朝食を終え、
用意に手間取り、着替えを胸に抱えてぱたぱたと廊下を走り、そろりと脱衣所を開けると、既に風呂からあがっていた蒼矢と鉢合わせてしまった。
下着は穿いているものの、朝まで着ていた襦袢を前全開で肩から垂らしている。
「!!」
あられもない姿のうえ、濡れた髪を後ろへ流し、いつもと雰囲気ががらりと変貌している彼を目の当たりにし、苡月の身体はついに飛び上がってしまった。
しかし汚れたものをそのまま再び着させるわけにはいかず、動揺する心を懸命に抑えて着替えを差し出した。
「蒼矢君、こっちに…洗ってあるので、こっちに着替えて下さい! 下着はお兄ちゃんの予備のものですがっ…」
「ああ…わかった。ありがとう」
蒼矢はそう小さく答え、彼の手から着替えを受け取ると、広げることなく洗濯機上のラックへ置く。
そして、手元へ視線を落として突っ立つ苡月の目の前へ歩み寄り、彼の顎を取った。
「…っ!?」
突然のことに、苡月は心臓が止まりそうになった。
動揺しかけた視界に、彼の開いた胸元に下がる銀色のネックレスと、その中央に輝く宝石が映る。その神秘的な深い青色に一時目を奪われ、やがてぼんやりと漂う視線は、左胸に浮かぶ水滴の形をした紋様に辿り着く。
吸い込まれそうな魅力を放つその青い印に、苡月の目が釘付けになる。
「…蒼矢君、これ、は…」
「"烙印"だよ」
「…っ…?」
ぼそりと漏れた彼の言に、苡月は蒼矢の顔へと視線を移す。
蒼矢は苡月を正面から見下ろしていて、そのつぶらな瞳と目が合うと、色の薄い瞳を細め、うっすらと笑った。
「…
聞き覚えのある少し高めのソフトな彼の声とは程遠い、野太く喉の奥で唸るような低い声色が、ぱちくりと目を見開く苡月の耳に落ちていく。
「…? ち、が…?」
「あまり食指が動かない体躯だが、精通は終えているのか?」
顎を取られた苡月は、足先まで身体を固まらせた。
「――苡月、蒼矢の世話は終わったかな?」
遠くから、
声のした方を無感動な表情で眺め、蒼矢は苡月の顎を解放した。
「着替えるから、出てってくれる?」
「……」
苡月は頭の中が真っ白になってしまったのか、時が止まったように棒立ちになっていた。
蒼矢は声掛けに動かない彼を片眉を上げながら見やると、脱衣所から追い出すが如く胸を突く。
よたよたと後ろへ下がり、脱衣所の引き戸が閉められると、苡月はその場にぺたんと尻もちをついた。
「……、…っ!?」
「――おう、苡月。どった? 座り込んじまって」
混乱を極める彼の頭の後ろから、やけに明るい声が届く。
首が錆び付いたような動きで振り向く苡月を、例の如く呼び鈴無しであがり込んだ