お待ちしていて下さっていた方がいましたら申し訳ありません。
では、転生する前のお話しになりますので暇つぶしにでも読んでみてください。
※間違ったため再投稿
俺は、今日も早朝から体を蝕む病魔の激痛と吐き気に耐えながらただ一つの希望である妻、唯の訪れを待っていた。苦痛に苛まれながらも彼女の顔を見るためだけに必死に意識を保ち続けていた。病室の窓から差し込む微かな朝日が白いカーテンに映り込み、その淡い光が病室全体に広がる。そんな静寂の中で、俺の呼吸は不規則で心臓が胸の内で激しく脈打っていた。何度も吐血を繰り返し目の前が霞むたびに、俺は自分がどれほど限界に近いかを感じざるを得なかった。
(─あぁ、俺は今日…死ぬんだろうな)
その考えが頭の中に浮かんだ瞬間、俺は思わず眉をひそめた。死の影が日増しに濃くなる中で、それでも俺は唯を、そして息子の海を残して逝くわけにはいかない。そんな思いが、唯一の心の支えだった。それなのに、俺の体は無情にも病に侵され、日を追うごとにその症状は悪化していくばかりだった。
やがて、俺のもとに足音が近づいてくるのが聞こえた。唯だ。俺の心が微かに安堵で満たされる。だが、その喜びは長くは続かなかった。扉が開き、彼女が病室に入ってきた瞬間、俺は声を出すことすら困難になっている自分を痛感した。
唯が驚いた顔で、ベッドのそばに駆け寄ってくる。彼女の瞳に映るのは、シーツに染み込んだ赤黒い血痕だった。彼女は言葉を失い、震える手でナースコールのボタンを探し始めた。その動作には、かすかに震えが感じられた。
「おはよう…体調はどう?」
唯の声はどこか震えていた。彼女の声には、変わらぬ優しさがあったが、その奥には明らかな不安と焦りが隠れていた。
「…っ、血だらけじゃない…ナースコールしなきゃ…!」
俺は微かに首を振った。今さら何をしても、もう助かることはないと分かっていたからだ。それでも、唯を不安にさせたくない一心で、俺はどうにかして声を出そうと試みた。しかし、思うように言葉が出てこない。苦痛に歪んだ顔を見せたくはなかったが、体が言うことを聞かない。
「…大丈夫、唯」
俺の声はほとんど聞こえないほど弱々しかったが、それでも彼女に伝わることを願った。
「…もう、十分だよ。毎日来てくれて…ありがとう」
唯の目に涙が滲み始め、その涙が彼女の頬を伝って落ちていくのが見えた。俺はその姿に、胸が締め付けられるような痛みを感じた。どれほど彼女を苦しませているのかを思うと、言葉にならない悲しみが押し寄せてきた。
「…唯、海を頼む。俺がいなくなった後も…あの子のことを…頼む…」
俺の言葉は途切れ、息も絶え絶えになっていく。体中の力が徐々に抜け落ちていくのが分かった。だが、唯の手の温もりだけは、最後まで俺の中に残り続けていた。その温もりが、俺を現実につなぎ止めていた。
唯は嗚咽をこらえきれず、泣きながら何度も俺の名前を呼んだ。その声が、どこか遠くから聞こえるように感じた。目の前がぼやけ、視界がだんだんと狭まっていく中で、俺は最後の力を振り絞り、彼女に伝えたかった言葉を口にした。
「…愛してる、唯」
その言葉を最後に、俺の視界はゆっくりと暗闇に包まれていった。
「氷…?ねぇ、氷、返事して…!ねぇっ!…やだ、逝かないでっ!いやっ──いやああぁーっ!」
唯の叫びが、闇の中で響き渡った。その声は、俺にとって最後に聞いた音だった。そして、全てが静かになり、俺は深い眠りに落ちた。唯と海を愛する気持ちを胸に抱きながら…。