコが興味を持ってるなら、私も協力させてもらおうかな」
「……本当?」
「うん、もちろん。私は先生としても恋人としても、アツコの「やってみたい」って気持ちを応援してるよ」
アツコの顔がぱっと綻ぶ。赤い眸は輝きを増し、夜空に瞬く星のようだ。綺麗だな、と先生は恋人に向けるにはあまりにも陳腐な感想を抱いた。
ひとつだけ訂正しよう。勉強において大切なのは、まず何よりも本人の意欲だ。
自己顕示欲でも出世欲でも金銭欲でもなんでもいい、「培った知識や経験をこうやって使いたい」という具体的なビジョンがあればこそ勉強にも身が入るというものだし、成功体験はまた新たなモチベーションを作る。
恐怖や罰で追い立てるのは最悪の場合に限るし、ましてや積極的に取り入れるなど三流以下のすることなのだ。自発的に勉学に取り組ませることこそが本来あるべき教育と言ってもいい。
だから先生は、大人として子供のやる気を何よりも大切にしてあげたかった。
結局咲かないのだとしても、まず種そのものを尊びたい。彼女らの将来を思えばこそ、生徒のやる気を可能な限り「間違い」とはしたくないのだ。例えそれが、まあ、その、自分のお尻への興味であっても。
……とはいえ、本当にこれでよかったのかなあ。
「じゃああっちに行こう」と常より弾む声のアツコに手を引かれ、先生は徐に腰を上げる。後悔先に立たず。まるでその先に進めば2度と後戻り出来ない類の扉に手を掛けてしまったような感覚を抱きつつ、こうして先生の人には言えないような性癖を開拓する日々は始まったのである。
◇
「……で、いきなりこれかあ」
先生はベッドの上で全裸になって四つん這いになり、なるべく今の自分の姿を客観的に把握しないよう努めている。冷静になった瞬間、まず間違いなく先生の中の何かが終わるからだ。
そんな微妙な心持ちの男の硬いお尻を撫で、アツコは微笑んだ。臀部に触れる手袋のひんやりとした感触が背筋を駆け上がり、先生はなんだか落ち着かない心地だった。
「大丈夫だよ。いっぱい予習してきたから、私に任せて」
「あーうん。じゃあ後はアツコに任せう゛ぉぉっ!?」
──ぞわぞわっっ♡♡♡
突然のことだった。悪寒にも似た冷たい電流が下半身を中心に這い回り、その後を追うようにじんわりとした快感が熱を伴って全身へ広がる。
ぺろり、とアツコの小さくてかわいらしい舌が先生の尻穴を舐めたのだ。
生まれて初めて味わう感覚に先生は全身で鳥肌を立て、恥も外聞もなく叫び声を上げてしまう。
アツコは先生の排泄穴とそのシワを広げるように筋張った尻肉を揉みしだきながら、「凄い声だね」と微笑んだ。
「まだ舌で舐めただけなのに、そんなに気持ちよかった?」
「い、いや……気持ちいいっていうか、ちょっとびっくりしちゃって……」
「そっか。じゃあ、先生が気持ちよくなるまでやっていくね」
──ぺろっ♡ぺろっ♡ぺろっ♡
まるで動物がつがいとする毛繕いのように、アツコは愛情を込めて丹念に舌を這わせる。少女の舌の柔らかくて暖かくてぬるぬるとした感触が睾丸の裏からつーっ……と這い上がって尻穴にたどり着き、ちゅっ♡♡と触れ合うように唇を落としてくれる。
(っ……これは、なかなか……っ……)
初体験の衝撃がいくらか収まって冷静になれば、快楽とこそばゆさについては凡そ3対7といったところだろうか。
足腰の抜けるようなぞわぞわした感覚は確かに気持ちが良いけれど、何よりもまずもどかしくて落ち着かない。小さくて柔らかな舌先の感覚は、どことなく濡れた毛筆やナメクジのそれに似ていた。
それよりも先生にとっては、今の恋人の姿を客観視したイメージの方がよほど劣情を煽るものだった。
常にどこかミステリアスで神秘的な佇まいの彼女が、贈られた花束を抱きしめて微笑む姿の印象的な彼女が、貴き血筋のお姫様が己の汚物を吐き出す不浄の穴とキスを交わしている。永遠の愛を誓うように愛おしそうに、恋人同士の戯れ合うような軽いキスを何度も落としている。
四つん這いの先生にそれは見えなかったけれど、きっと見えないからこそ眩暈がするほど倒錯的だった。
「……あ♡」
そんな光景を脳裏にありありと描いてしまったからかもしれない。
先生の雄肉はいつの間にか少し硬くなりはじめており、アツコは愛おしそうに血管が浮き上がるその裏筋を撫でた。
「大きくなってるね、先生。嬉しい」
「あ、いや……」
違うんだ。これはお尻の穴を舐められたからじゃなくて。きみがそうしてくれることそのものが刺激的で。
先生はそう言いたかったけど、なんだか恥ずかしくて言葉にならない。初めて異性の前で裸になった童貞のように、頬が熱くて言葉が出ないのだ。
そうして先生がしどろもどろになっている間にもアツコは半勃ちの男性器を躊躇なく握り、緩いペースで上下に擦りはじめる。手袋に落とした彼女の唾液が潤滑油となり、ちゅこ♡ちゅこ♡と淫靡な水音が辺りに響いた。
アツコがオスの象徴に触れるのはこれで2度目の筈だったが、これも予習の成果だろうか。その手付きは言われるがまま触れては興味深そうにしていた前回と比較すれば遥かに淀みなく、余裕さえ感じさせるものだ。
彼女が指で作った輪っかはキツ過ぎず緩過ぎず、まるで先生のためにオーダーメイドされたオナホに挿入したかのような心地良さで。銃器を扱うためだけに設計された手袋はカリ首の段差にまでしっとりと絡みつき、確実に先生の雄肉は硬さを増していく。
「えっとね。お尻の穴で気持ち良くなるには、最初の内はおちんちんと一緒に気持ち良くなった方がいいんだって。「触られるのが気持ちいい」って身体に覚え込ませる……だったかな」
だから、一緒に舐めてあげるね。
小さくて柔らかな掌で甲斐甲斐しく雄肉を扱き上げつつ、アツコは再びアナルに舌を這わせた。ただし今度はもう少しだけ舌先を奥に捩じ込み、尻穴の浅い部分をちろちろと舐めほじりながらである。
「んっ♡♡ れろ……♡♡ れろ……♡♡♡」
「う、わ……っ!?」
先程とは比にならない違和感が先生の背筋を撫でた。
やばいやばいやばい、なんか駄目だこれ。おかしくなる。未知の感覚を前に、何を考えるよりも先に生物としての危機感が警鐘を鳴らしている。文字通り尻肉が跳ね上がり、先生は反射的にアツコの舌から逃れようとしてしまう。
だが、アツコの片手は既にそれを見越したかのように上から先生の腰を抑えていた。キヴォトスの学生はみな神秘をその身に宿し、故に常人とかけ離れた膂力を誇るのだ。先生は腰を引きたくとも引けず、ぞわぞわとした感覚を受け流すことも出来ないままアツコの小さな舌先に思う存分未開発のアナルを蹂躙され続ける。
「アツ、コ……! ちょ、マジで待って、これ本当にだめなやつだから……!」
「ふふ……怖がらなくても大丈夫だよ、先生。ちゃんと見ててあげるから」
アツコがそう嗜めるものの、先生としては全く大丈夫ではない。
下半身を丸ごと蕩かすような、怪物に丸呑みされてしまったかのような奇妙な感覚は本気で恐ろしい。だが力尽くで抑えつけられてしまえば──それが通用するかはさておき、下手に暴れてしまえばアツコを拒絶することになってしまうという雁字搦めな状況も手伝って──それ以上まともに抵抗することも出来ず、先生は恋人の目の前で「ぅ゛ぁぁぁ……」と低く呻いてシーツに顔を埋めてしまった。
この行為の何が受け入れ難いかって、尻穴の中の感覚が妙に鮮明なのだ。暖かくて肉厚でぬめぬめとした舌先が肛門の周りを舐めたり中に出たり入ったりする感覚はちょっと異常なくらい鮮明で、一方でそれは本来そこに感じるべきではない異物なのだ。
あるはずのないものがそこにある、という違和感。それは本来であればひどく気味の悪いものだ。その筈なのに、しかし少女の舌はどうにもぬるぬるとして気持ちが良い。気持ちが良いから受け入れてしまいそうになる。その矛盾が、エラーが、なんだか酩酊状態にも似た不思議な心地よさで脳を揺さぶるのだ。
背筋を貫いて直接脳髄に届くような、明らかに男性器を弄っているだけでは得られない類の快感はちょっと洒落にならないくらいヤバかった。
「れろれろれろ……♡♡♡ れろれろれろれろ……♡♡♡」
──ちゅこ、ちゅこ、ちゅこ♡♡ ちゅこ、ちゅこ、ちゅこ♡♡♡
そうしてどれだけの時間が経ったのだろう。
ふいにアツコは「ぷはっ」と男の尻穴から瑞々しく柔らかい唇を離し、幼い容貌には似つかわしくない蠱惑的な笑みを浮かべた。
いつの間にか、先生のおちんぽが硬く反り返っていた。成人男性の平均をゆうに超えるサイズの肉棒がフル勃起し、それを扱く音もまたアツコの唾液だけでは決して説明のつかない粘り気を帯びたものに変わりはじめていることに気が付いたのだ。
彼女は手コキを一旦止め、手を離す。そして愛しいオスの生殖器に触れていた掌をゆっくりと開閉しては、己の五指の間で伸び縮みするいやらしい先走り汁のアーチを愛おしげに眺めていた。
よかった。こんな身体の私でも、ちゃんと先生を気持ち良くさせてあげられるんだ。
アツコは指先にまとわり付く生臭い雄汁をしげしげと眺めながら、満足げに頷いた。
「気に入ってくれたみたいでよかった。先っぽから、きもちいいお汁がどんどん出てるね」
「っ、うぁ……」
「でも、なんだか少し物足りなさそうかな。おちんちん撫でてあげるの、もう少し早くした方がいい?」
「……そ、それは……」
どきり、と先生の心臓が跳ねた。
決してペースを早めず、一定のリズムをキープするだけの手コキには実のところ先生も既に物足りなさを覚えていたが、しかし後になって思えばそれもまたアツコの戦略の内だったのだろう。
いま、先生の身体は当人が自覚している以上に敏感になっていた。フェラチオでも乳首弄りでも、なにかひとつ追加の刺激が加われば間違いなく射精を余儀なくされてしまうだろう、といった具合にだ。絶頂に上り詰めるにはあと一歩足りない、その分の快楽を身体が自ずと他の刺激で埋めようとするからだ。
飢えこそが貪欲性を作り出す。
植物を育てるには敢えて水分を不足させて根を強くするテクニックがあるが、学習意欲の旺盛なアツコはそれを先生のおちんぽにも応用していたのだ。
だからアツコが先生の返答を待たずして奥深く突っ込んだ舌でベロベロベロベロ♡♡♡と尻穴の中を激しく舐め取りはじめたのと同時にスローペースな手コキを再開し、更には空いた手のひらでお皿を作って亀頭を擦れば、先生の腰がガクガクとみっともなく震えはじめたのもまた仕方のないことだった。
「だっ♡♡ だめだアツコっ♡♡ それやめっ♡♡ やめてくれっ♡♡♡ イきたいのにイけなくてっ♡♡ おかしくなるからっ♡♡♡」
(おかしくなってもいいんだよ、先生。気持ちいいの、もっとぐつぐつ煮込んじゃおう?)
亀頭はオスの身体において快感を齎すための神経が最も集中している場所で、しかも表面の皮膚が極めて薄い。
女性でいうところのクリトリスのような部位、つまりは性感帯のため、今の先生なら雑に擦っただけで呆気なくイってしまうだろう。
だが、アツコの最終的な目標は先生をお尻の穴だけで射精してしまうマゾオスに調教し直すことだ。
恋人であるアツコにアナルを弄られることこそが至上の快楽を得る唯一無二の方法なのだと、先生の逞しい肉体と心に強く刻み付ける必要がある。
だから絶対に射精させない。
はち切れんばかりの射精欲によって真っ赤に膨れ上がった亀頭の先端を「いい子いい子」とあやすように掌で優しく撫で続け、決して絶頂には導かない。
もはや本気ザーメンと区別がつかないほどの濃さと匂いの先走りが赦しを乞う涙のように鈴口から溢れていても、大好きな先生がどれだけ必死にイかせて欲しいと懇願しても。
「アツコっ……!♡♡♡ おねがっ、おねがいだからぁ゛っ……!♡♡♡ イかせて、イかせてくださいっっ……!!♡♡ きもちよすぎてっチンコ溶けるぅ……っ!?♡♡♡」
「……♡」
──鋼のように硬く反り返ったおちんぽがびくりと震えて達しようとしたその瞬間に、アツコは全てのご奉仕をぴたりと中断する。
「っ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁ……♡♡♡ そんっ、そんなっ、また、またイケな……っ♡♡♡ ど、どうしてぇ゛……っ!?♡♡♡♡♡」
先生の嗚咽が響く。
絶頂のタイミングを逃した雄肉は持ち主と同じように物悲しげな我慢汁をだらだらと溢れさせ、陰嚢の中では突如として行き場を失ったザーメンがマグマのように煮え滾って渦を巻いている。もうちんぽを擦りつけて射精することしか考えられない先生の顔は涙や汗でぐしゃぐしゃになっており、とてもではないが生徒に見せていいものではない。
天国にして地獄。
それは比喩抜きに先生がこれまでの人生で味わった中でも最高の快楽であり、そして最悪の快楽だった。
その一方で、アツコはおちんぽへのイキ我慢ご奉仕を続けながらも確かな手応えを感じていた。
(……うん。いい感じかな。狙い通り、ちゃんとギリギリで先生のおちんちんを寸止め出来てる。あとはこのまま、本当の限界までゴールを引き延ばそう)
パブロフの犬という有名な実験があるが、アツコが実践しようとしているのは正にそれだ。
まずは防波堤が決壊する限界まで高めた射精欲をキープし続けることで理性を犯し、フラストレーションによって脳味噌を溶かす。寝ても覚めても忘れられないような、一生ものの快楽を先生に刻み込む。
最終的にはお尻を撫でられただけでその快楽を思い出し、その場で発情して悶えるまで仕込むべし……と雑誌には書いてあったものの、本当にそこまでうまくいくものだろうか。
性的な経験値などほとんどゼロに等しいアツコには判然としなかったものの、幸いにも先生は気が済むまでチャレンジすればいいと言ってくれた。応援しているよ、と暖かい言葉をかけてくれたのだ。
アツコが一歩を踏み出すには、ただそれだけで十分だった。
うん。実を言うとね、まだ少し不安だけど。それでも私、先生のために一生懸命頑張るから。
「
だから安心して、いっぱいきもちよくなってね。
「
アツコは亀頭を撫でる掌を離して金玉を揉みしだきつつ、手加減抜きの全力の両手コキで竿全体を扱き上げる。少女の小さな手がぬらぬらと輝くおちんぽを上下するたびスプリンクラーさながらの勢いで本気子種汁が辺りに飛び散り、廃校舎の教室にはマトモに嗅げば排卵不可避の鮮烈なオス臭が立ち込める。
なんだろう。なまものが捨てられているような不衛生で汚らしい路地裏よりもずっと生臭いけれど、全然嫌じゃない。むしろお腹の奥が切なく疼いて、不思議な感じ。
性の悦びを知ったばかりの彼女はそれを胸いっぱい吸い込んで赤い眸をとろんと蕩けさせながら、弄べば弄ぶだけ情けない喘ぎ声と淫らな水音を響かせる先生という名の楽器を一心不乱に奏で続けた。
──ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅっっっ♡♡♡
「あ゛……っ♡♡♡お゛、ん゛、ぉ゛お゛……っ♡♡♡や、やっとい、イッぐ……っ♡♡♡ごりぇ、ほんぎでごわれ……っ!!♡♡♡」
セックスにおいて相手を思い遣る気持ちはときに経験や技量をも凌ぐが、今のアツコは正にそれだ。
愛おしい恋人の分身を絶頂へと導かんとする彼女の掌はこの上なく甲斐甲斐しく繊細な手付きで、しなやかな指もまたその一本一本がまるで独立した意思を持つ生き物であるかのように肉竿へと絡み付いて弱点を刺激する。そうしてたっぷりのザーメンローションを潤滑油に激しい上下運動を繰り返すのだから、そこから齎される快楽が凄まじいものとなるのは自明の理というもので。
アツコの小さくて柔らかいお姫様手のひらは今や名実ともに先生専用オナホールとなり、肉ヒダを蠢かせオスに奉仕するきつきつおまんこに勝るとも劣らない名器と化していたのだ。
銀色の星がちかちかと視界に瞬き、爆発する。
気が狂うほどの快楽に呑まれた先生は目の前が真っ白になり、まるで全身が丸ごと男性器になったような錯覚の中で激しく痙攣しながら、遂に果てた。
「っっっっ~~~~~~~~!!♡♡♡♡♡♡♡っ、ぅ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!♡♡♡♡♡~~~~~~!!♡♡♡♡♡」
じっくりと煮込まれ濃縮されたザーメンが、限界まで怒張したおちんぽの先から堰を切ったように溢れ出す。
メスの卵子を孕むまでレイプする気満々の精子が笑先にと飛び出していき、アツコの手の中で縦横無尽に泳ぎ回る。
射精して、射精して、射精し続けて。それはともすれば魂まで一緒に吐き出してしまうような、まるで身体中の生気を絞り尽くされるような長い長い射精だった。
──どぴゅどぴゅどぴゅどぴゅっっっ♡♡♡♡♡びゅるるるるるるっ♡♡♡♡びゅーっ♡♡♡♡びゅーっ♡♡♡♡ぶびゅーっ♡♡♡♡♡♡ぶびゅぶびゅぶびゅっっっ♡♡♡♡びゅくるるるるっっっ♡♡♡♡♡♡♡
「ぉ゛っっ……♡♡♡っっ……♡♡♡♡♡っ……♡♡♡♡♡♡♡♡」
もう何も考えられなかった。
下半身の感覚もなんだかあつくてきもちいいこととお尻のナカでぬるぬるとした女の子の舌が這い回っていること以外はひどく朧げで、いくら念じても動かない四肢は他人のものにすげ変わったかのよう。這いずるしか脳のない芋虫にでも生まれ変わった気分だ。
どくどくと脈打つちんぽから壊れた蛇口の如く熱いものが大量に漏れ出していく感触だけはあるものの、それが排尿なのか射精なのかもよく分からないし、そもそも何かを考えようとした端から疑問は解れて溶けていく。
もはや先生は大人の矜持など忘れ去り、その自我は快楽という名の甘い濁流に流されるだけの一隻の小舟に過ぎなかった。
そうして一瞬のような永遠のような、ひどく曖昧なだけの時間が過ぎて。
先生の性液は文字通りにその全てが絞り尽くされ、アツコはすっかり少女の唾液塗れになった肛門から舌を引き抜いて「お疲れ様」と柔らかく微笑んだ。
「赤ちゃんのもと、すごいたくさん出たね。私にはおちんちんがないから分からないけど、もしかしてこれって気持ちいいといっぱい出てくるのかな。そうだったらいいな」
というか、私の手じゃ全然収まりきらないね。どうしよっか、これ。
アツコは自分の手で作った器から溢れ、まっさらなシーツを汚す白濁液を前にして緩く首を傾げた。いつも色んなことを教えてくれる先生は荒い息を吐きながら腰が抜けた様子でうつ伏せに倒れ込んでおり、彼女の疑問に答えるものはいない。なのでアツコは自分で考えてみることにした。
まず普通に考えて、性液に繁殖以外の使い道はない。何かの材料になったり、加工出来るという話も聞いたことはない。もちろん金銭的な価値もないだろう。となれば採取する意味はない。恐らく捨てるのがベターだろう。
けれど大好きなひとから出たものだと思うと無碍にするのも躊躇われて、アツコは思いつきと好奇心から舌を伸ばして少しだけそれを舐めてみた。
「……にがい……」
呟き、あのアツコをして微かに顔を顰める。
舌先がびりびり痺れるお尻の穴も大概だったけれど、こちらはそれに輪をかけてひどい味だ。苦くて生臭くて、おまけにゼラチンのようにぷるぷるとしてずっしりと重たい。飲み込めば間違いなく喉に絡むだろう。アツコはそれを到底食べ物とは認識出来なかったものの、やがて意を決したように手のひらで作った杯を口に付けたまま傾けた。
そうすれば男性は喜ぶ、と雑誌に書いてあったことを思い出したのだ。
こくこく、と控えめに喉を鳴らして少しずつザーメンを飲み干していくアツコ。
手折れてしまえそうなほど白くて細い喉を通ってオスの欲望が嚥下されていく様はひどく倒錯的で、眩暈がするほどに煽情的だった。
当の先生は半ば気絶していたものの、もし彼がそれを目にしていたなら固唾を呑まずにはいられなかっただろう。
やがて白濁を呑み干したアツコは「ふう」と軽く息を吐き、そして先生の耳元にそっと口を寄せた。
「あのね、先生。実はお願いがあるの」
これ、次に会うまでに買っておいて欲しいな。
そう言ってアツコが差し出したメモにずらりと書かれていたのは、いずれも絶頂の余韻で意識がひどく朦朧としている先生をして素直に頷き難いようないかがわしいアダルトグッズばかり。これ、まさか私に使うの? 先生の眸に僅かな理性の光が戻りかけたが、しかしアツコの指は既に彼の尻穴に添えられていた。
精液でどろどろになった指先がつぷり♡とそのナカに侵入し、背筋には再び快感が走る。そして快感がトリガーとなり、絶頂の記憶が鮮明にフラッシュバックする。
また、「アレ」を味わうのか。
私は彼女の要求を呑むまで何度でも、無限に続く絶頂地獄に堕とされるというのか。
射精したばかりのちんぽが早くも硬さを取り戻しはじめ、鼓動はうるさいほど加速を始める。
無理だ、と先生は項垂れた。たったいま躰に刻み込まれたばかりの悍ましいまでの快楽が克明に蘇り、再起しようとしていた意思はぽっきりと折れてしまったのだ。
……もう、なるようになるしかないだろう。
その先に待つのが、更なる快楽の海であることは分かっていた。その上で、どちらかを選ばなければならないというのなら。
先生はこれから待つ自らの運命を悟りながらも、その首を縦に振るしかなかったのである。
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