サキュバスに首を挿げ替えられた見習い聖騎士 作:プニたけっち
オリジナル:ファンタジー/ノンジャンル
タグ:R-18 ボーイズラブ 残酷な描写 性転換 聖騎士 挿げ替え 聖騎士 挿げ替え サキュバス
※本作品はPixivにも投稿しております。
深夜の王都、闇夜を歩くのは酔っ払いか職無ししかいない筈の狭い道路を白い鎧に身を包む屈強な男達が声を張り上げながら走っていた。
出てこい淫魔よ ! 我々から逃げられると思うな !
満月を背景に1人の美女が空に浮かんでいる。正体を知っている聖騎士でなければ間違いなく歩みを止めて女の餌食になっているだろう。
「聖騎士のみなさん、遅くまでお勤めご苦労様。でも私今日はお腹いっぱいだから失礼するわね、お休みなさ~い」
背中に翼を生やした美女は聖騎士達にねぎらいの言葉をかけて小馬鹿にすると、そのまま夜の闇に隠れて姿を消してしまった。
奴はいたか ! ?
ダメだ、見失ってしまった……。
くそッ またか……。
男達は王都に忍び込んだ下級魔族"サキュバス"を追いかけていた。本来サキュバスは徳の高い聖者を堕落させ自らの番つがいにしたり僕しもべにするのが常なのだが、数年前に魔王が勇者に討たれ強力な魔物も討滅されてからは魔族側もまとまりがなくなりそれぞれが独自に活動しているのであった。
サキュバスの場合はとにかく男から精気を搾取するという、質より量の流れに方針転換しており王都だけでも男性被害者の数が急増していた。
サキュバスの能力は男から生命力を奪う事、男性で構成された兵士だけでは勝つのは難しく闇に強い聖騎士の部隊で討伐を狙うのは自然な流れではある。
しかしながら事はそう上手くは運ばない。昼に姿を全く見せないため討伐は難しい。夜は魔族の時間、いかに能力の高い聖騎士と言えどサキュバスの撃破はそう簡単にはいかないのだ。
おまけに聖騎士は名前の通り特殊な才を持つ者だけがなれる特別な存在、つまり数自体が少ないので頻繁な出動はできない。昼に聞き込みをしたくても肝心の夜に疲労困憊では話にならないし、他部隊に依頼したくてもサキュバスの人間への擬態は完璧に近く正体把握は困難である。
このような現状によりサキュバスの討伐は遅々として進まず他部隊や民からの信用が揺るぎ始めており、聖騎士部隊にとって王都のサキュバス討伐は何としてでも成し遂げる必要がある。
*
「忙しいところすみませんがこのあたりで不審な人物を見かけませんでしたか…… ? そうですか、お手数をおかけしました」
ある日聖騎士の部隊は日中の聞き込みにまだ見習い聖騎士を使う事に決めた。見習い騎士は一定期間の訓練を受けた後で正式に任命を受け所属部署に配属される、それは聖騎士でも例外ではない。見習いをいきなり実践投入させるなどという手を打つほど部隊長は愚かではない。だがサキュバスの捜索を進めなければならないのもまた事実、そこで主力部隊を休ませている間に見習い騎士を捜索に回すことにしたのだ。無論決して戦おうなどとしないように厳命してである。違反した場合は厳罰に処すときつく言い含めた。
今聞き込みをしている14歳の若き聖騎士見習い"ビータ"も先輩騎士の指示にて太陽が高く昇っている正午に王都内のお店で聞き込みをしていた。
「おいビータ、そろそろ切り上げたらどうだ ? 真面目に聞き込みなんてしてるのお前だけだぜ」
「でもダイス、真面目にやらないと先輩や騎士団長に怒られるよ」
ビータと二人一組で聞き込みをしている筈のルームメイト、ダイスは露店で買った串焼きをほおばりながら話しかけてくる。見習いたちは他の聖騎士たちがいない間にすっかりだらけ切っていた。
「かまうもんか、どうせあのおっさん達は俺たちを辞めさせられないよ。お前今の聖騎士の数知ってるか ? 一般兵士が万単位なのに聖騎士はウン百だぜ ? 聖騎士の才能を持ってる奴が少なすぎるんだよ。適当に任務やってある程度真面目に訓練して、今みたいな時は手抜きしてればいいんだよ。だいたい正式に叙勲された聖騎士が束になって探しても見つけられないサキュバスなんてどうやって見つければいいんだよ」
「それはそうだけど……」
ダイスの職務態度は大いに改める必要はあるが実際の所間違っているとは言い難い。サキュバスの捜索は困難であり、最初は真面目に探していた者も次第にダイスのように遊ぶようになっていた。やっても無駄、士気が低すぎるのである。
「お前も少しは肩の力を抜いて……おいビータ ! あそこに美味そうなミルク料理の店があるぞ、行ってみようぜ ! 」
「ダ、ダイス待って ! 」
この時代では甘味は非常に贅沢品であり王都でも変わらない。特にミルクはそう簡単には手に入らない代物なのだが……。
*
「うう……結局一緒に入っちゃったよ……」
「おいおい、もう店の中に入ったんだから観念しろよ。それにそんな顔で食べたら料理人にも失礼だろ ? だったら味わって食べようじゃあないか。今回は俺がおごってやるからさ」
「う……うん」
まあ確かに言われてみればその通り、気持ちを入れ替えて料理を口にすることにしたビータとダイス。
「お待たせいたしました~、当店自慢のバターロールパンにクッキー、ミルクセーキでございま~す」
「おお ! ビータ見ろよ、あんな美女王都でもそういねぇぞおい ! それに美味そうだな ! 」
「う、うん ! パンにクッキー、飲み物も美味しそう ! 」
爆乳の美女によって運ばれてきた料理に思わずよだれを垂らす2人、もっともダイスは女の方に視線が行っていたが……。
一口パンをかじると柔らかい食感が舌を浸食する。程よい甘味と焼きたてのパンの温かさが2人を出迎えた。バタークッキーを口に入れるとじっくりとクッキーが溶けていき甘味が舌に染み渡る。甘味ばかりにも関わらず決して飽きる事は無くむしろもっと欲しいという欲望が現れ始めた。ごくごくと飲み干していくミルクセーキは身体の隅々にまで流れていき、歩きっぱなしで疲れた身体が回復していく。
「うん ! 美味しいねダイス ! 」
「だろ ? 入ってよかっただろ ? 」
まるで小動物のようにクッキーを齧るビータを見てほっこりするダイス君。
(こいつマジで女にしか見えないんだよなぁ……)
ビータは14歳、ダイスは16歳、同年代の人間に比べてダイスは男らしく筋肉も付いているし顔つきも少し生意気なやんちゃ坊主という感じである。それに対してビータは身体も華奢で金髪の童顔、背が低い上に声変わりも遅く見た目は小柄な女の子にしか見えない。ビータは間違いなく男だし同室であるダイスも当然知っているのだが、どれだけ鍛えても筋肉が付かず、男らしい身体になれないというコンプレックスを持っている。本来であればビータは軍人になれるような身体の持ち主ではないのだが、聖騎士の素質がある為入隊させられている。厳しい訓練も見た目に似合わないガッツでどうにかしているのが現状である。
(ビータには悪いけど生まれてくる性別間違えたとしか思えないぜ……他の女よりも可愛らしいし、コイツがマジで女だったらなぁ……)
もしビータが女なら引く手数多の令嬢であろう。礼儀正しい、可愛い、ある程度の自衛はできる、読み書きできる、座学満点、可愛い、もてない要素無しである。ダイスが禁断の扉を開けるまでそう遠くないのかもしれなかったが……
「お客様、本日のサプライズイベント ! 店主ブリアンナのお悩み相談コーナーでございます ! 」
「ん、なんだ ? 」
「モグモグ……ふぁんだろねふぁいす ? 」
「ほおばりながら話すなよ……」
ダイスはビータの口元に付いたクッキーの食べかすをハンカチで拭き取りながらスタッフの言動に注目した。端から見ればデート中のカップルである……ビータは男だが。
「皆様のテーブルに番号の書いた札が貼っております。今から私が箱から札を取りますので、同じ札をお持ちのお客様はこちらへお越しください」
よくテーブルを見るといつの間にか札が置かれていた。他の客も同じようで、ビータは1、ダイスは8と書かれている。
「それでは発表です ! 本日の大変ラッキーなお客様は……ジャジャン ! 『1』! 1番の番号札をお持ちの方はこちらへお越しください ! 」
「ビータ、お前当たりみたいだぞ。せっかくだ、背が低くて女に間違えられる事相談してきたらどうだ ? 」
「ダ、ダイス……」
ここにいるビータ君は職務態度は優秀だが実務は見習いの中でもビリであった。ビータは生まれも育ちも恵まれておらず年齢も低めであることから身体ができあがっていない、他の見習い達も境遇は似ている者もいたが体格は男らしい者ばかり。ビータはどこまで行っても騎士にはむいていないのである。
「まあまあ、ほら行って来いよ。案外悩み解決するかもよ ? 」
「う、うん……じゃあ行ってくるよ」
「はいは~い1番の方。ささ、奥の部屋へどうぞ」
爆乳美女に連れられ奥の部屋に連れていかれるビータ。他の客は本来であれば『あんな美女と、羨ましい ! 』
とビータに嫉妬し血の涙を流すだろうがそのような様子は見られない。それもビータが男に見えないからだろう。『運が良かったなあのお嬢ちゃん』程度にしか見られていないのだ。
ビータが連れてこられたのは簡素な応接室であり対面用に椅子が配置されていた。部屋で待っていたのは黒いローブに身を包んだ女性、ボン ! キュッ ! ボン ! という擬音が出てきそうなナイスバディ、部屋へビータを連れてきた女性もかなり大きな胸の女性だったが眼前の女性はそれ以上、それが店主のブリアンナなのであった。
「ではあなたのお悩みを……と言いたいところですがご友人とのお話が聞こえていまして、背丈のお悩みですか ? 」
「き、聞こえていたんですか ? えーと……その、はい、そうです……僕、本当は男なんですがどれだけ鍛えても強くなれなくて、友人に相談しても中々いい案が出なくて……」
聖騎士の隊長らも育成指導に力を入れてはいるが現在多忙な身、ビータ個人に対して個人指導をしている暇など無い。ダイスもビータから相談は受けていたがビータに合う訓練方法は思いつかず力にはなれていなかった。先ほどもビータをからかったのは面白さ半分に本気半分であった。ビータの悩みが解消できるならこの際誰に教えを受けてもいいと思っている。案外専門外の人からもらう助言に思わぬヒントを思いつく事もあるだろう。
「『背を伸ばしたい』なんて願い、そう簡単に叶うわけないですよね……」
「叶いますよ ? 」
「ですよね、そんなねが……今なんて ? 」
「ふふ……叶うと言ったのですよ」
思わず椅子から立ち上がるビータに対し自信満々のブリアンナ。
ブリアンナはその場に立ち上がりじっとビータを品定めするように眺める。期待に目を輝かせ、女に間違えられるであろう幼き表情と筋肉もあまり付いていない華奢な身体、足もあまり長くなくいい所のご令嬢のような外見。しかしブリアンナにはわかる。ビータは確かに騎士には向いていないが身体の中に眠りし光の力、聖騎士よりも大きな光の部分こそが彼の本領、闇を消し去り味方に力と癒しを与える……神官こそがビータに一番合うクラスなのだ。
「いい、いいわ貴方の身体。その身体があれば何も困ることなく生きていけるわ」
「あ、あの、店主さん ? 」
ブリアンナの目は獲物を見るハンター同然の目をしていたが妙な態度にビータは戸惑いを隠せない。ここに他の聖騎士がいたらすぐに武器を構えていたに違いない。彼女の背中からは悪魔のような翼が生えていたのだから。だが戦闘経験など無いビータは戦闘態勢を取る事ができない。
ブリアンナは身に纏っているローブを脱ぎ去りブーツも脱ぎ、今まで身に着けていた服やブーツを魔力でボッと音を出し一瞬で燃やした。彼女はローブの下に何も着ておらず豊満な肢体をビータに見せつける。白い肌に長き脚、綺麗な爪。ブリアンナのヌードにビータはついていけない。
「あなたの望みは背を伸ばす事、かなえてあげるわ。代わりに貴方の身体を貰うけどね ! 」
「な、何を ! ? 」
ブリアンナは指から白い光線をビータに浴びせる。さすがに椅子から立ち上がりかけたビータだったが途端に動けなくなり再び椅子に座ってしまう。
「動かれたら手元が狂っちゃうからね、お互いの身体を交換する儀式の」
「儀式……お前何を ! ? 」
ブリアンナは自らの首とビータの首を爪で一本線を描き聞き取れない呪文を唱える。
ビータは徐々に自らの視界が高くなっていく錯覚に襲われた……否、錯覚ではない。本当に視界が高くなっている。ビータは目の前の情報を疑った、ブリアンナの頭が胴体を離れ宙に浮かんでいるのだ !
「ひッ ! 頭が浮かんで ! ……ま、まさか……ッ ! ? 」
「そう、あなたの頭も浮かんでいるのよ」
ビータは視線を下へ動かす、彼の目に映るのは立ったままのブリアンナの胴体と椅子に座る自らの胴体。
「も、戻せ ! 僕の身体を ! 」
「はいはい、ちゃ~んと返してあげるわ」
互いの頭は宙を描くように動いていき最初の位置が入れ替わったように停止。ちょうどビータの頭はブリアンナ、ブリアンナの頭はビータの胴体の真上だった。停止した互いの頭部はゆっくりと降下していく。
「まさか……ち、違うよ、こっちじゃない ! 」
「いいえ、合ってるわよ。あなたは背の高い身体に、私は未来の聖騎士様の身体を頂くわ」
ビータの表情は苦悶に歪んでいた。痛くも苦しくも無い、ただ頭を動かして現状をどうにかしたいだけだ。だがそれは無駄な努力、やがて互いの頭部は胴体に着地、ブリアンナによって付けられた線は消え切断面は見えない。
「あ、ああ……僕の身体が……」
ビータは何も身に着けていない。今まで無縁だった胸の重さ、床が胸に邪魔をされ全く見えない程の巨大な豊乳。くびれたお腹、長い脚、女ならば誰もが欲しがる身体だろう……女ならば。しかもただの女ならば。
「ぅ~ん ! 動きやすい身体ね、さすが鍛えてる若い男の子。そっちも良かったけどやっぱこっちね ! 」
ブリアンナは自らの身体を確かめるように背伸びをしたりくるりと回転してみせる。ビータの胴体はブリアンナによって思うままに扱われていた。
「返せ、僕の身体を ! 」
「あら、あなたの望みを叶えてあげたのよ ? 『背が高くなりたい』って言ったのそっちよ。良かったじゃない、頭1個分は伸びたわよ ? お連れの友人と同じくらいにね」
「そ、そんなの詭弁だ ! 返してよ ! 」
美女の身体で叫ぶビータだが、残念ながら今の彼に違和感は全くない。元々女と間違えられていた顔だったのだ、首から下を美女の身体に挿げ替えられただけでより彼の魅力は増した。きちんと衣類を身に纏えばすれ違う男は確実に振り向くだろう。
「だめよ、今更そんな我儘聞けないわ。あなたはもう女なのだから振る舞いもきちんとしないとね」
「僕は女じゃない ! 」
「今まではね。でも今は女、綺麗なお顔に首から下は見ての通り。誰がどう見ても女よ。おめでとう、あなたは立派なサキュバス・・・・・として生まれ変わったのよ」
拍手するブリアンナに対しビータは思わず固まる。
「サキュバス…… ? 僕が ? 」
「そうよ、あなたの背にある翼がなによりの証拠。あなたはこの街のお尋ね者、指名手配中のサキュバスとなったのよ」
「お前が、お前があのサキュバスか ! 」
掴みかかるビータだったが逆に押し返され、ブリアンナに馬乗りにされた。見習いとは言え聖騎士の身体を得たサキュバスと荒事には向かないサキュバスの身体に取り換えられたビータではどちらが勝つかなど明白であった。
「はいお静かに。これは貴方の為に言ってるのよ ? あまり騒いじゃうと貴方のお友達が来ちゃうわ」
「うるさい ! ダイスが来ればお前なんて」
「来たら貴方が討伐されちゃうわね、私はただのお菓子屋さんですもの。貴方は指名手配されているサキュバス、彼は怒るでしょうねぇ、俺を騙したのか ! ってね」
「そ、そんな事は……」
「あるわね。王都の聖騎士はサキュバスのせいで人気ガタ落ちだもの。貴方がどれだけ訴えても通らないわ、貴方を処刑して人気回復させるわね間違いなく」
ブリアンナの言う事は間違いないだろう。聖騎士団も国の一部にすぎない、見習い一人を犠牲にして信用を回復するなら安いものだ。
「まあ、貴方は今をどう乗り切るか考えるべきね。外でお友達が待ってるわ、もたもたしてると心配して向こうから来るわよ。その身体でどう誤魔化すか……楽しみね」
ビータは言われて今更気が付く。自分の背中には誤魔化しが効かないサキュバスの翼がある。近くの布で誤魔化したくても翼だけはそうもいかないのだ。
(どうしよう、どうしよう ! )
大慌てするビータだがそれも当然、彼……彼女はもはや石を投げられ人間から追われる身なのだから。
「いい事教えてあげるわ。翼を身体に取り入れるようにイメージするのよ、そうすれば翼を隠せるわ」
「そんな事をどうして僕に……」
「詮索してる暇はあるの ? 私の部下が見てるけど、貴方のお友達、こっちを心配そうに見てるみたい。そんな身体を見られたら剣を握るでしょうねぇ」
ダイスが自分に攻撃してくる……そんな光景にゾッとしながらビータは言われたとおりに念じる。
(翼をしまう、翼をしまう……)
ゆっくりと翼が背中にしまわれていき、意外にも簡単にできた事に思わず拍子抜けしてしまう。
「あら早かったわね、やっぱりあなたサキュバスの才能あるみたいね」
「そんな才能嬉しくなんてない ! 」
「まあまあ、それよりもあなたは自分の事を考えなさい。これから大変よ、あなたはお友達だけでなく騎士団のお仲間も騙していかなければならないのだから。初心な男子を手玉に取る女……貴方素敵な悪女ね」
ビータは目の前の女……男を殴りつけたくなったがタイムアップ。痺れを切らしたダイスの声が部屋に近づいてくる。
「くっ……覚えていろサキュバス、僕は必ずお前を捕縛するぞ」
「はいはい、貴方もその身体を大事にすることね。なが~いお付き合いになる身体なのだから」
ビータは近くのカーテンを身体に巻き付けて部屋を出て行った。
「ふふふ……やっと不便な身体から解放されたわ。この身体、鍛えればとても強くなる。一々男を抱かなくてもいいし、さぁてこのお店も撤収。次の町へ行きましょうかね」
ブリアンナは店員にテキパキと指示を出し店の撤収準備を始めるのだった。
「ビータ遅かったな……オイどうしたその恰好は ! 何があった ! ? 」
「だ、ダイス……これには訳が……」
いくらなんでも帰りが遅すぎるビータを心配したダイスが店の少し奥で見たのは、厚手のカーテンで首から下をすっぽり覆ったビータだった。
店主に何かされたのか考えるダイスだったが、閉店で~すという店員の間延びした声によって2人とも店を追い出されてしまう。
さて、騎士団の詰め所に戻ろうとしたビータとダイスだったが……。
(ばれないかな……これからどうしたらいいんだろう……)
ビータはカーテンで自身の身体を隠しとぼとぼ歩いている。今の彼女はカーテンの下に何も身に着けていない。おまけに裸足である。サキュバスの店から全裸のままで追い出されたのだから当然であるが、今のビータは魔族の身体で頑丈にできている為に裸足で歩いても痛くない。思わずハァッ……とため息をついてしまう。
対してダイスは胸が高鳴っていた。からかい気味に送りだしたルームメイトの身長が本当に伸びただけでなく妙に色っぽくなって帰って来た。彼にしてみれば何が何だかわからないというのが本音であろう。彼にとってもこの胸の高鳴りはわけがわからなかった。隣にいるビータがまるで本物の女になってしまったような感じがしたのだ。ため息をついたビータは非常に色気が出ており道行く男が見てしまうくらいであり、真横にいるダイスは胸がドキドキしまくっていた。自分は男に見惚れるような変態になってしまったのかと考えてしまう程ダイスは混乱している。急にビータの背丈が伸びた事など今のダイスにとっては些事でしかない。
「ね、ねえダイス。ちょっとお店に寄りたいんだけど……」
「へ ! ? お、おういいんじゃねえの ! ? 」
ビータからの思わぬ提案に上ずった声で返事をしたダイスだが行先は衣服店であった、しかも女物の。
「おい、こんな所に何の用が……」
「ダイス……お願い、お金貸して……今度お給金が出たら必ず返すから……」
ダイスは自らの耳を疑った。確かに隊員間でも金の貸し借りはあるがビータは絶対にそのような事はしなかった。そのビータからの思わぬ頼み、普段なら理由を聞くダイスだが瞳をウルウルさせるビータを相手にしては何も言い出せなかった。
「わかった……いいぜ ! 何が欲しいんだ ! 」
「その……女物の衣類と下着一式を……」
ダイスは自らの耳を疑った。確かにビータには女物の服も似合うだろうなと思っていたが、まさかビータ本人からそんな言葉が出てくるだろうとは考えもしなかったのだ。ビータは自分が女みたいに見える事をひどく気にしていた、そんなビータが何故 ? まさか女装癖ができたのか ! ? とダイスは思う。
「ま、まあ好みなんて人それぞれだしな。いいぜ俺が買ってやる、どれが欲しいんだ ? 」
「えぇと……こ、これかな ? 」
ダイスは自らの目を疑った。それは高級娼婦が着るようなサイズのでかいブラに服であり、その分金額がべらぼうに高いのである。『ちょっとご飯おごって、てへっ♪ 』みたいな気軽な感じではない。ダイスはこっそりギャンブルに精を出しており結構な稼ぎを得ていた、出せない金額ではないが騎士団内で賭け事は御法度、ここで『いいよ』と言ってしまったらどこからギャンブルの事がばれるか……。
ダイスとしても絶対に理由を問わねばならない場面だが瞳をウルウルさせるビータは破壊力抜群、何も言い出す事ができなかった……。
ビータにとってもこれは苦渋の決断であった。お金の貸し借りは良くない事だとわかってはいたし女物の下着や服なんて着たくない。しかし今の身体はサキュバスの身体、胸はそう簡単にお目にかかれないであろうサイズであり男の服は着れない。さらに裸の状態で追い出されたものだから今のビータは無一文なのだ。ビータがこの状況を打破するためにはダイスに頼るしかない。
「ぐ……わかったいいだろう」
「 ! ありがとうダイス ! 」
ビータは思わずダイスに抱き着いた。ダイスは自らの存在そのものを疑った、ビータの身体が完全に女みたいになっていたのだ。隠しきれない爆乳、あれが作り物だとしたらこの世に革命が起きるだろう。なぜそれが男である筈のビータに ? これは俺の夢なのか ! ? ダイスは現実と夢の区別もつかない程慌てまくっていた。
決して高くは無い買い物を済ませ店を出た2人、まだビータはカーテんを身体に巻いたままだったが……ここでもうひと悶着起きてしまう。きっかけは詰め所まであと少しという所であった。ぐ~、という音が夕方の道に響く。
「お、お前今度は腹減ったの ? さっき店で結構食べたろ ? 」
「え、えと、そうなんだけど……えへへ、おかしいな、なんだかお腹が空いて……」
ビータの照れる顔がやたら可愛く見えたダイスは顔をそむける。顔を真っ赤にする恋人のような2人だが、やがてダイスはさっき買っておいたパンを1個ビータに手渡す。
「……食えよ、腹減ってるんだろ ? 」
「あ……ありがとう、ダイス……」
ビータにとってはダイスの気持ちはとてもありがたいものだった。お金の事も何も聞かないで出してくれた事も、今のパンも、ビータにどんなプレゼントよりも得難いものだった。
パンを小動物のように齧っていくビータを見て、先ほどと同じくほっこりするダイスだったが……。
ぐ~。
ビータのお腹からまたしても腹の虫が鳴り響く。
「お前、いくらなんでも食べすぎだろ ! ? ホントどうしちゃったんだお前 ? 背丈が伸びた事もそうだし、さっきの服もそうだ。お前あの店で一体何があったんだ…… ! ? 」
一度気にしだしたら止まらない、ダイスからは次々と質問が飛び交うが当のビータはそんな事は何も聞こええていない。質問の途中でダイスが目にしたのは、青い瞳が真っ赤に染まったビータだった。
「オ……ト……コ……」
「ど、どうしたビータ……うわッ ! ? 」
ダイスは信じられない力でビータに引っ張られ路地裏へと連れ込まれる。ダイスはカーテンを取り払ったビータの身体を見て息を呑む。ビータはまぎれもなく女の身体になっており彼のズボンを引きずりおろす。
「ビータ ! よせ……ングッ ! ? 」
ダイスの言葉を遮るようにビータは口付けをし黙らせた。互いの口が離れても唾液による糸が2人を繋ぎとめる。それはまるで切れない蜘蛛の糸のように……。
「ダイス……僕お金持ってなくて……でも僕、こんな形でしか返せなくて……だからダイス、今だけ僕を買って ? 」
ダイスは目の前の現実を受けとめられなかった。これがビータ ? あの品行方正で真面目で、小動物みたいなルームメイトの友人、少なくともこんな売女みたいな奴ではなかった。しかも何故か身体が女になっている、一緒に王都の大浴場で汗を流した事もあるからビータの身体を見た事はあり、その時は間違いなく男だった。なのに自分に覆いかぶさっているビータは絶世の美女のような姿でダイスを性的に喰おうとしている。
「ダイス……ダイス、強い男、頼りになる男、私の好み ! 私のオトコ ! 他の女には手出しさせない ! 」
ビータの第一人称が変わっている、それだけではない。ビータの爪がいつのまにか鋭く赤く染まっているのだ。ビータの爪はダイスの胸に当たり少量の血が流れ、それをビータの舌が舐める。美味しそうに、味わうように、血が止まってもビータの舌はペロペロと胸の汗を舐めていた。
「よ、よせビータ……汚いし、お前にそんな事させたくない」
ダイスの呼びかけにビータの動きが止まる。わかってくれたかと考えるダイスであるが心の警鐘は止まらないどころかさらにうるさくなる。
「ごめんねダイス……そうだよね、ダイスもオトコだもん。すっきりしたいよね」
ビータはさっきから自己主張しまくっていたダイスのチンコを愛おしそうに顔に当て擦りつける。絶妙な加減でイチモツを扱われダイスは思わず喘ぎ声を出してしまう。
「ダイス、こんなに濡れちゃって……いいよ、私が綺麗にしてあげるね」
ダイスのチンコから出ている先走り汁を気にもせずチンコを口に入れた。
「な……なんだこれ…… ! ? 」
「ん、ん……んちゅ、はぁ……」
ビータの舌使い、目つき、男に媚びへつらう顔、全てがダイスを興奮させるには十分すぎた。今のダイスにはビータに対する疑問などどうでもよく、ただ気持ちよくなりたいという気持ちだけだった。
「で、出る、出ちまう……」
「んむぅ……出して、いっぱい出して……」
ダイスのチンコから青き欲望が多量に放出されビータの口から精子が溢れる。
「ごめんねダイス、私まだ下手だから……でも……」
ビータは口を開けて中にある精子を見せ、ゴクンと飲み干した。
「御馳走様、ダイス……まだ出したりないでしょ ? 」
ダイスはゆっくり首を縦に振った。目は虚ろになっており熱にうなされているかのようである。
「だよね、私もまだまだ満足できないもの」
ビータの瞳はまだ赤く、まるで本物のサキュバスになったかのようである。ビータの首から下はサキュバスであり、サキュバスの持つ魔力や魔性は胴体から頭まで流れていき今や全身を駆け巡っている。まだ耐性が備わっていない事や空腹感もあり暴走状態だが、しばらくすれば慣れるだろう。
問題なのは慣れる為には現状をどうにかしなければならない事だが。
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「ん ! んん ! ! ダイス、もっと腰振って ! ダイス、もっと激しく ! ! 」
「ビ、ビータ……待って、少し休ませて……」
ビータは馬乗りになりながらダイスに迫る。ダイスの顔色はもはや青白く生気を感じる事はできない。
「ああ ! ダイス、気持ちいいよ ! 君も気持ちいいよね ! ? 私のハジメテの相手だもん。気持ちいいよね ! ? 」
ダイスとは反対にビータは実に生き生きしながら腰を振る。2人を繋ぐ凹凸はもはや何度ぶつかり合ったかわからない。時刻は既に夜、酔っ払いが道を歩く時間、そんな時間に肌がパンパンと叩きつけられる音が路地裏に響き渡る。
ビータの顔には夕方までに見せた恥じらいは一切無い。ただ男から精気を搾り取る事しか考えていない。目の前のルームメイトがどんな目に合おうとも……。
ダイスは既に過呼吸であり非常に危険な状態である。しかし身体は目の前にあり女を犯そうと腰を振り、ビータはそれに応える。何度も何度も肌を重ね腰を振り、精子を吐き出し……ついにダイスはこと切れた……。
「はぁん ! ダイス ! ……ダイス ? あれ…… ? 動かなくなっちゃった……」
そう話した後ビータの瞳に変化が生じる。赤かった爪は元の無色に戻り形も丸みを帯びている。だが……。
「ダイス……ごちそうさま」
ビータはぺろりと舌なめずりをしダイスの懐から全財産を抜き取ると路地裏を後にした。運がいいのか悪いのか、事が全て終わった後に数人の酔っ払いが路地裏に迷い込む。最初はただ寝ていると思いからかってやろうと思ったが、ミイラのようにやつれこと切れているダイスを見て悲鳴をあげたのだった。
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「おい ! 貴様今何時だと思っている見習い ! 貴様ビータと言ったな、同室のダイスはどうした ? 」
詰め所の門番に当然ながら詰問されるビータだが全く動じる様子は無い。
「…… ? 待て、貴様その姿……まるで女……血の臭い ! ? 貴様まさかサキュバ…… ! ? 」
「せんぱ~い、お静かに。近所迷惑ですよ……ね ? 」
ビータがそうお願いすると2人いた門番はピクリとも動けず声も出せなくなってしまう。
「そう……せんぱい、僕の目を見て……キレイでしょ ? もっと深く、ふか~く見て……」
ビータに言われるがままに瞳を見つめてしまう門番は次第に目が虚ろになる。
「せんぱい、僕は誰 ? 」
「ビータ様です……」
「そう……ところでせんぱい、僕の相棒なんだけど動かなくなっちゃって……代わりの相棒見繕っておいて」
「かしこまりましたビータ様……」
ビータは手をヒラヒラ振りながら詰め所に入っていく。見張りの聖騎士は見た目には変化は無い。だが心の中では既にビータの僕へと堕ちていたのだ……。
ビータの頭部は本来の物だが胴体はサキュバスの物、先ほど魔性が全身を駆け巡っていると話したが、今のビータは光よりも闇の割合が多く混じり合い全身を支配しているのだ。ビータにはダイスに対する申し訳なさはあれど『お腹が空いてたから食べすぎちゃった、ごめんね ♪ 』くらいにしか考えていないのだ。
恥ずかしがりやの可愛らしいビータはもういない。ここにいるのは男を食料としか考えていないサキュバスである。撃退すべき対象が目の前にいるものの今の聖騎士には何もできない。ただ撃退対象に首を垂れるだけだ。聖騎士は確かに闇には強いが別に精神攻撃に強いわけではないのだから……。
聖騎士団長の部屋に備え付けてあるベッドシーツから女の脚がはみ出ている。んん……と色気のある声をあげながらベッドから起き上がるビータ、背中からは大きな翼が生えており騎士団の詰め所であるにも関わらず翼を隠そうともしていない。何故なら……。
「おはようございますビータ様……」
部屋の主である騎士団長がビータの前で跪いている。現状ビータのボディガードである。
「おはよう騎士団長、みんなはもう起きているのかな ? 」
「はっ ! 既に訓練を始めています ! 」
「よろしい、では今日の食事を始めましょうか」
ビータは一糸まとわぬ姿のまま訓練場へと出向く。そこには既に多くの聖騎士が真面目に訓練に取り組んでいた。その中にはビータの元同僚の姿もある。
「みんなおはよ~、今日も汗くさい男の訓練を見せてくれてありがとう。素敵なみんなから今日も精気を貰うからね」
「おおッ ! ! 」
男の勇ましい声が訓練場に響き渡り、全員がチンコを丸出しにする。普通に考えればありえない光景だが、今の訓練場ではこれが常識となっていた。
『朝一にビータ様のチンコチェックがあるから全員オナニー等の性行為禁止。必ずビータ様に抜いてもらう事』
「むちゅ……ん……いいね君、これからもこの調子でオナニー我慢してね」
「はい、ありがとうございます ! 」
「むちゅ……君は少し味が薄いかな……ベテランで歳だものね。性の付くもの食べてチンコ元気にしてね」
「ははッ、ありがとうございます!」
目を疑う光景がこの訓練場にはあった。今や王都の聖騎士は全員がサキュバスと化したビータの食糧庫に様変わりしているのである。訓練も強くなるためではなく汗くさい男の気をビータが好むからである。
「さて騎士団長、今日は何があったっけ ? 」
「はっ、本日は国王夫妻との会食と……」
「パス、あんな脂ぎったオヤジや僕の事をビッチなんて呼んだ阿婆擦れの所なんて行きたくない。もうあいつらは人形同然なんだから勝手に対応しといて」
「はっ、承知しました」
この王都は一見何も変化が無いように見えるが、見えない場所ではビータの手が行き届いている。例えば今出てきた国王夫妻、国王はビータが聖騎士団長と一緒に城へお呼ばれした際にスケベ心を出してビータの目を見て洗脳された。王妃はまだまともだったが売女ビッチと問題発言を口にしてしまい国王と同じく洗脳。今までは一応仲の良い夫婦も現在は性行為どころか会話も一切無い冷たい関係になってしまった。
「やっぱり民のみんなに挨拶をしておこうかな。騎士団長、付いてきて」
「はっ ! 」
王都の人間はほぼ全員がビータの目を見たり直接性行為をされたりと何らかの洗脳行為を受けている。まともなのはごくわずかであり、そのわずかも今この瞬間王都から出て行ってしまっている。中には聖騎士見習いの胴体を奪ったサキュバスもいたが、今のビータにとってはもはや些事である。
「さ~て今日は誰から精気をもらおうかな~」
ビータの明るい声が詰め所の廊下に響き渡る。王都の未来は明るい……。